艦娘にガンダムを布教してみた!   作:ヨリヨリ

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球磨、いっクマーす!!

 

 

 

青く澄み渡った空を、一機の巨大な航空機が飛んでいた。

 

試製艦娘空挺輸送機、通称ガウ攻撃空母。とある鎮守府の提督が発案し、工作艦明石と妖精たちが完成させた、既存の軍事常識を根底から覆す新兵器である。

その巨体は、従来の航空機とは比較にならない積載能力を誇り、艦娘を艤装ごと戦場まで輸送することを可能としていた。さらに十分な高度を維持することで、深海棲艦の水上砲撃から身を守ることもできる。

 

もっとも、だからといって敵が大人しく見逃してくれるわけではなかった。

 

『敵艦隊、対空砲撃を開始!』

 

艦橋に龍驤の声が響く。

眼下に広がる海面では、深海棲艦の艦隊が一斉に砲門を空へと向けていた。無数の砲弾が撃ち上げられ、青空に黒い爆煙の花を咲かせる。

しかし、砲弾のほとんどはガウの高度まで届かない。届いたものも機体から大きく離れた位置で炸裂し、巨大な輸送機は悠々と敵艦隊の上空へ接近していた。

 

『いやあ、ほんまに飛ぶもんやなぁ。これ、めっちゃおもろいで!』

 

龍驤の楽しそうな声が無線に流れる。

一方、機体後部の格納庫では、ある艦娘が文字どおり震え上がっていた。

 

「む、無理クマ……絶対に無理クマ……!」

 

球磨である。

艤装を装着した彼女は、閉ざされた後部ハッチの前で膝を抱えるように座り込んでいた。額には脂汗が浮かび、時折機体が揺れるたびに肩を跳ねさせている。

 

「球磨、大丈夫っぽい?」

 

隣に立っていた夕立が、不思議そうに顔を覗き込んだ。

 

「大丈夫なわけないクマ! なんで球磨たちが飛行機から飛び降りなきゃいけないクマ!?」

 

「でも、面白そうっぽい!」

 

「面白そうで戦争するなクマ!」

 

夕立はまったく気にした様子もなく、格納庫の壁に取り付けられた窓から外を眺めている。その表情は遠足に来た子供のように明るかった。

球磨には理解できなかった。

艦娘は海上で戦うものである。少なくとも、球磨はそう教わってきた。砲撃も雷撃も、海上での戦闘を前提として訓練を重ねてきたのである。

 

それなのに、なぜ今、自分は数千メートルもの上空にいるのだろうか。

なぜ飛行機から飛び降りなければならないのだろうか。

 

そもそも、なぜこの飛行機は本当に飛んでいるのだろうか。

考えれば考えるほど頭が痛くなる。

 

「……帰りたいクマ」

 

球磨が小さく呟いた、そのときだった。

 

ピコン。

格納庫の壁に設置された大型モニターが点灯した。

 

『球磨、聞こえて?』

 

「…………」

 

球磨は画面を見上げた。

そこに映し出されていたのは、見慣れた提督の顔だった。ただし、服装がいつもと違っている。

白を基調として胸元や襟にピンク色が使われた、ホワイトベースの女性用制服。頭には金髪のかつら。おまけに、なぜか声の調子まで普段とは異なっていた。

 

球磨は目を細めた。

 

「……提督?」

 

『球磨、あなたに聞きたいことがあるの』

 

「…………」

 

『あなた、艦娘で空中戦をやる自信あって?』

 

「ないクマ!!」

 

即答だった。

 

「艦娘は上空で戦うことを想定していないクマ! 無茶言わないでほしいクマ!!」

 

言い終えたところで、球磨は何かに気づいた。

 

「……あれ?」

 

どこかで聞いたようなやり取りだった。

昨夜、提督に見せられたアニメ。あの赤いモビルスーツが登場する作品で、確か主人公の少年が似たようなことを言っていた気がする。

球磨が嫌な予感を覚えた瞬間、モニターの向こうで提督が微笑んだ。

 

