その個性を、ぶち壊す! 〜レベル0と無個性 二人の英雄(ヒーロー)〜 作:まだら模様
続くかは知りません。
にわか知識なのであしからず。
「少し、話をしないか」
オールマイトの言葉に、出久と上条は顔を見合わせた。
人目につかない場所へ移動したあと、オールマイトは二人に向き直った。
「その前に、上条少年。さっきの右手の話だが」
「……右手?」
「異能なら何でも打ち消す。そう言っていたな」
「はい。まあ、そうらしいんですけど」
「ならば、君にも聞いてもらわなければならない。いや、聞いておいてもらわなければ困る」
オールマイトの声が、ふいに低くなった。
「これから話すことは、他言無用だ。私は、これを今まで誰にも明かさずにきた」
「……俺が聞いて、いいんですか」
「君が緑谷少年の隣にいるからだ。それに、君の右手が、これから話す力にどう作用するのか、私にも分からない。知らないまま触れ合って、何かが起きてからでは遅い」
上条は、少しだけ黙った。
「……分かりました。誰にも言いません」
「頼んだぞ」
「まあ、俺の場合、口を滑らせるタイミングまで不幸な方向に転がりそうなんで、気をつけます」
「はっはっは! 気を引き締めてくれたまえ!」
オールマイトは笑い、それから出久へと向き直った。
「まず、緑谷少年」
「は、はい!」
「君は、ヒーローになりたいのだな?」
「……はい!」
出久は、今度は迷わなかった。
「個性がないことは分かっています。それでも、僕は……誰かを助けられるヒーローになりたいんです!」
オールマイトは、しばらく出久を見つめていた。
ヘドロのヴィランから爆豪を助けようとしたとき、出久は何の力も持っていなかった。
それでも、考えるより先に身体が動いた。
自分が傷つくことより、目の前の少年を助けることを選んだ。
オールマイトは、力強く頷いた。
「ならば、私が君を鍛えよう」
「……え?」
「君には、ヒーローになるための力を得る機会がある」
オールマイトは、自分の胸に手を当てた。
「私の個性、ワン・フォー・オール。それを、君に継承したい」
「……ワン・フォー・オール?」
出久は、言葉の意味を理解できずに固まった。
オールマイトは、ワン・フォー・オールがどのような個性なのか、そして自分がなぜ次の継承者を探しているのかを説明した。
そして、ふっと息を吐いた。
筋骨隆々だった身体が、みるみるしぼんでいく。
そこに立っていたのは、頬のこけた痩身の男だった。
「これが、今の私だ。五年前の戦いで負った傷のせいで、ヒーローとして活動できる時間は、もう長くない」
出久は言葉を失った。
上条も、息をのんだ。
平和の象徴の、誰も知らない姿だった。
それは、単に強い個性を与えるという話ではなかった。
長い年月をかけて受け継がれてきた力。
そして、その力とともに背負うことになる責任。
「君には、覚悟が必要だ」
オールマイトは、真剣な眼差しで告げた。
「力を得れば、君は今までとは違う世界に足を踏み入れることになる。危険も増える。苦しいこともあるだろう」
「……」
「それでも、君はヒーローになりたいか?」
出久は、唇を噛んだ。
自分には何もない。
個性も、力も、戦う術も。
それでも、誰かを助けたいという気持ちだけは、捨てられなかった。
「……なりたいです」
出久は、顔を上げた。
「僕は、ヒーローになりたいです!」
オールマイトは、笑った。
「よし!」
その声に、出久の目から涙が溢れた。
夢が、現実へと変わろうとしていた。
だが、その隣で話を聞いていた上条は、少し困ったような顔をしていた。
「……あの、オールマイト」
「どうした、上条少年?」
「俺は、どうすればいいんですかね」
オールマイトは、上条を見た。
「君にも、考えてほしいことがある」
「考えてほしいこと?」
「君は、先ほど何を考えて行動した?」
上条は、少しだけ考えた。
「……何も」
「何も?」
「いや、正確には、あいつが危なかったんで。助けなきゃ、と思っただけです」
