「で、これからどうしよう」
「はあ?」
霊木にもたれかかり体力を回復しつつ、俺はのじゃロリ──改めクズハに話しかける。お前何言っとるんじゃという顔をされたが、しかしこれは話しておかなきゃいけないだろう。
軽率に魂を繋げてしまった俺たちだが、正直それの解除よりも大事なことがある。色々あるが、その最たるものは「食」だろう。腹が減ってはなんとやら、普通に死活問題だ。これには流石にクズハも口をすぼめた。妖怪だって、食わねば死ぬのだ。……そういや人食うのかコイツ?どうしよう……
食い物に、後は衣服とか、宿だとか。とすると金が必要で、それらは人がいる場所じゃなければ貰えず使えず……あてがない旅とは言うが、あたりは着けるべきだろう。俺たちは、どこへ向かうべきか。
「なら、都だろう。西……は遠い、東のほうへ」
「江戸……いや、もう東京か。んー……」
今や明治、人の多い場所に異国文化が渦巻いているのは仕方ないが……それにしたっていい噂は聞かない。空き家が増えて治安が悪くなってるとか、物価高が凄いとか……首都だし、それこそ強い妖怪も潜んでいるかもしれない。同じように、退魔師も。
……うーん、片方が死んだら終わりの俺たちには少し厳しいかもしれない。主に俺が。だがそれを差し引いても様々な情報が手に入るだろうことや、食い扶持も入手しやすいなどメリットもある。はずだ。くそう、もう少し日本史を勉強しておけばよかった。後悔先に立たず……いや、立ってるのか?……ともかく。
「まあ、東に向かうのは賛成。その上で……とりあえず横浜港、ってのはどうよ」
「港町か?ふむ……」
東京……の手前、横浜ならちょうどいいのではないだろうか。比較してもまだ治安がマシかもしれないし。それに、異国人は大体ここからやって来るから……下手をすれば東京よりも賑わっているかも。それはそれでマズいか?
まあ、賑わっているのなら色々なものが行き来していることだろう。解除のヒントだって案外簡単に見つかるかもしれない。あとは単純に、今の最先端を見てみたいというのもある。
「まあ、良いじゃろう。フフ……」
「ぜってぇ~よからぬこと考えてるじゃん」
というわけで、とりあえず当面の目的地は決まった。……なんだか嫌な予感がするが。
「……まだか?」
「あとちょっとだって。……多分」
森。
森である。右も左も前も後ろも、木々に囲まれている。
とりあえず隣の村にと歩み始めた俺たちだが、悲しいことに一瞬で迷ってしまった。この場所さっきも来なかった?大丈夫か?それも全て、ショートカットを試みて道から外れた馬鹿のせいである。……俺だ。流石に申し訳なくなって来た。
日の位置から大体の方角を割り出していたため戻ってるなんてことはないだろうが、しかしやっぱりこうも村が見えないのは不安になって来る。もしかして故郷にこもっている間に滅びたのだろうか、だなんて……いや、流石にそんなことはないだろ。
「お主、この土地の人間じゃろうが」
「……生贄に選ばれてからはあんまり遠出できなかったんだよ。贄になる前に死なれたら困るって」
「はァ……とんだ箱入りじゃ」
呆れ顔のクズハであるが、そっちの文句は小うるさいババアに言ってくれ。森でサボってたらブチギレられ外出禁止を言い渡されたのもあるけど、これは明かさないでおこう。
にしても辿り着かない。かれこれ二時間は歩いているのに、人工物の気配は無かった。お日様も既に真上にいらっしゃる。腹減って来たな……
「今からでもお主の村に戻れば良いではないか」
「やだよ、あんな場所……というか俺がお前連れて帰ってきたら大事じゃすまないだろ」
「面白そうなのにのう……」
「……」
白蛇ってさ、神の使いとかじゃなかったっけ。なんだこの邪悪な存在。魂を繋げた時はしめしめと考えていたが、もしかしたら普通に詰んでいるのかもしれない。このままだと俺、コイツの趣味に巻き込まれて碌な目に合わなさそうだ。少なくとも天国には行けまい。
しかしクズハの言い分にも一理ある。このまま村が見つからないと、最悪ここで夜を過ごすことになる。それはちょっと御免こうむりたい。この時代の夜はかなり危険だし、特に俺なんてガキだし、女だし……それなら俺の村まで戻る……程ではないにせよ、コイツが封印されていた霊木の所で過ごした方がよっぽどいいのかも。いや正直、お前が守ってくれよって感じだが……
「……ん?」
と、そんなことを考えていた時。遠くに人影が見えた。目を擦ってもいるので、幻覚ではない。やっと、やっと集落に来れたか。良かった……
ただ……その人影は、なんとなく困っているような、そんな感じで立ち往生している。近づいてみれば、それは地面を掘るような動作であることが分かった。男性……おっさんと言った感じのその人は、傍らのものに手に持って固まっていた。
「大丈夫ですか?」
「うおっ…………な、なんだ、巫女さんか」
「ああ、はい、一応。こっちは……こっ、ちはぁ……私の式神です」
「ぶっ飛ばすぞ」
「痛ァーーッ!!」
頭を殴られた。結構本気で。視界が揺れるぅ!
