「...ブリーフィングが始まる。」
「恐らく、この作戦の要はお前だ、621。」
『よう、野良犬。』
『ベイラムでもレッドガンでもねえ。俺個人からの依頼だ。』
『通信で伝えた通りだ。俺とヴォルタ、含めてレッドガンは「壁越え」をしようとしている。』
『お前は露払いだ。』
『ベイラムは独立傭兵を起用しようとしねえ。自分らで十分だ、って驕ってやがる。』
『だが、お前はG13だ。ならなんも問題はねえ。』
『土着共はMTとか砲台を馬鹿みてえに置いてるが、それを突破する。』
『キャノンヘッドは正面火力は中々のもんだ。MT部隊はアイツが制圧する。』
『てめえは砲台をぶっ壊せ。』
『後はお得意の物量の制圧で街区が制圧される。』
『ただ、地面近くにはジャガーノートっつーデカブツと4脚MTがゾロゾロいやがる。』
『これを俺とてめえで壊す。』
『後は壁上にもいやがるそのデカブツをフクロだ。』
『ジャガーノートさえぶっ壊せば後はボロMT共だけだ。大した心配事はねえ。』
『二度は言わねえ。いいな。』
「報酬は用意されているようだ。」
「これはベイラムからの正式な依頼ではない。面倒事に巻き込まれたくなければ、受けないのも手だ。」
「恐らく、ベイラムが壊滅したら前と同じようにアーキバスが壁越えに乗り出すだろう。」
「お前が決めろ、621。」
やっぱり、受けるよ。
死んでほしくないし。ヴォルタにも、イグアスにも。
レッドガンの目標...というか、イグアスの目標はルビコンからの生還、って言ってた。
きっとこれは現段階だとベイラムから離脱したところでどうにもならないから仕方なく受けてるんだろうって思うんだ。
解放戦線を壊したいってわけじゃないけど...仕方ない。
「...そうか。」
「相手は圧倒的な物量だ。十分に準備をしていけ。」
「メインシステム 戦闘モード起動」
「ミッション開始。お前は乱入する形でこの乱戦に参加する。」
「中央のガトリング砲台を破壊しろ。」
「壁上からの狙撃が激しい。621、遮蔽を上手く使え。」
実際、かなりひどい有様だ。
イグアスは確かに強いが、それだけで変わるような状況じゃない。
MTの残骸だらけ、街区の建物は燃え盛り、そこかしこから爆発音が鳴る。
『やっとかよ。さっさと砲台をぶっ壊せ!』
言われた通り、すぐに砲台を破壊する。
今回は物量に備え、カーラのミサイルをファーロンの10連ミサイルに換装してある。
ハンドバックラーだが、あれはどちらかと言えば対ACや特殊機体の1v1に適しているような気がしたので、普通のシールドに戻してある。
今回は多数戦になる事を想定して、ブレードを多数巻き込めるVCPLのレーザーブレードにした。
『?!不明の機体反応...識別は...G13だと?』
『お前はアサインされていないはずだ!何故いる!』
MT部隊から通信が聞こえているが、無視。
『は?G13?』
『てめえは...なんだ、依頼でもしに来たか?』
『まあいい。戦力が増える事に越した事はねえ。せっかくだ、暴れてみろよ。』
砲台を破壊した後、壁正面の方を覗くと、4脚MTが3機。一つが9連バズーカを持っている機体。一つがレーザーブレードを持っている機体。一つがガトリングを持っている機体。
...地獄だ。
『G13!どうやら貴様もダムじゃ暴れたりなかったらしいな!』
『ならば貴様の腕を存分に発揮して見せろ!』
ミシガン総長からも通信が入る。
私はもしかしたら大人気なのかもしれない。
「4脚MTが3体。同時に、地面を常に移動している機体反応が一機...恐らく、ジャガーノートだろう。」
「...ミシガンから情報が回って来た。どうやらヘッドブリンガーとキャノンヘッドが件のジャガーノートと交戦しているようだ。」
「621。お前はその4脚MTを落とせ。バズーカと、壁上からの砲撃に気を付けろ。一度当たれば即座にACS負荷限界に達して崩壊するぞ。」
その通りだろう。一度でもスタッガーになろう物なら、恐らく袋叩きに会う。
ならばどうするか?
