呪われしヒーローに花束を   作:しらたまあんみつ

5 / 5
第五話 回って廻って周って

 

 

 

カン、と鋭く拍子木が耳を打った。

 

 

夕焼けに、朱の鳥居が鮮やかに浮かび上がる。幾重にも続く幻想的な風景の中を、二人の呪術師が歩いていた。

…とはいえ、その表情はあまりに対照的だが。

「冥さん、これ何個目でしたっけ…?」

ハーフマント姿の高専生–—燦は、げんなりと肩を落とした。特徴的な赤髪がさらりと揺れ、夕陽を反射する。

対して、ネクタイを締めた黒ずくめの女–—冥冥は、くつりと喉を鳴らした。

「まだ八十九基目だよ」

「うええ…全部で何個あるんだよこの鳥居…」

「上から見た限り、千はくだらないだろうね」

「いくら綺麗な風景でも、見続けると飽きるってことを今日わたしは学習しましたよ」

「なるほど真理だね」

「冥さんちゃんと聞いてます?」

コツン、コツンと、ブーツが石畳を叩く。

 

 

外から見れば、この空間はきっとひどく美しいのだろう。けれど、いざ内側に閉じ込められてみれば、そんな感想に浸る余裕などどこにもない。

鳥居をくぐるたび、体が少しずつ重くなる。肩に鉛でも括りつけられているような感覚に、燦は小さく息を吐く。

 

カンカン、と拍子木が鳴った。

 

 

 

数時間前まで、二人はとある神社にいた。

郊外にある、少し古びた神社。だが地元ではそこそこ名の知れた場所らしい。

そんな神社の境内で、冥冥が口にした言葉に、燦は軽く瞬きをした。

「…神隠し、ですか?」

「ああ。ここで遊んでいた子供、参拝客、巫女…被害者の層は様々だが、一つ共通点がある」

「じゃあ、その共通点が呪いの発動条件ってことですね」

「その通り」

言って、冥冥は神社の入り口を指差した。

 

血塗られたように赤い鳥居を見て、燦はぽんと手を打つ。

「なるほど、鳥居。神域を隔てる境界ですもんね。おおかた、『鳥居を通る』っていうのが条件ですか」

「察しが良くて助かるよ」

 

そう、鳥居。神社の象徴であり、神域と現世を隔てる境界。川や水と同じように、境界を越えるという行為には呪術的な意味が宿る。鳥居がトリガー、というのは十分納得できる。

 

(けど、それなら…)

「それにしては、行方不明者が少なすぎやしませんか? 鳥居なんて、たくさんの人が通るでしょう」

「ごもっとも。実は、もう一つ共通点があるんだ」

冥冥は腕時計をちらりと見た。

「…時間?」

「そうだよ。そろそろかな」

橙色の光が、ゆっくりと薄暗さを増していく。

 

 

それに目を細めて、冥冥は淡々と言った。

「逢魔時。十七時から十九時のあいだに、あの鳥居を外から内へくぐった者だけが『神隠し』に遭っている」

「時刻と境界を利用した術式、ですか。問題は、どこに連れて行かれるのかってことですね」

「十中八九、呪霊の領域内だろうね」

さらりと言われて、燦は顔を引き攣らせた。

「あの、わたし一級任務って聞いてたんですけど」

「おや、君の聞いた通りだろう?」

「領域を使う呪霊が一級なんてことありますか? 縛り込みだとしても」

「大丈夫。一級の私と準一級の君がいれば問題ないよ」

死人が出ているわけじゃないんだよ、とこれまた軽く言う。

 

燦は半ば諦めたように鳥居を仰いだ。

(あいっかわらず人手不足というか、闇が深いというか……)

その時だった。

 

ゴーン、とどこからともなく鐘が鳴り響く。

同時に、鳥居がわずかに呪いの気配を纏った。

人と呪いが逢う時が、始まった。

 

二人は顔を見合わせる。そうして、どちらともなく、鳥居の内側へと踏み出した。

 

 

「うわ、」

「見事だね」

次の瞬間、景色が切り替わっていた。

さわやかな風が頬を撫でる。

目の前には、鳥居、鳥居、鳥居。朱の回廊が遥か先まで続いている。なんかこういう観光地あったよな、と燦は現実逃避気味に考えた。

「神隠しってこういうことかあ……」

「少なくとも、上から見れば参道はずっと続いているように見える。烏を連れてきて正解だった」

「わたしって肉体労働要員ですか、この場合」

「もちろんさ。私より君の方が向いているだろう?」

「冥さんも大概ゴリ……いえ何でもないです」

 

