処女作です。
「何が原因だ」
私は目を覚ます。頭に浮かぶのは困惑ではなく
地面が黒くなり所々燃えている。その周囲に舞う灰のようなもの。
(雷は違う。あそこまでボロボロにはならない。隕石?も違う。こんな規模ではすまない。大砲も……違う。もっとバラバラに体が吹き飛んでる。周囲に散らばってないと説明がつかない。つまり……)
「炎か」
それもかなりの高威力だ。確実に私を殺すために放った一撃だ。無闇矢鱈に放出してないところを見ると
「向こうは私のことが見えてるな」
だがどこから?橋から離れたところから岩に隠れて観察する。アルマイアの壁上を見る。偵察兵はいない。大砲は見えるが砲身が橋から外れている。狙えるはずはない。私は、岩から身を乗り出し少しずつ歩き出す。剣を抜き何が起こってもいいようにする。着弾したところまで歩き観察する。
(私は橋を渡ろうとした。橋を渡ろうとするのが原因なのか?トラップの感じにも見えない。いや。仮にあったとしてもこんなふうにはならない。対象だけを殺すはず。対象の周囲をこんなふうにはしない)
用心深く周囲と炎の周りを観察していくとあることに気づいた。
「……この黒炭、上に伸びてる。真上からだとこうはならない。もし左から来たとすれば地面に残る炭の痕は右に伸びるはず。もしこの考えが合っているなら炎が来たのは後ろからだ。……ただ……」
橋を渡る際、私は周囲に気を配っていた。近づいて来る者がいれば足音、殺気、臭い。生物である限り必ず出る特徴は絶対に逃さない。なのに気づかず死んだところを見ると
「相手はかなり遠くから狙ってるな」
相手がどの方角から、どの距離から狙ってるかは推測できた。ただ確信はできない。あくまでも推測だ。確かめるには……
「また
私は後ろを向きながら着弾したところまで歩く。私の視界に見えるのは長く伸びた道。遠くの方は、森林で覆われた森。どこからくる。私は観察する。
紅い空がピカッと光った。光ったところに私は目をやる。
隕石のような速度で降ってくる炎に
──
「分かったぞ」
私は
「この世界に宇宙があるかは知らないけど」
相手の場所はわかった。後はどうすれば奴をここに来させるか。無視してもいいがこの橋以外入る道は見当たらない。橋を渡ろうとすれば邪魔するならば
「今ここで仕留めた方がいい」
だがどうする?出現方法が分からない。……私が門番だとするならば敵を最初の一撃で葬らなかったら入らせないために自ら出るかも。
「炎を凌げば出てくるか?いや。一つ凌げば出てくるとは限らない。二つ、三つ。もしくはずっと打ち続けるだけかもしれない…それで済むならいいんだけど」
「とにかくやるしかないな」
覚悟を決め、門の手前に行く。おそらく長期戦になるだろうという考えが頭に浮かぶ。どれぐらい死ぬのか。10回ほどで済めばいいのだが。
死ぬことを決めると必ず頭に浮かぶのは私がこの世界で最初に死んだことだ。
◆
水面に映る自分の姿が信じられなかった。何だコレ。夢?そうか。夢だ!夢なんだ!コレは夢で目が覚めればいつも通りの私がいてお父さんとお母さんがいて一緒にご飯を食べて学校に行って友達と話してそれで
「まだ行ってはダメだ」
窓から声が聞こえた。
「ひっ!」
私は声を無視して家から離れる。とにかく離れる。裸足のことなんて気にせず走る。とにかく走る。足がチクチクする。石を何度も踏み痛みが走るがそんなこと考えていられない。なぜか不思議と全く疲れない。こんなに走ってるのに。呼吸が全く荒くならない。当時の私はなぜ疲れないのか全く思わなかった。目の前のことでいっぱいいっぱいだったから。
走っていると目の前に森が見えた。何でもいい。ここから離れて家に帰らないと!森に入り、走りながら自問自答する。
「何で何で何で何で何で何で?何でこんなことになってるの?夢でしょ?夢なんだから早く覚めてよねぇ早くお父さんお母さん私を起こしてよ!」
涙声で声を荒げながらそんなことを言う。
でも声をあげたのがダメだった。
「あ!」
私は思いっきりコケた。受け身もせず顔から地面と激突した。顔中に痛みが走る。でも立ち上がらないと。私は立ち上がろうとした。
でも何度やっても上手く立てなかった。
何で?と思っていると左足がジンジンする。そして何か無い。何か。私は自分の足を見た。
膝から下が消えていた。
「……あ?………あ、あ、あああああああああああああああ!!!!」
左足から血が噴き出る。とめどなく。噴水のように。痛みはどんどん酷くなる。涙はボロボロ出る。叫びすぎて声が枯れそう。喉からも血が出そうだった。胃液も地面にぶちまけた。
(何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で!何が起こってるの!)
グルグルと唸り声が聞こえた。
潤んだ目で声がした方を見るとそれは巨大な狼だった。それもただの狼じゃない。まるでヒグマのような体格。所々ヤマアラシのように尖った毛先。
何より額にも目玉があった。
狼が私の方をジッと見ている。私は自分がこれからどうなるか想像すると今までの痛みや悲しみがスッと消えた。変わりに絶望が広がった。
「いや………やめて…………やめて………ください……お願いします…………なんでもします…から……お願い……します………!」
必死に助けを願った。でもそれは無駄だった。
私は狼に喰われた。
左肩からベキベキと音がして食いちぎられた。爪が私の腹を割いた。内臓がまろび出た。叫び声は喉に血が詰まって出なかった。そして私は狼に頭を咥えられて
一瞬の出来事だったが私は自分の首が引きちぎられた痛みを感じ死んだ。
◆
「今ではもうこんなだけどね」
あの最初の死亡からもう10数年。時折思うことがある。私は本当に帰れるのだろうか。そんなことが頭によぎってしまう。頭に浮かべば気にしないように頭を打ち付けるようになった。人間ではないからこそできる芸当だ。
だってもう夢じゃない。あの始まりから今に至るまで何度も地獄を経験した。これから何度も経験するだろう。
「それが今かもしれないね」
私は目の前のソイツに向かって言う。
炎を凌ぎ切りコイツは現れた。現れるまで3回。3回で済んだ方かもしれない。炎が来るパターンを読み切ったからできたことだ。
目の前のソイツは、いわゆる龍だった。
鋼のように光る鱗と細い体。だがその威圧感は紛うことなき龍。
「それじゃあ、相手よろしく」
私はコイツにそう言って戦いを開始した。
◇
空よりも高きところ
番犬は守護をする
世界の王の命を受け
穢れなき都市を護るため
門衛の『グリオスト』
その名は『闇を祓う者』
どうかその聖なる業火で
全てを浄化したまえ
◇
読んでいただきありがとうございます。