「ちょっと、お話ししようか」
薄暗い地下通路。
武装した男たちを前に、久遠零司は場違いなほど穏やかな笑みを浮かべていた。
黒髪に混じる銀色の髪が、非常灯の赤い光を反射する。
その表情には緊張も恐怖もない。
まるで、街角で知り合いに声をかけたかのような気軽さだった。
「……何者だ」
武装集団の先頭に立つ男が、銃口を向ける。
「さっきも言ったけど、久遠零司」
「所属を聞いている」
「ああ、そっち?」
零司は少し考えた。
「今日は丹羽さんのところかな」
その名前を聞いた瞬間、男の目つきが変わった。
「……丹羽宗一郎の手の者か」
「まあ、雇われただけだけどね」
「ならば敵だ」
「えー」
零司は露骨に嫌そうな顔をした。
「まだ何もしてないじゃん」
「対象の回収を妨害する者は排除する」
「回収?」
零司が首を傾げる。
「君たち、あの子を殺すつもりなんでしょ?」
男は答えなかった。
その沈黙を、零司は肯定と受け取った。
「ふうん。そっか」
そして、少しだけ笑う。
「じゃあ、困るなぁ」
「何?」
「僕、まだあの子と遊んでる途中なんだよね」
あまりにも軽い言葉。
男たちは一瞬、互いに顔を見合わせた。
「……ふざけているのか?」
「今日はそれ、何回目だろ」
零司は肩をすくめた。
「僕は結構真面目なんだけどなぁ」
先頭の男が片手を上げる。
それを合図に、後方の三人が一斉に銃を構えた。
「最終警告だ。退け」
「嫌だって言ったら?」
「排除する」
「そっか」
零司は小さく頷いた。
「じゃあ、やってみてよ」
次の瞬間。
銃声が連続して響いた。
◇
通常、銃弾は火薬の燃焼によって発生した高圧ガスに押し出され、銃身内部を加速する。
銃口を離れた後は、慣性に従って飛翔する。
その運動には、当然ながら物理的な条件が存在する。
質量。
速度。
運動量。
空気抵抗。
そして、時間の経過。
久遠零司にとって、それらは絶対に従わなければならない決まりではなかった。
「……んー」
少年は、目の前に浮かぶ弾丸を眺めていた。
全部で十二発。
いずれも、彼の身体へ到達する直前で停止している。
いや。
正確には、停止するような物理条件へ書き換えられていた。
「やっぱり銃なんだね」
零司は少し残念そうに呟いた。
「もうちょっと変わったもの持ってないの?」
「な……!」
「何だ、これは……!」
武装した男たちが後ずさる。
彼らが使用しているのは、学園都市の研究機関から流出した特殊な銃器だった。
通常の銃火器よりも高い初速と貫通力を持つ。
一般的な能力者が相手なら、十分な脅威となる兵器。
しかし。
「つまんないなぁ」
零司が指を鳴らした。
空中に留まっていた十二発の弾丸が、一斉に床へ落ちる。
金属音が連続して響いた。
「せっかく秘密の組織みたいな人たちが来たんだから、もっと面白いの期待してたのに」
先頭の男が歯を食いしばる。
「能力者……!」
「うん。まあ、そんな感じ」
「何系統だ!」
「さあ?」
零司は首を傾げた。
「君が知ってる分類にはないかもね」
男が端末を操作する。
直後、周囲の壁に設置されていた小型装置が起動した。
低い電子音。
青白い光。
特殊な干渉波を発生させる装置だった。
「対能力者用の装備かぁ」
零司が感心したように呟く。
「準備いいね」
しかし、次の瞬間。
装置の光が消えた。
「……なっ!?」
「でも、これってさ」
零司は近くの装置へ視線を向けた。
「動作するための条件が決まってるでしょ?」
電子回路。
電圧。
電流。
信号処理。
どれほど高度な技術であっても、物理現象の上に成立していることに変わりはない。
零司は、その条件へ干渉した。
ただ、それだけだった。
「な、何をした……!」
