吾輩はカバルドンである。今日も吾輩のトレーナーは勝てそうにない……

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初投稿です。


今日もトレーナーは行動が弱い

「カバルドン!あくび!」

 

 俺はカバルドン、今日も今日とて仕事のためにあくびをする。普通の社会人が聞いたら、それで仕事してると言われるなんて羨ましくて血涙ものだろう。まぁその代わり水ぶっかけられたり、いきなりブチギレられたりタックルされたり散々なんだがな。

 

「うわぁ~ん……負けちゃったよぉ……」

 

 今はこのふわふわした雰囲気の女トレーナーに雇われている。特に高レートを目指してる訳でもないようなので、仕事自体はとても緩い。昔のようには体も動かんしこれくらいがちょうどいいと思う。なお、上位勢に雇われたお仲間はそろそろ労基に行こうか悩んでるらしい。アーメン。

 

「ねえカバルドン、どうしたら勝てるの?」

 

 そんなの俺に聞かれても知らんとしか言えない。まぁ……パーティが悪いようには思うが……俺のあくびが通ったところでつるぎのまいとかりゅうのまいする奴もいないし。とりあえずググればいいと思う。

 

「ググれって言ってるのかな?とりあえず調べてみよう!」

 

 トレーナーがスマホロトムを取り出して検索する。その中身はカビゴンのようなメガネの男が通りやすい声で何かを話している動画だ。

 

「カバルドンと相性がいいのはボーマンダとギルガルド……へー」 

 

 ボーマンダとギルガルド……懐かしい名前だ。アローラにいた頃はよく組んでいたな。

 

「よぉし、スカウトするぞ~!」

 

 しばらくして、トレーナーがボールを取り出してそれをフィールドに投げた。

 

「カバルドン!新しい仲間だよ!」

 

 青い西洋の龍のような姿をしたポケモンがそこに現れ、俺の方を向いた。

 

「久しぶりだね、カバルドン。しばらく見ないうちに随分とのんきな性格になったもんだ」

「あんたは相変わらずいじっぱりな感じっすね、マンダ先輩」

 

 久しぶりの邂逅。若かった頃のことを思い出して少し泣きそうになった。だが一

 

「そういえば、ガルドの奴はいないのかい?」

 

 よく知った仲間のひとりはいなかった。トレーナーが何かを察したのか、マンダ先輩と俺に説明をし始めた。

 

「ごめんね、スカウトできなかったんだ。なんか、音楽性の違いがどーのこーので……」 

 何言ってんだアイツ。てかトレーナー普通にガルドと会話できんのかよ。まぁあいつ洗脳できるらしいし余裕か。

 

「あ、でも同じタイプの子なら連れてこれたよ!」

 

 ん?同じタイプの子……?

 

「おいカバルドン、どうし……うわぁぁぁ!?」

 

 俺はトレーナーの言葉を聞いて思わずふきとばしをマンダ先輩と投げられたモンスターボールに向けて放ってしまった。

 

「あ、先輩すいません」

「ったく、いきなり何をするんだ。そんなに同じタイプのそいつが嫌なのか」

「嫌なんてレベルじゃないです。もう散々煮え湯を飲まされたので」

「どんな時も仕事をするお前にそこまで言わせるとはね……どんな面構えなのか……」

 

 マンダ先輩が遠くへ飛んでいったモンスターボールの方を向くと、ボールから悪趣味な金ピカが現れた。

 

「どうやら我の力が必要らしいな!」

 

 遠くからでも聞こえるやかましい声で悪趣味な金ピカが口を開いた。それに続いてトレーナーが金ピカの方へ手を向けて紹介を始める。

 

「はがね・ゴーストタイプのサーフゴーだよ!変化技が効かないんだって!凄くない?」

 

 悪趣味な金ピカ、サーフゴー。控えめに言って死ねばいいのにと何度思ったことか。

 