上条は肩をすくめた。
「別に、ヒーローになろうとか、そんなことを考えていたわけじゃありません」
「そうか」
オールマイトは、否定しなかった。
「ならば、君はどうしたい?」
「……どうしたいって」
「君は、今日のようなことがあったら、また同じように動くのではないか?」
上条は、すぐには答えなかった。
答えられなかった。
自分のことは、自分が一番よく分かっている。
目の前で誰かが困っていたら、きっとまた助けようとする。
相手が知らない人間でも。
自分に何の得がなくても。
助けた結果、余計な面倒事に巻き込まれると分かっていても。
結局、放っておけないのだ。
「……まあ、そうでしょうね」
上条は、苦笑した。
「俺、そういう性分なんで」
オールマイトは、静かに頷いた。
「君は、ヒーローという肩書きに興味がないのかもしれない」
「正直、そうですね」
「だが、君には人を助ける力がある。そして、何よりも、人を助けずにはいられない心がある」
上条は、黙って聞いていた。
「君がヒーローになるかどうかは、君自身が決めることだ。私は、無理に勧めるつもりはない」
オールマイトは、まっすぐに上条を見つめた。
「だが、君のような少年が、ヒーローを目指す道を選んでくれたなら……私は、嬉しく思う」
上条は、視線を落とした。
ヒーロー。
今まで、自分とは無縁だと思っていた言葉だった。
目の前で誰かが苦しんでいるのに、見て見ぬふりができない。
今日のように。
「……上条君」
出久が、隣から声をかけた。
「僕は、ヒーローになりたい」
出久は、まだ涙の残る目で笑った。
「上条君がヒーローになるかどうかは、上条君が決めることだと思う。でも……もし、同じ道を歩いてくれたら、僕は嬉しい」
「緑谷……」
「だって、上条君がいたから、僕は今日、爆豪君を助けることができたんだ」
出久は、拳を握った。
「僕は、上条君みたいに強くなりたい。誰かを助けるために、ちゃんと動ける人間になりたいんだ」
上条は、困ったように笑った。
「お前、俺を買いかぶりすぎだろ」
「そんなことないよ」
「……はあ」
上条は、空を見上げた。
自分は、ヒーローになりたいわけではない。
それでも。
もしヒーローになることが、誰かを助けるための道になるのなら。
自分がこれからも、目の前の誰かを放っておけないのなら。
その道を選ぶことに、意味があるのかもしれない。
「……まあ、考えときます」
上条は、そう答えた。
今は、それ以上のことを言えなかった。
オールマイトは、穏やかに頷いた。
「それでいい」
そして、彼は出久へと向き直った。
「緑谷少年。君がワン・フォー・オールを継承するためには、まず身体を鍛えなければならない」
「は、はい!」
「これから十か月。私と一緒に、鍛錬を積もう!」
「十か月……!」
出久は、驚きながらも力強く頷いた。
「よろしくお願いします、オールマイト!」
その姿を見ながら、上条は小さく息を吐いた。
これから、どうなるのだろう。
自分の右手に宿る力。
緑谷の夢。
そして、ヒーローという道。
まだ、何一つ答えは出ていない。
翌日から、出久と上条は、オールマイトの指導のもとで鍛錬を始めた。
とはいえ、最初から華々しい訓練が待っていたわけではない。
「まずは、ここを片付ける!」
オールマイトが指差したのは、海岸に積み上がった大量の粗大ゴミだった。
壊れた家具。
錆びた金属。
流れ着いたプラスチック。
何年も放置されたままの廃棄物が、砂浜を埋め尽くしていた。
「これを、十か月かけて綺麗にするのだ!」
「……え?」
出久が固まった。
上条も、思わず海岸を見渡した。
「いやいやいや、待ってください。これ、どんだけあるんですか!?」
「たくさんあるな!」
「いや、そういう問題じゃねえだろ!」
上条の叫びが、海岸に響いた。
オールマイトは豪快に笑った。
「身体を鍛えるには、うってつけだ!」
こうして、二人の鍛錬が始まった。
