いっけぇーっ俺の相棒っ!! 作:4645 (ケモ系大量生産クリーチャー)
「山下くん、君も死んだのか」
「矢場さん」
「今日は土曜の朝。肉体カード再発行は月曜午前10時。悪ガキめ…」
突然俺の肩口からぬっと顔を出したのは同僚の矢場さんである。
歳上なのにこちらと肩書きが変わらないので、相手をするのは少し難しい。
「矢場さん、なぜ土曜日に出社してるんです」
「君こそ」
…血脂に濡れた鉄の鉤爪が鉄球のめり込む分厚い最終防衛ラインをガリガリと引っ掻く音を聞きながら、少々の世間話を楽しむ。
どうやら、お互い家にいてもやることがないから休日出勤手当を貰いに来ただけのようである。
「!?"うあ"ッ、ぁ"………っ」
「ああ、受付の東ちゃんまで…」
「カウンターの裏に隠れていたのになんでバレたんですかね」
「僕も知らんよ」
「てかこれどういうことなんですかね」
「それは少し知ってるな」
矢場さんは自分の死体の上に腰掛けてタバコに火をつけようとしたが、実体が無いためにモーション再生不良を起こした挙句、オフィスは禁煙なのでペナルティトークンを交付されてしまう。
はげ上がった頭の上に赤いエクスクラメーションマークが浮いている様子は少し滑稽だ。
「俺が聞いてもいいのなら聞きたいですけど」
「実はね、あの…かけるくん?はね。このカード社会において特級にカード適合率の高い選ばれし子供達の1人で、成長性のある貴重なカードを一時的に与えて培養槽代わりにすることに素晴らしく適した人材だったんだ」
「なんで矢場さんそんなこと知ってるんですか」
「僕この会社の社長と付き合いの長い子会社の役員の息子だからね」
「そうですか」
…ということらしい。
プー太郎ながらとりあえず平社員として本社で飼ってもらっている立場に相応しい説明能力のなさに、俺は少々感心させられてしまう。
背景はわかったが、なぜこうなったのかがまるで分からない。
「…あの、私もその話知ってます
あの子周りの話は結構有名ですから」
「東「さん」ちゃん」
腹を人差し指の爪で貫かれ、〆られた鰻のように絶命してしまったパンツ丸出しの自分を部屋の隅に寄せ終わった東さんは、とことこと俺達の方に歩み寄ってくる。
彼女は以前矢場さんが自分をちゃん付けで呼んでくることを気味悪がって俺に相談をしにきたことがあるのだが、俺は矢場さんも東さんも割と好きだったため、対応に大変苦慮した。
ちなみにカード幽霊状態でも自分と極めて密接なものに限って物理的に触れることができる。ハラスメント対策でそういう管理状態なのだ。
「あのかけるくんって子、そのブレイブっていうドラゴンちゃんとその、できちゃってて」
「…でき?」
「その…BLっていうかボーイズっていうか、なんかその…去年の夏休みの最終日に二人で花火大会に行ったみたいなんですけど、その直後からその…友情数値っていうか、そのデータっていうか、うーん、仲良くなりすぎたというか…あの…」
「山下くん。つまり彼らは何故か夏休み最後に直球の異種姦ゲイセックスをしてしまって、それからはお友達に隠れてインモラルかつベッタベタに砂糖漬けな日々を送っていたのだよ」
「矢場さん。言葉遣いの気味が悪いです」
聞かなきゃ良かったそんなこと。
あの明らかにイカれた子供が末恐ろしくなってきたのと同時に、俺は明らかに彼女面をしているハカセの存在に対する疑問にも思い至る。
「…じゃああのキャラの濃い女の子はなんなんですか」
「あれはかけるくんのことが好きなただの女児だ」
「男のセンス悪いですねこの子」
「ばっ、なんてこと言うんですか!?かけるくんはすごくいい子だし結構かわいい顔してます!」
「東さん」
間接的に殺されたのにも関わらず、東さんはかけるくんのことが割と好きなようだ。
まあ確かにかわいい系の童顔で整った顔面をしているし、元気そうなのに儚くもあり闇を抱えていそうでもあり炎タイプの紅い主人公な雰囲気でもある。
「えっと、なんでいい子なのに見たこともないバケモン連れて本社で暴れ回ってるんですか」
「そりゃあ、その、君にも分かるだろう。愛は全てに勝るんだよ」
「はい?」
