実験的作品、思いつき。

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1話仮

「ダンジョンで大儲けって、そう上手くはいかないか……」

 深層での魔石売買事業は、どうにも芳しくない! 

 魔石企業に保険会社、それに諸々の仲介業者。売上からあれこれ差し引かれ、最後に手元へ残った金額を確認してみれば、わずか34万ウォン。

 1日の粗利益は84万ウォンなのに50万も引かれるのだ! 

 

「これじゃあ、話にならない! 本当にヤバいぞ!」

 ダンジョンで一儲け。そんな甘い考えで始めたわけではないが、ここまで中間搾取がヤバいとは思わなかった。

 回ってくる契約の質が低いというか、言ってはなんだが割に合わないものばかり。

 

 京畿道のダンジョンでもここまで中間搾取は酷くなかった! 

 なんでこんなに中間搾取をされなきゃならないんだ? 

 

「うーん、江華島を出て……巨済島に移るか?」

 

 事業の拡大を目指すのであれば、もはやそれくらいしか選択肢がない。巨済島はダンジョンの数で見れば8倍あるし、過酷な競争から逃れられるのではないか? 

「数学で考えてみれば一目瞭然というか、8倍の数があれば負荷は8分の1になるのでは?」

 でも、構成員をまとめて引き連れ、拠点を移転するとなれば、一体どれほどの費用がかかることか……

 輸送費だけでなく、移動中の人件費や宿泊費、新拠点の確保に必要な資金まで考え始めると、頭が痛くなってくる。

 縦断するだけで何日分の稼ぎが消えるというのか! 

 とはいえ、現状に留まるわけにもいかないし、そもそも、韓国国内で民間人に解放されているダンジョンが少なすぎるのだ。

 信任統治委員会をはじめとする諸機関の影響もあって、国内のダンジョンはその大部分を軍や警察が掌握している。

 それ自体は別に構わない。国家安全保障上の理由もあるだろうし、軍が管理することにも一定の合理性はある。

 首相やら大統領やらがそう言ってるのは理解できるけど、問題はその後だ。

「民間への解放が、とにかく遅い! いつまでダンジョンを抱え込んでるんだ!」

 深層から深深層に至るまでを民間に解放し、そのさらに下、深深深層の攻略に軍を投入する。そうした分業体制を採用している地域は、驚くほど少ない。

 朝鮮半島全土にダンジョンが存在しているというのに、民間人が自由に立ち入れるのはせいぜい表層から中層までで、大多数の深層以降は韓国政府が占有しているか、そもそも民間への解放を認めていない。

「なんでこう……たくさんダンジョンがあるのに、もっと解放してくれないんだ……」

 結果として、深深層の民間解放がされた場所に企業と労働者が集中することになる。

 江華島は、まさにその典型で、経済特区としての優遇措置がある一方で、韓国人の雇用枠は既に供給過多。いい感じの人材を確保するだけでも一苦労だ。

 企業の従業員の51%以上は韓国国籍を持つ者でなければならないという規制がまである。

 ゴールドラッシュやらなにやらの歴史を振り返れば、儲かる場所に人が集まるのは当然のことだろうが、江華島への集中ぶりは、いくらなんでも異常だ! 

 ソウル圏から流入してくる若者だけでも相当な数なのに、中国の湖南や上海、日本の大阪や東京からも人が押し寄せてくる。

 その結果、島の人口密度はソウル圏に匹敵する水準にまで達したらしい。

 実際、街を歩けば道が汚すぎるので、その話にも納得できる。

 かつて人口流出が問題視されていた江華島に、今では20階建てにも及ぶ高層建築が当たり前のように立ち並んでいる。地価は高騰し、商業施設は次々と建設され、昼夜を問わず人々の熱気が絶えない。

