孕んだ赤ちゃんは【リボ払い】で強制出産 ~用済みとパーティー追放された俺は、可愛いサポート産婆と一緒に取り立てた胎児を運用して最強を目指す。〜 作:リボ払いンズ・アルマーク
「無限リボ地獄編で」
「承知しました♡」
空が赤く染まり、天が鳴き、大地が震えた。
遠く離れた酒場で障ガイの腹が再び大きく脈打ち、悲鳴が聞こえた気がした。俺は《胎児強制徴収、開始》という文字を見届けたあと、町外れの馬小屋で気を失った。ハフーン。ドサッ
そして翌朝。
「さて、妊貸レントさん。いえ、マスター様ぁ。あの自分のこと頭いいとか思ってる系の痛いアホ共から取り立てに行きましょう!」
原作で言ってたような発言で目を覚ますと、俺の顔面にはエムピーの巨大なそろばんが突き刺さっていた。
「痛いです。あと昨日、もう強制徴収は開始したのでは?」
「いい質問です♡ 昨日のは“返済プラン仮申込”ですね!」
「ぷももえんぐえげぎおんもえちょっちょっちゃっさっ」
「は? 本契約には、債務者に一度返済をお願いして、断られて、軽く暴行される必要があります!」
「何でですか?」
「原作通りです♡」
そう言われると、何も言い返せなかった。
俺たちは馬小屋を出て、断乳の剣が借りている宿へ向かった。昨日まで俺も寝泊まりしていた建物だが、今は入口に『妊娠野郎出禁 関係者も出禁』と書かれた紙が貼られている。
関係者とは誰のことだろう。
「サンダルとか履いて全身合わせて116ドルの服しか着てないみすぼらしいマスター様ァ、私の赤ちゃん感知によるとここです!」
「見ればわかるよ」
なんで今叩いてきたの?原作通りだからか。
「ちなみに、断乳の剣のみなさんが抱えている胎児の総残高は、現在13人と利息分の0.3人です!」
「0.3人って何?」
「足と腸だけ借りている状態ですね♡」
「返す側が一番困るだろ」
宿の扉を開けると、障ガイ、ミサイルポッド、エル・プサイ・コングルゥが朝食を取っていた。エルは母子手帳に死亡と書かれていたにもかかわらず、普通にスクランブルエッグを食べている。
「レント……まだ生きてたのか」
障ガイが、露骨に嫌そうな顔をした。
「無能でクネクネしててカマホモキモオタクチー牛レントが消えてスッキリしたって言うのによぉ」
「赤ちゃん貸ししか出来ないチンよし雑魚は必要ないのよねぇ」
「ぷもも」
「あ? もうここにお前の居場所はねぇ妊活男」
ミサイルポッドは俺を見るなり椅子を引き、腹部を両腕で庇った。
「まさか、私の赤ちゃんを返してもらうとか言いに来たわけ?」
「その通りびゃッッッッッ!!!!!!」
俺は昨夜エムピーに渡された、やたら分厚い請求書を卓上へ置いた。表紙には大きく《妊娠債務返済請求書》と書かれ、余白にはボロボロにされた赤ちゃんの落書きと、エムピー直筆の“絶対払えよ♡”が添えられている。
「障ガイ、6.3人。ミサイルポッド、4.2人。エル・プサイ・コングルゥ、3人。これまで皆さんに貸し付けた赤ちゃんを返済してください」
「数字の意味が一切わからないんだけど」
「利息です」
「だから、その利息が何なんだよ」
エムピーが俺の肩に座り、そろばんを弾いた。
「リボ出産は毎月のお支払いが少額になる、とっても親切な返済方法です♡ ただし返済残高に応じて赤ちゃんが増えます♡」
「絶対に親切ではない」
「産婦人科の先生もそう言っていました!」
「どこの産婦人科ですか?」
「異世界産婦人科〜胎内に帰ってこいと言われてももう遅い!このダミクソ金たまビッチがァ!産婦人科ですねマスター様」
無視。
この妖精、たぶん医療資格を持っていない。
障ガイは請求書を破り捨てた。即座に俺は二枚目を渡した。破られた。
「知らねえよ。腹の中身は俺たちの赤ちゃんだ。お前から借りた覚えもないし、返す義理もない」
「ですが、皆さんが強くなれたのは僕のアナル……」
「うるせえな!」
障ガイが立ち上がる。障壁系ギフトを持つガイ略して障ガイは、俺の目の前に半透明の壁を展開した。そんなギフト原作にないけど。
「お前は俺たちに魔力と赤ちゃんと産み場を与えた。それだけだ。剣も使えねえ、魔法も使えねえ、妊娠以外に何もできねえ。そんな奴に返済する赤ちゃんなんか、一人もいねえよ」
「幻の八人目の赤ちゃんもそう言ってますか?」
「鋼鉄の七人だ!」
「さっき机の下で落としてましたよボトッて」
「細けえことはいいんだよ!」
障ガイの拳が飛んできた。
俺は反射的に避けようとしたが、壁に頭をぶつけた。9と3/4番線なら吸い込まれていたことだろう。のうハグリッドや。
「ぐっ……」
「貧乏性のキモマスター様!」
エムピーが叫ぶ。ついでに責めてくる。
しかし俺より先に、障ガイの拳が俺の腹へ突き刺さった。腹部には昨夜から妙な痛みがあったため、俺はその場で綺麗にガラケーみたいに折り畳まれた。パカッ