それからずっと、二人は鳥居の列を歩き続けていた。

だが、一向に終わりは見えない。体力そのものはまだ保つ。けれど、同じ景色が延々と続くせいで、気力の方がじわじわ削られていくのだ。

 

「おまけに変な呪いまでかかってますよね、この鳥居」

燦はうんざりしたように肩を回した。

「そのようだね。通るたびに体が重くなる」

「やっぱりこれ一級任務じゃなくないですか? 本体に辿り着く頃には疲労困憊で戦えなくなりますよ」

「そこは君の出番じゃないか」

ふふ、と微笑まれても、燦は全く笑えない。

 

鳥居の柱に刻まれている呪印を見て、燦はため息を吐いた。

「呪霊も頑張ってんですね…」

「敵の気持ちになってどうする」

だって、と言いかけて、燦はふと口を閉ざした。

「…冥さん、今の」

「どうした?」

返事も待たず、燦が走り出す。

 

 

一人取り残された冥冥は、わずかに首を傾げた。

(あの子は一見直情型だが、ちゃんと考えてから動くタイプだ)

領域内で、何も言わず単独行動に出るほど愚かではない。

ならば何か見つけたのだろう。そう結論づけた頃には、燦が戻ってきていた。

 

肩に、見覚えのない非術師の男を担いで。

 

「咎めはしないけど、先に一言かけたらどうだい?」

「すみません、冥さん。こんなところに一人でいたら、あっという間に餌食になると思って…」

「全く、君は本当に変わってないね。それで痛い目を見ても知らないよ」

「最近同じようなこと、たっくさん言われるんですよね。わたしってそんなに弱っちく見えます?」

「君の弱点は人の機微が分からないことだね。滅私奉公の精神より、そっちを学んだ方が良いんじゃないか」

はあ、と燦が気の抜けた返事をした、その時だった。

 

「誰だよ、アンタら……!」

燦に抱えられていた男が、怯えたように声を上げたのは。

「大丈夫ですか!? 相当衰弱してましたが……」

慌てて気遣う燦に構わず、男は彼女を振り払った。よく見れば服は土と汗にまみれ、頬はこけ、立っているのもやっとの有様だ。

「うるせえ、退けよ! 早く行かなきゃ、」

 

ガア、と烏がその声を遮る。

「やめておいた方が良い」

一斉に、鳥居の上で烏が羽ばたいた。

「死にたくなかったら、ね」

斧をくるりと回して笑う冥冥に、男は気圧されたように口を閉ざした。

 

「ちょっと、冥さん」

「仕方ないだろう。ここで暴れられたら困る。…ところで、君」

冥冥が目を細める。

「『神隠し』に巻き込まれた人間、で間違いないね?」

「は? 神隠し? 何言ってんだよ」

だが男は、きょとんと二人を見返した。

 

「神社に行って、気づいたらここにいた…のではないんですか?」

「違えよ。お前らも同じ目的で来たんじゃねえのか?」

「つまり、君は自分の意思でここに来たと」

「ああ。…知らねえのか? 夕方に神社の鳥居を通ったら、神様が願いを叶えてくれるって」

燦と冥冥は顔を見合わせた。

 

「神、ねえ」

「呪霊の噂に尾ひれがついたんでしょうか」

「運が良いやつは、神様のいる場所に招かれて、直接願いを聞いてもらえるんだよ。ここらじゃ有名な話だ」

「この地域特有の伝承ってことですか」

「そのようだね。かなり古いものだろう。ということは、ここの呪霊も……」

 

あ、と燦が小さく声を漏らしたところで、男が焦ったように身をよじった。

「だからよ、離してくんね? 早く神様に会わなきゃなんねえんだよ!」

「それはできません」

「は!?」

ぎゅ、と燦は腕に力を込める。

 

「あなたが神と呼んでいるのは、わたしたちの敵です。会ったところで、喰われるか死ぬだけだ 」

「…うるせえよ」

「あなたがどんな願いを持ってるのかは分かりません。でも、そんなものに命を預けていいんですか?」

 

男は、ふっと笑った。

「みんなと同じこと言うんだな」

「…え?」

「百回だ」

男は、虚ろな目のまま繰り返した。

「入り口の鳥居を百回通ったら、神のところに行ける。俺は、あと数回なんだ。だから邪魔すんなよ!」

「ちょっ、暴れないで」

「退け!」

燦の腕が振り解かれる。

(くそ、傷つけないように力を込めてなかったせいか……!)

