という事で初投稿です。
食堂が騒がしい、各々友達と食べたり、カップルで食べたり、と。多様ではあるが、主に英雄が座っている席付近ではより一層騒がしくなっている。
ガツガツガツガツガツガツガツ….
英雄は、自分で持ってきたお婆ちゃん手作り弁当、それも5段を食べていた。同じ席には政近と他の男子生徒が居た。一人は、丸山 毅。坊主頭の少年だ。そして清宮 光瑠。若干色素が薄くて茶色がかった髪と瞳を持つ、中性的な美少年だ。彼等は、中等部時代からの政近の友人でもあり、交流を重ねるに連れて英雄とも仲良くなった。
「英雄は相変わらず食うなぁ…」
「しかも弁当だろ?良いよなぁ…」
「優しいお祖母さんなんだね」
見る見る内に、弁当の中身が一段ずつ消えていく。栄養バランスはしっかりとしており、肉、野菜、煮物、果物、米、と多彩なモノばかりだった。
「ん〜、美味いなぁ〜!」
三人は自分達が頼んだ料理に手をつけようとするが、英雄の食いっぷりに目を奪われる。政近が頼んだ料理は『麻婆ラーメン』という、もう見るからに辛そうなものだった。しかし、それよりも英雄の方が注目の的だった。
「毎日見てるのに、見慣れないな…」
「そうだなぁ…」
「だね…」
相変わらず見慣れないソレを見ながら三人も手をつける。すると食堂の入り口がざわついた。そこにはちょうど三人の少女が食堂に入ってくるところだった。
「お、生徒会メンバーだ。会長と副会長は……いないのか。それでも、三人もそろってるとなんかすっげぇなぁ」
その姿を見て毅が感嘆の声を漏らす。それと同様の反応が、食堂の各所で起こっていた。憧れ、羨望の眼差しが、三人に集中していた。
「ホント、すごい美人姉妹だよね。九条さんって」
美しい銀髪で、ひときわ目立つアリサと、アリサよりも少し小さな少女を見て、光瑠がしみじみと言う。
その少女は二年の生徒会書記で、名を『マリヤ・ミハイロヴナ・九条』愛称を、マーシャ、といい、アリサの一つ上の実の姉なのだ。そんなマーシャはと言うと、胸とケツがデカい、いや、大きい。アリサも十分素敵なボディだがマリヤも男を堕とすのに時間が掛からないボディだ。この暴食バカを除いて。
「ん?なんだ、あいつらか…」
英雄が箸を止めて顔を上げた、騒がしい方を見たがいつもの光景だったのでまた食べ始めた。
「お〜ま〜え〜なぁ〜…?」
毅が英雄を睨んでいる。
「アーリャ姫の隣の席だからって調子乗るなよ!?今のお前の発言は全学年の男子生徒を敵に回したんだからな!?」
醜い嫉妬だった。
「なんだよ急にメシ冷めちまうぞ」
「メシよりこっちの方が重要だ!お前が羨ましくて、妬ましくて、堪らないんだよ!」
光瑠と政近はまた始まった、と苦笑しながら料理に手をつけた。
「なんだよ、そんなスキならオレが言ってやろうか?」
「毅じゃ無理だろ」
残酷な後押しをした政近。政近は知っている。これは毅以外でも無理だと。
「お前だって同罪なんだからな!?愛称で呼んでるし!!席近いし!!」
「ただの八つ当たりだろ、それ…」
「そう言えば、英雄は愛称で呼ばないよね…どうして?」
光瑠が英雄に聞いていた。たしかに隣の席で、親しい仲だし、呼ばないのは気になってたところだ。
「んん?だって九条は九条だろ?」
「いや、それなら二人並んだ時区別つかないだろ」
「だって姉ちゃんの方は九条の姉ちゃんって呼んでるし」
「…そのままなんだ」
まぁ別に深い理由があるワケでもなくただ単に英雄の中ではアリサの事を「九条」と固定してあるのだろう。
「はぁ…ホントに羨ましい限りだぜ」
「だから言ってんじゃねぇか、九条に言ってやろうか、て」
「いや、逆に完璧超人過ぎて近寄り難くて…」
「オメェ変なトコ腑抜けてんな」
毅はううっ、と嗚咽を漏らした。
「…でもすごいよね、同じ日に転入して来たんでしょ?」
「一方は完璧美人で、もう一方は……ちんちくりん」
「オメェぶっ飛ばしてやろうか?」