「やめてください! 原作再現とは言え殴らないでください!」
「誰もマタンゴ。死ねやアタオカ赤ちゃん製造機マシーン」
ミサイルポッドは笑い、エル・プサイ・コングルゥは回復魔法を唱えようとして、途中で卵焼きを喉に詰まらせていた。母子手帳では死んでいるのに元気である。
「ほら、もう帰れよ」
障ガイが俺の髪を掴み、顔を上げさせる。
「次に俺たちの前へ現れたら、お前の子宮庫ごと潰す。男のくせに子宮なんか持ってるお前が悪いんだ」
「……そうですか」
「は?」
ボコボコにされた痛みで滲んだ視界の向こうに、エムピーが浮かんでいた。
笑っている。ハチャメチャに笑顔だった。
昨夜よりも、ずっと嬉しそうに。
「レントさん。返済のお願い、断られましたねぇ?」
「断られました」
「暴行も受けましたね?」
「もう許してください……(ガバ穴ダディ)」
「では!」
エムピーは、そろばんを天高く掲げた。
「契約成立です♡」
「は?」
《返済拒否を確認》
《債務者からの優しい暴行を確認》
《債務者:社会的に終わっているため、特別リボ出産プランを適用します》
「何だ、その表示は」
ドン引きした障ガイが俺の腹を踏みつけようとした。
だが、臭すぎて周囲1mが死滅する臭さの足が止まる。
エムピーのそろばんが、ひとつ鳴った。
ぱちん。こ。
「──《胎児強制徴収》」
次の瞬間、宿の空気が一瞬だけ揺れた。
誰かの腹から何かが抜けたような気がした。だが、煙も光もない。血も出ない。いや血は出てる。どっちだよ。ただ、障ガイたちの腹部にあった重みだけが、ほんのわずかに薄れた。
「……?」
障ガイは自分の腹を撫でた。
「何だ、今の」
「知らねえよ。急に腹が軽くなっただけだろ」
「今俺が俺に返事をしなかったか」
障ガイは何故か一人二役で喋っていた。
ミサイルポッドは顔を青くしていた。
「私、さっきまで4.2人いた気がするんだけど」
「人を小数点で数えるんじゃねえよミサ」
「でも、今は4.1人くらいの重さよ!」
「気のせいだ。昨日の夜に0.1人産んだんじゃねえか?」
「あ? 産んでないわよ!」
エル・プサイ・コングルゥは静かに自分の腹を見下ろし、妙な顔をした。
「……赤ちゃんの気配が、少し減っていますにゃ」
「お前は死んでるんだから気配とか言うなエル!」
「死んだのは胎児だから私は死んでないよ」
俺は痛む腹を押さえながら、立ち上がった。
視界の端に、透明な文字が浮かんでいる。
《障ガイ:残高 6.3人 → 6.29人》
《ミサイルポッド:残高 4.2人 → 4.19人》
《エル・プサイ・コングルゥ:残高 3人 → 2.999999999999999999999999999人》
なんかバグってる人いない?
《毎月の返済額:少額赤ちゃん》
《利息:無限》
《来月の予定出産数:増加》
「エムピー」
「はい♡」
「これ、全然返済が進んでいません」
「リボ払いですから♡」
「いっぱいっぱいユウジロウ…」
「は?」
「あ?」
障ガイたちは、まだ俺が何をしたのか理解していない。俺も理解していない。
せいぜい、腹の中にいるはずの赤ちゃんが少し静かになった程度だ。俺が契約を発動させたと知るには、もう少しだけ時間が必要だった。
僕の赤ちゃんを叩けなかった君たちの負けだよ。Byリボ払いンズ・アルマーク
「帰りましょう、マスター」
エムピーは俺の背中を押した。HP100→1
「初回赤ちゃん請求、大成功です!」
「俺は全く成功した気がしないんだが」
「大丈夫です♡ 来月には、あの人たちの返済額が増えますから」
その言葉を聞いた障ガイが、俺を睨んだ。
「おい、レント」
「何ですか」
「お前……俺たちの子宮に何かしたのか?」
俺は一瞬だけ考えた。そして、笑った。
笑えていたかは分からない。いや笑ったかも。
「ノーコンテスト」
「は?」
俺は宿を出る。背後で、障ガイの腹が小さく鳴った。
ぐるるるる。ボトッ。
空腹の音だったのか。胎児の泣き声だったのか。
産まれたのか。
この時の俺には、まだ分からなかった。
第2話のまとめ
・レントはエムピーと共に、断乳の剣へ赤ちゃんの返済を要求した。当たり前に断られた。
・障ガイ、ミサイルポッド、エル・プサイ・コングルゥは返済を拒否し、レントを殴った。原作通り。
・暴行を受けたため、リボ出産契約が正式に成立した。原作通り。
・《胎児強制徴収》により、毎月少額の赤ちゃんが回収される。原作通り。
・その代わり、返済残高に応じて赤ちゃんが利息として増える。原作通り。
・障ガイたちは、腹の中身が減ったり増えたりする原因をまだ知らない。原作通り。
・エル・プサイ・コングルゥは死亡していない。原作は死んでる。