イメージ出来るけど、それを文章にするのって簡単にできるもんじゃないね。
初手から千代は残像を見せる速さで突いてきた。
俺は冷静に対応し、彼女の突きを剣の腹で受け流す。
「速ぇ…!」
「邪魔をするなッ!!」
受け流された彼女は、そのままの勢い良く壁へぶつかるかと思いきや、跳躍して両足を壁に向けて蹴る。
今度は横へ振るい、カスラも薙ぎ払う勢いで彼女の刀とぶつかる。
ギチギチと金属音を響かせ、横へ逸らして即座に胴体に突きで攻撃する。
「るあ"あ"」
「ぐあ!?」
しかし、彼女は俺の剣を躱し、そのまま剣に乗り、後ろへ回転しながら蹴り上げしてきた。
想定してなかったパターンに、対応できず下から顎を叩き込まれた。
『追い打ちがくる!』
思わず後退って意識が飛びかけるも、トゥオネタルの声で直ぐに取り戻す。
その瞬間、彼女は居合の構えに入って一気に距離を詰め、凄まじい速さで十文字を繰り出した。
俺の目では捉えれたが、情けない事に身体の方は追い付かねぇ!
『腕がっ…!』
「気にするな!こんなもん掠り傷だ!」
刀で左腕に半分程、深く斬られたが、そんな怪我なんかで怯む程、相手は許しくれる訳がないのは想定してる。
回し蹴りで彼女の腹に叩き込み、僅かに出来た隙で左腕を剣から離した。
そして右手で身体の勢いを利用して連撃を彼女へ繰り出す。
「っ…魔物が剣技を!?」
「ハッ!流石のあんたでも防ぎ切れねぇか!まだまだ行くぞ!」
更に回転の勢いで跳び、脳天に目掛けて斬りつけるも防がれる。
隙を作らせない為に武者修行で鍛えてきた剣技の一つを彼女へ繰り出し、そのまま彼女に目掛けて踵落としを仕掛けるも防がれてた。
そして、そのまま脚を捕まれて投げ飛ばされる。
「そう上手く当たらねぇか」
どれも掠り傷しか与えられないが、殺すのではなく、あくまで疲労させて隙を作るのが目的だから充分だ。
無論、相手もタダで防ぐだけじゃねぇし、彼女も対抗して舞うような連撃や回転斬りで俺の身体に傷を与えていく。
片や鬼、片や人外一歩手前の人間による凄まじい剣戟は、凡人から見ても目でも追えない速さだ。
休む暇がない戦いに彼女の肩は上下に揺れており、十数秒の間で体力は消耗しているのが明らか。
このまま一気に畳み掛けようと動く。
『カスラ、アビスの魔物が稲妻城に…!』
「はぁ!?なんつータイミングで来やがる!」
しかし、まるで何かを察したように、アビスの魔物たちは俺たちの前へ現れて襲いかかる。
魔物共を相手にしながら彼女と戦うのは、骨が折れるどころの話じゃねぇ。
「無我の境地」
だが、俺とトゥオネタルは忘れていた。
魔物共を容易く消し炭にできる心強い味方がいることを。
魔物共のアビスの瘴気を左手の甲に吸収する。
「魔物は私が相手をします!あなたは千代を!」
『先ほどの攻撃で、魔物たちから出るアビスの力で溜まった』
「へへ、助かるぜ!」
手の甲から力を解放し、
足元まで伸びた白銀の長髪に左右に2本の羽根の形をした赤目の模様が禍々しく浮かび、目の周りは黒く染まり、7枚の花弁のような赤い目の瞳孔。
首から下まで赤黒い鎧で覆われ、胸元の真ん中に赤い目が出る。
そして烏の羽根のような白と黒のマントは風に靡く。
「その力と姿は執政の…!?」
「パターンは覚えた!こっからは…形勢逆転だ!」
千代が弾いた瞬間、俺は真横まで距離を一気に詰めた。
「隙だらけだ!」
「速…ぐぅ!?」
彼女の片腕を掴んで丁度良く、森の方へ投げ飛ばした。
床を破壊する勢いで蹴り、何度も空中を蹴りながら彼女の元まで駆ける。
千代と空中戦に近い状況で何度か刀と剣でぶつかり合い、俺が下となってそのまま森の方へ落下した。
「危ねぇ!」
馬乗りの状態となり、彼女は俺の顔に目掛けて刀で突き刺すが、横へ避けて刀が地面へ埋まる。
しかし、その隙は俺にとってチャンスだ。
「ネルタァ!」
『終わりだ』
剣を手放し、彼女の両腕を掴むと同時にトゥオネタルは、手の甲に埋まった陽光色の目を発動させる。
彼女を苦しませるアビスの瘴気を左腕で吸い取って浄化し、ろ過して光界の力へと変えた右腕から彼女の肉体へサイクルするように注いだ。
「あ"あ"あ"あ"!?」
「っ…暴れるんじゃねぇ!」
彼女は抵抗を試みるも引き剥がすことが出来ないと判断し、最終手段として俺の左肩へ噛みつく。
鎧ごと骨が噛み砕き、肉は引き裂かれ、血飛沫が彼女の顔や綺麗な長髪を汚れた。
だが、俺は力を少しも緩ませねぇし、トゥオネタルも分かっているのか吸収して浄化するのに集中している。
『あと少し!』
アビスによって失われた美貌が、徐々に取り戻して行く。
トゥオネタルの言う通り、もう少しでアビスの瘴気は消えて無くなる。
最後に目覚めさせる為に、彼女へ向けて大声で叫ぶ。
「いい加減に、さっさと目を覚ましやがれ!あんたのダチが待っているぞ!」
「御輿千代!」
俺の言葉に応えるように、彼女に纏わりついたアビスの瘴気は、光界の力によって突風に吹かれるように散った。
「私は……一体…何を…」
悪夢から解放された千代は正気を取り戻すが、アビスの瘴気や光界の力を直で受けたのもあり、力尽きて俺の上に乗ったまま気絶した。
そして俺は時間切れとなり
「良くやってくれた…お疲れさん」
『そっちこそ、きみもお疲れ様』
互いに労いの言葉を投げ、素直に2人は受け止めた。
とある執政の特徴と似てる…まるで騎士みたいだな。