書類のサインを終え寮の自室に戻った一夏は、部屋の中から聞こえるシャワーの音に気づいた。
(ああ、シャルルが先にシャワー浴びてるのか)
一夏はそう思いながら制服のネクタイを緩めた。今日はいろいろあった。ラウラのこと、真耶との書類手続きそして箒たちとの訓練。頭の中を整理する間もなく、次々と出来事が押し寄せてくる。そんな一日だった。
一夏はベッドに腰を下ろしてふと部屋の中を見回した。そして、あることを思い出した。
(そういえば、昨日ボディソープが切れたんだったな)
一夏はクローゼットを開けて、中を探った。予備のボディソープが、確かここにあったはずだ。少し探すと、それはすぐに見つかった。
「シャルル、困っているよな。予備があったから持ってくか」
一夏はそう呟いて、洗面所へと向かった。シャワーの音はまだ聞こえている。きっと、ちょうど困っているところだろう。
「シャルル、予備のボディソープ持ってきたぞ」
一夏はそう言って洗面所の扉を開けた。その瞬間、シャワー室の扉が開いた。
「あ、ありがとう。助か——」
シャルルの声が、途中で止まった。一夏の思考も、そこで完全に停止した。
洗面所には、シャワーを浴び終えたばかりのシャルルが立っていた。濡れた金髪が、肩に張り付いている。肌は白く、しっとりと水をまとっている。そして——。
(——え)
一夏は、自分の目を疑った。シャルルの体には、男のそれとは明らかに異なる柔らかな曲線があった。胸には、確かに膨らみがあった。それは、一夏がこれまで「男の子にしては華奢だな」と思っていた理由を、あまりにも明快に説明していた。
「——っ!?」
シャルルが、一夏に気づいて顔を真っ赤にした。そして、とっさにタオルで体を隠す。一夏もようやく我に返って、慌てて顔を背けた。
「わ、悪い! ノックもせずに入ってきて! ごめん!」
一夏はそう言って、手に持っていたボディソープを差し出した。
「と、とりあえず、これ! 予備のボディソープ! 置いとくから!」
「あ、う、うん……」
シャルルが、震える声で答えた。一夏はボディソープを洗面台の上に置くと、ほとんど逃げるように洗面所を出た。扉を閉めて、その場にへたり込む。
(——なんだ、今の)
一夏の心臓は、まだ激しく鳴っていた。頭の中が、真っ白になっている。シャルルが女だった。あの、気さくで明るくてどこか線の細い少年だと思っていたシャルルが、実は女だった。
(——落ち着け。落ち着け、俺)
一夏は深く息を吸って、吐いた。だが心臓の鼓動は収まる気配がない。
(いや、待て。じゃああのシャルルの言動は何だったんだ? あの、男の子らしい話し方も仕草も。全部、演技だったのか?)
そんな疑問が、頭の中を駆け巡る。だがその答えは出ない。そして、頭の中の声も今は何も言ってこなかった。おそらく、こればかりは一夏自身が向き合うべき問題だと、そう判断したのだろう。
(——そうだよな。これは、俺がちゃんとシャルルと話さないといけないことだ)
一夏は、ゆっくりと立ち上がった。洗面所の中からは、まだシャワーの音が聞こえている。一夏はその音を聞きながら、ベッドに腰を下ろした。そして、シャルルが出てくるのを静かに待つことにした。
(シャルル。お前は、どうして女だってことを隠してたんだ?)
