色違いむしタイプ統一パーティー。
それは、俺が前世から追い求めてきたロマンである。
全員がむしタイプで、しかも全員が色違い。さらにボールの種類にまでこだわった、俺だけの究極の六匹。
……いい。
実にいい。
想像するだけで白米三杯はいける。
そして現在、俺の手持ちは五匹。
最初の相棒、ムーちゃん。甘えん坊のしずくに、いたずら好きのルージュ。異世界からやってきたフェリヤ。そして、先日仲間になったばかりのストライク。
つまり、あと一匹。
あと一匹で、夢の色違いむし統一パーティーが完成するのである!
……まあ、六匹揃ったからといって、すぐに全員でバトルできるわけじゃないんですけどね。
しずくはまだシズクモだし、ストライクもこれからじっくり育てていきたい。フェリヤについては、そもそもバトルをしたいと思っているのかさえ、まだわかっていない。
でも、それでいい。
六匹の仲間を迎えるという夢と、六匹全員で強くなるという夢は、別々に大切にしていけばいいのだから。
というわけで。
最近の俺は、修行の合間を使って色違い探しに精を出していた。
ただし。
まったく見つかりません。
♦
「……いない」
「グソ?」
「きょうも、いない……」
草むらを見渡しながら、俺はがっくりと肩を落とした。
ヨロイ島で本格的に色違いを探し始めて、すでに十日以上。野生のむしポケモンには何度も遭遇したし、キャタピーやフシデ、ストライクなんかは結構な数を見かけている。
しかし、肝心の色違いはゼロ。
完全なる虚無である。
いやぁ、懐かしいですねぇ。
この、どれだけ探しても成果が得られない感覚。前世で何千回も色違い厳選を繰り返していた頃を思い出すぜ。
もっとも、今回はゲームじゃない。
草むらに入ったからといって、都合よく野生ポケモンが現れるわけでもないし、出会えたところで仲間になってくれる保証もない。
それは、ムーちゃんやフェリヤとの出会いで十分に学んだ。
「リンちゃーん!」
背後から聞き慣れた声が響いた。
振り返ると、マスタード師匠がいつもの笑顔で歩いてくる。
「ほっほっほ! 今日も色違い探しかのう?」
「うん。でも、ぜんぜん見つかんない……」
「そうかそうか!」
師匠は楽しそうに笑った。
……あの。
弟子が絶望しているんですが?
「焦ることはないぞい。出会いというものは、追いかけてもなかなか見つからんものじゃ」
「でも、あといっぴきなんだよ?」
「ほっほっほ! だからこそ、楽しみが残っとるとも言えるじゃろ?」
なるほど。
そういう考え方もあるのか。
確かに、今すぐ六匹揃えなければならない理由はない。そもそも、今回のヨロイ島生活はフェリヤとの関係を見つめ直すためのものだ。
色違い探しは、あくまで修行の合間。
ここで焦っても仕方ない。
「……よし。あしたもがんばる!」
「うむ! その意気じゃ!」
俺は拳を握り、気持ちを切り替えた。
前世では数千回の厳選だって乗り越えてきた男である。この程度で心が折れるほど、俺の色廃精神は軟弱ではない!
……なお、その日の午後。
黄色い花の陰から色違いキャタピーが顔を出したと思って全力疾走したところ、普通のキャタピーでした。
紛らわしいんじゃあああ!!
♦
それから、さらに数日後。
俺たちはマスタード師匠に付き添ってもらい、鍋底砂漠の近くまで足を延ばしていた。
乾いた大地に、照りつける太陽。風が吹くたび、細かな砂が足元を流れていく。
……暑い。
めちゃくちゃ暑い。
「師匠、あつすぎる!」
「ほっほっほ! 今日はいい天気じゃのう!」
「いいてんきにも、げんどがあるとおもう!」
「雪原よりはよいじゃろ?」
それはそう。
カンムリ雪原では寒さで死にかけたからな。
しかし、寒ければ寒いで文句が出るし、暑ければ暑いで文句が出る。
人間とは、なんとも贅沢な生き物である。
「グソ……」
隣ではムーちゃんも少し疲れた様子だった。
暑さが苦手なのか、歩く速度がいつもより遅い。
……君、むし・みずタイプだよね?
もうちょっと暑さへの耐性があってもよくない?