「お、そこにいるのはバカルドンじゃないか!」

「あ?」

「失礼、カバルドンか!ガハハ!」

 

 マンダ先輩とトレーナーの前なのでどうにかこらえようとするが、生憎俺はこらえるを覚えていないのでじしんを放った。

 

「じしんなんか効か……ぎゃああああ!!??」

 

 いつもならふうせんで浮かぶか、頭に風船をつけたバカみたいなスタイルで無効化してくるのだが……今日はどうやらこうかばつぐんらしい。

 

「なんで……ふうせんは……ひこうテラスタルは……」

 

 じしんで吹っ飛んだサーフゴーが死にかけた声でそう言うと、トレーナーがサーフゴーに駆け寄って俺の方を指さした。

 

「カバルドン、ダメでしょ!ふうせん持ってなくてじしん効いちゃうんだから!テラスタルも使えないし」

 

 ナイスだトレーナー。あんたに雇われてよかったよ。

 

「よぉし、メンバーも揃ったし……早速ランクバトルに挑むよー!」

 

 トレーナーがそう言って俺たちをボールの中にしまって、よく敗北したトレーナー達に舌打ちされている女性に話しかけてランクバトルへと向かう。

 

「あ、マッチングした……えーと、ミミロップつかいの……ななにいちさん対戦よろしくお願いします!」

 

 なんか名前がアウトな気がするが気にしないでおこう。

 

「あ、本当にミミロップ使ってる!えーと裏にはアーマーガアと……アシレーヌと……うーん、よくわかんないからカバルドンとボーマンダとサーフゴーで行くよ!」

 

 もう少し選出考えた方がいいと思うぞトレーナー。初手アシレーヌだったら俺死ぬよ?

 

「よぉーし!ゆけっ!カバルドン!」

 

 早速出番が来た俺が、砂嵐を起こしながら相手のトレーナーのななにいちの方を見る。彼が繰り出したのは……

 

「ゆけっ!アシレーヌ!」

 

 終わった。対戦ありがとうございました。

 

「えーっと……裏に引けるかなぁ……」

 

 裏はHPにもとくぼうにも振っていないこだわりスカーフのサーフゴーとフェアリーで抜群を取られるマンダ先輩だ。無理がある。

 

「仕方ない……カバルドン、ごめんね!」

 

 ……正直このトレーナーは俺の使い方が上手いとは言えない。が、今は雇われの身なので言うことを聞くしかない。俺は渋々覚悟を決めてアシレーヌに向き合った。

 

「アシレーヌ!うたかたのアリア!」

 

 ななにいちがアシレーヌに命令をする。その命令に答えて、アシレーヌは歌った。

 

「せんの~か~ぜ~に~なぁって~♪」

 

 どうやら哀れな俺を弔ってくれるらしい。まぁとくぼうにはそれなりに振っているので一発は耐えるが。

 

「耐えた!カバルドン、あくび!」

 

 オボンのみを食べながらあくびをして、アシレーヌの眠気を誘う。眠そうな表情に一瞬ドキッとするが、残念ながらこいつはオスである。

 

「あくびか……なるほど」

 

 ななにいちが意味深な笑みを浮かべる。あー……これ察したわ。うん。トレーナー、お疲れ。

 

「カバルドン……その憐れむような目は何……?」

 

 トレーナーがあたふたしていると、再びうたかたのアリアが飛んできて俺はひんしになった。

 

「カバルドン……!えっと、えーっと……フェアリー技でやられちゃうし……サーフゴー!お願い!」

 

 トレーナーがサーフゴーをくりだし、アシレーヌとサーフゴーが対面する。

 

「ははは!お前も不運だなアシレーヌ!ひかえめな我の10まんボルト二発でお前は死ぬ!」

 

 お前のどこがひかえめなんだ。というかひかえめこだわりスカーフだとようきメガミミロップ抜けなくない?選出されてたらもう詰んでない?