「ちょっとだけ、電気の流れ方を変えた」
少年は笑う。
「それだけで止まるんだから、便利だよね」
「化け物め……!」
「あはは」
零司は楽しそうに笑った。
「それも、たまに言われる」
そして。
笑みを浮かべたまま、右手を軽く持ち上げた。
次の瞬間、男たちの身体が床へと押しつけられた。
「ぐあっ!?」
「な、何だ……!」
重力が変化したわけではない。
彼らの身体が受ける力の釣り合いが、一時的に変更されたのだ。
立ち上がろうとする力。
筋肉が生み出す運動。
それらが、本来とは異なる結果を生むよう調整されている。
「さて、と」
零司は倒れた男たちへ歩み寄った。
「一つだけ聞きたいんだけど」
先頭の男の前で足を止める。
「誰に頼まれたの?」
「……答えると思うか」
「うーん」
零司は少し考えた。
「じゃあ、別にいいや」
「……何?」
「そこまで興味ないし」
男は言葉を失った。
零司は携帯端末を取り出す。
画面には、少女へ与えた三分間の猶予が終わったことが表示されていた。
「あ、時間だ」
少年は満足そうに頷く。
「じゃあ、僕は行くね」
「ま、待て……!」
「ん?」
倒れた男が、必死に顔を上げた。
「お前……何者なんだ……!」
零司は少しだけ考えた。
そして、笑う。
「ただの高校生だよ」
それだけ告げ、踵を返した。
背後には、戦意を失った武装集団が残されている。
負傷者はいる。
だが、死者はいない。
零司が特別に手加減したから、というわけではなかった。
単に、殺す必要がなかっただけだ。
もし彼らが、自分の楽しみを決定的に邪魔していたなら。
結末は違っていたかもしれない。
それほどまでに、彼の判断基準は気まぐれだった。
◇
『久遠! 応答しろ!』
「はいはい」
『対象はどうなった!』
「まだ追いかけてる途中」
『お前……!』
桐島の怒声が通信機から響く。
零司は思わず顔をしかめた。
「もうちょっと静かに話してよ。耳が痛い」
『ふざけるな! こちらは命がけで作戦を遂行しているんだぞ!』
「そうなんだ」
『……っ!』
「大変だねぇ」
あまりにも他人事のような返答。
桐島は深く息を吐いた。
『……とにかく、対象の位置を報告しろ』
「今は分かんない」
『何だと!?』
「逃がしたから」
沈黙。
数秒後。
『……お前、正気か?』
「うん」
『自分から逃がしたのか!?』
「追いかけっこしてるだけだよ」
『そんな遊びに付き合っている暇はない!』
「だから、僕が遊んでるんだってば」
零司は笑った。
「君たちは別に付き合わなくてもいいよ」
『……っ!』
桐島が何かを言いかける。
しかし、その前に零司は口を開いた。
「あ、そうそう」
『何だ!』
「さっきの連中、動けなくしておいたから」
『……何?』
「地下の西側通路。武装してたけど、今は大人しいよ」
『お前がやったのか?』
「うん」
零司は、何でもないことのように答えた。
「邪魔だったから」
桐島はしばらく沈黙した。
『……分かった。こちらで確認する』
「よろしく」
『久遠』
「ん?」
『頼むから、これ以上勝手なことを――』
通信が切れた。
零司が一方的に終了したのだ。
「……うるさいなぁ」
少年は小さくため息をついた。
そのまま、暗い通路へ視線を向ける。
「さて」
三分間。
少女は、どこまで逃げただろう。
さっきの能力を使えば、監視装置の目を欺くことはできるはずだ。
しかし、彼女の身体は限界に近かった。
能力を長時間維持できるとも思えない。
何より、あの状態で逃げ続ければ、いずれ倒れてしまうだろう。
「……見つけたら、どうしようかな」
零司は、少しだけ考えた。
捕まえて研究施設へ引き渡す。
それが、今回の仕事だ。