「ムーちゃん、すこしやすもうか」
「グソッ!」
元気な返事。
いや、休憩の提案でそんなに喜ばなくても。
俺たちは近くの岩陰で休むことにした。
しずくは用意した水桶に入り、気持ちよさそうに水泡を揺らしている。ルージュは日陰に咲いていた小さな花を見つけ、さっそく飛んでいった。
ストライクは少し離れた場所で鎌の状態を確かめている。
そしてフェリヤは、日陰になった平らな岩の上で静かに休んでいた。
出発前に声をかけたところ、自分からついてきたのだ。
最近は、俺たちがどこへ行くのか気にすることも増えてきた。もっとも、それが一緒に出かけたいからなのか、単に興味があるだけなのかはわからない。
今日も、好きな場所で休んでいるらしい。
俺は水筒を取り出し、一口飲んだ。
冷たい水が喉を通る。
……生き返る。
そんなことを考えていたときだった。
「……メラ?」
岩陰の奥から、小さな鳴き声が聞こえた。
ん?
今の声、どこかで聞いたことがあるような。
俺はゆっくりと顔を向けた。
そこには、一匹の小さなポケモンがいた。
ふわふわとした白い毛並みに、丸みを帯びた身体。頭部からは特徴的な角が伸びている。
「……メラルバ?」
むし・ほのおタイプ。
進化すれば、あのウルガモスになるポケモンである。
おお、メラルバか。
いいねぇ。
進化後のウルガモスは、むし統一における貴重な特殊アタッカー。何より、あの大きく美しい羽が素晴らしい。
まさに太陽のような存在だ。
……ん?
ちょっと待て。
このメラルバ、何だか色が違わない?
通常とは異なる、金色がかった明るい色彩。頭部の角も、見慣れた色とは違っている。
俺は思わず息を止めた。
いや、そんな。
まさか。
「……いろちがい?」
「メラ?」
目が合った。
メラルバが、小さく首を傾げる。
……色違い。
色違いメラルバだ。
うおおおおお!!
色違いメラルバじゃねぇかぁぁぁ!!
……と、心の中で叫んだ。
今回は、ちゃんと我慢したのである。
偉いぞ、俺。
成長したな、俺。
「……ムーちゃん」
「グソ?」
「……いろちがい」
「グソッ!」
ムーちゃんが、すかさず俺の口元へ前脚を伸ばした。
待って。
今回はまだ叫んでないから。
先回りしないでいただけません?
♦
「こんにちは」
「……メラ」
俺が声をかけると、メラルバは小さく返事をした。
逃げる様子はないけれど、近づいてくるわけでもない。
ふむ。
なかなか大人しい子らしい。
ルージュみたいに飛びついてくるわけでも、ストライクみたいに勝負を挑んでくるわけでもない。
同じむしタイプでも、本当に性格はいろいろだな。
「師匠、あのこ……」
「ほっほっほ! 気になるんじゃな?」
「うん!」
「ならば、少し様子を見てみるとよいぞい」
師匠の言葉に頷き、俺は岩陰から離れた場所にしゃがみ込んだ。
メラルバはしばらく俺たちを眺めていたが、やがて身体を丸め、日陰で休み始めた。
……かわいい。
これはいかん。
連れて帰りたい欲求が、ものすごい勢いで高まっております。
とはいえ、出会ったばかりだ。
いきなりボールを投げるわけにもいかないし、この子にだって生活がある。
そう思って立ち上がろうとした、そのときだった。
ガラガラッ!
少し離れた岩場で、大きな音が響いた。
「……ん?」
振り返ると、斜面から小さな岩が崩れ落ちている。
その直後。
「ドロォッ!?」
野生のサイドンが、岩陰から飛び出してきた。
落石の音に驚いたらしい。大きな身体を揺らしながら、こちらへ向かって走ってくる。
……おいおい。
ちょっと待って。
あのサイズのポケモンが全力疾走してるんですが!?
しかも、その進路上には一匹のアブリーがいた。
「アブッ!?」
アブリーが慌てて飛び上がろうとする。
しかし、岩場を吹き抜けた風に煽られ、体勢を崩してしまった。
まずい!
「師匠!」
「うむ!」
師匠が動こうとした、その瞬間。
「メラッ!!」
俺たちより先に飛び出したのは、メラルバだった。
小さな身体でアブリーの前へ回り込み、頭の角から炎を放つ。
ボッ!
