生き抜け!デーモンコアくん! 作:某1話の博士
───どうして私がこんなことに。
1人の少女は心の中で自身の運命を呪いながら、今ある目の前の状況に意識を移した。
”
甲冑を身に纏い、長槍を持った大男かによる襲撃を受け、命からがら逃れ、自身の敷地内にある蔵に入り、生き延びた。
だが、大男は蔵の鉄製の扉を、大槍の切っ先で豆腐を切るように両断し、澄香を追い詰めた。
だが、ブルーシートの下から突風が巻き起こり、光が放たれた。それと同時に頭に言葉が流れ込んだ。
───素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ。
───降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
───
───
───告げる。汝の身は我が下に。我が運命は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。
───汝三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ。
突如として脳内に流れ込んだ、聞き覚えのない言葉の羅列。あまりの情報量に意識が遠ざかっていく感覚に陥るも、背後からの突風に意識を取り戻す。
その突風は更に強さを増し、光も更に輝きを増す。
釘で固定されていたブルーシートは宙へと舞い、その下からは巨大な魔法陣が顕となった。
「貴様、やはりマスターなる者か。であれば、ここで逝け!」
大男は大槍を振り上げ、澄香に向けて振り下ろした。
澄香は自身の終わりを悟り、後悔の念を噛み締めながら、目を瞑り、死を待った。
刻々と死の刃が迫る中、運命に呪われた少女は意識を暗闇へと堕とした。
その時だった。
───ガンッッ!
甲高い金属音が蔵の中に、澄香の鼓膜に響き渡る。
死んでいない。そう感じた澄香は恐る恐る目を開け、目の前の状況を見た。
大男の刃は、全身に刺々しい装飾を施された全身を覆う西洋甲冑を身に着けた人物が、手に持つ大剣で防いでいた。
そして、その人は大男を弾き、振り返って澄香の方を見た。
「さて、問おう。お前が私のマスターか?」
ここから、2人の呪われた運命は、軋みをあげ、動き始めた。
───
──
─
「つまり、望まず聖杯に選ばれて、聖杯戦争に巻き込まれた───と。これで間違いじゃないんだな?」
「その通りです………」
東邸宅の居間にて、テーブルを挟んで康太が澄香に対して事情聴取を行っていた。
招かれざる客と言うべきか。このような事例に似たものは幾つかあるが、詠唱無し触媒無しでの英霊召喚の事例は初耳だった。
家系的には魔術師でありながらも、父の代で子に魔術師をさせるのを止め、普通の人間として暮らさせていた。それが澄香の家系との事だった。
どうするべきか、と康太は頭を悩ませた。
ここで教会に行き、辞退をさせれば勝利へと近づくだろう。だが、その場合はセイバークラスを自ら手放すこととほぼ同義だ。かと言って、辞退させなければ後々セイバーと戦う羽目になる。それはそれで問題があった。
「とりあえず、同情も憐憫もしよう。それはそうと、協力してもらいたい。何せ、俺のサーヴァントはコレだからな」
そう言い捨てた後に「こい」と言うと、康太の背後にある襖が開き、その奥からデーモンコアくんが歩いて出てきた。
「紹介しよう。俺のサーヴァント、バーサーカーだ。真名は……コイツから言うだろ」
「や゛ぁ゛!゛ホ゛ク゛、テ゛ー゛モ゛ン゛コ゛ア゛く゛ん゛っ゛て゛い゛う゛ん゛た゛!゛よ゛ろ゛し゛く゛ね゛!゛」
「あ、はは……。よろしく…ね…?」
真名を隠す気力も努力も感じられないデーモンコアくんの自己紹介に呆れ、それに戸惑う澄香を見て、心の中でだろうなと思いながらも、目線を移した。
その先にいるのは澄香のサーヴァント、セイバーだ。
「とりあえず、セイバーさん。そのいかにもな殺気とオーラ出すのやめてはくれませんか?こちらも、敵対心はさらさら無いものでして」
「悪いが、嫌だね。私らを利用する気が目に見えてわかる」
英霊の鑑定眼は伊達じゃないなと、心の中で毒づきながら、平静を保ち、会話を続けた。
「利用なんて言い方は辞めていただければ。あくまでも、協力関係を結びたい。それが本望なので」
嘘は言っていない。ただ、協力関係が終わったら辞退させるか、自害させるか、消し飛ばすかの3択があるだけの話だ。
「とりあえず、協力してくださるのなら、あなた方の不利益になるような事はしませんよ」
「ハッ!どうだかな。お前みたいな胡散臭いやつは信用ならないもん───」
「やります」
康太の持ちかける提案を断るセイバーの声を遮り、澄香が決心を付け、そう言い放つ。
それに度肝を抜かれたようにセイバーは驚きを隠せていない表情をし、康太は口角を少し上げた。
「そうと決まれば、これからよろしく頼む。伏見、そしてセイバーさん」
康太は澄香に手を伸ばし、澄香と握手を交わす。それをセイバーは苦虫を噛み潰したよう顔で見ながらも、自身のマスターの同意であるなら仕方がないと、渋々容認し、康太はセイバー陣営との協力関係を結ぶことに成功した。
<谷田川聖杯戦争>
【ルール】
・聖杯によって選ばれたマスターとサーヴァントが生き残りを懸けて戦う。
・最後まで勝ち残った1組のみ、聖杯にて己の願望を叶える事が出来る。
・聖杯戦争に参加できるのは7名の魔術師と7騎のサーヴァント。
・召喚できるサーヴァントは神性を持たない者のみ。それ以外であれば地域知名度関係なく召喚することが可能となる。
・サーヴァントを失ったマスターと、マスターを失ったサーヴァントが再契約を結ぶ事は許可されている。
・監視役として、聖堂教会から監督者が派遣される。
・神秘の秘匿のため、戦闘は夜または人目に付かない場所で行う。違反者には監督役から罰則や他のマスターへ討伐指令が出されるといったペナルティが発生する。