報酬も悪くない。
だが、少女の能力にはまだ興味がある。
研究所に戻せば、今後も観察できるかもしれない。
反対に、逃がした場合。
彼女がどんな選択をするのか、少し気になる。
「んー……」
しばらく考えた末、零司は笑った。
「まあ、会ってから決めよう」
その結論に、迷いはなかった。
◇
地下搬送路の別区画。
N-13は、必死に足を動かしていた。
「はっ……はっ……!」
もう何度目になるか分からない息切れ。
身体は限界だった。
足の裏は傷つき、患者衣の裾は汚れている。
それでも止まるわけにはいかなかった。
あの少年から逃げなければならない。
久遠零司。
研究施設の依頼を受け、自分を捕まえに来た人間。
彼の能力が何なのか、少女には分からなかった。
ただ、ひとつだけ確信していることがある。
あの少年には勝てない。
能力を使っても。
逃げ道を消しても。
監視できない状態を作っても。
彼は、何事もなかったように自分を見つけ出してしまう。
「……どうして……」
少女は小さく呟いた。
自分が何をしたというのだろう。
ただ、生きたいだけなのに。
研究施設へ戻りたくないだけなのに。
どうして、こんな目に遭わなければならないのか。
そのときだった。
視界の端に、小さな光が見えた。
「……あ」
少女は顔を上げる。
通路の先。
非常口を示す緑色の案内灯。
地上へ続く階段が、そこにあった。
「……出口……!」
少女の顔に、わずかな希望が浮かぶ。
もう少し。
あと少しで、外へ出られる。
あのメッセージの送り主が、本当に迎えに来てくれるかどうかは分からない。
だが、少なくとも研究施設からは遠ざかれる。
少女は最後の力を振り絞り、階段へ向かって走った。
その瞬間。
「――止まれ」
低い声が響いた。
「……っ!?」
階段の上。
そこに、二人の男が立っていた。
黒い装備。
手にした銃。
少女は反射的に足を止めた。
「対象を確認」
一人が通信機へ報告する。
「被験体N-13。生存を確認した」
少女の顔から、血の気が引いた。
「……いや……」
「抵抗するな」
男が銃口を向ける。
「こちらは回収命令を受けている」
「……戻らない……!」
少女は震える声で叫んだ。
「絶対に、戻らない……!」
男たちは表情を変えない。
「抵抗を確認」
片方が銃の安全装置を外した。
「無力化する」
少女は目を見開いた。
能力を使わなければ。
そう思った。
だが。
身体が動かない。
限界まで酷使した能力。
消耗しきった身体。
そして、目の前に迫る死の恐怖。
何もかもが、少女の思考を鈍らせていた。
「……っ」
男の指が、引き金にかかる。
少女は思わず目を閉じた。
そして。
乾いた銃声が響いた。
◇
「……あーあ」
呆れたような声がした。
「何やってんのさ」
少女は、恐る恐る目を開けた。
そこに、一人の少年が立っていた。
黒髪に銀色の混じった、学生服姿の少年。
久遠零司。
彼は少女の前に立ち、片手で何かをつまんでいた。
銃弾だった。
発射された弾丸を、まるで道端の小石でも拾うように指先で挟んでいる。
「……え?」
少女の口から、間の抜けた声が漏れた。
零司は弾丸を眺める。
「さっきから、みんな撃つの好きだねぇ」
そして、弾丸を床へ落とした。
金属音が響く。
「もうちょっと平和的に話せないの?」
「何者だ!」
階段の上にいた男が叫ぶ。
零司は顔を上げた。
「またそれ?」
少年は、心底面倒そうにため息をついた。
「僕の名前、そんなに知られてないのかな」
男たちは銃を構える。
だが。
次の瞬間、二人の身体が宙へ浮いた。
「なっ!?」
「ぐあっ……!」
見えない力によって持ち上げられた二人が、そのまま壁へ押しつけられる。