 

追いかけようとした燦を、冥冥が呼び止めた。

「無視でいいよ」

「でもっ!」

「私欲で身を滅ぼすなら自業自得だろう。あんなのに割いてる時間はない。…どうせ、また会う」

無様に駆けていく男の背が、だんだん遠ざかっていく。

 

「…でも」

燦はその背を見つめたまま、動かなかった。

(そっくり、だった)

あの男の目は、あの日の自分の目と、どこか似ていた。

「ほら、行くよ」 冥冥が再び歩き出そうとして、燦の様子に気づく。

「あの、冥さん」

「何だい? これ以上時間は浪費できないよ」

「そうじゃなくて。この領域、変じゃないですか?」

「…具体的には」

燦は、鳥居を振り返った。

 

「さっきの男、『入り口の鳥居を百回』って言いましたよね。でもわたしたちが今まで通ってきたのって、ずっと別々の鳥居に見えてた」

「そうだね」

「だったら、おかしいんです。あの人はここまで衰弱してるのに、まだ『あと数回』って言っていた。もし本当に一本道を先へ進んでるだけなら、何往復もして百回も入口を通るなんて無理がある」

 

冥冥の目が、すっと細められる。

「……なるほど。つまり君は、『違うものに見えているだけで、私たちは同じ鳥居を何度もくぐらされている』と言いたいわけだ」

「はい。前に見た鳥居と、同じ傷が入ってるものがあった気がして。気のせいかと思ったんですけど」

「なら、確かめようか」

冥冥が指を立てる。

すると、数羽の烏が一斉に飛び立った。

 

「『景色』だけなら騙せても、比較されると脆い術式は多いんだよ」

ガア、ガア、と短く鳴き声が返る。冥冥は目を閉じ、烏の視界を受け取った。

 

「……フフ」

唇が、愉快そうに吊り上がる。

「ビンゴだ。前方三十歩先の鳥居と、後方二十七歩の鳥居。柱の欠けも、呪印の擦れも、全部同じだ」

「やっぱり……!」

「この領域は、短い参道を繋ぎ直しているだけだ。私たちは先へ進んでるつもりで、同じ入口を何度もくぐっていたらしい」

「じゃあ、あの男の『百回』って」

「本当だろうね。百回くぐった人間だけ、本体の前に通される。趣味の悪い御百度参りだね」

 

「何ですか、それ」

「一日で百回参拝して、神仏に願掛けをする風習さ。ここの伝承と結びついたんだろう。願いが叶わなかったことへの恨みと、百回も通うほどの執着。そういうものが凝り固まったんだろうね。全く、神なんぞに縋るからこうなる」

「…よく鳥居の中でそんなこと言えますね」

「宗教なんて所詮、金集めのビジネスだから」

うわ、と流石の燦もドン引きした。

 

「まあ、正論っちゃ正論ですけど…。どうしようもなくなった人が、存在するかも分からないものにまで縋りたくなる気持ちは、分からなくもないです」

「体験談?」

「そうはなりたくないな、と思っています」

「へえ」

「…いや興味ないなら聞かないでくださいよ」

「あいにく、私が興味あるのは儲け話だけだから」

「冥さんにだけは借金作りませんからね」

「それは残念」

くすり、と冥冥が笑う。

 

「ともかく、呪霊を一刻も早く祓わなければ。あの男みたいに、自分から足を踏み入れる阿呆はまだ出るだろうしね」

「百回くぐるまで我慢するしかないってことですか」

「そうでもないよ」

冥冥の視線が、ある一点に止まった。

 

「この領域は、同じ参道の終点と始点を無理やり繋いでる。なら、継ぎ目がある」

「継ぎ目」

「道そのものじゃない。道と道を繋いでる、接続部分だ。そこを壊せば、周回は破れる。…つまり、ぶっ壊せということさ」

「それ先に言ってくださいよ!!」

「今わかったんだよ」

悪びれもせず、冥冥は鳥居の一つを指差した。

 

 

一見何の変哲もないが、よく見れば柱の内側、空間の端がわずかに歪んでいる。

 

「英雄偶像(マイヒーロー)」

ふう、と息を吸うと、ゆっくりと体が光を纏う。軽く後ろに下がり、拳を構える。大きく息を吐いて。

 

ドン!!