その問いは、まだ口に出せない。だがいつか必ず聞かなければならない。一夏はそう思った。そして、頭の中の声が静かに告げた。
(——性急に問い詰めるな。相手には、相手の事情がある。まずは話を聞くことだ)
一夏は、心の中で頷いた。そうだ。まずは、シャルルの話を聞こう。一夏はそう決めて、洗面所の扉が開くのを待った。
しばらくして洗面所の扉が静かに開いた。シャルルが、制服をきちんと着て出てきた。髪はまだ少し濡れていて、その表情はどこか怯えているように見えた。
「……ごめん、驚かせて」
シャルルは、消え入りそうな声でそう言った。一夏は何も言わずに、冷蔵庫から取り出しておいた冷たいお茶のペットボトルを差し出した。
「とりあえず、これ飲めよ。落ち着くから」
シャルルは一瞬ためらってから、それを受け取った。キャップを開けて、一口。そしてもう一口。冷たいお茶が喉を通っていくにつれて、シャルルの肩から少しずつ力が抜けていくようだった。
「……ありがとう」
シャルルはそう言ってペットボトルを両手で包み込んだ。一夏はベッドに腰かけて、シャルルと向き合った。
「シャルル。聞いてもいいか?」
シャルルの肩が、わずかに緊張した。
「どうして、男のふりをしてたんだ?」
シャルルは、しばらく黙っていた。視線は手の中のペットボトルに落ちている。やがて、ぽつりぽつりと、話し始めた。
「僕は……デュノア社の社長の、愛人の子なんだ」
その言葉は、どこか諦めたような響きだった。
「本妻の子じゃない。だから、僕には、デュノアの家を継ぐ資格も名前を名乗る権利も、本当はないんだ」
シャルルは、小さく息を吐いた。
「社長は、僕のことを、ずっと疎ましく思ってた。でも、ある時急に僕に目をつけてきた。IS学園に、男として潛入しろって」
「……白鴉のデータを盗むために?」
一夏の問いに、シャルルは小さく頷いた。
「そう。会社が、経営危機に陥ってたんだ。IS関連の技術で、他社に大きく水をあけられて。そこで、社長が考えたんだ。IS学園にいる唯一の男のIS操縦者、その機体のデータを盗めば形勢を逆転できるって」
シャルルの声は淡々としていた。まるで、他人事のように。
「僕に、選ぶ権利はなかった。社長の命令は、絶対だったから。男のふりをして、IS学園に入って白鴉のデータを盗む。それが、僕に与えられた役割だった」
シャルルは、そこで一度、言葉を切った。そして顔を上げて、一夏を見た。その目にはどこか吹っ切れたような、乾いた光があった。
「全部話したら、少し楽になったよ。ずっと一人で抱えてたから。……はは、変だよね。こんな秘密バラしちゃいけないのに。でも、もういいやって思ったんだ」
シャルルは、そう言って渇いた笑みを浮かべた。一夏は、その笑みを見て胸の奥がぎゅっと締め付けられるような思いがした。この笑顔は、諦めの笑顔だ。自分にはもう何も残っていないと、そう言っているような笑顔だった。
「シャルル。これから、どうするんだ?」
一夏は、静かにそう聞いた。シャルルは、首を小さく横に振った。
「分からない。……っていうか、僕に選ぶ権利なんてないんだよ。社長の命令に従うか、それともすべてを失って放り出されるか。僕には、その二つしかない」
シャルルは、そう言って、また渇いた笑みを浮かべた。
「僕は、僕の人生を、自分で選んだことなんて一度もないんだ」
その言葉は、あまりにも重かった。一夏はしばらく何も言えなかった。だが、やがてゆっくりと口を開いた。
「シャルル。ここに居ればいい」
シャルルが、顔を上げた。その目がわずかに見開かれる。
「……え?」
「ここに居ればいいんだよ。IS学園に」
一夏は、まっすぐにシャルルを見つめて、そう言った。シャルルは戸惑ったように、一夏の顔を見返した。
「で、でも……僕は、スパイで……白鴉のデータを盗もうとして……」
「特記事項二十一」
一夏は、その言葉を、静かにしかしはっきりと口にした。シャルルの表情が、きょとんとしたものに変わる。
「『本学園における生徒は、その在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意が無い場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする』」
一夏は、そこまで言って少しだけ笑った。
「IS学園の規則だ。つまり、この学園に居る限りシャルルはデュノア社の命令に従う必要はないってことだ。少なくとも、三年間はな」
シャルルは、呆然と一夏を見つめていた。その目が、ゆっくりと信じられないといった色に変わっていく。
「そんな……そんなこと……」
「本当だ。規則なんだから、間違いない。それにもしそれでも不安なら、千冬姉に相談するのもいい。あの人は、こういうことにはちゃんと筋を通してくれるから」
一夏は、そう言って、にっと笑った。シャルルはまだ呆然としていたが、やがてその目に、じわりと涙が滲んだ。
「……どうして」
シャルルの声は、震えていた。
