IS レイヴンズ・レゾナンス   作:BLUE@

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三十七話

海風が、潮の匂いを運んでくる。夜明け前の空はまだ薄暗く、水平線の向こうがわずかに白み始めていた。その空の下で、五機のISが激しい戦闘を繰り広げていた。

 

「くっ……! この……!」

 

箒の紅椿が、銀の福音の第二形態から放たれるエネルギー弾を必死にかわす。全身から翼のようなエネルギーの奔流を生み出し、それを弾丸のように撃ち出してくる。その速さは、第一形態の比ではなかった。

 

「ちょっと、キリがないんだけど!」

 

鈴音の甲龍が、双天牙月を高速回転させて弾幕を防ぐが限界が近づいていた。

 

「セシリア! 援護を!」

「分かっていますわ!」

 

セシリアのブルー・ティアーズが、手にしたスターダスト・シューターを展開する。収束したエネルギー弾が銀の福音を狙うが、第二形態の機動の前には決定打にならない。

 

「なんて機動力……!」

 

シャルロットのラファール・リヴァイヴが、中距離からミサイルを放つ。だが、銀の福音はそれをまるで意に介さず、ひらりとかわして見せた。

 

「ラウラ! どうにかならないのか!」

「無理だ。あの機動は、もはや第四世代の域だ」

 

ラウラのシュヴァルツェア・レーゲンが、レールガンを放つ。だが銀の福音のエネルギーの翼がそれをかき消してしまう。

 

「なら、どうするんだ!」

 

鈴音の叫びが海風に消えていく。五人は、まさに追い詰められていた。銀の福音の第二形態は、彼女たちの攻撃をすべて読み切っているかのように動く。そして、その反撃は容赦なかった。

 

「箒! 後ろ!」

 

セシリアの警告に、箒が振り返る。銀の福音の翼が、紅椿を狙って光を放った。箒は必死に機体を傾ける。エネルギー弾が、装甲をかすめていく。その衝撃で、紅椿のバランスが崩れた。

 

「きゃっ……!」

「箒!」

 

シャルロットが叫ぶ。だが、銀の福音は追撃の手を緩めない。翼が、再び光を放とうとする。ふいに――――ヒュンッ!

 

甲高い音が、空気を切り裂いた。ISのレーダーに、高速で接近する反応が映る。その速度は、常軌を逸していた。

 

「な……!?」

 

鈴音が、レーダーを見て声を上げる。他の四人も、その反応に気づいた。

 

「この反応……。まさか……」

 

箒が、目を見開く。レーダーに映る機体のシルエットは、見覚えのあるものだった。白亜の装甲。角張った機体。背部に装備された、無骨な大型ブースター。

 

「一夏……!」

 

セシリアが、その名前を口にした。五人の視線が、空の一点に集まる。そこにはVOBを装備した白鴉・熾天の姿があった。マッハ2の速度で、一直線にこちらへと向かってくる。その姿は、まるで白い流星のようだった。

 

「一夏!」

 

箒が、思わず叫んだ。白鴉・熾天は銀の福音の背後を取るようにして急接近する。そして、銀の福音の目前でVOBを切り離した。大型ブースターが轟音と共に海へと落下していく。その反動で、白鴉・熾天の機動が一瞬だけぶれる。だが、すぐに体勢を立て直し箒の紅椿の傍へと滑り込んできた。

 

「待たせてごめん」

 

聞き慣れた声が通信から流れてくる。一夏の声だった。その声は、どこか疲れているようでありながら、確かな力強さを宿している。

 

「一夏……! お前、体は……!」

 

「大丈夫だ。もう動ける」

 

箒の問いに、一夏は短く答えた。その声に嘘は感じられない。だが、箒には分かっていた。あの聖天月華の反動が、そう簡単に消えるはずがない。それでも、一夏はここに来た。仲間の危機を感じて、飛んできたのだ。

 

「一夏……。お前、本当に馬鹿者だな」

 

箒は、小さくそう呟いた。その声は、どこか優しかった。通信の向こうで、一夏が小さく笑う気配がした。

 

「言われ慣れてるよ。それより」

 

一夏の声が、引き締まる。白鴉・熾天の背部スラスターが、唸りを上げた。

 

「みんな、行けるか」

「当たり前よ!」

「ええ。待ちくたびれましたわ」

「僕も、まだまだ動けるよ」

「問題ない」

 

四人の声が、次々と返ってくる。箒も力強く頷いた。

 

「ああ。行くぞ、一夏」

「ああ。みんなで、あれを止める」

 

白鴉・熾天が前へと出る。紅椿、ブルー・ティアーズ、甲龍、ラファール・リヴァイヴ、シュヴァルツェア・レーゲン。六機のISが、銀の福音を包囲するように展開した。

 

