「この野郎。不意打ちしやがって」
光となったイグリートガルムの残滓を見送ってから、後ろを振り向いて気づく。
「おいおい、どうしたんだ?拍手してくれてもいいんだぜ?」
両腕を大きく広げ、ポーズする。反応がない。ちょっと悲しいな。
反応がありそうなフィーのほうを見ると指で自分の頭を示している。
触ってみれば、手の平に紅色がべったりついている。あ、やべ。吹っ飛んだ時に切ったかな。
「大丈夫か!」
リィンが駆け寄ってくる。それにつられて皆が集まる。
「すまない!わたしが油断したばかりにそなたをっ…」
ラウラが申し訳なさそうに言う。
「ああ、いいんだよ。こんくらいけがに入らないよ」
笑いながら手をひらひらとさせるとアリサが
「笑い話じゃないわよ!こんなに頭から血を流しといて!」
と顔を真っ赤にして怒鳴る。
ありがたいなぁ。心配してくれるなんて。
「とにかく止血しないと!」
「ああ、とにかく誰か清潔な布を持っていないか?」
エマ、ガイウスも動いてくれてる。
返せるかわからないのに。
「ほら、包帯よ」
と上から言った通りのものが飛んでくる。
「サンキュー」
受け取ってフィーに放り投げる。細かい作業は苦手だから他人に任せるほうが楽なのだ。
「で、説明してくれんだろうな。俺がいなかったら、大惨事になってたぞ。」
旧校舎の冷たい床に座り、フィーに包帯を巻かれる。
いくらなんでも、いきなりダンジョン潜らせて強敵二連戦はきついだろう。どうやら、戦闘経験のないやつもいるようだし。
「そこに関しては私の見通しが悪かった、と思ってるわ。」
階段を降りてきたサラがごめんなさいねと謝りながらさらに言葉を続ける。
「でもあんたが、ウィルがいるって時点でこの子達には危険が及ばないと思ったのよ。」
「俺が他人なんてどうでもいいと思ってたらどうすんだよ。」
「他人なんてどうでもいいと思ってたらあんたは-
私を助けなかったでしょう?」
したり顔で言われる。
「あー、わかった、わかった。そういうことでいいよ。」
ちょうどまき終わったらしいのでフィーにお礼を言ってから立ち上がる。
「で、他に聞きたいことがある人はいないの?」
「サラ教官。いろいろ聞きたいこと、言いたいことはあるのですが。俺たちが戦ったときに感じたあの感覚は一体?」
リィンが皆を代表して言う。
「その感覚がARCUSの真価。戦術リンクって言うのよ。それは持つ者同士を深くつなげてね。さっきも互いの動きがわかったでしょ」
ウィンクを決めながら続ける。
「ちなみにまだ試験段階なのよ、これ。実用にはまだ早い。そしてこのトールズ士官学院はその試験のためにもっともARCUSの適合レベルが高い君たちを選んで、作ったのが、このⅦ組。」
「別に強制じゃないわよ。このクラスは他に比べてカリキュラムもきついし、身分関係なく集められたからね。そういうのが嫌だって言うんだったら、辞退しても構わないわよ。」
「さて改めて聞かせてもらうけど、このⅦ組でやってくか、それとも元の振り分けられるはずだったクラスになるか。選択する権利は君たちの手にある。」
長い説明が終わり、皆顔をあわせる。これからどうするか、か。これからなんて俺にあるのかね。
「リィン・シュバルツァー、参加させてもらいます。」
「一番乗りは君か。何か事情がありそうだけど…」
「いえ、わがままを言って行かせてもらいました。自分を高められるのであれば、どのクラスでも構いません。」
続けて、俺のほうをちらっと見てから、
「ラウラ・S・アルゼイド、Ⅶ組に参加させてもらう。もとより修行中のみ。先ほども自らの未熟を思い知ったばかりだ。精進させてもらう。」
気にしなくてもいいのになぁ。
と二人に続き、ガイウス、エリオット、エマ、アリサも参加を表明。ユーシス、マキアスも互いに張り合いながら参加を宣言。
「さて、あんたたちはどうするの?」
先にフィーが答える。
「サラが決めていいよ」
「自分のことは自分で決める約束でしょ」
「じゃあ、参加で良いよ」
「ウィルはどうするの?」
どうするか…
「いいのかよ、俺みたいな奴参加させて。」
「当り前よ。まさかあんたが来るとは思ってもいなかったけど。」
だけど、入って後悔はさせないわ。とサラが言い切った。
「…わかったよ。参加するよ。」
「これで全員参加と。」
サラが嬉しそうに言い、Ⅶ組の設立と同時にスパルタ宣言をする。
これからどう動くか…
石像が一体だけ置かれているのも変じゃねと思ってもう一体増やしました。たぶんこれからもウィルのせいでボス戦だけナイトメアになる(ゲス顔)