『大丈夫。自由落下なら一分以上空中にいられるのよ』

 

「だから何クマ!?」

 

『あなたならできるわ』

 

「おだてないでほしいクマー! 無理なものは無理クマ!」

 

『球磨、あなたの実力を私は信じているわ』

 

「気持ち悪い声で喋るなクマ!!」

 

提督のセイラ・マスの物まねは、腹立たしいことに少しだけ似ていた。声の抑揚や、穏やかに語りかける仕草まで妙に研究されている。

だが、それを中年の男が女性用制服と金髪のかつらで演じているとなれば、話は別だった。

 

『球磨、聞いて。艤装の姿勢制御装置と着水用の減速装置は、明石が調整してくれたわ。空中でも砲撃できることは実験で確認済みよ』

 

「じゃあ提督が飛び降りればいいクマ!」

 

『私はあなたを信じているの』

 

「会話するクマ!!」

 

その横で夕立が手を振った。

 

「提督さん! 夕立も飛んでいいっぽい?」

 

『もちろんよ、夕立。あなたにも期待しているわ』

 

「やったー!」

 

「夕立ぃ!? 少しは怖がるクマ!」

 

しかし、夕立は既に出撃準備を始めていた。艤装の固定を確認し、明石から渡された姿勢制御装置のスイッチを入れる。小さな妖精が親指を立てて準備完了を知らせた。

球磨はそんな夕立を見ながら、深いため息をついた。

 

ここまで来てしまった以上、逃げることはできない。下では敵艦隊が待ち構えているし、夕立一人を送り出すわけにもいかなかった。

それに、何だかんだで提督の指揮能力は信用している。

普段はあんな格好をしているが、作戦そのものにはきちんと勝算があるのだろう。

 

……たぶん。

 

「……分かったクマ」

 

球磨はゆっくりと立ち上がった。

 

「出るクマ。だから、ハッチを開けてほしいクマ」

 

『分かったわ』

 

提督が頷く。

 

直後、警告灯が赤く点滅し、格納庫の後部ハッチがゆっくりと開き始めた。

轟音とともに猛烈な風が流れ込む。眼下には果てしなく広がる青い海。その遥か下に、深海棲艦の艦隊が小さく見えていた。

 

球磨はごくりと唾を飲み込んだ。

 

「……行くクマ」

 

『球磨』

 

「なんだクマ!?」

 

『忘れていることがあるわ』

 

「……は?」

 

モニターの向こうで、提督がにっこりと笑った。

 

『決め台詞よ』

 

「…………」

 

『ほら、あれを言わないと』

 

「……提督?」

 

『言ってくれないと、出撃許可を出せないわ』

 

球磨の顔がみるみる赤くなった。

 

「こ、こんなときまでガンダムごっこをする気クマ!?」

 

『大切なことよ、球磨』

 

「何が大切クマ!?」

 

『さあ、勇気を出して』

 

「ううう……!」

 

球磨は拳を握りしめた。

 

恥ずかしい。物凄く恥ずかしい。しかし、このまま言い争っていても埒が明かない。

それに、夕立まで期待に満ちた目でこちらを見ている。

 

「球磨ちゃん! 早く早く!」

 

「分かってるクマ!」

 

球磨は深呼吸した。

そして、顔を真っ赤にしながら、半ばやけくそで叫んだ。

 

「球磨、いっクマーす!!」

 

『よく言えたわ、球磨』

 

「もう二度と言わないクマ!!」

 

その瞬間だった。

 

「夕立も行くっぽーい!」

 

「……え?」

 

ドンッ。

 

夕立が勢いよく球磨の背中に飛びついた。

 

「あっ」

 

球磨の足が床から離れた。

 

「ああっ!?」

 

二人の身体が、開いたハッチの向こうへと飛び出す。

 

「夕立ぃぃぃぃぃっ!?」

 

球磨の絶叫が大空に響き渡った。

青空を、二つの小さな影が落下していた。

 

「クマアアアアアアアアッ!!」

 

