男の娘皇帝から股間を守れ!   作:股間Υ紳士

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02:男の娘皇帝と、天井のローズシャワー

花びらで人が死ぬわけがない。

 

普通、皆はそう笑い飛ばすだろう。

だが、古代ローマの狂気を舐めてはならない。

死因が『花びらによる窒息死』など、前世のネット掲示板でも聞いたことがない珍事だ。

 

近衛隊長官。

帝国の軍事と治安を司る最高峰の椅子。

それは叩き上げの私が就くには、あまりに荷が重すぎる席だった。

 

執務室の机には、山のようなパピルスの帳簿。

 

前皇帝の乱脈財政による赤字。

各属州軍団からの給与遅配の督促状。

 

前任者が放置した怪しげな未決書類。

有力議員フラックスによる『シリア薔薇商船沈没の免税申請』など、数え出したらキリがない。

 

「長官、本当に俺たちの退職金はちゃんと出るんですかい?」

 

部下の屈強な近衛兵が、不安げに尋ねてくる。

 

歴代皇帝は即位のたびに兵士へ下賜金を配った。しかしその本当の意味とは、金庫が空になれば即座に反乱で首が飛ぶからであって……。

まあ、うまい話にはワケがあるってことだ。

 

「安心しろ。共済年金として制度化する。絶対に踏み倒させん」

 

胸板を叩いて部下を安心させつつ、胃のしくしくとした痛みに奥歯を噛みしめる。

 

問題は財源だ。

金がないなら稼ぐか、元老院から毟るしかない。

 

---

 

「はあ……まったく、ままならんな」

 

回廊を歩けば、中庭から冷たい殺気が肌を刺す。

 

紫の長衣を纏った老婦人——皇祖母マエサ。

その傍らには、怯えたように母の裾を掴む十二歳の従弟——アレクサンデル。

 

「チッ……」

 

なるほど、完全に『邪魔者』を見る目だ。

 

祖母マエサにとって、十四歳の少年皇帝は意のままに操るための神輿にすぎない……はずだった。

 

しかし、その神輿に余計な知恵をつけてきた筋肉バカが現れるなど、予想もしなかったのだろう。

 

いや……私もこんなことになるとは一ミリも思ってなかったけどね?

 

——と、その時。

 

「オリエンタ長官! 皇帝陛下より至急の召喚命令でございます‼︎」

「……今度は何だ。また誰かを女装させようとでもしているのか?」

「いえ! 今宵、大宮殿の広間にて『大祝宴』を催すとのことで……!」

 

うーむ、嫌な予感しかしない。

 

あの悪ガキ皇帝が、ただ大人しく宴会を楽しむだけのはずがないのだ。

 

ともかく、私は大宮殿へとそそくさ足を速めた。

 

 

□■□■□

 

 

「うわっ⁉︎ なんだこの匂い……」

 

宴会場の重厚な扉を開けた瞬間、私の鼻腔を強烈な甘い香りが突き抜けた。

 

「ふむ……?」

 

香煙の向こう。

長椅子に横たわり、ワインを傾ける大勢の客。

皇帝の機嫌を取って甘い汁を吸おうとする取り巻きや、元老院の守旧派議員たちもいる。

 

まったく、普段は陰で悪口を叩いているくせに、実に都合の良い奴らである。

まあ、彼らなりの処世術ともいえるが。

 

その視線の先——。

 

上座の豪奢な玉座に腰掛けていたのは、今宵もまた息を呑むほど可憐な我が主だった。

 

「……ヘリオガバルス陛下」

 

透けるようなシリア風の薄絹ドレス。

胸元には無数の真珠と黄金の鎖が揺れている。

 

紫紺の瞳を妖しく細めたその様子は正に!

絶世の美少女神官……にしか見えないだろう?

