私は普通だった。
普通の人のように怒って、泣いて、笑って。
普通だったんだ。
ーーあの日までは。
私はなにをしているのだろう。
なんでこんなところに?
こんなはずじゃなかった。
こんなはずじゃ……なかったんだ。
◆
太古の時代。この地上に天使や神と言った存在がまだ蔓延していた時代。
地上は光に溢れていた。
しかし突如、世界は終わりを告げた。
黒い海が地上を覆い、紅い雲が天空を支配した。
世界の王『ニィナ』は、この惨状を創り出した元凶を排除しようとした。
だが全てが遅かった。
闇の力にあてられた数々の天使や神が殺し合いを始めた。
何百年終わることはなかった。
ニィナは自らの力を使い、闇の力と戦った。
世界は、安寧を取り戻した。
その代償に、全てが変わってしまった。
◆
(……なんで今思い出すんだろう)
薄暗く隙間風が当然のように入ってくる古屋で私は目を覚ました。布団なんて豪勢なものはない。まぁ風邪なんてひかないけど。
軋んだ音を立てるドアを力づくで開ける。
その音につられ自分に近づいてくるのがいる。
それは騎士だった。ただどこも錆びついていた。その隙間から覗くのは青白い肌。体から黒い霧のようなものが出ている。顔は、黒く塗りつぶされている。
(めんどくさい)
私は目線を外さず距離を確保する。騎士が右手に持った剣を上げてジリジリと詰め寄ってくる。
(1…2…)
3。と同時に騎士が剣を振り下ろす。それに合わせるように私は懐に入り込み
剣を突き刺した。
騎士から血が流れる。剣から伝わる鼓動がコレは生き物であると私に理解させようとする。
(この瞬間はやっぱり慣れない)
私は刺した剣を上に切り上げた。
ベラァと糸を引きながら左右に割れる。
血と臓物が下に流れ落ちる。
鼻につく鉄の匂い。
騎士の体が膝をつくとドロドロに溶けていく。私の靴にまで広がる。汚れるなんて心配はもうない。
(……さて)
血の上を歩いて前に進む。
(まだいるな)
こちらを見つめるものがある。左の岩の影に隠れている。さっきの騎士と同じ見た目だが持っている武器が違う。
弓だ。弓にはいい思い出がない。いつのまにか体に食らうことなんてザラだしそれが爆発するやつだったり、毒なんてものだったら面倒だ。
(コイツが最後……ぽいな)
周囲を探り確認する。ここにいるのはコイツが最後。なら簡単だ。
剣を抜き、構えを取る。
風が私の髪をなびかせた瞬間、その風に合わせるように矢を飛ばしてきた。風によって引いた時と飛ぶ時に発する矢の音がかき消されている。普通なら気づかない。
(だが私はすでにお前を捕らえてるんだよ)
頭めがけ放たれた矢を弾く。弾かれた矢は、先ほど放った騎士の顔に刺さった。
怯んだ瞬間を逃さず、一気に距離を詰め剣を高く上げ一気に振り落とした。
斜めにズレる体。
地面に倒れ、泥のようになる。
それを見つめる私には何の感情もない。
剣を鞘にしまい、私は歩き出す。
私の願いはただ一つ。
家に帰るんだ。
読んでいただきありがとうございます。亀投稿でまたいつ投稿できるかはわからないです。衝動的に書いたのでまたヤケになって書くかもしれません。その時までお待ちください。