「わあああ! すっごいっぽーい!」

 

球磨と夕立は、猛烈な風を浴びながら海面へ向かって落ちていく。

二人の反応は対照的だった。

 

夕立は両手を広げ、まるで空を飛ぶ鳥のように楽しんでいる。一方の球磨は、必死に手足をばたつかせていた。

 

「死ぬクマ! 絶対死ぬクマ!!」

 

「球磨ちゃん、姿勢制御っぽい!」

 

「それどころじゃないクマァァァ!!」

 

「でも、もう敵が見えてるっぽい!」

 

その言葉に、球磨の表情が変わった。

 

眼下には深海棲艦の艦隊。こちらに気づいた敵の対空砲が、ゆっくりと向きを変え始めている。

 

球磨は歯を食いしばった。

怖がっている場合ではない。

 

自分は艦娘だ。戦場に出た以上、やるべきことは決まっている。

 

「……くっ!」

 

球磨は姿勢制御装置を作動させた。

艤装の各所から小さな噴射音が響き、乱れていた姿勢が安定する。身体をひねって敵艦隊へ正面を向けると、両腕の主砲を構えた。

 

「夕立! 右側を頼むクマ!」

 

「了解っぽい!」

 

夕立も器用に身体を回転させ、艤装を敵へ向ける。

 

落下しながらの砲撃。

それは、従来の艦娘には想定されていなかった戦闘方法だった。しかし、球磨と夕立は空中においても、その卓越した戦闘感覚を失ってはいなかった。

 

「撃つクマ!」

 

砲声。

球磨の主砲が火を噴き、放たれた砲弾が敵駆逐艦の近くに着弾する。

続けて放った砲弾が、今度は敵の艦首を捉えた。

 

「命中クマ!」

 

「こっちも行くっぽい!」

 

夕立が空中で身体をひねりながら砲撃する。放たれた砲弾は敵軽巡洋艦を直撃し、その艤装を吹き飛ばした。

 

敵艦隊が混乱する。

上空から砲撃を受けること自体は、深海棲艦にとって珍しいことではない。だが、それが航空機ではなく、砲と魚雷を装備した艦娘によるものとなれば話は別だった。

 

予測できない方向から降り注ぐ砲撃。

そして、空中を落下しながら自在に姿勢を変える二人の艦娘。

 

『球磨! 夕立! 敵艦隊が混乱しているわ!』

 

無線から提督の声が響いた。

 

「分かってるクマ!」

 

『素晴らしいわ、二人とも!』

 

「だからその声やめるクマ!!」

 

球磨は怒鳴りながら次の目標に砲口を向けた。

夕立は既に別の敵を狙っている。

 

「球磨ちゃん! 下に着くっぽい!」

 

「了解クマ!」

 

二人は同時に減速装置を作動させた。

艤装に仕込まれた妖精製の装置が勢いよく作動し、落下速度が急激に低下する。

 

直後、二人の足が海面に触れた。

大きな水しぶきが上がる。

しかし、二人は倒れない。慣れ親しんだ海上に戻った瞬間、艦娘としての機動力を取り戻し、そのまま敵艦隊に向かって疾走を始めた。

 

「ここからは球磨の得意分野クマ!」

 

「夕立も本気で行くっぽい!」

 

二人が左右に分かれる。

 

球磨は敵の砲撃を鋭く回避しながら距離を詰め、夕立は高い機動力を生かして敵の側面へ回り込んだ。

上空からの奇襲によって崩れた敵の陣形は、もはや立て直しが利かない。

次々と水柱が上がり、深海棲艦が撃破されていく。

 

『こちらガウ、戦況を確認したで! いやあ、二人ともやるやん!』

 

操縦席から龍驤の声が届いた。

 

「当然クマ! 球磨たちを誰だと思ってるクマ!」

 

『ほな、あとちょっとやな! 頑張りやー!』

 

「言われなくても分かってるクマ!」

 

そう答えた球磨だったが、ふと違和感に気づいた。

主砲の残弾が少ない。

 