三人があははっ、と笑っている。
去年、突如彗星の如く現れた美貌の転入生。そしてクソガキ転入生。当初は学園の的だった。そもそも征嶺学園では、転入自体が非常に珍しい。理由は単純で、転入試験の難易度が恐ろしく高いのだ。
そんな超高難易度の転入試験を、二人は突破した。これは本当にすごい事であり、アリサの方は一学期の中間試験でも学年一位を獲得したのだ。対する英雄は下から数えて1番目という、転入生二人がトップとワーストを獲ったのだ。出来る方と、出来ない方、正反対の二人が転入して来た。
そして当初のアリサは常に一線を引いた態度を保ち、他者との交流をしようとしなかった。一方、英雄はというと、皆からも気軽に話しかけられて、すぐに打ち解けあった。交流だって深く、広い。ここまで正反対な二人だった。
「ふう、食った食ったー! さて、と。ボランティアにでも行ってこよっかなーっと」
「速っ! ちゃんと噛んでんのかよ!?」
食べる速度が速いと指摘されたが、毎度のことである。それに、しっかりと咀嚼しているし、ちゃんと味わっている。今、英雄の口から「ボランティア」と出たが、それは生徒達からの頼まれ事である。校内清掃であったり、書類の整理であったり、多岐に渡る。
「お前ホントお人好しだよなぁ…疲れねぇのかよ」
「こいつはバカだからそんな考え無いんだろ」
「無理してないかい?」
三人の反応はそれぞれだった。英雄の人柄の良さか、彼は困っている生徒が居たら助ける。なぜ?一度本人に聞いてみたら、「ばあちゃんが、困ってる人が居たら助けなさい」って、と言っていた。英雄は祖母の教えを大切に守り、尊敬している事が伺える。「オマケにテストの評価が上がるかもしれない」とも言っていたが、そんな事は断じてない。
「政近君、五味君。こちらの席、よろしいでしょうか?」
マリヤは居ない、残った二人がこちらに来た。アリサ、と『周防 有希』。腰まである艶やかな長い黒髪と、小柄ながらも程よく女性らしさを主張する均整のとれた体躯。生徒会広報を務める一年生であり、元華族の家柄で、代々外交官を担ってきた周防家の長女であり、お嬢様である。
また、彼女も学園の二大美姫と呼ばれており、アリサが『孤高のお姫様』と呼ばれるならば、こちらは『深窓のおひい様』。
「ん?おお、周防か。いいぞ、オレもう食べ終わったから行くけど」
「おいおい、折角来て下さったんだから、もう少し居ろよっ!」
毅が英雄をガシッと席に座らせた。
「ああ、まあいいけど、お前らもいいよな?」
「あ、お、おお、いいとも」
「うん、いいよ」
「オメェ何緊張してんだよ」
笑みを浮かべながら四人にお礼を言うと、有希はテーブルを回り込んで政近の隣に座った。アリサも座った、英雄の隣に。
「もう食べ終えたの?」
「ん?おう、これからボランティア行こうと思って」
「…ボランティアって、また頼まれ事でしょ。飽きないわね」
有希も政近と同じく麻婆ラーメンを頼んでいた。皆は意外そうな顔をしていた。お嬢様である有希が、いかにもB級グルメといった感じの量を食すのが。
「周防さんでも…そういう料理って食べるんですね」
(ダメだアイツ、緊張してらぁ)
英雄が心の中で呟いた。さっきまでの威勢はどうした毅、と。有希はヘアゴムで髪を首の後ろでまとめながら微苦笑を浮かべた。
「(…さっきまでと全然違ぇよ、アイツ)」
「(…そうなの?)」
英雄とアリサが小さな声で話していた。毅は先程まで言っていた、「あの三人の中だったら、周防さんが一番話しかけやすい」と。それがこのザマだ。
「(そんなもんか?)」
「(知らないわよ)」
有希は丁寧にいただきます、をすると上品にラーメンを啜った。美味しそうだ、一通り味わうと、まだまだ辛さが足りないからラー油が欲しいとかなんとか言っていた。それに対して政近がツッコんでいた。とても仲がよろしいようだ。