 

しかし残念、十四歳の女装趣味ヤツである。

 

細い腰の帯には、あの『純金の去勢刀』が鈍い光を放って収まっていた。

 

「来た来た! 遅いよ、筋肉バカ!」

 

鈴を鳴らすような甘い声で手招きされる。

周囲の取り巻きたちが、一斉に媚びるような笑みを浮かべた。

 

「お呼び立てと伺い、馳せ参じました。……して、今宵の宴の趣旨は?」

「ん? ただの退屈しのぎだよ! 元老院の爺どもに、天国を見せてあげるの!」

 

悪魔のような無邪気な笑み。

 

その言葉を聞いた瞬間、いやーな悪寒が走った。

 

上座のすぐ脇。

元老院の守旧派を取りまとめる有力議員——フラックスが、冷酷な薄笑いを浮かべていた。

普段なら皇帝の招きなど仮病を使ってボイコットする古だぬきどもが、全員揃っている。

 

うーんこれは、何か悪いことを考えている顔だ。

 

「ほらほらオリエンタ! そんな所に突っ立ってないで、もっとボクの近くに来なよ!」

 

玉座の上から、皇帝がパタパタと手招きする。

 

仕方なく歩み寄ると、少年皇帝は私の腕をグイッと引っ張り、自分のすぐ隣へと立たせた。

 

「やっぱりキミは大きくて頼もしいね! ほら、その白ぶどうをボクに食べさせてよ」

「……陛下、私は近衛隊長官でございます。そのようなお世話は侍女にお命じください」

「いいじゃんか別に! ボクがキミの手から食べたいって言ってるの! はい、あーん!」

 

小さな口を開け、紫紺の瞳でじっと見上げる。

 

「やれやれ……今回だけでございますよ」

 

私はため息をつき、銀皿のぶどうを一粒つまんで少年の口へと運んだ。

 

「ん〜っ! おいしっ‼︎」

 

ヘリオガバルスは幸せそうに頬を緩め、わざとらしく私の指先を赤い舌でチロリと舐めた。

 

「…………」

「あははっ! 筋肉バカ顔が変な顔してる〜!」

 

ケラケラと無邪気に笑う皇帝。

周囲の議員たちから、「たかが成り上がりの筋肉ダルマが……」と敵意の視線が突き刺さる。

 

まったく、寿命が五分は伸びてしまった。

 

すると、ヘリオガバルスが私の耳元へ顔を寄せ、声を潜めてクスクスと囁いた。

 

「ねえ聞いてよ。あの爺どもね、昨日キミが決めた『贅沢税』にすっごく文句言ってたんだ」

「でしょうね。連中には財布への直撃ですから」

「だからさ、今日はボクがド派手な余興で驚かせてやるの! フラックス議員がね、仲直りの印にって、シリアの高級な薔薇をたーっくさん寄付してくれたんだ!」

 

あのフラックス議員が?

 

私は眉をひそめ、上座の脇に座っていたはずのフラックスへと視線を向けた。

だが、そこに老議員の姿はない。

 

「ん。あいつ、どこに行ったんだ?」

 

ふと広間の隅を見渡すと——見つけた。

 

フラックス議員が「おっと、老体ゆえ少し手洗いに……」と呟きながら、不自然なほど素早く壁際の太い大理石の柱の陰へと隠れるところだった。

 

しかも、彼の視線はチラチラと不自然なほどに、頭上の天井へ向けられている。

 

「……上?」

 

見上げれば、大宴会場の豪奢な木彫りの格天井。

その巨大な木枠が、今にも外れそうに歪み、ギシギシと不気味な音を立てて撓んでいた。

 

「おいおい、ちょっと待て……!」

 

フラックスが寄付した大量の薔薇。

始まる直前に、安全な柱の陰へ逃げた本人。

そして、限界まで軋む天井の木枠。

 

——パズルのピースが、頭の中でカチリと音を立てて噛み合った。

 

あいつ、花びらを降らせる余興と見せかけて、天井ごと崩落させて皇帝を事故死させる気だな⁉︎

 

「ねえ、みんな! 今から始まる天国の美しさ、たっぷり味わってよね〜!」

 

ヘリオガバルスが楽しげに銀の鈴を鳴らした。

 

「待ってください陛下! そいつは罠ですッ!」

 

私が叫んだ瞬間だった——。

 

ギギギ……バキィッ‼︎

 

頭上から、留め具が弾け飛ぶ轟音が響き渡った。

反転した天井の隙間から、深紅の薔薇と紫の菫が濁流となって降り注ぐ!