「ドロッ!?」
突然の炎に驚き、サイドンがわずかに足を緩めた。
だが、勢いは止まらない。
大きな身体が、そのまま二匹へ迫ってくる。
……危ない!
「ムーちゃん! 右へそらして!」
「グソッ!」
ムーちゃんが駆け出した。
サイドンの正面から力任せに止めるのではなく、斜め横へ回り込み、厚い装甲で進路を遮る。
突然現れた大きな障害物を見て、サイドンが身体を捻った。
そのまま勢いを逃がすように横へ逸れ、少し離れた砂地で足を止める。
サイドンは荒い息をつきながら振り返ったが、マスタード師匠がゆっくりと距離を取らせると、それ以上近づいてくることはなかった。
……ふぅ。
危なかった。
アブリーはすでに空へ逃げている。ムーちゃんも、メラルバも、怪我はなさそうだ。
よかった。
本当に、よかった。
俺はようやく息を吐き、メラルバへ目を向けた。
「……メラルバ」
「メラ?」
小さな身体。
控えめな鳴き声。
それなのに、アブリーが危険にさらされた瞬間、迷わず飛び出した。
……勇敢すぎない?
いや、格好よかったけど!
あのサイドン相手に飛び出すとか、相当な勇気が必要だっただろう。
でも、もしムーちゃんが間に合わなかったら。
そう考えると、少し怖くなった。
「……すごかったね」
「メラ?」
「あのアブリーを、たすけたかったんだよね?」
メラルバは一度だけアブリーが飛び去った方を見て、小さく鳴いた。
その姿を見て、俺は自然と笑みを浮かべた。
「ゆうかんだね。すっごくかっこよかったよ」
「……メラ」
メラルバが、少しだけ頭を下げる。
照れているのだろうか。
……かわいいな、おい。
「でも、ちょっとしんぱいしたよ。あんなおおきなサイドンだったから」
俺がそう言うと、メラルバは自分の身体を見下ろした。
「こんどは、俺たちにもたよってね。みんなでたすけたほうが、きっとあんぜんだから」
「メラ……」
メラルバは俺を見つめ、それからムーちゃんへ視線を向けた。
「グソッ!」
ムーちゃんが優しく鳴く。
メラルバも、小さく返事をした。
俺はその様子を見ながら、先日のフェリヤとの出来事を思い出していた。
あのときも、フェリヤには何か理由があったのかもしれない。
けれど、俺はそれを考える前に声を荒らげてしまった。
今回のメラルバだって、どうしてあそこまで必死になったのか、本当のところはわからない。
ただ、アブリーを助けようとしていたことは、行動から伝わってきた。
だからこそ、その勇気をちゃんと認めたかった。
危険だったことを伝えるのは、それからでも遅くない。
……うん。
少しは、前よりマシになったかな。
♦
それから数日。
俺たちは修行の合間に、何度かメラルバのいる岩場を訪れるようになった。
もちろん、師匠たちに付き添ってもらいながらである。
最初は少し離れてこちらを眺めていたメラルバも、次第に俺たちの姿を覚えてくれたらしい。
しずくが水泡を揺らせば、不思議そうに覗き込む。
ルージュが近づけば、触角を揺らして様子をうかがう。
そしてストライクが鎌の練習を始めると、なぜか自分も小さな炎を出して張り合おうとする。
……いや。
そこは張り合わなくていいから。
ストライクの修行に参加するには、まだちょっと早いと思いますよ?
どうやら、この子は普段こそ大人しいものの、かなり負けず嫌いなところがあるらしい。
自分より大きな相手を見ても、簡単には引き下がらない。
それでいて、誰かが困っていると放っておけない。
控えめだけど、芯が強い。
……好きだなぁ、こういう子。
そして、ある日の帰り際。
「……メラ!」
メラルバが、俺たちの後ろをついてきた。
俺が立ち止まると、メラルバも止まる。
再び歩き出すと、また小さな足音がついてくる。
……おや?
