無職転生 ~愚弟の兄は全身鎧の剣士~   作:鎧の剣士

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第10話 兄は相手の裏をかきたい

朝の鍛錬。

 

 俺は鎧を着て、木剣を構えていた。

 

「今日は、お前から攻めてみろ」

 

 パウロが木剣を構えた。

 

「相手の動きを待つだけじゃなく、自分から仕掛けるんだ。相手を動かすことも、剣術のうちだからな」

 

「分かりました」

 

 真正面から攻めれば、簡単に止められる。

 

 ならば、相手に反応させ、その動きを利用すればいい。

 

 俺は剣先をわずかに動かした。パウロの視線がそちらへ向いた瞬間、踏み込んで斬りかかる。

 

 しかし、パウロは半歩ずれて攻撃を受け流した。

 

「剣先に意識を向けさせたのは悪くない。だが、その反応をどう利用する?」

 

「その隙に攻撃するつもりでした」

 

「相手が動いてから次を考えていたら遅れることもある。反応をいくつか予想しておけ。ただし、全部を同時に考えようとするな。まずは一つの仕掛けと、その次の動きを身につけるんだ」

 

 俺は頷いた。

 

 相手の反応を見てから慌てるのではなく、次の動きをあらかじめ決めておく。

 

 そこで俺は、先ほどと同じように剣先を動かした。

 

 パウロの木剣がこちらを警戒するように上がる。

 

 今だ。

 

 俺はその動きに合わせて踏み込み、剣の軌道を変えた。

 

 木剣がパウロの構えをかすめる。

 

 だが、最後の一歩が甘かった。パウロは身を引いて攻撃をかわし、俺の木剣を軽く弾いた。

 

「惜しいな。今の考え方は悪くない」

 

 パウロが笑った。

 

「相手の反応を見てから動けていた。ただ、攻撃を届かせるところまで意識しろ」

 

「はい」

 

 完敗ではない。

 

 かといって、成功とも言いがたい。

 

 実に微妙な結果だった。

 

 それでも、ただ闇雲に攻めるよりは一歩進んだのだろう。

 

「明日もこの練習を続けるぞ」

 

「分かりました」

 

 俺は素直に返事をした。

 

 上達するのは悪くない。

 

 ただし、上達した分だけ訓練が増える仕組みだけは、どうにかしてほしい。

 

 ◇

 

 昼食の席で、ルーデウスが尋ねてきた。

 

「兄さん、今日は何を習ったの?」

 

「相手の反応を見ながら攻める練習だ」

 

「へえ。相手が避ける方向を予想して、その先に別の攻撃を用意しておくとか?」

 

「考え方としては、そういうことだな」

 

「面白そうだね」

 

 ルーデウスは興味深そうに頷き、食事に戻った。

 

 俺もそれ以上は話さなかった。

 

 昼食くらい、剣術のことを忘れてゆっくり食べたい。

 

 俺は皿の上の料理を片づけることに集中した。

 

 ◇

 

 夜。

 

 鎧の手入れを終えた俺は、寝床に入った。

 

 明日も今日と同じ練習が待っている。

 

 少しずつ上手くなればいい。焦って無理をする必要はない。

 

 ……ただ、上達をパウロに見抜かれると、訓練が増える可能性がある。

 

 かといって、わざと失敗するわけにもいかない。

 

 真面目に取り組みながら、追加訓練は避ける。

 

 言うだけなら簡単だが、実行するのは剣術より難しそうだ。

 

 俺は布団を引き寄せた。

 

 明日はどうか、父さんが機嫌よく訓練を切り上げてくれますように。

 

 そう願いながら、俺は目を閉じた。

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