最初の一週間は、ひたすら体力作りだった。
ゴミを運ぶ。
重いものを持ち上げる。
砂浜を走る。
疲れたら休み、休んだらまた動く。
出久は、すぐに息が上がった。
上条も、決して体力に余裕があるわけではなかった。
その三日目のことだった。
上条が運んでいた壊れた家具の山が、なぜか彼の頭上にだけ崩れ落ちてきた。
「ふ、不幸だー!」
「上条君!?」
ガラクタの下から聞こえる悲鳴に、出久が慌てて駆け寄る。
少し離れた場所では、オールマイトが腹を抱えて笑っていた。
「笑ってないで助けてくださいよ!」
「いや、すまん! あまりに見事な崩れ方だったのでな!」
それでも、二人は毎日、少しずつ作業を進めた。
「はあっ……はあっ……」
夕方。
出久は、砂浜に座り込んだ。
「もう、腕が……」
「無理すんなよ。今日はここまでにしようぜ」
上条も隣に腰を下ろした。
オールマイトは、少し離れた場所から二人を見守っていた。
「よく頑張ったな、少年たち!」
「……ありがとうございます」
出久は、息を整えながら答えた。
上条は、砂浜に仰向けになった。
「……不幸だー」
「上条君、まだ始まったばかりだよ」
「それが一番不幸なんだよ……」
出久は、思わず笑った。
疲れ切った身体には、笑う余裕すら残っていなかったはずなのに。
それでも、隣に上条がいると、不思議と気持ちが軽くなった。
数週間が過ぎた。
少しずつ、身体が変わり始めた。
出久は、以前より長く走れるようになった。
重いものも、以前より安定して運べるようになった。
上条も、持久力と筋力がつき、動きに余裕が出てきた。
だが、鍛錬は体力作りだけではなかった。
「上条君、ちょっといい?」
ある日、作業の合間に出久が声をかけた。
「ん?」
「僕、上条君の戦い方について、少し考えてみたんだ」
「……戦い方?」
「うん。上条君の右手は、相手の個性を打ち消せる。でも、右手で触れなければ効果がないんだよね?」
「まあ、そうだな」
「だったら、相手の攻撃を避けて、右手で触れられる位置まで近づくことが大事になると思うんだ」
出久は、ノートを開いた。
そこには、上条の戦闘を観察した記録が書かれていた。
右手を使う際の姿勢。
相手の攻撃を避ける方向。
足場によって変わる動き。
幻想殺しが通用する相手と、通用しない相手の違い。
「……お前、こんなことまで考えてたのか」
「うん。上条君の力は強いけど、万能じゃないから」
出久は、真剣な顔で続けた。
「だからこそ、どう使うかが大事だと思うんだ」
上条は、しばらくノートを見つめていた。
自分の力について、ここまで真剣に考えてくれた人間は、初めてだった。
「……ありがとな」
「え?」
「いや。助かるよ」
上条は、少し照れくさそうに笑った。
それから、今度は上条が出久に声をかけた。
「なあ、緑谷」
「何?」
「お前も、身体の使い方を覚えた方がいい」
「……身体の使い方?」
「そう。頭で分かってても、身体が動かなきゃ意味がないだろ」
上条は、地面に落ちていた小枝を拾った。
「相手が攻撃してきたとき、真正面から受け止める必要はない。避けられるなら避ける。相手が体勢を崩したら、その隙を使う」
上条は、小枝を振るようにして動きを示した。
「力がないなら、力以外のものを使えばいい。地形でも、相手の動きでも、周りにあるものでもな」
出久は、食い入るように見つめていた。
「……なるほど」
「もちろん、俺も大したことはできないけどな」
上条は肩をすくめた。
「少なくとも、真正面から殴り合うよりはマシだろ」
その日から、二人は鍛錬の合間に、簡単な実戦形式の練習を始めた。
上条は、出久に足運びや回避の仕方を教えた。
出久は、上条に相手の動きの分析や、戦闘中の状況判断を伝えた。
二人は、それぞれが持っているものを出し合いながら、少しずつ成長していった。
もちろん、失敗もあった。
出久は、相手の動きを読むことに集中しすぎて、身体が反応する前に攻撃を受けることがあった。
