「さて、フィーよ。なんでいきなり連れ出した?」
旧校舎のある程度進んだところで問う。
フィーは振り向きながら、
「人数が増えると動きづらい。」
俺の後ろにいた飛び猫を撃ち落とす。
「でもなぁ同じクラスなるんだから、慣れとかないといかんだろ」
と片手をあげ、サンキューと言っておく。
「それにウィルがいると、この程度なら戦闘にすらしない」
まぁ、自惚れでも、自慢でもないが確かにそうだ。出てきたコインビートルを粉砕しながら進む。にしても、ビートル数が多いから面倒なんだよなぁ。
「フィー、数が多いから手伝ってくれよ」
「いや」
即答かよ。てか、こいつまさか戦闘が…
フィーが背中に張り付く。
「歩くのもめんどくさいからおんぶして」
「やっぱり面倒くさかっただけかよ!!俺を連れ出した一番の理由はそれだな!それなんだな!」
「そうだよ。」
「はっきり言うなよぉ!」
腹いせにビートルをドローメにぶつけて遊ぶしかなかった。
結局、フィーを背負いながら飛びかかってくる魔獣を殴る、蹴っていった。
「あ、そっちじゃないよ。」
「早く言えよ!」
「あれ、ユーシスじゃん。どうしたんだよ?」
少し大きめの広間に出たところで金髪の男子―ユーシス・アルバレアを見つけたので手をふりながら近づく。むこうはこちらを見て、一瞬だけ硬直するが、すぐに立ち直り、フンと鼻を鳴らしながら、歩み寄ってくれる。
「確か、ウィルバード・ルグィンだったな。その背中のは?」
「フィー・クラウゼル。」
起きたのかと声をかけるとすぐに背中に顔を埋めて答えない。
「確認なのだが、ルグィンというのはあのルグィンか?」
「んまぁ、そうなんだけど。気にしないよな?」
「フン、まさか。」
「ところでユーシス今一人?」
「だったらなんだ?」
と軽く機嫌の悪くなるユーシス。だが
「こんな状態だから助けてくれよ。」
背負われているフィーを見て
「フン、民を守るのも貴族の義務だ。守ってやろう。」
「ありがと」
そうして三人はダンジョンの中を進んで行く。
「起きたら、山奥にいて近くにメモがおいてあるんだよ。なんてかいてあったと思う?そこら辺にいる手配魔獣倒しといてくれ、だぞ!あり得ないだろ!」
「な、なんというか凄まじいお人だったのだな」
ユーシスと他愛もない話をしているとフィーが突然背中から飛び降りた。
「どうしたんだよ、フィー?」
フィーは回復装置のある部屋の先を示して
「戦闘音。しかも、大きい」
ユーシスも騎士剣を抜いて言う。
「急ぐぞ」
一気に奥の部屋に突入すると
「ガーゴイルか?」
奥にいる魔獣を見て呟いてしまう。その手前には膝をついたリィン達が。
「ユーシス!」
「任された!」
フィーはもう敵に突っ込んでいる。くそ、こっちの援護を完全に信じて行ったなと心の中で悪態をつく。相手の目を惑わせるためにジグザグに動くフィーがこちらが追い付いたのを確認して飛ぶ。タイミング良く、ユーシスの"エアストライク"がガーゴイルの顔にぶつかり、跳ね上がったところを掴んで地面に叩きつけると同時にフィーが後ろ足を刈る。
誰かが今だ!と言っていたが、その思いは皆が共有しているような感じがした。仲間の動きがわかる。
総攻撃。最後、ラウラがガーゴイルの首をきれいに切り飛ばした。
首と切り離された胴体が色褪せていき、光となって消えていった。
全員が安心し、武器をしまう。が、安堵するのは、早かった。
誰ももう一体いるとは思わなかったのだから。
「ラウラ、後ろ!」
気付いたリィンが叫ぶが、それは遅かった。
イグルートガルムの爪は振り返ったラウラの目の前だった。
ーしまった!
避けるのは間に合わない。ならば衝撃だけでも、と考えたところで腕を引っ張られた。目の前を明るい緑色が通過していって―
かばわれたのだとわかるのも一瞬、入れ替わった彼の身体は薙ぎ払われ、壁に叩きつけられる。
どうしたら良いのか、わからなくなる。完全に自分のせいだ。自分が悪い―
その思考は誰かに無理やり身体を持たれ、後ろに下がることで止まる。
顔を上げれば。
ー覇王流 粉砕拳
拳を振り抜いている彼がいた。