「どうして、そこまでしてくれるんだ? 僕は、君のデータを盗もうとしてたんだよ? 君を、騙してたんだよ?」
「んー、まあ、そうだけど」
一夏は、頭をかいた。
「でも、シャルルは、ちゃんと話してくれただろ。全部。隠し続けることもできたのに。それって、俺は、すごく嬉しかったんだ」
一夏のその言葉に、シャルルの涙がこぼれ落ちた。
「う……うあ……」
シャルルは、両手で顔を覆って声を上げて泣き始めた。その肩が、小刻みに震えている。一夏はそんなシャルルの背中を、そっと撫でた。
「泣けよ。いっぱい、泣けよ。今までずっと我慢してたんだろ」
シャルルは、子供のように泣き続けた。一夏は、しばらく何も言わずに、その背中を撫で続けた。
やがて、シャルルの泣き声が少しずつ小さくなっていった。そして、涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げて、一夏を見た。
「……ありがとう、織斑君」
その声は、まだ震えていたがさっきまでの乾いた笑みは、もうなかった。一夏はにっと笑って、頷いた。
「どういたしまして。……さあ、顔洗ってこいよ。まだ泣き足りないなら、いつでも付き合うからさ」
シャルルは、少しだけ笑って頷いた。その笑顔は、今まで見た中で一番、素直な笑顔だった。
―――
シャルルが落ち着いた頃、一夏はふと時計を見た。もう夕飯の時間をとっくに過ぎている。
(そういえば、まだ飯食ってなかったな。シャルルも食べてないだろ)
一夏は立ち上がって、シャルルの方を振り返った。
「シャルル。食堂行って夕飯持ってくるよ。二人分。ここで待ってていいから」
「え、僕も行くよ」
「いや、いいから」
シャルルが立ち上がろうとするのを、一夏はそっと手で制した。
「今日はいろいろあっただろ。少し休めよ。すぐ戻ってくるからさ」
シャルルの表情に、少し迷いのようなものが浮かんだ。だが、やがて素直に頷いた。
「……分かった。ありがとう、織斑君」
「おう。何か食べたいもんあるか?」
「何でもいいよ。織斑君に任せる」
「了解。じゃあ、行ってくる」
一夏はそう言って、部屋を出た。廊下はもう夜の気配に包まれていて、窓の外はすっかり暗くなっている。一夏は食堂へと続く廊下を歩きながら、シャルルのことを考えていた。
(今日は、いろんなことがあったな。ラウラのこと、シャルルのこと)
だが、シャルルの秘密を知って、一夏の心はどこか落ち着いていた。あれだけ思い詰めていたシャルルが、少しだけ楽になったように見えたからだ。あの涙には、きっと意味があった。長い間一人で抱えていたものを、ようやく誰かに話せた。そのことが、シャルルを少しだけ自由にしたのだろう。
(少しずつでいい。少しずつ前に進めばいいんだ)
一夏はそう思った。その時、前方から聞き覚えのある声がした。
「一夏?」
「織斑さん」
「一夏、どこ行くのよ?」
顔を上げるとそこに箒、セシリア、鈴音の三人が立っていた。どうやら三人で食堂に向かう途中だったらしい。
「みんなも夕飯?」
「ああ。ちょうど食堂に行くところだ」
「織斑さんもですか? でしたら、ご一緒にどうぞ」
「あたしら、これからご飯にしようとしてたとこなの」
三人はそれぞれにそう言って一夏に笑いかけた。一夏はその申し出に、少しだけ迷った。だがすぐに首を横に振った。
「ごめん。今日は、部屋で食べようと思って」
「部屋で?」
箒が怪訝そうな顔をした。セシリアも、鈴音も、同じように首を傾げている。
「シャルルの調子が良くなくてさ。ちょっと心配だから、部屋で一緒に食べようかなって」
「シャルル君が?」
セシリアがそう言って、少しだけ表情を曇らせた。鈴音も、何かを考えるように顎に手を当てている。
「大丈夫なのか?」
「ああ、大したことじゃないんだけど。今日はゆっくりさせてやりたいんだ」
「そうか……」
箒はそう言って少しだけ納得したように頷いた。そして、一夏の隣に並んだ。
「なら、食堂まで一緒に行くぞ」
「え?」
「私も行きますわ。二人分の夕飯を持ってくるんでしょう? 手伝えることがあるかもしれません」
「あたしも行くよ。どうせご飯食べるのは同じだし」
三人はそう言って、一夏の歩調に合わせて歩き始めた。一夏はその気遣いに、少しだけ胸が温かくなるのを感じた。
「ありがとう。助かるよ」
「礼には及ばない。ただの気まぐれだ」
「あら、箒さんったら。素直じゃないんですから」
「なっ! セシリア、余計なことを言うな!」
「あはは。まあまあ、行きましょ」
鈴音がそう言って笑いながら四人は食堂へと向かった。廊下を歩きながら、一夏はふと思った。
(みんな、いいやつらだな。シャルルのことも、きっと受け入れてくれる)
その確信が、一夏の心を少しだけ軽くした。食堂の明かりが、廊下の先に見えてきた。
―――
食堂から二人分の食事を貰って部屋に戻った一夏は、部屋に備え付けられたテーブルに自分の定食とシャルルのトマトソースパスタを置いた。湯気がふわりと立ち上り、トマトの甘酸っぱい香りが部屋の中に広がる。
