異世界に転生して最強ヒーロー能力を手に入れ活躍してたら18回再生する親父が追ってきた 作:喪失者2
# エピソード6 王国騎士団からの試練
ルート嬢と森での出来事があってから、私たちは互いに時間を合わせ、森の入口で頻繁に会うようになった。そして、協力しながら修練を積むようになった。
「ご機嫌よう。今日はどのような趣向で参りますか?」
相変わらず、見事なカーテシーだ……。
私には似合わないな……。
「ご機嫌よう。私は相変わらず、色々なシチュエーションを試したいよ」
私は騎士式の挨拶をして応えた。カーテシーをしたこともあるけれど、ルート嬢の前で行うのは、どうにも戸惑いと恥ずかしさがあった。
「そうね、その通りだわ……」
ルート嬢は、以前、私たちが襲撃されたときの魔物のことを思い出したのだろう。
「あんな醜態をさらすなんて……」
私は場の雰囲気を変えるため、声を掛けた。
「あれは想定外ってやつだよ。仕方ないさ……」
前世で十八年、今世で十四年。合わせて三十二年も生きていれば、多少は空気を読めるようになったのだろうか。
前世の私からは、考えも及ばないことだった……。
「ところで、修練を積むために、お互いの能力を確認し合いましたわよね。ですが、改めて考えると、貴女はスキル以前に、魔法でできることがあまりにも異常だわ」
ルート嬢は顎に人差し指を当て、思案していた。
確かに、私自身もそう思う。
前世の私とは違い、今の私は天才と呼べるほどの才能を持っているらしい……。
「普通、四大魔法をすべて中級まで使いこなし、感知、鑑定、隠匿、治癒まで器用に扱うなんて、そうそうできることではありませんわ。それに、そのスキル……。はっきり申し上げますと、反則過ぎますわ。その辺りが、英雄(ヒーロー)たる所以なのかしら……」
恥ずかしい。やめてほしい。本当に、こういうことには慣れない……。
「と、とんでもない! ルート嬢の投影魔法の方が凄くない? 私、あんな魔法を初めて見たよ!」
これは本心からの言葉だった。
「貴女になら、話してもいいわ……。その前に、まずは謝罪させて」
ルート嬢は、きれいなお辞儀をした。
えっ……どういうこと?
「あれは、スキルなの。普通の投影魔法であんなに頻繁に行使したら、魔力がすぐに枯渇してしまうわ」
便利なスキルだな……。
それに比べて、私自身のスキルについては、まだ分からないことが多い。
「それって、魔力を消費しないという解釈でいいの?」
ルート嬢は無言で頷いた。
よほど明かしたくなかったのだろうか……。その瞳には、わずかな曇りが見えた気がした。
「これを知っているのは、御父様と貴女だけ。我が家の秘事なの……」
「いや、ごめんなさい! お、重すぎる……!」
どうして、そんな大事な秘密を私に……?
「何で私に……?」
「あの日、お伝えしましたわ。二人でこの国の守護者になろう、と」
ルート嬢の表情は凛としていた。
そこには揺らぐことのない意志が感じられた。真っ直ぐな感情……。きっと、これが彼女の本心なのだろう。
「分かったよ……。正直、私がその役目に足る存在なのかは分からないけど」
「何を言っていますの。今は勇者でしょう?」
ルート嬢は、少し呆れたように言った。
「それより、今日も始めましょう。時間は有限なのだから」
そう言うと、ルート嬢は背を向け、颯爽と森の奥へ向かっていった。
「まずは王国騎士団の入団試験に合格すること! それから師団長へ昇進して、最後は私が先に団長になる! 分かった?」
「ちょっと待ってよ!!」
私は慌てて、その後を追い掛けた。
そして、一年が経った。
私は十五歳になった。この世界では、成人とされる年齢だ。
私とルート嬢は、王国騎士団の入団試験を受けることになった。
試験内容は、剣技、体術、隠匿術、探索術、魔法を使わない応急治療、そして魔法操作と魔法技術の確認だった。
それぞれの試験が始まった。
参加者は、意外と少ないのかな……?