「行くぞ!」

 

一夏の号令と共に六機のISが一斉に動き出した。銀の福音の第二形態が、エネルギーの翼を広げる。だが、もう五機の連携に怯む様子はない。白鴉・熾天のリニアライフルが火を噴き、紅椿のエネルギーソードが光を放つ。六機のISが、銀の福音へと殺到した。夜明け前の空に、光と轟音が響き渡る。

 

六機のISが銀の福音を包囲する。夜明け前の空に、機体の推進音が轟いた。

 

「まずは私が前に出る!」

 

箒の紅椿が、展開装甲をすべてエネルギーソードへと変形させて突進する。全身が刃と化した紅椿が、銀の福音の懐へと飛び込んだ。

 

「セシリア、援護!」

 

一夏の声に、セシリアのブルー・ティアーズが応える。六機のビットが銀の福音の周囲に展開し、四方八方からレーザーを放った。銀の福音はそれを翼で受け止めるが、その一瞬だけ動きが止まる。

 

「今だ!」

 

紅椿のエネルギーソードが、銀の福音の翼を斬り裂こうとする。だが、銀の福音はその直前で機体を捻り、箒の斬撃を紙一重でかわした。そして、そのままの勢いで翼を振るう。エネルギーの奔流が、紅椿を直撃しようとする。

 

「箒!」

 

一夏の白鴉・熾天が割って入る。パルスシールドバリアを展開して紅椿の前に展開した。エネルギーの奔流が、シールドに激突する。衝撃で一夏の機体が大きく後退した。

 

「ぐっ……!」

「一夏!」

「大丈夫だ! それより、みんな! 一斉に攻めるぞ!」

 

一夏の号令に、五人が応える。

 

「了解!」

「行くわよ!」

「ええ!」

「ああ!」

「承知!」

 

鈴音の甲龍が双天牙月を連結させて投擲武器へと変形させた。高速回転する刃が、銀の福音へと迫る。銀の福音がそれをかわすと、今度はラウラのシュヴァルツェア・レーゲンがレールカノンを放つ。二門のレールカノンが、正確に銀の福音の翼を狙った。

 

「ちっ……!」

 

銀の福音は、その攻撃を翼のエネルギーでかき消す。だが、その隙をシャルロットのラファール・リヴァイヴが見逃さなかった。中距離から放たれたミサイルが、銀の福音の周囲で炸裂する。爆煙が、銀の福音の視界を遮った。

 

「セシリア!」

「分かっていますわ!」

 

セシリアのスターダスト・シューターが、爆煙の中の銀の福音を正確に狙い撃つ。収束したエネルギー弾が、銀の福音の翼を貫いた。翼の一部が、光を失う。

 

「やった……!」

「まだだ!」

 

一夏が叫ぶ。銀の福音の翼が、再び光を取り戻す。第二形態の自己修復機能。それでも、一瞬の隙は生まれた。

 

「箒! 俺と一緒に来い!」

「ああ!」

 

白鴉・熾天と紅椿が、銀の福音へと並んで突進する。二機の連携攻撃。一夏のリニアライフルが銀の福音の注意を引きつけ、その間に箒の紅椿が側面から斬り込む。銀の福音は、その攻撃を翼で防ぐが完全には防ぎきれない。紅椿の刃が、銀の福音の装甲をかすめた。

 

「もう一発!」

 

箒が叫ぶ。だが、銀の福音はその声に反応するかのように、急旋回して箒の紅椿へと翼を向けた。

 

「させるか!」

 

一夏の白鴉・熾天がパルスブレードのランスモードを展開する。銀の福音の翼と紅椿の間に入り込み、その刃で翼の軌道をそらした。

 

「助かった、一夏!」

「礼は後だ! まだ終わらないぞ!」

 

銀の福音が、大きく後退する。そして全身のエネルギーを一点に収束させ始めた。その光は、これまでとは比べ物にならないほど強く、そして大きい。

 

「まずい! 来るぞ!」

 

ラウラが警告する。銀の福音の全身から、無数のエネルギーの翼が放たれた。それは、まさに全方位への弾幕。逃げ場はない。

 

「みんな、防御!」

 

一夏が叫ぶ。白鴉・熾天のパルスシールドバリアが、胸部に展開される。だがこの弾幕を防ぎきれるか。他の五機も、それぞれの防御手段を展開する。箒の紅椿は展開装甲を盾に変形させ、鈴音の甲龍はセシリアの前に双天牙月を高速回転させて弾幕を弾く、シャルロットのラファール・リヴァイヴはガーデン・カーテンのシールドで防ぐ。ラウラのシュヴァルツェア・レーゲンは物理シールドを前面に展開する。エネルギーの奔流が、六機を襲った。爆発と轟音が夜明け前の空に響き渡る。