 

「うわああああああっ⁉︎」

「な、なんだコレはっ⁉︎」

 

笑顔だった客の顔が、一瞬で恐怖に引きつる。

 

優美な花びらなどという生易しいものではない。

何トンもの重さがある生花の塊が、土砂崩れのような勢いで広間を埋め尽くしていくのだ。

 

「ぐ、息がっ……! 息ができんぞ!」

「た、助けてくれ! 埋もれる……!」

 

逃げ惑う老人たちが次々と足を取られ、深い花の海へと沈んでいく。

 

さらに恐ろしいことに、悲鳴を上げた天井の巨大な木枠そのものが、鎖を引きちぎって玉座の真上へと真っ逆さまに崩落してきた——!

 

「えっ……⁉︎ あれっ? どうして……⁉︎」

 

玉座の皇帝が、顔を真っ青にして凍りついた。

恐怖で華奢な脚がすくみ、一歩も動けない。

 

このままでは、うちの雇い主がぺしゃんこに潰されてしまう! そして護衛に失敗した私の首も、ついでとばかりに確実に飛ぶ‼︎

 

「させるかああああッ⁉︎」

 

私は羽織っていた衣装をかなぐり捨て、大理石の床を力いっぱい蹴り飛ばした。

 

「きゃあっ⁉︎」

 

飛び込みざま、左腕でヘリオガバルスの華奢な腰をグイッと抱き寄せて懐へ庇う!

 

ドガアアアアアンッ‼︎

 

凄まじい衝撃が全身の骨を軋ませ、足元の床に蜘蛛の巣のような亀裂が走る。

木枠と生花の圧倒的な重量が、私のムキムキなボディに容赦なくのしかかった!

 

「お、オリエンタ……⁉︎」

 

胸板に抱き留められたヘリオガバルスが、信じられないものを見るように瞳を見開いた。

 

「ぐ、ぬううううッ! うちの雇い主を……こんな安っぽい罠で潰してたまるかってんだ‼︎」

 

至近距離で少年の柔らかな体温を感じながら、私は奥歯をギリッと噛みしめた。

前世で理不尽なノルマを押し付けられた時の怒りを、すべてへマッスルパワーに変換する。

 

「うおおおおおおおマッソーッ‼︎」

 

背筋の筋肉が鎧のように膨れ上がった。

私は頭上の巨大木枠を両手で掴み直すと、渾身の怪力でねじ切り、壁際へとぶん投げた!

 

ドッシャアアアアンッ!

 

木枠が壁に激突して粉々に砕け散り、頭上からの花の奔流がピタリと止まった。

 

——静寂。

 

広間には、花びらの山から顔を出して咳き込む議員たちと、私の荒い息遣いだけが響いている。

 

死者は、ゼロ。

最悪の暗殺トラップは、私の筋肉によって物理的に粉砕されることとなった——。

 

 

□■□■□

 

 

「はぁ……はぁ……危うくバラ色の人生ならぬ、バラ塗れの死体になるところだった……」

 

私は肩で息をしながら、抱きかかえていたヘリオガバルスをそっと床へ下ろした。

 

少年皇帝は耳まで紅色に染め、自分の腰に回されていた私の太い腕を呆然と見つめる。

 

「あのね、オリエンタ……今、ボクのこと……」

 

ヘリオガバルスがもじもじと何か言いかけるが、今の私にはそれどころではない。

 

——怒りで血管がブチ切れそうだったのだ。

 

見れば、柱の陰からフラックス議員が、青ざめた顔でコソコソと這い出してくるところだった。

 

「ま、待て……! わしは何も知らん! 大工の手抜き工事だ! わしも被害者なのだ!」

 

必死に言い訳を並べ立てる古だぬき。

私は無言で歩み寄ると、フラックスの胸倉を片手で掴み、軽々と宙へ吊るし上げた。

 