上条は、幻想殺しが効くと思い込んで不用意に近づき、危うく大きな怪我をしかけた。
「上条君、今のは危なかったよ!」
「分かってるって……!」
「分かってるなら、どうして避けなかったの!?」
「いや、あれは……いけると思ったんだよ!」
「その判断が間違ってたんだよ!」
「ぐっ……!」
出久の指摘に、上条は言葉を詰まらせた。
反対に、出久も上条から厳しい指摘を受けることがあった。
「緑谷、考えすぎだ」
「えっ?」
「相手の動きを読むのはいい。でも、全部を予測しようとするな」
上条は、出久の肩を軽く叩いた。
「予測が外れたとき、動けなくなるだろ。だったら、外れたときにどうするかも考えとけ」
「……そっか」
「何が起きても、すぐに立て直せるようにする。それも大事なんじゃねえの」
出久は、ノートにその言葉を書き留めた。
鍛錬は、身体だけではなかった。
雄英高校の入試には、実技のほかに筆記試験がある。
しかも、その偏差値は全国でもトップクラスだった。
「……上条君」
夕方、ノートを広げた出久が、深刻な顔で上条を見ていた。
「模試の結果、見せてもらえるかな」
「え。いや、それは……」
「見せて」
上条は、観念して鞄から一枚の紙を取り出した。
出久は、それを受け取ったまま固まった。
「……全教科、合格ラインの半分もない」
「だから見せたくなかったんだよ!」
「どうして今まで黙ってたの!?」
「補習の常連なんて、わざわざ言うことでもねえだろ!」
「雄英の筆記は、これだと実技より先に落ちるよ!」
「ぐっ……」
反論できなかった。
出久は、深く息を吸った。
「分かった。僕が教える」
「……え?」
「実技の練習は、上条君が教えてくれてる。だから、勉強は僕の番」
その日から、鍛錬のあとの夕方は、砂浜にノートを広げる時間になった。
出久の教え方は、驚くほど丁寧だった。
間違えやすい箇所をあらかじめ洗い出し、解き方を何通りも用意している。
「ここは、公式を覚えるより先に、なぜこの形になるのかを考えるんだ」
「なるほど……って、なんで風でページがめくれるんだよ!」
海風がノートを巻き上げ、ページが上条の顔面に張りついた。
「不幸だー!」
「上条君、押さえて押さえて!」
出久は笑いながらも、手を止めなかった。
ときには、疲れ切った上条が、ノートの上で寝落ちすることもあった。
「上条君、起きて。まだ三問残ってるよ」
「……あと五分だけ……」
「それ、さっきも言ったよね」
それでも、出久は見捨てなかった。
「……悪い、緑谷。もう一回、最初から頼む」
「うん!」
季節が移り変わる。
海岸のゴミは、少しずつ減っていった。
出久の身体は鍛えられ、走る速度も、持ち上げられる重量も増えていった。
上条もまた、以前よりも素早く動けるようになり、無駄な動きを減らしていった。
もっとも、不運だけは相変わらずで、彼の頭上にだけ鳥が群がる日もあったし、彼が選んだ列だけ進まない日もあった。
「不幸だー……」
そんな声が、海岸に響く日々が続いた。
そして、十か月目。
「……終わった」
出久は、綺麗になった海岸を見つめていた。
かつて大量のゴミに埋め尽くされていた砂浜には、青い海と広い空が広がっている。
「やったな、緑谷」
上条が隣に立った。
「うん……!」
出久は、拳を握りしめた。
十か月。
長いようで、短い時間だった。
苦しいこともあった。
何度も失敗した。
それでも、二人は最後までやり遂げた。
「よく頑張ったな、二人とも!」
オールマイトが、満足そうに頷いた。
「緑谷少年。君は、十分にワン・フォー・オールを受け継ぐ準備ができた」
「……はい!」
出久は、まっすぐにオールマイトを見つめた。
そして、上条もまた、自分の拳を握った。
自分がヒーローになりたいのか。
その答えは、まだ完全には出ていなかった。
だが、少なくとも、今の自分なら。
以前よりも、誰かを助けるためにできることが増えている。
その実感があった。
