始めまして。
ワールドトリガーは2作目となります。
見切り発車で、いつ突然終わるかもしれません。
それでもお付き合いしてもらえたら嬉しいです。
それでは、どうぞ。
「頼む!!」
そんな声がとある部屋から聞こえてくる。
その部屋は「太刀川隊」メンバー。
そして一人の男。
「えっ。普通にイヤですけど」
「マジで頼むよ!!ランク戦やってやるからな!!」
「それ、そっちだけのメリットですよね。
僕には全く関係ありませんので、では」
と、太刀川隊の隊長である太刀川の願いを簡単に跳ね除けて、スタスタと部屋から出ようとする男。
しかしその足を掴み逃さないようにする太刀川を見て
「離してくださいゴミ」
「お前だけだぞ!オレにそんなこというやつは!!」
「僕も貴方だけですよ。テストでカンニングするような真似を言ってくる人は」
そのやり取りを遠くから眺める出水達太刀川隊のメンバー。
毎度毎度断れているこの姿を、もう名物かのような目で見ながら茶をすする出水。
「いい加減諦めたらどうですか太刀川さん」
「そうだよ。こういうのは自分の力でやらないと」
「お前らだってよくコイツを使っているじゃねえか!!」
「オレはどっちのジュースを選ぶかでした」
「私はどっちの宝箱が当たりか教えてもらったなー」
「だったら俺もどこから問題が出るか教えてもらっても」
「「「いや、ダメでしょう」」」
3人の芯のついた言葉にとうとう負けて膝をついた太刀川。
テスト範囲を教えてもらい、尚且つ問題の目星いところを教えてもらおうとしていたのだ。
「言っておきますけど、そんな便利なものじゃないですよ
自分に利益になりそうなこと、危険が迫った時にだけしか発動しませんから。つまりは太刀川さんに協力すること自体が僕のメリットではありせん」
「だからメリットを提示しただろう!!
俺といつでも好きなだけ練習相手になってやる!」
「結構です」
それは太刀川のメリットでしかない。
本人がメリットを感じなければ発動しない「サイドエフェクト」
つまりはバカみたいに太刀川から切られるなんて嫌だということである。
「用事がこれだけなら失礼します」
「わざわざありがとうね。それにお土産まで」
「いえ。出水先輩には常日ごろからお世話になってますので」
「もう俺の教えることがないぐらいやってるだろうが」
「それでも先輩は僕の師匠ですので」
そういって頭を下げてから部屋を出る男。
「…ったく」といいながらも少し嬉しそうな表情をする出水。
ささぁ、良いところのお饅頭食べよー!とお茶を用意する国近。
そんな中、一人だけ取り残されていたのは、
「………えっ!僕を無視した!!?」
「いたのか唯我」
「いたの唯我君」
「全然わからなかったぜ」
「皆さん酷い!!」
なんか会話の流れに入ってこれなかった唯我は最後まで会話することなく終了。
落ち込んでいた太刀川も自分より酷い扱いをされた唯我のお陰で少し立ち直った。
「大体お前が初対面の時にイライラさせる言い方をしたのが悪い」
「ただの自己紹介ですよ!」
「その自己紹介で、自分はエリート!!って言ってる時点でイラッとしたんだよ俺が!!」
「出水さんは関係ないですよね!!?」
「うるせぇ!!それ以来全く見られてもないことに気づけ!」
そ、そんなに悪かったのか……と、今頃反省している唯我。
しかし唯我はコネでこの太刀川隊に入ったことは周知の事実。
そして俺は偉い・強いと見栄を張る唯我にしらっとした目線を送りそのまま関わらないようにしたみたいだ。
そんな…とちょっとショックを受けている唯我に対して全く気にせずに「でもさ〜」と話題を変える国近。
「正木君、真面目なんだけど変わっているよね〜」
「それは分かります」
「だな。腕はいいんだがどうにかあの性格がな……」
物事にハッキリと区別をつけるというか、言いたいことはハッキリとするタイプというべきなのだろう。
そしてあまり表情も変わらないので、周りからは「歩くマネキン」とまで言われている。
本人もそれを知っているが「なるほど」と納得して特に反発もなかったという。
B級ソロ、正木 始。
それが彼の名前であり、特殊なサイドエフェクトの持ち主である。
太刀川隊でそんな話をされていることなど考えもつかない正木は、気分転換に食堂にいき腹を満たそうと考えた。
こういう時はご飯に限る。
そう意気込んだ矢先に目の前からピョンピョンと跳ねて近づいてくる子供が……
「マサにぃだ!!