銃は手から滑り落ち、床に転がった。
「はい、おしまい」
零司は軽く手を振った。
男たちは動けない。
抵抗することもできない。
それを確認すると、零司は少女へ振り返った。
「やっほ」
「……あなた……」
「また会ったね」
まるで偶然出会った友人にでも話しかけるような声。
少女は、呆然と彼を見つめていた。
「……どうして……?」
「ん?」
「……助けて、くれたの……?」
零司は首を傾げた。
そして。
「いや?」
あっさりと否定した。
「……え?」
「助けたつもりはないけど」
少年は笑った。
「僕、まだ君を捕まえる仕事してるし」
少女の表情が凍りつく。
「……だったら、どうして……!」
「だってさ」
零司は、壁に押しつけられた男たちへ視線を向けた。
「僕が追いかけてる相手を、勝手に撃つのは駄目でしょ」
それは、あまりにも身勝手な理由だった。
少女の命を守りたいからではない。
研究施設の非道を許せないからでもない。
ただ、自分の仕事と楽しみを邪魔されたくなかったから。
それだけで、この少年は銃弾を止めたのだ。
「……あなた、本当に……」
少女は震える声で呟いた。
「……最低……」
「あはは」
零司は楽しそうに笑った。
「二回目だね、それ」
少女は拳を握りしめた。
怖い。
この少年が、どうしようもなく怖い。
自分を殺そうとした男たちよりも。
研究施設の白衣を着た大人たちよりも。
何を考えているのか分からない、この少年の方が恐ろしかった。
しかし。
次の瞬間。
少女の身体が、ぐらりと傾いた。
「……あ」
視界が暗くなる。
足から力が抜ける。
そのまま、地面へ倒れ込もうとした。
「おっと」
零司が片手を伸ばした。
少女の身体が、床へ衝突する直前で止まる。
見えない何かに支えられたように、ゆっくりと横たえられた。
「……限界かぁ」
少年は少女の顔を覗き込む。
意識は失われている。
呼吸は浅いが、安定している。
極度の疲労と能力使用による消耗。
それに加えて、長時間の逃走による脱水。
少なくとも、すぐに命が危険な状態ではなさそうだった。
「……困ったな」
零司は頬をかいた。
少女が起きるまで待つのも面倒だ。
ここで依頼人を呼べば、仕事は終わる。
だが、それでは面白くない。
「んー……」
しばらく考える。
そして。
「ま、いっか」
零司は少女を見下ろして笑った。
「とりあえず、連れて帰ろうかな」
そう決めると、携帯端末を取り出した。
連絡先を選ぶ。
数秒後、通信が繋がった。
『久遠か!?』
「うん。僕」
『対象はどうなった!』
「捕まえたよ」
通信の向こうで、息を呑む気配がした。
『……本当か!?』
「うん。今、寝てる」
『よし! すぐに回収班を向かわせる!』
「いや、その必要ないよ」
『……何?』
「僕が連れてくから」
『勝手なことをするな! 対象の状態を確認する必要がある!』
「大丈夫。死んでないから」
『そういう問題では――!』
「じゃ、そういうことで」
通信を切った。
そして、少女へ視線を戻す。
「さて……」
零司は、少しだけ考えた。
このまま研究施設へ送り届けるか。
それとも、もう少し話を聞いてみるか。
少なくとも、少女が目を覚ますまでは時間がある。
「……どうしようかなぁ」
零司は小さく笑った。
答えは、まだ決めていなかった。
それを決めるのは、あくまで自分だ。
正義でも。
悪でも。
依頼人でもない。
久遠零司自身だった。
◇
同時刻。
学園都市の一角にある研究施設。
丹羽宗一郎は、端末に表示された報告を読み込んでいた。
《対象N-13:生存確認》
《回収担当:久遠零司》
《状況:確保》
「……ふむ」
白衣姿の男は、小さく頷いた。