ワン・フォー・オールの継承は、静かに行われた。
オールマイトは、自分の髪を一本、出久に手渡した。
「これを飲みなさい」
「……えっ!?」
出久は固まった。
「の、飲むんですか!?」
「そうだ!」
「え、えええっ!?」
上条は、思わず顔を引きつらせた。
「いや、待ってください。そういうものなんですか!?」
「そういうものだ!」
「いや、説明が雑すぎるだろ!」
結局、出久は覚悟を決めて髪を飲み込んだ。
そして、ワン・フォー・オールは、出久へと受け継がれた。
それは、長い年月をかけて受け継がれてきた力。
今まで出久が持っていなかった、強大な個性だった。
「……これが」
出久は、自分の手を見つめた。
「僕の、個性……」
その表情には、喜びと不安が入り混じっていた。
オールマイトは、出久の肩に手を置いた。
「忘れるな、緑谷少年。力を得たからといって、すぐに使いこなせるわけではない」
「はい」
「焦らず、少しずつ身につけていくんだ」
「……はい!」
上条は、二人のやり取りを見守っていた。
自分には、ワン・フォー・オールは与えられなかった。
だが、それでよかった。
これは、出久が受け継ぐべき力なのだ。
自分は自分のやり方で、できることを増やしていけばいい。
「緑谷」
「ん?」
「これから大変だろうけど、頑張れよ」
「……うん!」
出久は、力強く頷いた。
「上条君も、一緒に頑張ろう!」
「おう」
上条は笑った。
まだ、自分がヒーローになると決めたわけではない。
それでも、雄英高校を目指すことは決めていた。
「オールマイト」
「ん?」
「俺も、雄英を受けます」
「ほう」
「ヒーローになるって決めたわけじゃないです。ただ、あのヘドロのとき、緑谷が声をかけてくれなきゃ、間に合わなかったかもしれない。次は、自分だけでも間に合うようになりたいんで」
オールマイトは、嬉しそうに目を細めた。
「理由は、それで十分だ」
ヒーローという道が、そのために役立つのなら。
まずは、その道を歩いてみよう。
そう考えるようになっていた。
雄英高校の入試当日。
受験生たちが、試験会場へと向かっていく。
出久と上条も、校門の前で合流していた。
「……いよいよだね」
出久は、緊張した様子で呟いた。
「そうだな」
上条は、周囲を見渡した。
受験生たちの中には、明らかに戦闘向きの個性を持っていそうな者もいる。
身体そのものが変化している者。
強力な攻撃能力を持っていそうな者。
自信満々に笑っている者。
誰もが、これから始まる試験に向けて準備を整えていた。
「俺たちも、やるしかねえな」
「うん!」
二人は、拳を軽くぶつけ合った。
だが、彼らが向かう試験会場は同じではない。
受験番号と指定された会場が違うため、実技試験は別々に受けることになっていた。
「じゃあ、ここからは別行動だね」
「ああ。そっちはそっちで頑張れよ」
「上条君も!」
「おう」
出久は、自分の試験会場へと向かった。
上条も、指定された別の会場へと歩き出した。
その数歩目で、靴紐がぷつりと切れた。
「……不幸だー」
二人は、互いの試験を目撃することも、試験中に助け合うこともない。
ここから先は、それぞれが自分の力で切り抜けなければならなかった。
そして…本番
遠くで、実技試験の開始を告げるサイレンが鳴り響く。
10ヶ月間、ノートを擦り切れるまで読み込み、泥臭く予習を重ねてきた出久。
そして、不運に愚痴を叩きつけながらも、右手ひとつで現場に立つ上条。
助け合いのない、それぞれの試練が、いま幕を開ける。
やはりダブル主人公(?)ものは良いですね…
まあ私が書けるとは言ってないのですが…HAHAHA()
ここまで読んでくださってありがとうございます。
楽しんでいただけたら、今の時点での率直な評価をいただけると嬉しいです。続きを書く大きな励みになります。
「もう一作品、『緑谷出久は未来を予習しているだけなのに、全員に策士だと思われている』も投稿しています。そちらもよろしくです」と一行入れる