ば、馬鹿野郎。死ぬぞ。もうぶっ飛ばしてるじゃねえか。というか良い誤魔化し方だったろ、少女とロリの2人組とかただでさえ怪しいんだから。ほら、おっさんも困惑した顔で見てきてるじゃん。
「ワシが上じゃ阿呆。そんなことも分からんか」
「コイツ俺にやり込められたくせに……はい、はい分かりました。この人は師匠です。師匠とかそんな感じのあれです」
「……なんというか……そうか、まあそう言う事にしといたろう」
よし、上手く誤魔化せたな。…………上手く誤魔化せたな。
で、彼は何をしているのかと言えば……掘った穴に、物を埋めているようだった。衣服やら、小物やら……銭やら。それらには少し、赤黒いものが付いているように見えた。つまり、すでに見えないが、おそらくこの下には……
「妖怪ですか?」
「ああ。小鬼が村を襲ってな。何人かやられちまってよ……」
淡々とした物言いに、しかし隠しきれていない怒りが見えた。小鬼は俺が初めて退治した、いわゆる下級の妖怪だが……やつらは群れるのだ。そうすれば狼と同じくらいには脅威になり、被害が出るのも頷ける。が、俺たちならば退治できるだろう。言い方は悪いが、最初の仕事にはちょうど良い。
「なあ、巫女さん」
「ええ、もちろんですとも。……ただ……」
「……ただ?」
「その前に……その、腹ごしらえをさせて頂きたく……」
おっさんは俺のお願いに目をぱちくりした後、少し笑ってそれを承諾した。俺の腹が鳴ると、さらにその笑みを深めたような気がする。……まあ、良い方向に働いたならよし。うん。
「昨夜の事だ。かなり多い……10人くらいの小鬼の群れが、村を襲ってな」
「それはまあ……随分と多いですね」
「だろ?思わず笑っちまうほどだ。寝ぼけ目で何とか撃退したが……結構な人数がやられた」
おっさんの後についていけば、徐々に集落が見えてくる。ずいぶん昔に来た時とあまり変わっていないように思えるが、家の所々に傷がついていた。襲撃というのは確からしい。
一般的な群れは5匹程度なことを考えると、10匹というのは中々……恐ろしいものだ。村の人口は確か20人ほど、しかし女子供もいるだろうから……いや、良く追い返せたもんである。だがそのせいか、見た感じでは村に人の姿はない。おそらく、家に籠って次に備えているのだろう。
そのままおっさんの家へと案内され、居間へと案内される。質素な感じだが、おそらく家の中にも入って来たのだろう。家具や床に傷がつき、いくつか衣服が散乱していた。マジでよく撃退出来たな……意外と強いのだろうか、このおっさん。
「詳しい話……の前に、とりあえず飯だな。少し待っててくれ」
「あ、はい」
彼はそのまま、敷居の向こうにある台所に入って行った。ちょっとした時間だが、とりあえずどう戦うべきかを考えておこう。ぱちぱちと音を鳴らす囲炉裏の傍に座り、脳を回してみる。
10匹。昨日の戦闘で減っているかも知れないが、それでも多く残っていると考えた方がいいかも。俺の結界術はそもそも火力が大して無いし、複数で来られると分が悪い。1匹ずつ潰せるなら良いんだけど……そう上手くいくだろうか。
「小鬼のう……興が乗らん」
「そう言うなよ、なかなかお目にかかれない数だろ。……やっぱ囲まれたらマズいよな」
「なんでもよいが、ワシの足を引っ張るでないぞ?」
「うっさいな、複数は苦手なんだよ、しょうがないだろ」
そう言いながら面倒臭そうに肘をつくクズハ。家主とばかりに居直っていやがる。ここ人の家ェ……
しかし、彼女の火を操る術なら1対多の状況でも上手くやれるかも知れない。そうでなくとも俺より強いんだ、どうとでもなるだろう。問題は、コイツのやる気をどうやって引き出すかだ。……うーん、思いつかない。俺が死にかけるとか?