これは、もしかして。
「メラルバ、俺たちといっしょに来たいの?」
「メラッ!」
メラルバが元気よく鳴いた。
しかし、すぐに捕まえるわけにはいかない。
俺はもう一度しゃがみ込み、メラルバと目線を合わせた。
「いっしょに来たら、ここをはなれることになるけど……それでもいい?」
メラルバは一度だけ岩場を振り返った。
それから、俺たちの方へ歩いてくる。
「メラッ!」
小さな身体が、俺の足元で止まった。
……そっか。
自分で決めたんだね。
「師匠!」
「ほっほっほ! また新しい出会いがあったようじゃのう!」
「うん! でも、まずママンたちにきいてみる!」
「うむ! それがよい!」
俺はさっそくママンとパパンへ連絡した。
新しい仲間を迎えたいこと。
ちゃんと世話をすること。
道場でも、自分の仕事を今まで以上に頑張ること。
そうした約束をしたうえで、無事に許可をもらえた。
……なお、ママンからは。
『リン。本当にこれで六匹目なのね?』
「うん!」
『しばらく、新しい子を増やしたりしないわよね?』
「……たぶん!」
『リン?』
「はい! いまは、むしとういつのろっぴきでがんばります!」
……危なかった。
不用意な発言で、母親の逆鱗に触れるところだった。
やはりママンとの交渉は高難易度である。
♦
「……さて!」
俺は鞄から、一つのボールを取り出した。
赤と黄色を基調にした、特徴的なデザイン。
ハイドと一緒にウッウロボを使って用意した、特別なガンテツボール。
そう。レベルボールである!
色違いメラルバの金色がかった身体に、小さな炎。そして、いつかウルガモスへ進化したときの姿。
そのすべてに、この配色がよく似合う。
完璧。
実に素晴らしい。
……まあ、捕獲性能より見た目を優先してるんですけどね。
オシャボ厨なので、そこは譲れないのである。
「メラルバ!」
「メラ?」
「このボールで、いっしょにいこう!」
俺がボールを見せると、メラルバは興味深そうに顔を近づけた。
そして、ムーちゃんたちを順番に見渡す。
「グソッ!」
「シズッ!」
「アブリッ!」
「ストライッ!」
四匹が、それぞれ元気よく返事をした。
メラルバは嬉しそうに身体を弾ませ、もう一度こちらを向いた。
「メラッ!」
「……よし!」
俺は少し距離を取り、レベルボールを構えた。
「よろしくね、メラルバ!」
そっと投げたボールが、メラルバの身体に触れる。
光が弾け、小さな身体がボールの中へ吸い込まれた。
草の上に落ちたボールが、一度だけ揺れる。
そして。
カチッ。
「……あ」
俺は、その場に立ち尽くした。
ゆっくりと近づき、ボールを拾い上げる。
手のひらに収まった、小さなレベルボール。
その中には、六匹目の仲間がいる。
色違いメラルバ。
これで、六匹。
……六匹、揃ったんだ。
ふと、第二鉱山で初めてムーちゃんを見つけた日のことを思い出した。
あのときの俺は、まだ四歳だった。
珍しい色のコソクムシを見つけて、大声で叫んで、あっという間に逃げられて。
それでも諦められなくて、何度も何度も鉱山へ通った。
あれから五年。
ムーちゃんと出会い、しずくと出会い、ルージュと出会った。
カンムリ雪原ではフェリヤを保護し、ヨロイ島ではストライクと巡り会った。
そして今日。
この小さなメラルバが、自分から俺たちの仲間になることを選んでくれた。
……ああ。
本当に、ここまで来たんだな。
「……やった」
小さく呟く。
そして、次の瞬間。
「やったああああ!! むし統一、ついに六匹揃ったぞぉぉぉ!!」
「グソォッ!」
「シズッ!」
「アブリッ!」
「ストライッ!」
みんなが一斉に鳴いた。
うおおおお!!
最高!!
ついに六匹!!
五年間追いかけてきた、色違いむしタイプ統一パーティー!
それが今、現実になったのである!
……いやぁ。
もう感無量っすわ。
これには前世の俺も、きっと大喜びしているに違いない。
まあ、本人なんですけどね!