「やっぱ、幼馴染なだけあって仲良いなぁ、オメェ達」
「え?幼馴染なの?」
英雄が言った一言に、アリサは反応した。
「ええ、わたくしたち、幼馴染なんです。幼稚園からずっと同じ学校なんですよ?残念ながら、クラスは一度も同じになったことがないのですけれど」
「あ、そうだったんか。オレもさすがにそこまでは知らなかったけど」
納得だ。確かにそれなら仲が良いのも頷ける。
「…あなたは、どう、なの? その周防さんと」
「オレ? うーん、政近の友達って感じだったからなぁ。友達、かな?」
確かに、そうですわね。と有希が言った。アリサは少しだけムッとした。する必要は無いのに。今度は政近が聞いてみた。
「そういう二人は仲がいいのか?」
有希が穏やかな、そして優しい笑みを浮かべながら答えた。
「仲良くしようとしている最中、でしょうか?少なくともわたくしは
アリサさんとお友達になりたいと思っていますけれど」
アリサは少し困ったように視線を彷徨わせた。
「…私と友達になっても、楽しくないと思うわ」
「ネガティブな事言うなー、オメェ」
「…う、うるさい」
「つまり、アリサさんはわたくしとお友達になること自体は嫌ではないということですよね?」
「え………………まぁ、そう、ね?」
「素直じゃねぇなぁ」
「だ、黙ってなさいよ!」
毅に光瑠は思った。こいつ、凄いなと。アリサは他とは一線引いているがそんな事物ともせずにズカズカと踏み荒らしているみたいだ。でも、アリサの表情は本気で嫌っ、という顔では無い。照れ隠しだ。
「ではでは、お友達になりましょう!せっかく同じ生徒会、同じ一年生なんですもの。それに、五味君や政近君のお話もしたいですし」
「オレの?」
「俺…?」
二人は訝しんだ。
「よろしければ、アーリャさんとお呼びしてもいいですか?マーシャ先輩や政近君が呼んでいるのを聞いてて、素敵な呼び方だと思っていたんです!」
「え、ええ…それは、構わないけれど」
「ふふっ、嬉しいです。改めてよろしくお願いしますね?アーリャさん。わたくしのことは是非、有希とお呼びください」
「ええ……よろしく、有希さん」
今ここに、新たな友人関係が芽生えた。
「よかったな、友達が出来て」
「…さっきから一言うるさいわね、あなた」
二人のやり取りを観察していて、有希は口を開いた。
「お二人は、仲がよろしいのですか?」
「え……」
アリサの表情が強張った。まさか、そんな事聞かれるとは思わなかった。なんと答えたらいい?
「おう、めちゃくちゃな」
「あら、そうなんですね。噂に寄ると、いつも五味君が叱られてるってお聞きしたのですが」
「まぁそいつは間違ってねぇよ。毎日怒られてる」
「あ、それは本当なんですね」
「あなたが悪いんじゃない、教科書持って来ないし、何度教えたって覚えないし」
その光景を見て有希はクスッ、と笑ってこう言った。
「ふふっ、まるで親子のようですね」
「なっ、親子…!?」
アリサの顔が、真っ赤に染まった。まるで茹でタコのように。
政近もクスッと笑っていた。
「べ、別にそんなんじゃないわよ! ただ、いつも世話が焼けて、バカな奴よ!ええ、そうよ!」
両腕を組んで、顔を赤くしながら満更でもない顔で否定している。圧倒的なツンデレだった。毅と光瑠は遠い目をしていた、もうどっか行こうかな、と。
「ではでは、五味君はアーリャさんの事をどう思っているのですか?」
有希が英雄に質問した。これは、と思いアリサと政近は耳を澄ませて聞いていた。確かに、コイツが普段どんな思考をして、アリサをどう思っているのか知りたいのだ。
「どう…うーん、なんだろうなぁ」
うーん、うーん、と唸り続ける。アリサは気が気ではなかった。自分は普段どう思われているのだろうか?好かれている?嫌われている?後者は無いだろう、しかし実際のところどう思っているのか、とても気になる。
「まぁ、そうだなぁ…頑張り屋さん、て感じかなぁ。なんもかんも手は抜かねぇし」