いや、クズハを使うより、村人の何人かに手伝ってもらうのが丸いか。おっさんも強そうだし、そうでなくとも数がいれば違うはずだ。罠をいくつか仕込んで、位置的有利で潰していく……とかかな。
「ほれ、待たせたな。大したもんじゃないが」
……ま、とにかく飯だ。それ食ってから考えよう。さて、おっさんが持って来てくれたのは握り飯だ。うう、いつも食っていたけれど、こんな状況だとなんだかごちそうに見えてくる。美味そうだ。
「ほお……」
「あっコラ。すいません……」
「はは、まあ食い意地があるのはいいこった」
ひょいと掴んで早速食っているクズハ。もっちゃもっちゃと咀嚼する姿はなんとも行儀が悪く、もはやガキにしか見えまい。いただきますを教えるのはまだ早いか。
といっても、俺も限界だ。腹が変な鳴き声を発してるし。手を合わせ挨拶をし、そして飯へと手を伸ばす。口を広げて、それを放り込もうと──
ガタッ……
──したところで、物音がした。かなり大きい、聞き逃すこともないだろう音。おっさんがさっきまでいた台所の方からだ。もちろん、彼は今ここにいる。
「……この家、あなた以外には」
「いねえな」
とすれば、今の物音は一体。……妖怪は基本夜行性だ……だけど、ありえない話ではない。早めに襲撃しに来たのか、だがどうして。
台所に続く襖へと手をかけ……そして思いきり引く。懐に手を入れたところで、しかし俺は固まってしまった。
「ギィィ」
「グルルルル」
見えたのは──案の定だ。2匹ほどの小鬼。いつの間にやらそこにいた奴ら、俺の足から膝上まで程度の大きさをそいつらは、しかし俺には目もくれず、地面に倒れ伏したものを……人を貪っていた。ぐっちゃぐっちゃと汚い音を鳴らしながら。
想像より凄惨な光景に、顔を歪めると同時に……どこか違和感を覚える。随分と食事に夢中じゃないか?いや、そもそも……
……はじめから?