♦
その日の夜。
俺はハイドへ、六匹目を迎えたことを報告していた。
「リン! ついに六匹揃ったんだって!?」
「うん!」
「おめでとう! すごいじゃないか!」
「ありがと!」
ハイドは自分のことのように喜んでくれた。
ウッウロボの研究を手伝ってもらったり、ボールを一緒に作ったり。考えてみれば、彼にもずいぶんお世話になっている。
「それで、次は何タイプを集めるの?」
「……つぎ?」
「うん! 別のタイプ統一も面白そうじゃない?」
俺は少し考えてから、首を横へ振った。
「いまは、むし統一をきわめるよ!」
「……あはは。そこはブレないんだね」
「もちろん!」
全員が色違い。
全員がむしタイプ。
そして、ボールにまでこだわる。
この三つは、俺の大切なロマンである。
簡単に変えるつもりはない。
「じゃあ、今度六匹全員のボールを見せてよ!」
「いいよ!」
「特に、マスターボール入りのシズクモ!」
「しずく、かわいいよ!」
「……いや、今でもマスターボールをシズクモに使ったのが信じられないんだけどね」
おい、ハイド。
まだ言うか。
マスボ入り色違いシズクモは、俺の誇りなんですが!?
まったく。
オシャボのロマンがわからんやつめ。
♦
ハイドと別れたあと、俺は道場の縁側に腰を下ろした。
夕食を終えたポケモンたちが、それぞれ好きなように過ごしている。
ムーちゃんは、いつものようにしずくを前脚へ乗せていた。大きな身体へ小さなしずくが寄りかかる姿は、何度見ても微笑ましい。
ルージュは花壇の周りを飛び回り、時折メラルバへ近づいては、一緒に遊ぼうと誘っている。
ところが、メラルバは少し困ったように身体を揺らすばかり。
……うん。
ルージュさん、初日から距離感が近すぎません?
その隣では、ストライクがムーちゃんへ鎌を構えてみせていた。
どうやら、もう一度勝負がしたいらしい。
いや、君もか。
ムーちゃん、今しずくを寝かしつけてるから。
もうちょっと待ってあげて?
そして、少し離れた場所にはフェリヤがいた。
相変わらず清潔な場所を選び、静かに休んでいる。
メラルバが近くを通りかかると、少しだけ身体を引いた。けれど、逃げることはなく、新しい仲間の姿をじっと見つめている。
メラルバも、一度だけフェリヤへ顔を向けた。
「メラ?」
「……フェロ」
小さな鳴き声が返る。
それだけだった。
でも、何となく嬉しかった。
俺は縁側に座ったまま、六匹の姿を眺めた。
最初の相棒、ムーちゃん。
甘えん坊のしずく。
いたずら好きのルージュ。
静かで慎重なフェリヤ。
勝負が大好きなストライク。
そして、小さな身体に大きな勇気を持ったメラルバ。
全員、色違い。
全員、むしタイプ。
それなのに、性格は見事なくらいバラバラだ。
……いやぁ。
これ、まとめるの大変そうだな。
俺は思わず笑ってしまった。
六匹のポケモンが揃えば、すぐに夢のパーティーが完成すると思っていた。
でも、実際にはそんなに簡単な話じゃない。
みんな、それぞれ違う考えを持っている。
好きなことも、苦手なことも、目指したい強さだって違うのだろう。
それを全部同じにする必要はない。
ただ、いつか。
それぞれの気持ちを大切にしながら、一緒に強くなれたらいいなと思う。
「……みんな!」
俺が声をかけると、ムーちゃんたちがこちらを向いた。
フェリヤも、一瞬だけ顔を上げる。
「これからも、よろしくな!」
「グソッ!」
「シズッ!」
「アブリッ!」
「ストライッ!」
「メラッ!」
五匹の元気な鳴き声が、夕暮れの道場へ響いた。
フェリヤは返事をしなかったけれど、静かにこちらを見ていた。
俺はそれ以上、何も求めなかった。
ああ、いいなぁ。
こうしてみんなと過ごしている時間が、俺は本当に好きだ。
五年前、第二鉱山で小さなコソクムシを追いかけていた俺には、想像もできなかった光景だった。
いつか、この六匹と一緒にガラル地方を旅してみたい。
ジムチャレンジへ挑んで、強いトレーナーたちと戦って。
そして、みんなが望む形で、まだ見たことのない景色を見られたら。
……うん。
今から楽しみでしょうがない。
こうして、九歳の俺は、ついに夢だった六匹の色違いむしポケモンを迎えたのである。
もっとも。
六匹揃ったからといって、六匹がまとまるとは限らない。
その当たり前の事実を、俺が身をもって思い知るのは、もう少し先の話だった。
今日もお読みいただき、ありがとうございます。
よかったら、感想、評価、お気に入りいただけますと嬉しいです。
感想も一つ一つ大切に見させていただいております。
返せるときに全員返していきますので、軽率に感想いただけますと幸いです。