 

「ぐあっ……!」

「きゃあっ!」

「くそっ……!」

 

それぞれの声が通信に混じる。だが、全員が持ちこたえていた。一夏は、歯を食いしばりながら前を見る。銀の福音は、弾幕を放った反動で一瞬だけ動きが止まっていた。

 

「今だ……! みんな、もう一撃!」

 

一夏の声に、五人が応える。六機のISが銀の福音へと殺到する。白鴉・熾天のリニアライフル。紅椿のエネルギーソード。甲龍の双天牙月。ブルー・ティアーズのレーザー。ラファール・リヴァイヴのミサイル。シュヴァルツェア・レーゲンのレールカノン。六つの攻撃が、銀の福音に叩き込まれた。

 

「おおおおっ!」

 

一夏の叫びと共に、爆発が起きる。銀の福音の機体が、大きく傾いた。翼の光が急速に失われていく。だが、まだ終わらない。銀の福音は最後の力を振り絞るようにして、再び翼を広げようとする。

 

「させるか!」

 

箒の紅椿が、銀の福音へと斬り込む。エネルギーソードが、銀の福音の装甲を貫いた。

 

「これで……終わりだ!」

 

パルスブレードの刃が銀の福音のコアを貫いた。その瞬間、機体の全身を覆っていたエネルギーの翼が、まるで羽を毟られた鳥のように急速に光を失っていく。第二形態の装甲が、ばらばらと音を立てて剥がれ落ちた。

 

「止まった……!」

 

一夏は息を吐いた。聖天月華の反動で体の節々が悲鳴を上げている。だが、そんなことよりも目の前の機体の変化の方が気になった。

 

銀の福音は、ゆっくりと機体の輪郭を変えていく。展開していた装甲が収納され、全身が淡い光に包まれた。そして、その光が収まった時そこには銀色の機体の装甲が開き、中から人影が現れた。

 

「パイロット……?」

 

一夏は、思わず声を漏らした。人影はゆっくりと立ち上がる。長い金髪が、潮風に揺れていた。左耳には認識票のようなイヤリングが光っている。

 

「ナターシャ・ファイルス……」

 

箒が、通信越しにその名前を呟いた。アメリカのテストパイロット。銀の福音の搭乗者。それが、今目の前にいた。

 

「あの子を……」

 

ナターシャが、小さく呟いた。その声はかすれていた。彼女の体が、ふらりと傾く。銀の福音の待機状態への移行が、彼女の意識にも影響を与えているのだろう。機体から足が離れ、彼女の体が空中に投げ出された。

 

「まずい!」

 

一夏は、とっさに白鴉・熾天を動かした。銀の福音のすぐ傍まで接近し、機体の腕を伸ばす。ナターシャの体が、海へと落ちる寸前で白鴉・熾天の腕に抱き留められた。

 

「間に合った……」

 

一夏は、ほっと息を吐いた。腕の中のナターシャは、気を失っているようだった。その顔は、どこか安らかで先ほどまでの敵意は感じられない。

 

「一夏! 大丈夫か!」

 

箒の紅椿が、傍に寄ってくる。他の四人も続々と集まってきた。

 

「ああ。この人を保護した。銀の福音は……もう動かない」

 

一夏がそう言うと五人は銀の福音を見た。機体は、完全に待機状態へと移行していた。光を失い、まるで眠っているかのようだ。

 

「とりあえず、この人を連れて帰ろう。ここにいても仕方ない」

 

一夏の提案に全員が頷いた。箒が、ナターシャの体を紅椿で支える。一夏の白鴉・熾天は、銀の福音の傍に寄り添うようにして浮かんでいた。

 

「銀の福音も、回収するのか?」

「ああ。放っておくわけにはいかないだろ」

 

ラウラの問いに一夏はそう答えた。銀の福音は、今はただの銀色の機体だ。だが、その中にはまだ多くの謎が眠っている。束なら、何か分かるかもしれない。六機のISは、ゆっくりと旅館へと向かって飛び立った。夜明けの空が、オレンジ色に染まり始めていた。




機体設定

機体名:白鴉・熾天
型式番号:IS-01Kai2 “SHIROGARASU SHITEN”
世代分類:第?世代(実質的には第三世代の枠を超えた性能を有する)
開発区分:白鴉二次移行体/レイヴン記憶干渉による再構成
待機状態:腕輪
搭乗者:織斑一夏

