マジカル★エクスプローラー ちょいゲス風味 作:名無しのエロゲユーザー
花邑グループ。それは大魔法使いであり、会長である花邑龍炎が一代で興した巨大財閥である。
花邑毬乃はその孫にあたり、現在は不在がちな花邑龍炎に代わり主に国内でのグループの顔役を担っている。
その自宅ともなれば、想像の通り大豪邸だ。
一体何部屋あるのかわからないくらい広い和風家屋に、サッカーコート反面くらいはありそうな庭園付きの広い庭。
ここに花邑毬乃は娘の「はつみ」と2人で暮らしているとのことだ。
俺は事件翌日の夜、そこに招かれ延期となった家族の顔合わせをすることになった。
迎えてくれたのはエプロンに身を包んだ毬乃さんである。
「いらっしゃい、こうちゃん♪」
「お世話になります」
「もう! そこは『ただいま』でいいのよ! 今日からは貴方の家でもあるんだから」
「……ただいま、毬乃さん」
「おかえり♪ うふふ、今日は私の手料理をふるっちゃうんだから!」
まるで新妻のテンションである。まったくもって瀧音幸助の倍は生きているようには見えない。
でも花邑毬乃の手料理か。何か想像がつかないな。
「あ、何か失礼なこと考えてない? お料理は得意なんだから!」
「あ、いえ……それより、はつみさんは?」
「あの子ったら……今日はこうちゃんが来るからって言っておいたのに、自分の研究室にこもったきりなのよね。時々あるの。返事も無いから、寝食を忘れちゃうくらい研究にのめりこんでいるみたい」
花邑はつみはツクヨミ魔法学園の卒業生であり毬乃さんの一人娘だ。
ゲームだと毬乃さんと同様、攻略の対象にはなっていないので、主人公とあんなことやこんなことは出来ないようになっている。
彼女は亡き父親――毬乃さんの夫でもある――の研究していた『時空魔法』を研究していて、ある重要なイベントで使うその魔法を主人公に継承させる役割を担っていた。
だからこそ、彼女たちの夫、父親は狙われたのかもしれない。
「研究の邪魔をしてもあれなんで、折を見て挨拶させてもらいますよ」
「そうね、今日と明日はウチに泊まってもらうことになるし、こうちゃんがそう言ってくれるなら」
「それより、何か手伝いましょうか?」
「いいのよ、今日はお客さんなんだから」
「でも、今日から家族なんでしょ?」
俺がそう言うと彼女は少し驚いた表情を浮かべ、ニコニコと俺に笑いかけた。
「あら、嬉しいわ♪ でもほとんど出来上がっているから、テーブルに座って待ってて♪」
座って待っていると、彼女はフンフンと鼻歌を歌いながら料理を運んでくる。ハンバーグと唐揚げ、サラダ、お味噌汁とご飯を2人分よそい、食卓に置いた。
こんなご飯を食べることが出来るのはいつ以来だろうか。
少なくとも瀧音幸助になってからは出来合いのものしか食べていなかったから、懐かしいという感情さえある。
「ではいただきましょうか」
「はい」
「「いただきます」」
▼
「ごちそうさまでした。お世辞とかなしで、今までで食べた手料理で一番おいしかったです」
「あらあら、嬉しいこと言ってくれちゃって。ちょっと待ってね、食後のコーヒーを入れるから」
彼女は慣れた手つきでコーヒーポットに豆とフィルターを取り付け、沸かしたお湯を丁寧に注ぐと、香ばしいコーヒーの香りがダイニングに広がった。
飲まなくてもわかる。高いやつだ。
「ありがとうございます。いただきます」
「はい、召し上がれ♪」
「ケーキでも買ってくればよかったかな。手ぶらですみません」
「いいのよ。変に気を遣わないで」
穏やかな食後の時間が過ぎる。
毬乃さんとはまだ出会ってからそう時間は経っていないが、彼女の包容力に思わず甘えてしまいそうになる。
そんなことを考えながらコーヒーを飲む俺を、ニコニコと見つめていた毬乃さんが口を開いた。
「それにしても、昨日はお手柄だったわね、こうちゃん」
「心配かけてごめんなさい」
「心配していたことをわかってくれたら、それでいいのよ。貴方が助けたあの子、トレーフル皇国の皇女だったのよ。知ってた?」
「はい、ニュースか何かで顔を見た気がするので、そうだろうなと思っていました。でもまさかテロに遭うとは……」
「それがね、ただのテロじゃなかったのよ」
「……というと?」
「こうちゃんが捕縛してくれた襲撃者たちを尋問したら、彼ら邪神教の信者だったのよ」
「邪神教、ですか……」
邪神教とはゲームにも出てくる、その名の通り邪神の復活を目論む一党である。
無論、彼ら自身は邪神教などとは名乗っておらず『教団』等を名乗り、教義としては「破壊の神である邪神を現世に顕現させることで救いをもたらす」とか言っていた気がする。
けっこうなヒロインに関りがあるから戦うことも多かった。
その中の一つがリュディの襲撃だ。
ゲーム本編だと彼女と出会ってしばらく経ってから起きるイベントがあり、そのイベントを通じて
だが今回のテロ未遂で俺がその『男嫌い』の原因を取り除いたから、この先の彼女のストーリーは少し書き換わっているだろう。
「そう。最近、国内外でその名を聞くことが多くなってきたわ」
「聖女至上主義の『法国』や、今回の騒ぎで皇国も騒ぎ出しそうですね」
「本当よ……でも、こうちゃんのおかげで国際問題にならずに済んだ部分もあるわ。魔法協会の理事長なんて涙を流しながら感謝していたぐらいなんだから」
「謝意なら形のあるもので受け取りますよ」
「あら、何か欲しいものでもあるの?」
「そう言われると……何だろう。アイテムボックスと刀ですかね」
「それくらいなら、入学祝にあげるわよ」