 

「ふぁ~……でも君、僕のアリアで凄い減る気がするなぁ……」

「ははは!だがお前はここで寝る!関係ない!」

 

 サーフゴーがイキリ散らかしていると、アシレーヌが眠い目をこすりながら、緑色の木の実を食べ始めた。

 

「ラムのみ美味しい~!眠気もバッチリだ!」

「は?」

 

 知ってた。ちなみにアシレーヌのうたかたのアリアはHPととくぼうに振っていないサーフゴーは二回耐えられない。

 

「あわわ……起きちゃった……うぅ……サーフゴー、10まんボルト!」

 

 サーフゴーが10まんボルトを放つ。いいダメージこそ入るものの、抜群とはいえタイプ不一致の10万ボルト程度ではとくぼうの高いアシレーヌには当然耐えられてしまう。

 

「せんのか~ぜ~に~♪」

 

 そして、返しのうたかたのアリアでサーフゴーのHPもごっそり削られてしまった。

 

「だが、我の方が足が早い!」

「サーフゴー、10まんボルト!」

 

 トレーナーが再び命令し、10まんボルトを放つ。

 

「ぎゃあああああああああ!」

 

 凄まじい断末魔を上げながらアシレーヌが倒れる。そして一

 

「ゆけっ!ミミロップ!」

 

 絶望と呼ぶにふさわしい名前が呼ばれる。そして、俺はマンダ先輩のボールを見た。

 

「勝てると思います?」

 

 マンダ先輩にそう聞くと、マンダ先輩は首を縦に振って

 

「トリプルアクセルをかわせば勝てる」

 

と言った。

 

「ほんまですか……」

「勝ち筋を追うなら……アーマーガアを考えると私に引いてアクセルをかわすしかないだろう。威嚇もメガシンカより交代の方が早いから入るしな」

「トレーナーがそれに気づくと思います?」

 

 俺とマンダ先輩はトレーナーの命令に聞き耳を立てた。

 

「えーっと、メガミミロップはノーマルかくとうタイプだから……サーフゴーに通る技がない!殴り放題だ!しかも、スカーフあるからこっちの方が早い!」

 

 ダメそう。トレーナーの言葉を聞いていたサーフゴーは俺たちが入っているボールを助けを求めるかのような顔で見つめてくる。まぁ、サーフゴーがボコされる分には別にいいか。

 

「ミミロップ!メガシンカからのとびひざげり!」

「ぎゃあああああああああ!」

「え、なんで……」

 

 サーフゴーが断末魔を上げながらボールに戻る。ひかえめサーフゴーじゃこだわりスカーフを持ってもミミロップは抜けない。しかも、奴は特性のきもったまでゴーストタイプにもかくとう技とノーマル技を当てることができる。この結果は必然だっただろう。

 

「あぅぅ……ボーマンダ、どうにかして!」

 

 やや投げやりな声でマンダ先輩の入ったボールを投げつける。

 

「fuc○ you」

「?」

 

 マンダ先輩がいかくするが、ミミロップには全く効いていない。

 

「ボーマンダ!メガシンカ!」

 

 ゼンブイリングをトレーナーが掲げて、マンダ先輩がメガシンカした。

 

「久しぶりのメガシンカ……心が踊る……!」

 

 そして遂に、運命の時がやってきた。

 

「ミミロップ、トリプルアクセル!」

「ボーマンダ……かわして!」

 

 トレーナーの言葉に応えるように、マンダ先輩は一発目からトリプルアクセルを回避する。

 

「ボーマンダ、りゅうのまい!」

 

 トリプルアクセルを回避したマンダ先輩がりゅうのまいを使い能力を上昇させる。これでミミロップよりも早くなった。

 

「ボーマンダ、すてみタックル!」

 

 マンダ先輩のすてみタックルが炸裂し、ミミロップは耐えきれずに倒れる。

 

「さぁ、私を止められる?」

 

 勝ち誇るマンダ先輩に対して、ななにいちが繰り出したのは一

 

「ゆけっ!アーマーガア!」

 