「お主はまるでなっとらんの。後ろじゃ」
「は?」
クズハの誹りに声を荒げつつ、嫌な予感がしつつ。それで後ろを振り向けば……ちょうど、ちょうどおっさんが手に持った小刀を俺に突き刺そうとしているところだった。
「おわっ!?ば、ちょっ……!」
咄嗟に結界を作り出す。それに阻まれた小刀は、持っているおっさんごと後ろに仰け反らせた。しかし、どうやら手違いというわけでもないようで……再びこちらに向かってくる。諦めてはくれないようだ。
「チッ、クソガキ……仲ぁ悪いんじゃないのかよ」
「仲はまあ、悪いがのぉ。んむ」
「いや、え、おわぁ!?お前飯食ってる場合か!!」
呑気にも飯を食い続けるクズハに構っている暇もなく、俺はおっさんの二撃目をいなす。後ずさりし台所に足を踏み入れれば、流石に小鬼も気づいたのか、こちらへと威嚇して来た。とりあえず数歩分距離を取り、視界に全員が収まるようにする。
考えるに、あの死体は昨夜からここにあった。俺らが家に入った時も、おっさんが握り飯を作りに行った時もずっと……なんなら、小鬼もずっといたのだろう。あいつらも飯時だったというわけだ。
で、奴らは……おっさんを見ても、そちらには目もくれていない。むしろ一緒になって俺の方を向いていた。つまるところ、これは。
「……あんたの手下ってとこか」
「手下じゃねえ、家族だ……!どいつもこいつも軽く見やがって!」
「ええ……似てないけど……?」
「似てるだろうが!」
つまり俺たちは、まんまとこいつに騙されてたってわけだな。いや、クズハは気づいてたか?何で教えてくれないんだよ。死ぬところだったんだぞ。
彼は多分、村の住人ですらないのだろう。ふらりと小鬼と共に村に現れては、人を襲うことを繰り返しているような小悪党……にしては大分悪質だが。
しかし家族か……なんというか、そう考える人もまあいるだろうけど……おっさんは歯を食いしばりながらこちらを睨んでくる。目が怖い。殺しという行為にまるで躊躇が無いような、そんな目だ。こっちは妖怪退治しに来たってのに、人間までやらなくっちゃいけないのかよ。
「女子供を何人か食わせてくれりゃあ良かったってのに、こいつら太郎と次郎をやりやがってよ……だから皆殺しにしてやったんだ」
「名前もつけてる……」
太郎次郎ってありきたりだが、後ろの方の家族は一体どんな名前なのか……ともかく、彼はそう恨み言を履きながら、もはや動かない人だったものを蹴り飛ばす。あーあー、骨が丸見えだ。見ないようにしよう。
飛び掛かる小鬼に対して結界を押し出せば、大して重くもないこいつらは吹っ飛ばされてくれる。が、それも一方向だけだ。
「シャァァ」
「ギャッ」
「げえ」
出入り口からぞろぞろとやって来た増援を見て、本当に勘弁して欲しい気持ちになってくる。考えうる限り最悪の状況じゃねえかよ。村人も全滅しているだろうから、俺たち2人でこの数をどうにかしないといけないわけだ。誰だよ、最初の依頼にはちょうどいいとか考えてたやつ。
「食わせるだけ食わせて、あとは埋めりゃあいいって時に……恨むんなら間の悪い自分を恨めよ、ガキども」
そう言って、おっさんは小鬼に指示を出す。一斉に襲いかかってくる小鬼に、俺は壁を背にして結界を展開した。攻撃力はそうでもない、破られることはないが……質量で押されていく。加えて、俺の出している結界は俺の身長よか少し大きい程度。隙間があるわけだ。下から這い出て、もしくは上から乗り越えて、結界の内側に入って来る。そして、1匹の小鬼がこちらへ取り付き。その牙が、俺の左腕へと突き刺さ──
「お触り厳禁っ!」
「ギ?」
……る前に、そいつの顔にあるものを貼った。御札はクズハとの戦闘で使い切ったので、その代替。神木の葉っぱをむしり取って、術式を書いておいたものだ。ちゃんと断りは入れたから、怒ってはいないはず。多分。
小鬼を殴り飛ばし、自分に結界を張って、葉に霊力を込める。すると葉は光りだして、そして音をたてて炸裂した。もろに食らった小鬼は、跡形もなくはじけ飛び……血やら肉やらが飛び散り、周囲を赤く染めた。
「六郎ーーッ!!」
「まずは一匹……!」
わなわなと震え叫ぶおっさん。周囲の小鬼共も驚いているようだ。反応を見るに、どうやら俺は結構舐められていたらしい。けっ、だから六郎も死んだのだ。
持ってきた葉はあと10枚。それでどうにか奴らを殺しきる、もしくは無力化する……理論上足りるが、正直難しい話だ。上手いこと巻き込めれば良いが、相手も能無しではない。それに下手をすると自爆してしまう危険もある。手札を明かした分、未だこちらが不利。どうするべきか。
「この……言うこと聞かねえクソガキで愚図の式神しか使えねえ分際で!!ぶち殺してやる!!」
「言ってろ、後ろから指図しかしねえ分際で」
そう吐き捨てれば、彼の小刀を握る手が軋みを上げた。思ってたよりも効いたようだ。厄介なことに冷静な奴だと思っていたが、小鬼が死んでから目に見えてうろたえているし。案外、本当に家族のように思っているのだろう。もう少し煽っておくか……?