「えと、あの…ブレイブちゃんがその…仲良しした直後に無事に究極友情進化を遂げたみたいで、その、育成完了になったので、翌日の朝にかけるくんの家に行ってブレイブちゃんと友情リングを両方引き揚げたんです、そしたらかけるくんがすごく…病んじゃったみたいで」
「当たり前じゃないですか、そりゃそんなことしたら病みますよ。なんでそんなことしたんですか」
「かけるくんの親御さんとの契約ではそういうことになってたので…」
「はあ」
友情リング、というのはカードの機械精霊と直接会話できるようにするかなり特殊な装置だ。
物凄く相性の良い人間と機械精霊のペアの間にしか使えないものの、これがあると単純に仲良くなりやすくなるので、貸し与えたのだろう。
なので、かけるくんにとっては2人の恋が肉体的に結実した翌日に恋人本人+関係性の証+恋人と会話する権利そのものを永久に奪われたことになる。
ちなみにそんな友情リングは作るのがとんでもなく難しく、一組につき月額800万円する上に管理費別途請求のメーカーリース品らしく、まあ妥当な判断ではあった。
「中古っていうか…その…究極進化済の成体とはいえそんな調子で売り物になるんですか」
「まあ、そこに我が社の説明責任はないよね」
「自我とかどうすんです?」
「そこはほら、悪の組織らしく洗脳とか」
「ちなみにその、どっちがその…挿入ってか、受けってか、あの…」
「あっそこはかけるくんが攻めでブレイブが受けですね」
「東ちゃん詳しいね」
そうこうする間にも、都心の、それも最高指導者兼国家の象徴が御座す居城が間近にある大通りに面した本社ビルの目の前には、大量の治安車両が集結しつつあった。
即応式バリケードの向こう側には対カード精霊用潮引力ネットガンの銃口が林のように林立し、野次馬も多数。
親の太い矢場さんはそんなに重要な命でもないのに無駄に民間突撃救急部隊の最高級プランを契約していたため、矢場さんの実体を回収する為だけの装甲車がトライデーモンの背中に機関砲を撃ち込んでいるが、何故か弾は命中せず、全部がその身体をすり抜けて背後の防衛壁をノックしている。
たぶん、実体と霊体を任意に切り替えられるのか、あるいは単純に攻撃を無効化する能力があるのかもしれない。
選ばれし子供が最強の適性を持って感情を糧に成長する存在に接するだけでここまでの存在が産まれてしまうというのは、あまり世界にとって良くない事実であると考えられる。
ちょっと子供と精霊をマブダチになるまで付き合わせるだけで戦略兵器並の化け物を錬成できるのだから。
「あれ、ちょっと待ってください。ブレイブは今も…」
「最上階の培養槽で品質管理中さ」
「…ということなら、あの黒い機械龍の…そう、トライデーモンはなんなんです?ブレイブとかなり似てますけど」
矢場さんに至極真っ当な疑問をぶつける俺。
さっきはブレイブが進化するなどしたものかと思ったが、どうやら違うらしい。
「あれは…たぶん、その辺のどうでもいいカード精霊をかけるくんの能力で無意識に上書きして悪魔的化け物に変えてしまったんじゃないかな。ゲームのカセットの中身を消して別のゲームを入れたようなものだよ」
「つまり、手製の違法精霊ですね」
「かけるくんだいぶイカれてますね」
「だからその、ようはかけるくんがブレイブレグルスドランに対して持っている…妄執?偏愛っていうのかな。とにかく重たい感情が出力そのままに実体化したんだ」
「あ、なるほどですね…」
俺はなんだか急にナマナマしい物に見えてきたトライデーモンの肢体をちらりと見やる。
なんだかブレイブレグルスドランのそれより太ももやしっぽが太く、全体的にかなり肉感的で、ちょっとSっぽく、そしてなんだかオイリーにてらてらと濡れ光っていて、すこし小ぶりな乳房がある。なお乳首はない。
「…欲望、ですね」
「うーんヨツケモっていうか四足?のちゃんとドラゴンの姿のままなのには何か理由があるのだろうか」
「多分かけるくんの性癖なんじゃないですか?」
「えっと、つまりかけるくんはあどけない四足オスショタドラゴンなブレイブのことをかなり濃密に自分のメスだと思っていて、更にラバー系拘束プレイが密かな性癖だってことですかね」
「うん「はい」
「…あっ、はぁい」
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ほぼロボコップの世界感になってしまった