「いや、でもそんな高いものを」
「アイテムボックスならその辺に使ってない予備があるし、刀なら蔵にいくつか入ってるわよ」
「くら」
この先、ダンジョンに潜ったりするならアイテムに頼ることも多くなってくるので、アイテムボックスは非常に助かる。
ゲームだとイベントを通じて入手することが出来たが、本来は非常に高価なものだ。
刀については前世からなじみがあるし、俺のメインウェポンにする予定だ。
銃や弓を持って遠距離をカバーすることも考えたが、器用貧乏より
刀はダンジョンでもそれなりにドロップするし、比較的入手もしやすい。第三、第四の手にも刀を握らせて四刀流!なんてことも出来なくはないが、残念ながらここは現実なのでやらない。
俺はコーヒーを一口飲んではやりそうな気持ちを落ち着かせる。
「真面目な話、護身用として武器を持ってもらうことは考えていたわ」
「……と言うと?」
「今回のテロ未遂で、邪神教信者を1人取り逃してしまったようなのよね」
「それは……すみません、気づきませんでした」
「謝るようなことじゃないわ、貴方は十分以上に結果を出したもの」
「そうですか……」
「でも襲撃を邪魔したこうちゃんは、高い確率で邪神教に狙われることになる。そのことだけは覚えておいて」
毬乃さんは真剣な顔で俺に語り掛けた。
これこそが今日、彼女が言いたかったことなのかもしれない。
「わかりました」
「よろしい♪ ということで、明日リュディヴィーヌちゃん達がお礼したいってウチに来るからよろしくね♪」
「え? それはまた急な話ですね……」
「急と言うけど、そもそも彼女がこの国に来たのはツクヨミ学園に通うためだし、助けてもらったのに1週間も2週間もおいてからお礼なんて、相手に失礼になるじゃない」
「そりゃそうかもしれないけれど、俺が相手するんですか?」
「お礼を受け取るだけだし、外交をしろと言っているわけじゃないから。むしろこうちゃんがいない方が不自然だわ。まぁ、私の方も用があるからメインスピーカーは私。その点は安心して」
「は、はぁ……」
「それよりお風呂、湧いているから入っておいで。替えの下着は持ってるわよね? パジャマは脱衣所に置いておいたから」
「はい、ありがとうございます」
俺はカップに残っていたコーヒーを飲み干すと、案内された風呂の方に向かって歩き出す。長い廊下の先にお風呂場があるとのことだ。
しかしリュディなぁ……パーティーを組むならぜひ欲しい人材だ。
ゲームだとだいたい4~5人でダンジョンを攻略するのが主流だった。経験値が等分配分だったので、あまり多いと効率が悪くなったからだ。
本来の主人公は全部に適性があったのでパーティーの編成に自由度は高かったが、
優先順位としては①遠距離攻撃、②回復、③アタッカー、④遊撃手、といったところか。
リュディは攻撃魔法を得意とし、遠距離攻撃役としては最上位を争うほど優秀だが、2周目とか3周目になると同系統なら同じくらい強くなれるので、割とルートやキャラクターの好み次第なところはあった。
主人公のメインジョブ次第ではベンチ入りすることもあり得る。
ちなみに前世の俺が死ぬ直前でのパーティーメンバーでもあるので、思い入れはちょっとだけある。
そういえば
―――敗因は、そんなことを考えながら行動していたことである。
脱衣所に入って服を脱ぐ。そしてパンツに手をかけた瞬間、風呂につながる扉ががらりと開いた。
もくもくと漏れ出る湯気の向こうから裸の美女が現れた。
もちろん、この家のもう1人の住人である。
時が止まる。
目と目が合い……残念ながら通じ合わなかった。
「きっ……」
「き?」
「きゃぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!」
エロゲーかよ。
エロゲーだったわ。
俺の記憶は、彼女の右手に
▼
「…………」
「…………この度は、大変申し訳ございませんでした」
俺は彼女の部屋で床に正座し、頭を下げる。いわゆる土下座だ。
ここで調子に乗った発言でもしたら俺は誇張無しに消し炭になるだろう。なぜならこの世界はエロゲーが元になっているからだ。
つまり女の方が男より基本的に強いのだ。
それは『三会』と呼ばれる学園の自治組織が女性だらけであることを見てもわかるだろう。
ましてやこの国で最強との呼び声もある花邑毬乃の娘である。ここは全面降伏が妥当だ。
「はあ……もういい。頭をあげて」
「はい」
「わざとじゃないんでしょ? 私もこうすけが来るのを聞いていたのを忘れていたし、鍵をかけていなかったのも悪かった」
「そう言っていただけると……本当にすみませんでした」
一応の許しは得ることが出来たようだ。
はつみさんの顔色を窺うが、ゲームでも彼女は基本的に無表情だった。
怒っているとかそういうわけではなく、感情表現があまり顔に出ないのだろう。
だがやはり毬乃さんの娘というだけあってよく似ている。『来る者拒まず』という座右の銘がある俺としては、誘われたらホイホイついて行ってしまいそうだ。
「こうすけ」
「はい」
「こうすけの境遇は母様から聞いているわ」
「はい」
「……私たちはもう家族。
「は……わかった、
「
「『ちゃん』はちょっと……許して、はつみ姉さん」
「…………わかった。私は学園の教員でもある。困ったことがあったらいつでも言って」
「助かるよ、ありがとう」
「じゃあおやすみ、こうすけ」
「おやすみ、姉さん」
満足した顔をした彼女に解放してもらった俺は彼女の部屋を辞し、あてがわれた部屋に戻った。
げ、げす部分にたどり着かねえ……