「……」
「……頑張り屋、ですか」
少しだけ微妙な空気になった。かなり意外な、斜め上からの攻撃に驚いた。コイツの事だからデリカシーの無い一言でも言うのかな、とも思ったがそうではないらしい。
「おう。コイツが運動も勉強も出来るんはみんな知ってるだろ?それにさ、先生達からの信頼も厚い。コレって当たり前にやろうと思っても中々出来る事じゃねぇだろ?」
英雄が急にアリサの印象というか、どう思っているのかを語り始めた。その顔に恥ずかしさなんてなく、ただただ純粋に、尊敬している目だった。
「オレも一応頑張ってるんだけどなぁ…同じ勉強のやり方もやってみたし、アドバイスは色々されてきた。でも、オレは中々成績が伸びなくて、さ。こういうの見ると純粋に思うんだ。コイツすげーや、って。…だから、どんな事にも手を抜かねぇでやる、そういうところはめちゃくちゃ頑張ってんだなぁって、オレは思ってるさ」
変な空気になっていた。あの英雄から、あの五味英雄からこんな真っ当な言葉が話されるだなんて思いもよらなかった。アリサも、有希も、政近も、毅も、光瑠もぽかーん、と口が開いていた。
「…ん? なんかシーンとしてんな」
「…おまえホント恥ずかし気もなく言えるよな」
政近は純粋にコイツすげぇな、と思った。毅と光瑠は遠い目をしてトレイを持って同時に立ち上がった。
「…お前やっぱすげーわ」
「お先に」
二人は戦線離脱した。トコトコ、と早歩きでどこかに行った。英雄は二人の姿を見て「…?」と頭にハテナを浮かべていた。そんな横顔を見ていたアリサは褒められた事と相まって内心は嬉しいのと、恥ずかしいのとでぐちゃぐちゃになっていた。
「〜〜〜〜ッ!///////」
口がぱくぱくと開いている。金魚だ。お姫様じゃない、金魚だ。政近もその様子を見て口が緩む。嬉しいのと恥ずかしいのとで葛藤しているのだろう。
「…まぁ、大胆ですね!」
有希の固まっていた表情が、ぱぁ…!と明るくなっていた。それは好奇心旺盛の目で、さらに根掘り葉掘り英雄に質問していた。
アリサは顔を真っ赤にして俯いていた。そしてロシア語で、小さな声で誰にも聴き取れないくらいの声量で呟いた。
【
ツンデレだ。政近には聞こえていた。アーリャのこの言葉、本当は嬉しいんだろう、ただの照れ隠しだ。政近は自然とにへら、と笑みが溢れた。やっぱ嬉しいんじゃないっすかぁ、アーリャさん。
「ところで、五味君、政近君。
急に話がすり替わった。英雄と政近は「げぇ…」とした顔になった。
「だから言ってんじゃねぇか。そんな柄じゃねぇってよ」
「それに、この前新しい役員いれたって言ってなかったか?」
二人とも消極的だった。
「入れたのですが…やはり、長続きしなくて…」
新生徒会が発足したのは六月の頭。約一ヶ月前だ。
この学園の生徒会は少し特殊で、生徒会長と副会長がペアで立候補し、他の役員は当選した会長と副会長が任命する形式になっている。現状決まっているのは会長と副会長の他に書記のマリヤ、会計のアリサ、広報の有希。計五人だけで、庶務が一人もいない。
「そのメンツにオレが加わるの、なんかおかしくねぇか?成績が崖っぷちなんはみんな知ってるだろ?」
「…ま、まあそこは人望でなんとか…!」
(取り繕うのに必死だな…)
副会長と書記のマリヤは二年生の二大美女、アリサと有希は一年生の二大美姫。……………そこに
アリサは学年一の才女。そして、有希は
もう一度言う、政近は良いにしても
「ほ、ほら!五味君は成績だけはあまり良くありませんが、人望は厚いじゃないですか!ご友人も多いですし、先輩方にも気に入られてますし、それに人助けされてるじゃないですか!」
「…いやまぁそうだけんどさぁ」
事実、交友関係は広く、深い。どんな人とでも仲良くなれて、どんな人とも話せる性格をしている。先輩方からは「後輩適正が高く、弟みたい…」と評価されている。祖母からの教えもあり、人助けを躊躇わない。学園で助けられて来た生徒は多数いる。