「ひっ……⁉︎」

「ほう、被害者がなぜ始まる直前に、一人だけこっそり安全な柱の陰へ逃げていたんだ?」

「そ、それはたまたま尿意が……」

「ほう、『たまたま』と?」

「そう、たまたま、たまたましに行こうと……」

「なるほど結構。では執務室に残されていた前任者の未決書類に、面白い記載があってな?」

「たまたまと関係あるのか……?」

 

私はニヤリと冷酷に笑ってみせた。

 

「お前が出した『薔薇の商船が沈没したため免税を乞う』という申請パピルスだ……」

「ひいっ⁉︎」

「おい、海の底に沈んだはずのシリアの薔薇が、なぜ宮殿の天井から降ってくるというんだ?」

「な、ななな……なんでそれをッ⁉︎」

 

フラックスの顔から、完全に血の気が引いた。

 

「——ふっ、『たまたま』だ。」

 

現場の証拠と帳簿の記録を突きつけられれば、言い逃れなどできるはずもない。

 

「脱税に密輸、さらに細工した天井で陛下を暗殺しようとした大逆罪! もちろん全財産は国庫へ没収、牢獄で一生頭を冷やしていろ!」

「お゛おおおおん……‼︎」

 

失禁して泣き叫ぶフラックスを、駆けつけた近衛兵たちに放り投げる。

 

これで兵士たちの退職金と年金の財源は、たっぷり確保できたというものだ。

クズも排除できて、これは一石二鳥!

 

私はくるりと振り返り、玉座の前で立ち尽くす少年皇帝を睨みつけた。

 

「——そして、陛下!」

「ひゃいっ⁉︎」

 

皇帝がビクッと華奢な肩を跳ねさせた。

 

「陛下も陛下です! 人の陰謀に乗せられたとはいえ、こんな高級な薔薇をただ撒き散らすなど、もったいないお化けが出ますぞ!」

「も、もったいないおばけ……?」

「左様です! これほど大量の最高級シリア薔薇、ただ捨てるのではなく、オリーブ油に漬けて『高級薔薇香水』として精製するのです!」

「…………?」

 

ぽかんとする皇帝に、私は指を立てて力説した。

 

「これを『アントニヌス陛下ご愛用の香り』として売り出しましょう。さすれば、帝都中の貴婦人がこぞって買い求めます! 国庫は大潤い、しかも街中が陛下の香りで満たされるのです! 人を驚かせるなら、実利で驚かせるのが良いかと」

 

ヘリオガバルスは紫紺の瞳をうるうると潤ませ、じっと私の顔を見つめていた。

 

「……陛下?」

 

お人形として扱われ、誰も本気で向き合ってくれなかった孤独な少年。

 

その自分を、落ちてくる天井から片腕でギュッと抱きしめて守り抜き、こうして正面から本気で叱ってくれる大きな男。

 

「オリエンタ……」

 

少年の胸の奥で、トクン、と熱い何かが弾けた。

 

「……しゅき」

 

素直にコクコクと頷くと、ヘリオガバルスは私の太い腕にギュッと抱きついてきた。

 

「ありがとね……ボクを護ってくれて。あ、キミの肩、木枠が当たって赤くなってる! すぐ侍女を呼んで手当てさせるから、部屋で待ってて!」

 

いつになく健気で可愛い笑顔を見せる皇帝に、私は「意外と素直なところもあるじゃないか」と感心しながら、自室へと戻った——。

 

 

□■□■□

 

 

その日の深夜。

 

「ふう……やっと一息つける」

 

私室の寝台に腰掛け、私は上半身裸になって肩をくるくると回していた。

 

そこへ、トントンと控えめなノックの音。

 

「オリエンタ様、失礼いたします。陛下の命により、お肩の手当てに参りました」

 

入ってきたのは、若いギリシア人の侍女だった。

私の視線は、彼女の胸元へと釘付けになった。

 

薄い衣がはだけそうになるほど、それはそれは、たわわに実った豊満な双丘!

彼女が私の肩に薬油を塗ろうと屈み込むたび、その柔らかな果実が目の前でたゆんと揺れ動く。

ふわっと漂う、女性特有の甘く柔らかな香り。

 

(……ぐっ、いかん! 目のやり場に困るぞ!)