空中戦から続く連戦によって、想定以上に弾薬を消費していたのだ。

 

「……まずいクマ」

 

球磨は残弾を確認し、舌打ちした。

このままでは、敵をすべて撃破する前に弾が尽きてしまう。

 

だが、そのとき一つのことを思い出した。

出撃前、提督が何やら得意げに説明していたはずだ。

 

『ガウには予備の武装と弾薬を積んである。足りなくなったらいつでも連絡したまえ』

 

確か、そんなことを言っていた。

球磨はすぐさま通信を開いた。

 

「提督! 球磨の主砲弾が残り少ないクマ! 補給を頼むクマ!」

 

『……球磨、聞こえて?』

 

「まだセイラさんやってるクマ!?」

 

『残念だけど、今は主砲の補給ができないわ』

 

「なんでクマ!?」

 

『補給装置の調整がまだ終わっていないの』

 

「じゃあなんで予備の武装を積んでるって言ったクマ!?」

 

『でも、安心して』

 

「……何クマ?」

 

提督は画面の向こうで、実に優しげな笑みを浮かべた。

 

『艦娘ハンマーなら出せるわ』

 

「…………」

 

球磨は一瞬、言葉の意味を理解できなかった。

 

「……ハンマー?」

 

『ええ。艦娘ハンマーよ』

 

「…………」

 

『使ってみる?』

 

球磨は空を見上げた。

 

遥か上空では、ガウが悠々と旋回している。

自分は今、深海棲艦と交戦中だ。主砲の弾薬が不足しているから補給を求めた。それなのに、この男は一体何を言っているのだろうか。

 

「提督」

 

『なあに?』

 

「球磨は主砲の弾が欲しいクマ」

 

『だから、それは今出せないの』

 

「じゃあ魚雷でもいいクマ!」

 

『艦娘ハンマーならあるわ』

 

「会話するクマ!!」

 

だが、もはや何を言っても無駄だった。

球磨は額を押さえ、深いため息をついた。

 

「……もういいクマ」

 

『あら?』

 

「それでいいクマ! 早く寄越すクマ!!」

 

『分かったわ!』

 

提督の声が、途端に明るくなった。

 

『龍驤! 例のものを!』

 

『了解や! ほな、落とすでー!』

 

ガウの機体下部から、何かが切り離された。

それは小さなパラシュートを開きながら、ゆっくりと降下してくる。

球磨は目を細めた。

 

「……何クマ、あれ」

 

黒く巨大な鉄球。

表面には無数の突起があり、太い鎖が取り付けられている。

まさしく、昨夜見せられたアニメに登場したガンダムハンマーそのものだった。

 

「……本当に作ったクマ」

 

明石と妖精たちの技術力には、今さら驚く気にもなれなかった。

鉄球は球磨の頭上へ近づくと、姿勢制御用の小さな噴射装置によって速度を落とした。

 

球磨は水上を滑りながら鎖を掴み、勢いを利用して鉄球を受け止める。

ズシン、と重たい衝撃が腕に伝わった。

 

「……重いクマ!」

 

だが、振り回せないほどではない。

艤装の補助を受けながら鎖を握り直し、球磨は巨大な鉄球を持ち上げた。

 

『どうかしら、球磨?』

 

提督の声が弾んでいる。

 

『なかなか似合っているわよ』

 

「…………」

 

『球磨?』

 

「……提督」

 

『なあに?』

 

「絶対これ使わせたいだけクマー!!」

 

球磨の怒声が通信回線を震わせた。

しかし、提督は笑うばかりだった。

 

『ふふっ。あなたなら使いこなせるわ』

 

「もうその物まねやめるクマァァ!!」

 

そのとき、球磨の正面から敵軽巡洋艦が接近してきた。

敵は砲門を向け、今まさに攻撃を仕掛けようとしている。

 

球磨の目が鋭くなった。

 

「……ちょうどいいクマ」

 

両手で鎖を握りしめる。

巨大な鉄球が、ゆっくりと動き始めた。

 