 ほんの一昔前まで、衰退する地方の島として扱われていた場所が、今や国内有数の魔石産業の中心地になっているのだ。

 まったく、世の中何が起こるか分からない。

 ……それだけの人口と資本が集まっているのなら、もう少しアメリカ式のレッセフェールでも取り入れてくれればいいものを。

 江華島の魔石産業は、既に完全なレッドオーシャンと化し、新規参入者が次々と現れては、既存企業との競争は激化する一方。

 資本力のある大企業ならまだしも、こちらのような中小の事業者にとっては、なかなか厳しい環境だ。

 まったく、ドイツの経済学者は随分とひどい予測を立ててくれたものだ。

 魔石を中心とした加工産業が発展すればするほど、原材料となる魔石の調達が困難になり、やがて民間企業への依存が強まっていくとか、そんな理論だったはずだが、現実はどうだ? 

 魔石の調達を民間に委ねるどころか、肝心のダンジョンそのものを軍が抱え込んでいる。市場原理がどうこう以前に、そもそも市場へ供給される資源の量が制限されているのだから、競争も何もあったものではない。

 この朝鮮の地は、なかなかアメリカのようにはなってくれないらしい。

「あー……なんか、いい感じにイノベーションでも起きてくれないかな。数千万ウォンくらい、楽して稼げるようなやつ」

 椅子に深く腰掛け、ぼんやりと天井を眺める。

 魔法覚醒者は希少な存在とはいえ、その人口比率は世界全体の0.6%。世界人口を基準にすれば、韓国の総人口にも匹敵するほどの人数が存在している計算になる。

 それだけの人間が魔法を扱えるというのに、魔石の加工技術は未だ発展途上だし、研究機関には、もう少し頑張ってもらいたいものだ。

 ステータスだの能力値だの、そういった個人の能力を数値化する技術も確かに重要だろう。しかし、もっと根本的な部分で進歩してくれなければ困る! 

 ステータスだって結局、兵士の品質を向上させただけじゃないか! 徴兵検査に使うのなら、あんなのはイノベーションじゃない! 

 魔石の加工方法を増やすなり、既存の加工工程を効率化するなり、何かしらのブレイクスルーが必要だ……

 このままでは、いずれ世界中で魔石産業のレッドオーシャン化が進み、最終的にはダンジョンそのものが枯渇しかねない。

 もちろん、そんな事態になる前に何らかの技術革新が起こるとは思いたいが……。

「韓国縦断をやるしかないのか?」

「巨済島の方が民間解放も盛んだし……」

 結局、考えは最初の場所に戻ってくる。

 江華島は既に攻略が相当進み、マッピングで大金を稼げた時期はとうに過ぎ去り、奥の奥まで探索が及んでしまっている。

 もちろん、残された資源や新たな採掘機会も徐々に減っているのだろう。

 対して巨済島は、民間への解放が比較的盛んだし、首都圏から遠い……新規参入の余地も、こちらよりは残されているはずだ。

 それに、ウチの構成員には魔法覚醒者だって大勢いる。

 もちろん、軍隊にだって相当数の魔法覚醒者が所属しているだろうし、競合事業者どもにもいるだろう。

 そもそも、巨済島の深深深層の民間解放が開始されたのは去年のことだ。

 これまでの攻略速度を考えれば、一年もあれば大抵の階層は突破されていてもおかしくないし、日進月歩で取り尽くされる! 

 深深深層の民間解放が遅れているし、巨済島のほうが稼げる可能性が高い。

 そうなると、江華島に残る旨味はますます少なくなるし、むしろ機会損失なんじゃないか? 

「移るなら、早い方がいいけれどさあ、遠いんだよなあ」

 もっとも、拠点を移したところで上手くいく保証などない。

 巨済島にも競争相手はいるだろうし、向こうには向こうの事情がある。新天地なら簡単に儲かる、などという甘い話があるはずもない。

 それでも、ここでじっとしているよりはマシかもしれない。

 少なくとも、1日34万ウォンしか増えない通帳を数え続けるよりはマシだ! 

 チンケな小規模事業者から抜け出せば、1日100万ウォンの夢を掴めるかもしれない……成功の道がきっとあるはずだ! 

 

 


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