生き抜け!デーモンコアくん! 作:某1話の博士
山のように大きな巨馬に跨る巨人は2人に向けて品定めをするような目を向け、一瞥した。その後に巨馬の手綱を引き、正面を向いた。
「名乗りたいところだが、契約者との契りでな。ライダーと名乗らせてもらおう」
ライダーというのは合っていた。しかし、このサーヴァントの真名がわからない。巨馬と巨人。彼の記憶の中でそれに該当する英雄は思い当たらなかった。
「では、
巨馬は手綱を一気に引かれ、荒ぶりながら2人に向かって駆け出す。その体躯に見合わぬ速さ。おそらくそこら辺のスポーツカーよりも速い速度で地面を蹴り、2人に向けて突進し続ける。
「チッ!バーサーカー───いや、絶対にマイナスドライバー外れないように歯食いしばっとけよ!」
康太はデーモンコアくんのマイナスドライバーが外れないように、デーモンコアくんを上下から押して、口後開かないようにして、脚に力を込め、意識を集中した。
「”
魔術回路を励起させる。魔術回路を巡る魔力を加速させ、脚力を強化する。ほんの一瞬でも遅くなれば轢き殺されるのは目に見えている。固唾を飲み、地面を蹴り飛ばした。
ダンッッ──────!
地面に小さな穴を残し、その場から消えた。巨馬の突進は空振り、デーモンコアくんを抱えた康太はライダーの背後に居た。
「イッッッ……てぇ……!」
しかし、強化した部位や魔術回路に少なからず強化分だけのダメージが加わる、というデメリットも有していた。
「ほぅ、我が竜馬を躱すとは。であれば、手を抜く必要など、無いやもしれんな」
その瞬間、ライダーの圧が一気に増した。巨人の肉体についた筋肉は膨張し、長槍を持つ握力も更に増す。周りの空気が肌に突き刺さるように鋭くなっているように錯覚するほど、康太は気圧されていた。
「や゛ぁ゛!゛ラ゛イ゛タ゛ー゛く゛ん゛!゛ほ゛く゛デ゛ー゛モ゛ン゛コ゛ア゛く゛ん゛っ゛て゛い゛う゛ん゛た゛!゛」
緊迫した空気が漂い、一触即発の中、デーモンコアくんは緩んだ康太の腕から飛び出し、自己紹介を始めた。それどころか、真名すらも打ち明けた。
その奇行に康太は半開きになった口が閉じず、ライダーはデーモンコアくんを見つめていた。
「………貴様が、あの小僧のサーヴァントか」
言葉が出るまで、明らかな間があった。ライダーすらも、デーモンコアくんのビジュアルに困惑していたのだ。
「そ゛う゛た゛よ゛!゛」
康太も既に正気に戻っていた。そしてデーモンコアくんがライダーの気を引いているのを確認し、1歩、また1歩と後退る。だが、ライダーは敵を見逃すほど甘くはなかった。
ライダーは手に持つ長槍を逆手で構え、投擲した。その切先で空気を切り裂きながら康太の背後に突き刺さる。
「我から逃れられると思うとは。舐められたものだな」
巨人が言い捨てるように康太に向かって言い放つと、巨馬は雄叫びを上げ、康太に向かって再び突進した。
その中で巨馬はデーモンコアくんを蹴り飛ばし、デーモンコアくんは高く宙を舞った。
「
再び
巨馬は既に目の前まで迫り、今更回避することもできない。諦めようと、瞼を閉じているさなか、上空から声が聞こえた。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
高速で回転しながら勢いよくデーモンコアくんが康太に向かって飛んできていた。そして、そのまま康太に直撃し、突き飛ばす。そのおかげで巨馬の突進は何とか免れた。
巨人は突然のことに少し動揺するも、地面に突き刺さった長槍を引き抜き、突き飛ばされ身体を痛めた康太と、康太の近くに転がったデーモンコアくんを見た。
「豪運とでも呼ぶべきか?偶然か必然かなど知らんが、なんにせよ、運がいいことは認めてやろう。だが、次は無い」
巨人は長槍を構え、巨馬は2人を睨みつける。デーモンコアくんがろくに戦闘をしない中、サーヴァントから逃れるなど、不可能にも等しかった。
最悪、デーモンコアくんで自爆でも、そう思考を巡らせている時、康太の頭にコツンと何かぶつかり、地面に落ちた。
康太は頭を擦りながら、地面に落ちたものを拾ってみた。それはマイナスドライバーだった。
ゾワリと悪寒が走る。先程ライダーが放った圧とは比べ物にならないほどの、恐怖と焦燥感。脳が理解を否定する中、恐る恐るデーモンコアくんの方を見た。
「もう、危ないじゃないか!大怪我しちゃうよ!」
デーモンコアくんの滑舌が良くなっていた。それもそのはず、口にはあったはずのマイナスドライバーが無かった。そして今、そのマイナスドライバーを持っているのは康太だった。
デーモンコアくんが口を大きく、あんぐりと開いた状態から戻らない。その光景にライダーはある種の不安感を覚えるものの、デーモンコアくんの「あ」という声でライダーの中にある本能が危険信号を発した。
「ラクシュッ!避けろッ!」
愛馬の名を呼ぶと共に、手網を勢いよく引っ張り、巨馬を動かす。
その瞬間、カチンという音と共にデーモンコアくんは口を完全に閉じた。刹那、衝撃波と共にデーモンコアくんが放った巨大な一条の青い光芒が、正面にいるライダーに迫る。
ライダーはその直感もあり、回避はできたものの、巨馬の後脚は焼け、傷跡が残った。
「よもや、我が竜馬に傷をつけるとは。生かしては───」
怒りに身を任せ、長槍の切先をデーモンコアくんに向けた時、ライダーの動きが固まった。そして少し黙り込んだ後、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、手綱を操り、2人に背後を向けた。
「此度の目的はあくまで、偵察と小手調べだ。だが、次にあった時は、貴様らの最後だと思うがいい。ゆめゆめ忘れるなよ」
そうしてライダーは巨馬で山道を駆け、一瞬で姿を消した。命の危機が過ぎ去ったことに安堵しながらも、冷静になって思い出す。
まだ、デーモンコアくんは口を閉じ、青い光を放っていた。つまり、今も核分裂の連鎖反応は収まっていなかった。
「…………
勢いよくデーモンコアくんとは正反対の方向へ駆け出した。 ライダーの巨馬にも傷をつけるほどの光。そんなもの、自身が喰らえばどうなるかなど、容易く想像が着いた。
そして30分程度のデーモンコアくんとの激戦の後、何とか口にマイナスドライバーを戻すことができ、一命を取り留めた。