簡単な話だ。ACは4脚MTよりはるかに機動性が高い。それは重二脚機体やタンクにおいても、だ。
9連バズーカを撃ってくるならば、私はガトリングを持った機体の後ろに隠れる。
すると、4脚MTが自滅を起こす。
友軍識別タグがあろうがなかろうが、爆発の視界妨害というのは戦闘に置いてかなり大きい影響がある。
その隙を突き、一撃ずつ銃弾を着実に当てる。
「一機目、負荷限界だ。すぐに落として手数を減らせ。」
レーザーブレードを起動。
ACを振り回すようにして、周囲をまとめて薙ぎ払う。
「一機目撃破。残り二機だ、621。」
壁上からだけでなく、壁の正面の狙撃砲台からも銃弾が飛んでくる。
これを避けながら戦うのは中々にきつい。
『G13!こちらの戦況は上々だ。街区はほぼ制圧が完了、残りはジャガーノートだけだ!』
『役立たずが役に立った珍しい例だ。貴様も続け!』
砲撃が止まない。
QBを吹かそうが、ABを起動しようが、掠った弾が少しづつ自分の機体に負荷を溜めていく。
ポーン。
腑抜けた音。だが、致命的な音だった。
ENが切れた。
内燃型はENの補充が早い。それでも、それは重大な隙だった。
壁面からの砲撃が機体に直撃する。
大きな揺れが私を襲う。
レーザーブレードを持った4脚MTがこちらに突進。仕返しをするかのように、薙ぎ払いを喰らう。
直前でなんとかシールドを起動できたが、大きなダメージを受けた。
残りAPは500程度しか残っていなかった。
シールドの起動が間に合っていなければ、既に撃墜されていただろう。
そのシールドもレーザーブレードによってアーム部分が破損してしまった。
「リペアキット 残り二つ」
この後にジャガーノートの二連戦が待っている。ここで使うわけにはいかなかったが、ここで落ちるのも勘弁。
9連バズーカを瀬戸際で躱し、ブレードを刺す。
内側から機体を焼き、9連バズーカの機体を爆散させる。
「二機目、撃破。残り一機だ。」
残り一機はさほど難しい戦いじゃなかった。いつもと同じ。銃弾を当て、スタッガー状態に。そしたらブレードを振り、斬る。
自分でも気づかないうちに、息が荒くなっていた。
左肩部分が使用不可。そして、リペアキットは残り二つ。
「街区4脚MTの破壊を確認した。」
「ジャガーノートと戦っているG4、G5の救援に迎え、621。」
向かう。
しかし、向かったタイミングでちょうど終わったようだった。
『へっ、遅かったな、野良犬。デカブツの処理は終わってるぜ。』
『4脚MTがいたが、お前全部撃墜したのか?すげえな。』
『あ?何機落としたよ。』
3。
「3」
『そうかよ。ミシガンに言やあ勲章でも貰えんじゃねえか?』
『G4!遠足も終わっていない内に軽口とは、随分と余裕があるみたいだな?』
『落ちたくなければしゃんとしろ!』
軽口を叩きながらも、次々と残党の2脚MTを排除している。
『企業共め...!貴様らがここで暴れようが...ザッ』
「621。隔壁にアクセスしろ。「壁」内部に侵入する。」
『貴様らも続け!』
「壁」に入る。
「侵入を確認した。閉所での戦闘に備え...」
「...?反応がない。用心しろ、621。迷彩の可能性もある。」
壁の内部には、何もいなかった。MT部隊も、汎用兵器も。
『どうなってやがる。外だけ守って中を守らねえバカがいるか。』
『壁上の奴らの反応がある。いないなら好都合だ、さっさと壁上に上れ!』
本当に何もいない。不自然だ。
「...621。暗号通信だ。繋ぐぞ。」
『ザッ...やあレイヴン。今回でまだ君と共闘した事はないが、君の良き戦友、解放戦線のラスティだ。』
『壁は既に放棄された。レッドガンとの取引が済んでいる。』
『残っているジャガーノートは壁をなんとしても死守しようとする...行ってしまえば過激派に近い。資源は重要だが、撃墜してしまって構わない。』
『アーキバスは不可能だが...ベイラムではなく、レッドガン単体とはどうやらある程度は分かり合えるようだ。また会おう、戦友。』
「...だそうだ。」
「ミシガンが疑っていないのも、そう言う事だろう。」
「壁上に上り、ジャガーノートを排除しろ。」
リフトに三機同時に乗り、起動する。
暇だ。
クイックターンでグルグル回って遊んでいる。
やっとついた。
「...反応が3つ。用心しろ、621。」
『一つはジャガーノート。後二つはACのようだ。遠慮はいらん、正面から叩き潰してやれ!!』
隔壁が開く。
爆発と共にジャガーノートがエントリー。そして、それに続くようにして...
『やあレイヴン。そして、君達はレッドガンか。』
『早速だが、手合わせと行こう。壁をそう簡単に落とされるわけにはいかない。』
『コーラルよ、ルビコンと共にあれい!』
『企業よ。易々とここを通すとは思うな。』
「...?」
「AC、スティールヘイズとシノビだ。何が起きている...」
何が起きている??
補給をしたとはいえ、ジャガーノートは制圧力が高い。これと3v3...
『ザッ...レイヴン。取引は既に済んでいるが...せっかくだ。たまにはこういうのも悪くはない。』
『六文銭も事情は知っている。互いに殺すのは無し、という事になっている。こちらも撃墜されそうになれば、脱出レバーを引く。』
『ジャガーノートの砲手だが...さっき言った通りだ。』
『3v3。さて、始めよう。』
『3対3というわけか。G4、G5、G13!小分けに対応しろ!イグアス!貴様はジャガーノートの誘導、ヴォルタはACシノビに当たれ!』
解放戦線とレッドガンの手合わせ、のような物なのかもしれない。
シノビはもとより強力だ。あのプラズマ機雷投射機は、見えずらい。実際苦戦をした想いがある。
ラスティは元より、イグアスはあの経験で大きく成長している。そしてヴォルタも練度がさらに増しているような気がする。
ここまで大規模な演習なんてきっと今後もないだろう。それに、かなり指折りに人間がここに集まっている。
「演習のような物のようだな。だが、撃墜はされるな。どうなるかはわからん。」
「どれもが油断できない相手だ。心してかかれ、621。」
『戦友。君とこうして戦うのは、ウォッチポイント・アルファ以来だな。』
『カーマンラインの時はまた違った。スティールヘイズで君と戦う事はあまりなかったからな...たまには楽しもうじゃないか。』
『企業の傭兵よ。貴様ら何故コーラルを欲する?』
『あ?そりゃ命令だからだ。俺達が生き残るためっつったほうが良いか?』
『「コーラルよ、ルビコンと共にあれ!」』
『企業の走狗め、ここで死ね!』
『はっ、やってみろよ!』
こうして3v3が開幕した。
続きはもうちょっと後で書きます、というか一旦分けます
ちかれた