 強いプレッシャーを放つ、死を告げる黒い鳥だった。

 

「あなたがボーマンダですか。特性はスカイスキンでしたね」

「そうだ」

「見せてもらいましょう。借り物の翼でどこまで飛べるか」

 

 どうやらただのアーマーガアではなく、アーマード・ガアのようだ。

 

「ボーマンダ、りゅうのまい!」

 

 マンダ先輩の技構成はすてみタックル、じしん、りゅうのまい、はねやすめである。どの技も半減以下である以上その選択は正しい。

 

「アーマーガア!ビルドアップ!」

 

 向こうも対抗して能力を上昇させる。まだマンダ先輩の方が一つリードしているが、五十パーセント程度の補正では乗り越えられるか怪しい。あとこれ、おそらく長くなるやつなので抜粋する。

 

「よぉし、マックスパワーだ!ボーマンダ、すてみタックル!」

 

 六段階積んだすてみタックルを、五段階積んだアーマーガアにお見舞いする。しかし一

 

「アーマーガア、反撃を!ブレイブバード!」 

 

 急所に当たれば勝ち目があったが、その願いも虚しく返しのブレイブバードでマンダ先輩は倒れてしまった。

 

「対戦ありがとうございました!」

「対戦ありがとう……ございました」

 

 トレーナーがトボトボとした足取りで俺たちを連れて外へ出た。

 

「うわぁ~ん!また負けちゃったよぉ〜……」

 

 トレーナーが泣きながらとぼとぼとした足取りで歩く。付き合いはまだ短いものの、女の子が泣いているところを見るのはなかなか心にくるものがある。

 

 落ち込みながら歩くトレーナーをボール越しに見つめていると、屋台の兄ちゃんが大声で客引きをしていた。

 

「アローラ名物のマラサダはいかが~!」

 

 マラサダ、懐かしい名前である。アローラではレーティングバトルばかりしていた俺たちだが、息抜きと称してたまにトレーナーが食わせてくれた。俺はスッパサダが好きだったな。

 

「マラサダか……久しぶりにカラサダが食いたいな」

「マンダ先輩……変わんなくてなんか安心ですよ」

「そうだな。……お前もまだスッパサダが好きか?」

「ええ、もちろん」

 

 そんな話を俺たちがしていると、客引きの兄ちゃんが泣いているトレーナーに話しかけた。

 

「どうしたんですかお姉さん」

「えっと……バトル勝てなくって……」

「そうなんですかぁ……あ、マラサダいかがです?コーヒーもサービスしますよ!こんな時は甘いものでも食べて元気だしましょ!」

 

 兄ちゃんに促されるまま、トレーナーはアマサダ、シブサダ、スッパサダ、カラサダとコーヒーを購入した。

 

「みんな、今日はありがとね」

 

 トレーナーが俺たちをボールから出して、マラサダを差し出した。

 

「……いただきます」

 

 トレーナーがマラサダに齧り付く。俺たちもそれに習ってマラサダに齧り付いた。

 

「今度は勝とうね!みんな!」

 

 トレーナーが頑張って作った笑顔を見て、俺は昔のことを思い出した。アローラでマンダ先輩達と暴れ回っていた日々。今思えば、最後に全力でバトルしたのなんかいつだろうか。

 

「……マンダ先輩、俺」

「みなまで言うな。私も同じ気持ちだ」

「ガハハ!辛気臭いのはやめにして明日から全員蹂躙してやろう!」

 ひかえめとは思えないサーフゴーの発言に俺とマンダ先輩が変な笑い声をあげそうになっていると、トレーナーが涙をふいて立ち上がった。

 

「ダメダメなトレーナーだけど……これからもよろしくね!」

 

 威勢のいい声に、俺たちは頷いた。

 

 ……だがトレーナー、とりあえずメガミミロップのことは勉強しような。




アシレーヌに強いポケモンがいないので風刺画のつもりで書きました
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