 

燦は、腕を振り抜いた。

 

直後、ピシリと嫌な音が鳴った。見えない壁が、悲鳴と共に揺らいでいく。

「さすがだね、燦」

「どうも」

 

ひびは蜘蛛の巣のように広がり、ついには参道の一部がべり、と剥がれ落ちた。そこには、先ほどまで見えていなかった、暗い社殿への道が口を開けている。二人は躊躇なく、その裂け目の向こうへ踏み込んだ。

 

 

 

再び、景色がかちりと切り替わる。

「廃神社…?」

「そのようだね。とことん神社に未練がある呪霊らしい」

 

蔦の這う荒れ果てた境内。

倒壊した社の残骸が折り重なる中央に、ソレはいた。何本もの手が、合掌するように重なっている。あちこちに開いた口が、ぶつぶつと何事かを唱えていた。

「いや、仏教と神道くらい分けたらいいのに」

「神仏習合を反映してるんじゃないかな」

「そんな真面目な呪霊います!?」

ともかく、と冥冥が斧を肩に担ぐ。

 

「領域維持に力を割きすぎたのか、本体は大したことなさそうだ。祓うのは君に任せるよ」 「任せてください! …ん?」

燦は飛び出しかけて、ふと足を止めた。

 

「お願いします助けて下さい神様お願いしますどうかどうかどうか」

あの男だ。呪霊の前に跪き、伏し拝むようにして喚いている。

 

「…やっぱり、百回到達者はここに来る仕様なんだ」

「邪魔だね。どうする 」

「説得してきます」

燦は、そっと男に近づいた。とん、と優しく肩を叩く。

 

「ソレは神様なんかじゃないですよ。あなたの願いを叶える力なんてない」

「また、お前か…!」

焦点の合わない目が燦を睨む。

「良い加減邪魔すんなよ! 信じてねえなら帰れよ! 俺は、俺はもうコイツに助けてもらうしか、」

「まだ何も成していないのに、何を言うんですか」

燦はしゃがみ込み、男と目線を合わせた。

「できることはある。やれることは転がっている。あなたは本当に、自分のできることを全部やったって、胸を張って言えますか?」

何が、と男は力なく吐き捨てた。

「何ができるって言うんだよ……! 俺の娘は、事故で何年も昏睡状態だ! 俺に何ができる!? なあおい、ただの人間に、どうしろって言うんだよ!!」

男が頭を掻きむしる。

 

それを見て、燦はほんの少しだけ目を細めた。

「願って、叶わなかったらどうするんです。『神』のせいにしますか?」

「…うるせえ、黙れ!」

「同じところを何十回も回って、得た答えがそれなんて、あまりに虚しいじゃないですか」

「だから、黙れって!!」

男が、激情のままに殴りかかる。

燦はその拳を難なく受け止めた。けれど、その背後にはもう、巨大な影が迫っている。

のっそりと歩み寄った呪霊が、二人を見下ろしていた。

「かしこみ、カシこみ……」

合掌した手が、ゆっくりと振り上がる。

 

「神、さま……」

男が呆然と呟いた、その瞬間。

 

ボン!!

「神風(バードストライク)」

一羽の烏が、巨大な呪いを貫いた。

爆ぜる音とともに、呪霊の体が内側から裂ける。

 

「ナイスです、冥さん!」「なんのこれしき。君の謝礼は私がもらっていいよね?」

「…最初からそのつもりでしたか?」

「フフ、まさか」

ザフッ、と消失反応。

同時に、領域そのものが音を立てて崩壊していく。

 

 

元の神社へと戻された時、境内のあちこちには倒れ込む人影がいくつもあった。

巫女服の少女、年配の参拝客、泣きじゃくる子供。どうやら、取り込まれていた被害者たちもまとめて吐き出されたらしい。

 

「生存確認を。動ける人は境内の外へ」

冥冥が短く指示を飛ばす。

「はい!」

燦はまず、目の前の男へ手を差し出した。

「立てますか」

「…なにしてんだよ。消えちまったじゃねえか、神様」

「すみません。ですが、私たちの仕事なので。私たちに倒される程度のものを、『神』だと思えますか?」

「うるせえよ」

男は、地面を見たまま掠れた声で言った。

 

「これから俺は、どうしたら、」

「あなた!!」

もうすっかり暗くなった境内に、その声はよく響いた。男に駆け寄ってきたのは、仕事帰りらしい非術師の女。

「どこに行ったかと思ったら、もう! あの子のそばにいてって言ったじゃない!」

「お前、でも」

「行くわよ! 昨日もお見舞い行かなかったでしょ。あの子が寂しがったらどうするの?」

「…ああ」

差し出された手を見て、男の目にようやく生気が宿る。

「そうだな」

泣きそうな顔で頷いて、男は燦を振り返った。

 