「こんな馬鹿みたいな武器……!」

 

一回転。

鉄球が唸りを上げて空気を切り裂く。

二回転。

 

鎖が大きな円を描き、球磨の周囲に水しぶきが舞い上がった。

 

「使えるわけないと思ってたクマ!!」

 

三回転。

敵軽巡洋艦が砲撃を開始する。

だが、その瞬間には球磨は既に動いていた。

 

「当たれクマァァァァ!!」

 

鎖を握った腕を大きく振り抜く。

巨大な鉄球が凄まじい勢いで飛び出した。

次の瞬間、敵軽巡洋艦の艤装に艦娘ハンマーが直撃した。

 

鈍い轟音。

 

装甲が砕け、敵の身体が大きく吹き飛ぶ。

球磨は鎖を引き戻しながら、思わず目を丸くした。

 

「…………」

 

沈黙。

 

「……強いクマ」

 

『そうでしょう?』

 

無線から提督の得意げな声が届く。

球磨ははっと我に返った。

 

「ち、違うクマ! こんなものが強いわけないクマ!」

 

『でも、今の一撃は見事だったわ』

 

「うるさいクマ!!」

 

その横を夕立が通り過ぎる。

 

「球磨ちゃん! すっごくかっこよかったっぽい!」

 

「夕立まで何言ってるクマ!」

 

「夕立も欲しいっぽい!」

 

「絶対やめとくクマ!!」

 

だが、提督はその言葉を聞き逃さなかった。

 

『あら、夕立も欲しいの?』

 

「欲しいっぽい!」

 

『じゃあ、明石に相談してみるわ』

 

「増やすなクマー!!」

 

球磨の抗議など、誰も聞いていなかった。

さらに、正面から残存する敵駆逐艦が接近してくる。

球磨は顔をしかめた。

 

「……もう!」

 

再びハンマーを振り回す。

 

「全部提督のせいクマ!」

 

鉄球が敵の砲撃をかいくぐり、その艤装を直撃する。

 

「こんな変な武器作るから!」

 

続けて二隻目。

 

「球磨がこんな目に遭うクマ!」

 

三隻目の敵が、ついに海中へと沈んだ。

夕立はそんな球磨を眺め、目を輝かせていた。

 

「わあ……球磨ちゃん、無双してるっぽい!」

 

『素晴らしいわ、球磨!』

 

提督が感極まったように声を上げる。

 

『あなた、立派なガンダム乗りになったわね!』

 

「球磨は艦娘クマァァァァ!!」

 

こうして、人類史上初となる艦娘の空挺強襲作戦は成功を収めた。

深海棲艦の艦隊は壊滅。味方の損害は軽微。奇襲戦術としての有効性も実証され、作戦は大成功と評価されたのである。

 

ただし、後日提出された戦闘報告書には、一つだけ奇妙な記述が残されていた。

 

『軽巡洋艦球磨、試製大型打撃兵装艦娘ハンマーを使用。敵艦複数隻を撃破』

 

報告書を確認した大淀は、長い時間、その一文を眺めていたという。

そして、ようやく口を開いた。

 

「……提督」

 

「なんだね、ドレン?」

 

「大淀です。この艦娘ハンマーについてですが」

 

「うむ。素晴らしい戦果だったろう?」

 

「…ええ。戦果は認めます」

 

「そうだろう、そうだろう!」

 

大淀は深く息を吸った。

 

「ですが、一つだけ質問があります」

 

「聞こう」

 

「補給用の主砲弾を積まずに、なぜ艦娘ハンマーを積んでいたんですか?」

 

「…………」

 

提督はゆっくりと椅子から立ち上がった。

そして窓の外へ向き直る。

 

「……認めたくないものだな」

 

「…………」

 

「自分自身の、若さゆえの過ちというものを……」

 

「だからそれ言いたいだけでしょうがぁぁぁ!!」

 

その日もまた、鎮守府には大淀の怒声が響き渡るのであった。

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