机の上には、複数の研究資料が並べられている。
その一つに、少女の能力に関する記録があった。
《観測干渉》
《能力分類:暫定》
《能力強度:測定不能》
《研究継続優先度:最高》
丹羽は、その資料を手に取った。
「ようやく戻ってくるか……」
安堵したような声。
しかし、その表情には、研究対象を心配する様子など微塵もなかった。
彼にとって重要なのは、実験体の生存そのものではない。
研究成果。
その一点だけだった。
丹羽は別の画面を開く。
そこには、久遠零司に関する極秘情報が表示されていた。
《識別番号:ZERO》
《能力分類:非公開》
《能力強度:測定対象外》
《接触制限:最上位》
《注意事項:対象の自発的協力を前提とすること》
丹羽の額に、冷たい汗が浮かんだ。
「……まったく」
小さく呟く。
「扱いにくい御方だ」
しかし、研究者としての好奇心も抑えられなかった。
N-13の観測干渉。
そして、久遠零司の異常な能力。
もし、この二つに何らかの関連性があるのなら。
その研究成果は、学園都市の能力開発理論そのものを揺るがす可能性がある。
「……実に興味深い」
丹羽は薄く笑った。
だが、彼はまだ知らなかった。
久遠零司という存在が、どれほど気まぐれなのかを。
そして。
その気まぐれによって、自分の計画がどれほど簡単に崩れ去るのかを。
◇
地下搬送路。
零司は、意識を失った少女を抱き上げた。
細い身体。
驚くほど軽い。
長い青緑色の髪が、少年の腕からさらりと零れ落ちる。
「……軽いなぁ」
零司は小さく呟いた。
そして、少女の顔を見つめる。
先ほどまで必死に抵抗していた少女は、今は静かに眠っている。
その表情には、まだ警戒の色が残っているようにも見えた。
「……ま、仕方ないか」
少年は肩をすくめた。
彼女が自分を信用しないのも当然だろう。
実際、零司には少女を助けるつもりなどなかったのだから。
少なくとも、今のところは。
「さて」
零司は通路の出口へ視線を向けた。
「丹羽さん、どんな顔するかな」
その声には、どこか楽しげな響きがあった。
そして。
「……あ、そうだ」
ふと思いついたように携帯端末を取り出す。
丹羽へ、短いメッセージを送った。
『対象は確保したよ』
『でも、ちょっと気が変わるかもしれないから』
『受け渡し方法、あとで相談しようね』
送信。
零司は満足そうに頷いた。
「うん。これでいいや」
少年は歩き出した。
少女を抱えたまま。
薄暗い地下通路を、ゆっくりと進んでいく。
その背中に、迷いはなかった。
誰かの命運を握っているという自覚も、もちろんある。
しかし、それを重荷だと思うことはなかった。
なぜなら。
久遠零司にとって、善悪とは他人が作り出した分類に過ぎないからだ。
正義の味方になる義務などない。
悪党を裁く使命もない。
誰かを救うか。
誰かを見捨てるか。
そのすべてを、自分で決める。
――それが、第零位。
科学と魔術の双方において、規格外の力を持つ少年の在り方だった。
そして今夜。
一人の少女の運命は、そんな少年の気まぐれに委ねられた。
まだ誰も知らない。
この小さな出会いが、やがて学園都市の暗部を大きく揺るがすことになるなど。
もちろん。
当の本人である久遠零司は、もっと別のことを考えていた。
「……そういえば」
腕の中の少女を見下ろす。
「この子、起きたら何食べるんだろ」
少し考える。
「……お腹空いてるよね、たぶん」
そして、笑った。
「何か買って帰ろっかな」
その声は、どこまでも呑気だった。
まるで、これから友人と夕食でも食べに行くかのように。
――正義の味方ではない。
だが、悪の味方とも限らない。
久遠零司とは、そういう少年だった。