 

前世から通算して、長年女性に縁のない生活を送ってきた私である。

しかも今世は、精力たっぷりな筋肉ダルマだ。

目の前で繰り広げられる破壊力抜群の視覚刺激に、私の理性はあっけなく白旗を上げた。

 

——ボコッ。

 

腰布を力強く押し上げ、我が股間のグラディウスが天を突く勢いで大隆起する!

 

うんうん、健康な男子として、あまりにも正直で抗いがたい生理現象だろう?

 

「あら……ふふ、オリエンタ様ったら、こんな所までお元気なのですね」

 

侍女が頬を染めて悪戯っぽく微笑んだ、まさにその瞬間だった——。

 

ガチャリ、と部屋の扉が開いた。

 

「オリエンタ〜、昼間のお礼にボクが添い寝してあげようと思って——」

 

枕を抱えてルンルン気分で入ってきたのは、薄い寝衣姿のヘリオガバルスだった。

その少年の動きが、入り口でピタリと止まった。

 

上半身裸のオリエンタ。

寄り添う巨乳の侍女。

そして、腰布を突き破らんばかりに元気よく反り立つ、オリエンタの雄の象徴!

 

ピキッ、と部屋中の空気が凍りつく音がした。

 

ヘリオガバルスの大きな紫紺の瞳から、スーッとすべての光が消え去った。

底知れぬ深淵のような、真っ暗な虚無の闇。

 

「……は?」

 

氷のような声が、少年の唇からぽろりと漏れた。

 

「ふーん? 昼間、ボクをあんなに強く抱きしめた時は、ピクリともしなかったくせにさぁ……」

 

抱えていた枕がドサリと床に落ちる。

代わりに少年の細い右手に握られたのは、鈍い光を放つあの『純金の去勢刀』だった。

 

「なんで……そんな乳牛みたいな女の前で、そんなに元気になっちゃってるのかなぁ……?」

 

ゆらりゆらりと黄金が揺れている。

 

「へ、陛下⁉︎ 医学的理由がッ! というか侍女を呼んだのは陛下でしょうがッ⁉︎」

「うるさいっ! ボクだけに操を立ててるか試してあげたんだよぉ!」

 

だがそんな弁解も無駄のようで。

 

「浮気、だよね? ボクという可愛い正妻がいながら、他の女で興奮したんだよねぇ……?」

 

ヘリオガバルスは天使のように愛らしく微笑み、チャキッと小刀の切っ先を私の急所へ向けた。

 

「やっぱりさぁ……他の女に見せびらかすくらいなら、今ここでボクが根元からちょん切って、小箱に入れて宝物にしちゃった方がいいよね?」

 

「だめええええっ⁉︎ それだけはベスビオス山に誓ってやめてえええええっ⁉︎」

「問答無用! そこになおれ筋肉バカァァ‼︎」

 

そしてこの後、密室にて……夜は更けていく。

 

——めちゃくちゃ(冷や)汗だくになった!

 

---

 

翌朝。

 

疲労困憊で執務室へ這い出た私の元へ。

青ざめた部下が、血相を変えて飛び込んできた。

 

「ちょ、長官! 大変でございます‼︎」

「……今度は何だ。胃薬ならもう切らしたぞ」

「皇帝陛下が故郷のシリアから運ばせた、あの『巨大な黒い隕石』の件でして……!」

「隕石?」

「は、はい! 『太陽神の御神体だからユピテル神殿(すごい歴史的)の玉座に置く』と言い出し、神官団と市民がブチギレて暴動寸前です‼︎」

 

…………。

 

助けてローマの女神様⁉︎




◆天井から降る薔薇の雨
古代ローマの伝記集『ローマ皇帝群像』に実在する、ヘリオガバルスの最凶エピソード。
原点には「スミレなどの花」と書かれている。
十九世紀の名画『ヘリオガバルスの薔薇』により、薔薇のイメージが定着。
上記絵画はめちゃめちゃ綺麗なので要検索。
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