異世界に転生して最強ヒーロー能力を手に入れ活躍してたら18回再生する親父が追ってきた 作:喪失者2
# エピソード5 先ずは勇者から
あれから一年が経ち、14歳になった私は、変身の力を使いこなし、着実に強くなっていた。
腕試しに森の奥へと入り、魔物たちと戦った。最初は怖かったが、自分の力を確かめたいという思い、そして
しかし、私も馬鹿ではない。敵の力量を見極め、鑑定魔法と感知魔法を駆使しながら戦った。
そのおかげで、今のところ負けなし。危ない橋を渡ることもなかった。
まずは慣らし運転だ。いきなりラスボスと戦う
この森では、比較的強い魔物が出現するという話は聞いたことがない。ここから数十キロ先にある、唯一通れる街道沿いには堅牢な城塞都市もあると父から聞いている。だからこそ、安心して活動できるというわけだ。
野良の魔物は比較的弱いとも聞く。統率も取れておらず、本当に有象無象だった。
いつものように狩りをする感覚で魔物を倒していくと、所々に魔物の遺体が見られた。
誰かが狩りでもしているのだろうか……。いや、獲物を放置するのはおかしい?
「冒険者ギルドのパーティーか……。いや、全部切り刻まれている」
まるで幾千もの剣で刻まれたかのようだった。
感知魔法を駆使して周囲を探る。
近くにいるな。
「そっちかな……」
私は陰影魔法を使い、身を潜めながら近づいていった。
……いた。
私と変わらないくらいの年頃に見える、長い黒髪の少女だった。
彼女は魔物と戦っていた。
いや、助けに入るべきか……。
彼女の魔法だろうか。五匹の狼のような魔物は、確かワーウルフ。
一瞬のうちに彼女の周囲に現れたいくつもの刃物が宙に浮かび、瞬く間にワーウルフたちを刻み込んだ。
その結果、ワーウルフたちの遺体はズタボロになった。
「凄い、投影魔法……初めて見る」
その時、少女は数十メートル離れた私の存在を正確に見抜き、こちらに視線を向けた。
「誰? 人間、それとも……」
彼女の周囲に、いくつもの刃物が再び宙に浮かび始めた。
「まっ、待って! 人間よ、お願い!」
私は敵意がないことを伝えるため、両手を挙げた。
「驚いた。こんな森の中に一人でいたの?」
彼女は私の姿を見て驚いたようだった。警戒を解いたのか、投影魔法で顕現させた刃物が消えていく。
「私は、この近郊に住んでいる王国騎士団副団長ハイデル公の娘、ユリカだ」
そう伝えると、彼女は目を見開いた。
「あの時の
何だか恥ずかしい……。
いや、待て。そういえば、あの時!
「貴女は、私の私邸に来ていただいた……」
彼女は私に近づきながら言った。
「あの時、挨拶したはずですが……」
「ごめんなさい。あの時は驚くことばかりで、上の空だったの……」
嘘だ。誰の名前も覚えていない……。
「そうですか……」
彼女が一メートルほどの距離まで近づくと、見事なカーテシーをして名乗った。
「私は王国騎士団団長ライデン公の娘、ルートと申します。以後、お見知りおきを」
団長ライデン公の娘?
私は頭がパンクしそうになった。
「も、も、申し訳ありません! 数々のご無礼をお許しください!」
「ふふっ……以前お会いした時と、全然印象が違いますね」
私のこの様子を見て、先ほどまでの警戒心は完全に消え去ったようだった。
「ところで、こんな森の中まで、なぜ一人で?」
そうですよね。誰だって疑問に思いますよね……。
いや、私だけが疑問に思っているの?
「あ、あの……大変失礼ですが、ルートお嬢様はなぜここに?」
「質問に質問で返されるとは……」
私は慌てて答えた。
「申し訳ありません。そ、そうですよね……」
「まあ、いいですわ。私は鍛錬のため、この森で探索していました。まあ、見ての通り、惰弱な魔物しかいないようですけど」
そういうことか。まあ、あの投影魔法を見れば納得です、はい……。
「ところでもう一度お聞きします。貴女は……!?」
感知を怠った!
敵は数キロ先にいるはず……大丈夫だと思っていたのに。
「貴女はお逃げなさい‼」
大丈夫だろう。私はこの場を離れた方が、彼女も戦いやすいはずだ。
「私は念のため、助けを求めに行きます!」
私は感知魔法で敵の位置を探り、その反対方向へと駆け出した。隠匿魔法も強化する。
「あと、接触まで……嘘! 速い!?」
ルート嬢は投影魔法を展開したが、敵に躱されたようだ!
私は一キロメートルほど離れた場所から、遠視の魔法で状況を観測した。
敵は、魔物の鹿のような脚を持ち、牛の髑髏を被ったような姿をした、ヤバい中級クラスのデーモンだった!
しかも、速度重視か、ステータスを……。
「鑑定……!? ヤバい! 完全に速度に振り切っている‼」
少しずつルート嬢が押されている!
どうしよう……どうしよう!
「いやーっ‼」
ルート嬢の服の一部が、魔物の爪によって引き裂かれた。
私は
でも、ここで死んだら……。
「先ずは勇気だろうがぁ‼」
私は腰に手を当てた。
「変身‼ 火のメンタル!」
“FIRES!! MOTION!!”
どこからともなく、派手な音声と効果音が鳴り響く。
私の全身が光り輝いた。
次の瞬間、身体は赤い全身コスチュームに覆われていた。
ルート嬢に爪が当たる寸前、派手な音に気を取られた敵の注意が、こちらへと向いた。
「だから‼ この演出は痺れるんだよ‼」
火の力を足元に注ぎ込む。
“ドーン‼”
足元の地面が粉砕した。
そして私は、流星と化して、一気にデーモンへと接近した。
「クソがーッ‼」
一瞬の隙を突き、炎を纏った拳をデーモンの右頬へ叩き込む。
“ドゴォン‼”
拳に纏わせた炎が爆ぜ、凄まじい衝撃がデーモンの顔面を襲った!
“グッオッオウーッ‼”
奴の悲鳴とも取れる雄叫びが、森に響き渡る。
「今です! ルート嬢‼」
彼女はすぐさま投影魔法を展開し、私の攻撃で動きが止まったデーモンに、とどめの斬撃を浴びせた。
“ギィーッ‼”
ざまあみろ!
私は八つ裂きにされた奴に向かって、中指を立てた。
ルート嬢が荒い息を整えるのに、数分かかった。
「ありがとうございました。もう駄目かと思いました……」
私は変身を解いた。
「それが貴女のスキル……」
「ええ……多分」
嘘だ。スキルではない。
「さっきの貴女……」
彼女は一度言葉を切った。
「らしくなかった」
少し悪戯っぽい笑みを浮かべながら、彼女は続けた。
「凄い罵声だったわ」
私は慌てて答えた。
「あっ、あれは恐怖を抑えるために、気合を入れるため……」
「でも、凄かったわ、貴女」
彼女は立ち上がり、私に手を差し伸べた。
「あっ……」
「流石に
照れ臭かった。でも、その手を掴まないわけにはいかなかった。
「やっと勇気を振り絞っただけ……」
「じゃあ勇者ね」
私は、やっと
「私たちは共に、この国の守護者となるの」
彼女は私の手を強く握ってくれた。
なぜだろう。何かを取り戻したような気がした……。
「ところで、最後に中指を立てたのは、どういう意味?」
私は再び慌てた。
「い、意味は勝利のさ、サインです!」
また嘘をついた。
でも、これくらいは許されるかな……。
この世界に来て、初めての仲間ができたのかな……。