「てめえ……望み通り俺ん手で──」
「お主いま、ワシに言ったのか?」
「あ!?」
「えっ」
と、その時。黙っていたクズハが口を開いた。……え、今なのか?ずっと傍観していたくせして。俺がピンチだったのに握り飯頬張りながら傍観していたくせして。段々怒りが沸いてきたな。しかしあの不機嫌な顔を見るに、どうやらおっさんの暴言がよっぽど効いたようだ。お前もかよ!?
なんだよ、やる気にさせるのも案外簡単だったのか。なんというか、意外とテンプレ通りな大妖怪だなと思う。まあ、のじゃロリである点からしてそうか……?
「少し遊んでやろうかとも思ったが、気が変わった。早う死ね」
「寝言言ってんじゃねえぞ、てめ──え」
だが、まあ。クズハは式神ではなくて、大妖怪だ。恐ろしさで言うならば、神にも引けを取らないわけで。よっぽどのことが無ければ、こちらの失礼を見逃してくれるわけなんぞないのだ。
ゆらりと立ち上がり一歩、おっさんの方へと踏み出し、しかしただ近づくのみ。それ以外には何の予兆もなかったというのに、いきなり彼の身体が炎で朱く染まった。
空気がごうという音をたててざわめき、突き上がるように炎が揺らめく。周囲の誰もが声も上げずに、そちらの方を見て固まっている。ある者は驚き、ある者は焦り、ある者は慄き──ある者は魅入られて。
しばらくして炎が収まれば。そこにあるのは、黒く焦げた、人の形をしたもののみ。どすんという音と共に倒れたそれを見て、俺は我に返る。
横を見れば、すこぶる都合のいいことに、小鬼たちが固まってうずくまっていた。恐怖もそうだが……司令塔がいなくなって、どうすればいいか分からなくなってしまったようだ。思っていたより、あっけない。
小鬼を囲うように結界を展開して……残りの葉を全上から投げ入れる。そして霊力を込めれば……10枚分の衝撃が炸裂する。それは彼らを跡形もなく消し飛ばし……びちゃりと、血肉が結界にこびりついた。術を解けば、ぼとりとそれらが落ちていく。あまり見ないようにしたい……
「キィィ……」
……が。他の個体が盾になったのか、1匹だけ残ってしまったようだ。怯え切ったそいつは、這うようにその場から逃げ出そうしていた。一体何郎だかは知らないが、しかし逃すわけにもいかない。そう思い、捕まえようとしたところで──再びの炎。クズハの術だ。先程よりも小さい規模、少ない時間をかけて、黒焦げの人の形がもう1つ、ちょうど隣り合うように倒れ伏した。
「……似てるかも」
「この程度の小悪党も見破れんとは……」
「いや……そんなあからさまだったか?俺気づかなかったんだけど」
「お主ィ……ちぐはぐじゃな……」
その後、外に残りがいない事を確認した後。俺はといえば、呆れた顔のクズハに叱られていた。そうは言うけれど、そんな事分かるもんなのか。怪しい動きなんて……まあ、こいつが言うんだからしていたのだろう。
俺にそういう審美眼は、正直まるで無いからな……対人経験がほとんど無いのが原因だったり……するかもしれない。ぐう、嫌な現実が押し寄せる……
まあ、過ぎた事を悔やんでもしょうがない。そういうのはこれから養っていくのだ。まずは道行く人全員疑ってかかることにしよう。
「あ、そうだ。俺の分の握り飯は?」
「…………」
「……俺の分の……握り飯は……?」
……ふいと、クズハが目を逸らした。そして俺の腹が、悲しげな響きを奏でた。
評価感想も欲しいですが、どうかここすきをください……1つでいいのでください……