「まぁ偶に会長と副会長からも頼まれ事されるけどさぁ」
「だったら尚更いいじゃありませんか!」
有希の瞳がキラキラと光っている。確かに英雄は偶に生徒会室へと入り浸っている。どうやら彼の特権らしく、書類整理を手伝わされたり、生徒会室の清掃も頼まれたり、と。それだけでなく、普通に生徒会室で遊んでいる。(舐めてる)
「政近君も問題ありませんね。なにしろ、
「え?そうなのか?」
「そうだったの?」
「はぁ…」
有希の発言によって二人から視線を浴びる。政近は嫌そうに渋面を作った。
「そうですよ?二年前の中等部生徒会は、わたくしが会長で政近君が副会長だったんです」
「へぇー」
「ふーん」
「なんだよその興味なさそうな反応…昔の話だよ。もう二度とやりたくねぇ」
心底嫌そうな顔をしていた。
「じゃあ政近でいいじゃん」
「政近君だけでなく、五味君もなんとか!」
「へいへい、考えとくよー」
「本気ですからね!」
「ま、オレが入る時はオメェも道連れだな」
「絶っっっ対に嫌だ」
食堂を出て少ししたところで、有希と別れた。ぺこりと綺麗なお辞儀をして去るその背に、ヒラヒラと手を振る二人。
「はぁ…オレが生徒会に入ったら、なんか色々言われそうだけどな」
「意外とそうでもないんじゃないか?だって人望はあるだろ?」
「…まぁそこはそうかもだけどさ」
「否定はしないんかい」
「否定したら良いとこ無くなっちまうだろ?」
あはは、と二人が笑っている様子をアリサは見ていた。英雄と、周防有希。意外にも親しそうだった。いや、まあ英雄は誰とでも親しくなれる人柄で、それは周防有希もそうだ。丁寧か、大雑把か、その違いだけに過ぎない。…なんか、むかつく。
「…誰とでも仲良くなれるのね」
ぶっきらぼうに言い放った。ツン、だ。ちょっと妬いてるかもしれない。政近はニヤニヤしていた。あ、有希と話してたからだ、と。
「まぁな。政近の友達って紹介だったけど、今となっちゃオレとも友達みてぇなものか」
「…ふぅん、友達、ねぇ」
「ああ、そうさ」
「…」
じとー、とした目で英雄を見る。気づいていない両手を後頭部に組んで有希が去った方を見ている。
「さぞかし、多いんでしょうね。
「そうだなぁ。友達は多いかな、同級生でも上級生でも」
「羨ましいくらい人が集まるよな?」
英雄の人柄の良さとキャラにあてられて、人がどんどんと周りによってくる。頭は悪いが、人柄だけは良いんだ。
「ま、特別に関わりがあるのはオメェ達だろうな!席も近いし、一緒に居る事多いし!」
「…だな」
「…!」
アリサの目が見開かれた。友達は多い、仲も良い…しかし、
「…そう、
(…お?)
政近は気づいた。特別の関わりがあるのは、自分達だと言った。それは特別な女友達=アリサ、という意味にも捉えられる。
(ははーん?アーリャのヤツ、特別って言ってもらえて嬉しいんだ…)
見るからに上機嫌な顔をしている。
「そうね、私達は特別よね」
それだけを言い残すと歩み始めた。有希が去って行った方向へと。もう何も言わない、歩みを止めない。
「…あれ、行っちまった」
「な。なんでだろうな」
二人はアリサが去っていく背中を見ているだけだった。二人には見えていないだろう。アリサは嬉しそうな顔で歩いている、天使のような笑みで。
「さて、俺は教室に戻ろうかな」
「おう、じゃオレは花壇の手入れでもしてこよっかな。昨日頼まれてたし」
二人もその場で別れた。
英雄のボランティアという名のなんでもお手伝い。内申点を上げるため?いや、違う。じゃあ、好感度を上げるため?それも違う。…ただ、教えを守り
、楽しいからやってるだけなんだ。…テストの点数が上がるかもしれないという淡くも醜い希望を抱いているが。
あ、作者的には英雄のイメージCVは『田村睦心』さんです。