「ほら、シャルル。トマトソースパスタでいいよな?」
一夏は椅子を引いてシャルルに促した。シャルルは少しだけ遠慮がちに腰を下ろした。
「うん。ありがとう」
「他にも何かあった方がいいかと思ったんだけど、今日のメニューこれしか残ってなくてさ」
「十分だよ。すごく美味しそう」
シャルルはそう言ってフォークを手に取った。一夏も向かいに座って、定食の箸を取る。焼き魚に味噌汁、ご飯に小鉢が二つ。至って普通の和定食だが、こうして誰かと食べる食事はやはり格別だ。
「いただきます」
二人の声が、重なった。
一夏はまず味噌汁を一口すする。出汁の香りが鼻を抜け、温かさが体の芯まで染み渡る。今日はいろいろなことがあった。ラウラとのこと、シャルルの秘密そして今こうしてシャルルと食事をしていること。頭の中を整理する間もなく過ぎていった一日だったが、こうして落ち着いて食事を取ると、ようやく心が落ち着いてくる。
「シャルル、パスタはどうだ?」
一夏がそう聞くとシャルルは口に運んだパスタを飲み込んでから、小さく頷いた。
「うん、美味しい。トマトの酸味がちょうどいいね」
「だろ? ここの食堂のパスタは結構評判いいんだよ」
「そうなんだ。……ねえ、織斑君」
シャルルがフォークを置いて、一夏を見た。
「さっきは、本当にありがとう。僕あんなに泣いたの久しぶりだった」
その声は穏やかだった。さっきまでの張り詰めたものが、少しだけ解けたような声だ。
「気にすんなよ。俺が勝手にやったことだし」
一夏はそう言って焼き魚に箸を伸ばした。シャルルはそんな一夏を見て、ふっと小さく笑った。
「織斑君って、そういうところだよね。本当に、まっすぐなんだ」
「そうか? 自分じゃよく分かんないけど」
「そうだよ。だから、僕は救われたんだ」
シャルルはそう言って、またパスタを口に運んだ。その表情は、出会った頃の明るい笑顔とは少し違う。もっと静かで、もっと深いところから来る笑顔だった。
「なあ、シャルル」
一夏は箸を止めて、顔を上げた。
「さっき、特記事項二十一の話をしたけどさ。あれ、本気で言ってるからな。シャルルがここに居たいなら、俺は全力でそれを守る。千冬姉にもちゃんと話すし、もしデュノア社が何か言ってきても、学園が守ってくれるはずだ」
シャルルは、少しだけ目を丸くした。そして、その目がじわりと潤むのをこらえるように、一度深く息を吸った。
「……うん。分かってる。織斑君が、そういう人だってことはもう知ってるから」
シャルルはそう言って笑った。今度の笑顔は、涙をこらえながらのそれでも確かに嬉しそうな笑顔だった。
「でも、織斑君。一つだけわがままを言ってもいい?」
「ああ、何だ?」
「しばらく、このままでいさせてほしいんだ。男のふりを続けるってことじゃなくて……」
シャルルは言葉を選ぶように、少し間を置いた。
「デュノア社のことは、まだ自分で整理がつかないから。すぐにどうこうするんじゃなくて、少しだけ時間がほしい」
一夏は、その言葉に深く頷いた。
「分かった。シャルルのペースでいい。何かあったら、いつでも言ってくれ。俺も箒たちも、きっと力になってくれるから」
「箒さんたちも?」
「ああ。今日、食堂で会ったときみんなシャルルのこと心配してたよ。何かあったんじゃないかって」
シャルルは、少し驚いたような顔をした。そして、どこか照れたように微笑んだ。
「……そうなんだ。僕、まだみんなとそんなに話してないのに」
「そういうもんだろ。一緒に戦ってるんだからさ」
一夏はそう言って、にっと笑った。シャルルもつられるように笑った。
「そうだね。……よし、食べよう。冷めちゃう」
シャルルはそう言ってパスタを勢いよく口に運んだ。一夏もそれに続いて、定食の残りを平らげていく。しばらくの間、部屋の中には食器の触れ合う音と、二人の静かな咀嚼音だけが響いていた。だがその沈黙は、気まずいものではなかった。むしろ、心地よいものだった。やがてシャルルがふと口を開いた。
「ねえ、織斑君。さっき抹茶を点ててくれるって言ってたよね」
「ああ、言ったな」
「あれ、まだ有効?」
一夏は少し驚いて、それから笑った。
「もちろん。今度、ちゃんと点ててやるよ。茶筅どっかにあるかな」
「楽しみにしてる」
シャルルはそう言ってにこりと笑った。その笑顔は、今日一番の晴れやかな笑顔だった。
食器を片付け終えた頃にはすっかり夜も更けていた。窓の外には、変わらず星が瞬いている。一夏はベッドに腰を下ろして、大きく伸びをした。
「今日は、本当にいろいろあったな」
「うん。本当に」
シャルルも自分のベッドに腰かけて、しみじみとそう言った。
「でも、悪いことばかりじゃなかった」
「そうだな」
一夏はそう答えて、シャルルの方を見た。シャルルはもう、さっきまでの泣き顔ではなく穏やかな笑顔を浮かべている。
「おやすみ、シャルル」
「おやすみ、織斑君」
部屋の明かりを消すと暗闇の中に二人分の寝息が聞こえ始めた。今日の出来事を反芻しながら、一夏はゆっくりと意識を手放していった。