本機は、織斑一夏の専用機「白鴉」が二次移行を果たした形態。追加装備としてパルスシールドバリア、VOB、UNACが追加されている。

基本武装

右腕:改良型リニアライフル

白鴉の主兵装。AC世界の「ライフル」カテゴリに相当する実弾兵装。銃身が折り畳み式となったことで取り回しが向上した。

- ショートバレルモード:単発/連射が可能。制圧射撃に適する。
- ロングバレルモード:チャージショットが可能。エネルギーを収束させた大口径弾を発射し、着弾時に爆発的な運動エネルギーを放出する。


右背部:改良型レーザーキャノン

背部右側にマウントされたエネルギー兵装。砲身は折り畳み式となり、機動を阻害しない。

- 単発モード:収束したレーザービームを射出。高精度の狙撃に適する。
- 照射モード:持続的なレーザー照射により対象を溶断する。
- 拡散モード:広範囲にレーザーを拡散射出し、複数目標を同時攻撃する。
- バーストモード:爆発するエネルギー弾を放つ。


左背部:十二連装垂直ミサイルポット

背部左側に装備されたミサイルランチャー。六連装垂直ミサイルより更に弾数が増え、より多くの敵を攻撃できる。弾頭も引き続き多種多様に選択可能(炸裂/焼夷/電磁パルス/発煙/照明など)。


左腕:改良型パルスブレード

左腕部に内蔵された近接兵装。三つのモードに切り替わる。

- ブレードモード:通常の斬撃。
- ランスモード:敵を貫く。
- ムーンライトモード:中距離に斬撃を飛ばす。

胸部:パルスシールドバリア

胸部に装備された全方位型パルスシールド。パルスアーマーの下位互換であり、強度は低く展開時間も短いが通常の射撃武器を全方位から防ぐことが出来る。

特殊兵装

白鴉は任務に応じて、以下の特殊兵装のうち一つだけを選択装備する。

アサルトアーマー

機体を中心とした球状のパルス爆発を発生させる攻防一体の兵装。

- 発動と同時に周囲にEN属性のダメージを与える。
- 爆発範囲内の銃弾・ミサイル等の実弾兵装をかき消す。
- 至近距離での被弾を強制的に無効化する「切り札」として機能する。

AC世界の「アサルトアーマー」を忠実に再現。ISの「絶対防御」が持続的な防御であるのに対し、これは瞬間的な「無効化」であり、攻勢転換の契機として運用される。

パルスアーマー

一定時間、機体を球状のバリアで包み込む防御兵装。

- バリアは全方位を覆い、物理・エネルギー双方の攻撃を無効化する。
- 持続時間中は攻撃も可能だが、バリア展開中は機動性が低下する。
- 防御に特化した「守りの切り札」。

AC世界の「パルスアーマー」に相当。ISのシールドエネルギーとは異なる系統の防御機構であり、特に「シールド貫通特性を持つ攻撃」に対して有効とされる。

パルスプロテクション

半径5メートル以内の任意の位置に、球状のバリアを設置する兵装。

- バリアは敵の攻撃を「内側からも外側からも」阻む。
- 逆に、味方の攻撃はバリアの内外どちらからでも通過する。
- つまり、味方にとっては「透過する防御壁」、敵にとっては「貫通不可能な障壁」として機能する。

AC世界の「パルスプロテクション」を再現。攻撃と防御を同時に成立させる、極めて戦術的な兵装である。設置位置の選択が戦況を左右するため、搭乗者には高度な状況判断力が求められる。

## 単一使用能力:聖天月華

白鴉に搭載された、唯一の「IS的」能力。

**効果:搭乗者の能力を限界まで引き出す。**

シンプルながらその効果は絶大である。搭乗者の身体能力・反射速度・空間認識能力・状況判断能力を、文字通り「限界値」まで引き上げる。IS操縦者としての潛在能力を、一時的にではあるが完全に開花させるのだ。

**制約:搭乗者への負荷が極めて大きく、発動時間は五分が限界。**

五分を超えた場合搭乗者は深刻な肉体的・精神的疲労に陥り、最悪の場合意識を失う。これは「能力の引き出し」が搭乗者の限界を超えた出力を強制的に引き出すためであり、一種の「オーバードライブ」と形容すべき状態である。


追加兵装

VOB

計13門ものブースターを無理矢理組み合わせたような無骨な見た目。白鴉・熾天の背部に装着することで、爆発的な推進力を生み出すことができる。その速度は最高でマッハ2に到達する。

しかし、この武装は見た目からもわかる通り、「推進力だけで無理矢理ISを飛ばす」代物であり、一夏に掛かるGも相当なものになる。使用が終了したら切り離すことが可能。

UNAC

白鴉・熾天をサポートする無人兵器。コアユニットに組み込まれる「フォーミュラブレイン」という基幹AIと、機体の行動を制御するチップにより構成されている。
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