総勢五十名。十名ずつ、五つの班に分かれて試験を進めるらしい。
私とルート嬢は別々の班になった。
私の班では、体術の試験から始まった。
どうやら、一対一の組手を行うらしい。
私の相手は、かなり図体の大きな男だった。
前世の私なら、泣きながら逃げ出していただろう。
「相手がこんな貧弱な奴なんて……。せっかく一番得意な体術の試験なのに、ああ、台無しだ」
まあ、そう思うのも無理はないか。
私も外から見れば、そんなふうに思われるのだろう。
いやいや……。
「こういう場面って、鉄板だよね~」
私が呟くと、相手は呆れた顔をした。
「何言ってるか分かんねぇな。試験官、始めていいっすか?」
試験官が笑った……?
いや、違う。あの人は……。
確か、父の部下だったはずだ。
「それでは、始め!」
試験官の掛け声と同時に、相手がこちらへ駆け出してきた。
「加減して腹にしてやるよ!」
……何だ? 親切のつもりなのか?
相手の拳が、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。
私は小さく息を吐いた。
「ごめんなさい。合格しないと、ルート嬢との約束を破ることになるから」
私は跳び上がり、下段突きの姿勢になった相手の背後へ回り込む。そして、回転蹴りの要領で一閃した。
わっ……痛そう。
相手は前のめりに倒れ込んだ。
「そこまで!」
私は父に教えてもらったとおり、残心の構えを取った。
「おおーっ!」
周囲から歓声が湧き上がる。
私は相手に礼をし、最後に試験官にも礼をして、その場を離れた。
試験官が少し笑った気がしたけれど、気まずかったので見なかったことにした。
そのとき、別の場所から歓声が聞こえてきた。
ルート嬢の班だ。
まったく、また何をやったのだろう……。
いや、何となく想像はつくけれど。
次は探索術の試験だった。
試験官の説明によると、試験会場のどこかに、魔術を込めた魔具が幾つか隠されているらしい。魔術を込めたのは試験官本人だという。
「それでは、始め!」
合図と同時に、私を除く九名のうち、先ほどの体術の相手を除いた八名が四方へ散らばった。
私は驚愕した。
さすがは王国騎士団の入団試験に挑む人たちだ。試験官の魔術をこの短時間で感知したのか!
……いや、感心してる場合ではない。
私はすぐさま感知魔法を使い、試験官が込めた魔術の波長を探った。そして、その反応を手掛かりに、感知魔法で魔具を探し始めた。
そのとき、また試験官が少し笑ったような気がした。
……何故?
五分後。
私は目的の魔具を見つけ、試験官に手渡した。
「貴女は何故……。いや、よそう。よく考えれば分かることなのに……。毎年、疲れるよ」
また少し笑った。
……だから、何故?
「この班の試験は終了です」
えっ……もう終わりなの!?
もしかして、全員不合格!?
「試験官、どういうことでしょうか?」
受験者の一人が問い掛けた。
「済まないが、合格者はハイデル公嬢のみだ」
その名を聞いた受験者たちが、ざわめき始めた。
「彼女が、あの……!?」
「試験官殿! あまりにも理不尽です! あまりにも贔屓ではありませんか!」
受験者の中には、反発する者もいた。
当然だろうな……。
何だか、肩身が狭い。
「はぁーっ……」
試験官は深いため息をついた。
「では、聞くが、探索の試験で感知魔法を使った者が、このハイデル公嬢以外にいたか? それとも、こんな試験に何時間も掛けるつもりだったのか? あるいは、何か特別なスキルでも持っている者がいたのか?」
試験官は、呆れたように首を振った。
「まったく、嘆かわしい……。いいかね、私は最初に説明した筈だ、ハイデル公嬢が見つけたこの魔具に、簡単な感知魔法でも判る様に、私の魔術を色濃く移した」
「本当だ!」
試験官の掲げた魔具を受験者の一人が、感知魔法で確認したのだろう、驚きの声をあげた。
「しかも、この他に魔具8個を仕掛けた。つまりその気になれば、この探知の試験に関しては参加者全員合格する事も出来た。其処に何処が理不尽なのか?何処が贔屓なのか、答えられる者が居るかね?」
誰も答え無かった…只皆、気不味い顔をしているだけだった。
「また来年受けに来なさい。いや、私が基礎から教えてくれる師を紹介しよう。もちろん、ただではないがな。せめて、そこから学んで試験に挑んでほしい。まったく……」
疲れ切った様子の試験官は、片手を払うような仕草をして、その場を離れていった。
何とも言えない空気が、その場に残された。
私はそそくさと、その場を抜け出した。
もちろん、隠匿魔法を使ってね……。