「…ありがとう」

 

燦は小さく目を見開き、それからふっと息を吐いた。

 

 

一通りの救助と引き渡しが終わってから、燦は肩を落とした。

「今回、わたし役に立ちませんでしたね。ごめんなさい」

「何を言う」

冥冥は、呆れたように笑った。

「周回構造に気づいたのは君だ。継ぎ目を壊したのも君。十分すぎるほど働いたよ」

「でもトドメを刺したのは冥さんだ」

「それは役割分担というやつさ」

「…確かに」

 

だろう、と冥冥は足を止めた。

「そういえば、これ。頼まれていたものだよ」

懐から、数枚の資料を取り出す。

 

 

ハッと息を呑み、燦は弾かれたようにそれを受け取った。焦るように紙をめくっていくが、徐々にその表情は暗く沈んでいく。

「目当ての人はいたかい?」

「……ごめんなさい、いませんでした」

「そうか。すまないね」

いえ、と燦は小さく首を振った。

 

「そろそろ、諦めるという手もあるんじゃないのかい?」

「嫌です」

きっぱりと言い切った燦に、冥冥が肩をすくめる。

 

「晦守家の相伝をあんな形で受け継いだ娘を探すのは至難の業。私の烏をもってしてもね」

「分かってますよ、そのくらい。あの家の相伝がどれだけ厄介かなんて」

冥冥はなお納得がいかないようだったが、やがてくるりと踵を返した。

「まあ、その分の金は君の今日の任務の給料で賄わせてもらう」

「それでお願いします」

「毎度あり。次会う時までには、候補をもう一回洗っておくよ」

「! ありがとうございます」

「ふふ、上客だからね」

 

機嫌よさげに去っていく背中を見送ってから、燦は手元の資料をじっと見つめた。

赤毛の少女たちの写真。

候補者ごとにまとめられたそれを、くしゃりと握り潰す。それから、堪えきれないように小さく呟いた。

 

「どこに居るのよ、唯衣のバカ」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

三輪霞は、剣だけでいい(作者:ケーケーケー)(原作:呪術廻戦)

AIに書いてもらいました▼家族を支えるため、京都の呪術高専へ入学した三輪霞。▼真面目で控えめ、少しミーハーな彼女は、すでに剣の道を極めていた。▼術式はない。それでも、剣を交えれば誰にも負けない。▼これは最強の少女が、仲間と帰る日常を守る物語。


総合評価:79/評価:-.--/連載:17話/更新日時:2026年10月24日(土) 15:52 小説情報

三席は生き残りたい(作者:瓢箪から窯)(原作:BLEACH)

腹が減れば飯を食い、眠くなれば眠る。▼明日もまた、そうして過ごせればそれでいい。▼護廷十三隊三番隊第三席、望月輝夜。▼出世にも名誉にも興味はない。▼ただ、今日を生きて、明日を迎えたい。▼そんな男の平穏な日々は、瀞霊廷に旅禍が侵入したことで、少しばかり騒がしくなる。▼これは、何があっても生き残りたい、とある三席の物語。


総合評価:12/評価:-.--/連載:4話/更新日時:2026年10月26日(月) 12:00 小説情報

俺は転生者でサイヤ人だぁ〜!(作者:テムテムLvMAX)(原作:ドラゴンボール)

不肖転生サイヤ人、惑星ベジータ破壊を阻止するために奮闘します!


総合評価:231/評価:6.86/連載:9話/更新日時:2026年08月15日(土) 19:19 小説情報

もう一つの豹王譚(作者:覇者)(原作:BLEACH)

▼ ▼ ──これは、誕生の時から大きく変わった豹王が我が道を征き、やがて虚圏の王へと成り上がる話。


総合評価:39/評価:-.--/連載:1話/更新日時:2026年10月24日(土) 18:31 小説情報

絶対の先制(作者:幻影の塔)(原作:BLEACH)

護廷十三隊どこにでもいる平隊員、だがその実力は最強格あえて実力を隠し平穏に生きてる。これはしがない平隊員が、絶対の先制をもって敵を葬る物語である


総合評価:263/評価:5.33/連載:110話/更新日時:2026年10月04日(日) 03:40 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>