「緑川、久しぶり」
「激レアモンスターだ!!」
「いや、僕はポケ〇ンじゃない」
そんなやり取りをしながら緑川は正木の腰元に抱きついてきた。完全にお兄ちゃん扱いをしている。
それもレアモンスターという珍しいものを見つけた感覚。
「久しぶりだな。正木」
「お久しぶりです。米屋さん」
2人のやり取りを呑気に眺める米屋。
こうなった緑川は手を付けられないと分かっているので放置しているのだ。
「マサにぃ!ジャンケン!!」
「またですか……」
「いいからいいから!!」
「はいはい…」
イヤイヤと分かっていながらも緑川のワガママに付き合ってくれる正木。
最初はグー。ジャンケン、ポン!!と緑川の出したのはパー。
そして正木はチョキ。つまりは正木の勝ち。
しかしこのまま終わらずに連チャンが続く。
こうなったら長くなる。
はぁーとため息をつく正木だがそんな状態でもまだ緑川に勝ち続けている。
「だぁー!!勝てない!!」
「それを分かってやってるでしょう」
「でもいつか勝つかもしれないじゃん!!」
「付き合うこっちの身にもなってくださいよ……」
そういいながらも
その出来事に周りの人達も何が起きているのかと集まりだした。
(あまり、目立ちたくない……んだけどな……)
とはいうもの、ここで強制的に終わらせるとあとで緑川がゴネてこっちのほうが面倒くさい。かといってわざと負けることも出来ない。
そう言う風に正木の
「はいはい。終了終了!!」
「えぇー!!まだ勝ってない!!」
「50敗しておいて何言ってんだ。わりぃな正木」
「いえ」
正直、米屋には助けられた。
このままやり続けても結果は変わらない。
僕のサイドエフェクトは【超直感】は、要は勘がとても優れている。とはちょっと違う。
勘は2択あったらならこっちかなーという具体的なものが何もない状態、いわば"無"から選ぶものである。
直感とは
ジャンケンならぐー、チョッキ、パーの3パターン。
その中から勝てる確率、緑川の出すパターン、今日の体調などなどあらゆる情報を
いわばこれまでやってきたことに対して、その経験などが正木のサイドエフェクトに大きなアドバンテージを与える。
経験すればするほどにその直感の確率が上がるのだ。
「何回やっても勝てねえよ緑川」
「まだ分からないじゃんか!!どこかで僕の力が目覚めて勝てるかもしれないでしょう!!」
「なんだよその力……ジャンケンに勝つ力でいいのかよ……」
そんなやり取りに思わず笑ってしまう正木。
無表情なんてものは別に装っていない。
ただ常に警戒するあまり無表情が崩れないだけである。
それでもこんなサイドエフェクトを持っていても普通に接してくれる二人といるのは心地良い。
だからこそこんな風に笑うことも出来る。
どうしてもこのサイドエフェクトを便利扱いする輩は現れる。
まぁ太刀川のような者はまだマシな方。
これを悪用とするやつらもいるのだから手に負えないのだ。
ただ勘のいい男。歩くマネキン。
それでいい。僕にとって必要なものではない人達まで気を使う必要せいは全くない。
しかしそんな正木ももう一つだけ無表情になってしまうのことがある。本人は一切気づいていない。これこそ無意識になってしまっていて、尚且つそれについて誰も教えてくれない。
それとは………
「あぁー!!いたあぁー!!!」
遠くから正木を指さす女の子が一人。
無意識に肩がビクッと上がってしまう。
別に苦手というわけではない。ただどうしたらいいのか分からない。
その女の子はズカズカとこちらに歩いてきて
「ほら帰るわよ始!!」
「わかりましたから、そんなに引っ張らないで……」
「引っ張らないとアンタ、いつまで経っても帰ってこないでしょう!!」
「いや、ネコじゃないんですから……
「いいから帰るのよ!!それじゃ連れて帰るから!じゃあね!!」
嵐のように現れて正木はその女の子に連れ攫われていった。
玉狛の小南。ちょっと天然ですぐに人のいうことを信じてしまうカワイイ女の子。
「尻にひかれているなー」
「??別にお尻でマサにぃを引いてないよ」
「いいんだよお子様は気にしなくてよ」
なんでだよー!!と拗ねる緑川にはいはい。流す米屋。
どこから見てもあれは……
「……ったく、気づかないもんかね〜」
そんなことはもちろん正木の耳には入らない。
そしてそれどころか小南の歩きは速く、尚且つちょっと腕を握っている力が強い
「あのー小南…」
「なによ!絶対に離さないわよ!!」
「じゃなくて、ちょっと痛くて……」
「えっ!?ご、ごめん!!そんなつもりじゃ……」
すぐに離してくれた小南だが、わざとじゃなくても痛い思いをさせてしまったとちょっと凹んでいる。
「小南がわざとしないこと知ってるよ」
「そ、そうだけど……」
「じゃ帰ろう。どちらが荷物持ちするかジャンケンする?」
「しないわよバーカ!!いくわよ!!」
こんな風に冗談めいたことをいう正木だがそれでも無表情。
これはただ単に女の子として緊張しているだけである。
そして尚且つ勘が悪い。直感が利かない。
どういうわけか女の子に対してはどんなに接しても経験が蓄積していないかのように全く感じ取れない。
なので女の子に対してサイドエフェクトが通じない。
だから相手が好意を持っていたとしても、それに気づけないのだ。
(正木バーカ、バーカ!!)
長く連れそう友人でもやっと分かるぐらいに対人に対しての、それも好意に対してサイドエフェクトは発揮されない。
普通に友情である好意にでも気づきにくい正木は、女の子からの好意はさらに分からないらしい。
これは、正木の身の回りにいる好意を持つ女の子がいるのに一切気づかない日常のお話。