【ゆる募:うちの自治区を発展させる方法】   作:空紅 唯空

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久世静羽の噂と秘密②
かつて、久世静羽が三日間にわたり行方不明になったことがある。
――「呼ばれてる」

その日、空は天が裂けたかのように歪み、皆既日食が発生した。
――「王の降臨だ」

捜索には飛行船まで投入されたが、彼女の向かった先へ近づこうとするたび、紅い雷が行く手を阻んだという。
――「邪魔をしないで」

三日後、静羽は帰還した。
しかし、あの三日間に何があったのか、彼女は語ろうとしない。



13話 ――ようやく始まる、アステラ学園校舎見学!

 

【挿絵表示】

 

 

「学園紹介に戻ろうか」

 

「……そうですね」

 

澪は一度、背後の巨大な古龍の骨格を見上げた。

 

「予定より少々……いえ、かなり時間を使ってしまいましたので、ここからは順番にご案内しましょう」

 

「サクサク行こう!」

 

「はい。まずは本校舎からですね」

 

ライブチャット

:やっと学園紹介に戻ったwww

:正門前だけでどんだけ情報出てくるんだよwww

:古龍の逆鱗事件、面白すぎた

:まだ校舎に入ってなかったの忘れてた

:そういえば学園の紹介配信だったわ

:校舎楽しみ!!

:外観からしてすごかったもんな

 

《本校舎》

二人は正門をくぐり、石畳の階段を上っていく。

 

両脇には手入れされた植え込みと、アステラ学園の紋章が刻まれた石柱。

正面には、重厚な石造りと木造建築が組み合わさった大きな校舎がそびえていた。

 

巨大な木製の扉を開けると、広々としたエントランスホールが現れる。

高い天井を支える太い木の梁。

磨き上げられた石床。

壁には歴代のハンターたちの肖像画や、モンスターの生態を描いた絵画が飾られている。

そして、ホール中央には大きな案内板が設置されていた。

 

「ここが本校舎だよ。普段の授業とか、生徒会の仕事とかは大体ここでやってるね」

 

「本校舎には一般教室、職員室、図書室、生徒会室などがあります」

「学園の生徒数は50名と少ないですが、専門的な授業も多いため、用途別に教室を設けています」

 

「ちなみに、建物の中は結構広いから、来ることがあったら迷わないようにね」

 

「……会長は入学当初、三度ほど迷われましたね」

 

「それは言わなくてよくない!?」

 

ライブチャット

:おおおお!!

:めっちゃ立派!!

:ファンタジーの学校って感じ!

:天井高いなあ

:50人しかいないのにこの規模!?

:会長迷子になってて草

:方向音痴なのか?

:案内板ありがたいな

 

 

《一般教室》

最初に訪れたのは、通常授業で使用する教室。

 

木製の机と椅子が整然と並び、正面には大きな黒板。

窓からは中庭の緑と、遠くにそびえる山々が見える。

一見すると、ごく普通の学校の教室だ。

 

ただし、壁に掲示されている資料は少し違っていた。

『大型モンスターの行動予測』

『狩猟区域における安全管理』

『素材の性質と加工技術』

『古龍種の生態研究』

 

「ここが普通の教室。座学は基本的にこういうところでやるよ」

 

「一般教養に加えて、狩猟に必要な知識や生態学、資源管理なども学びます」

「もちろん、全員がハンターを目指しているわけではありません。研究や加工、ギルド関連の仕事を志望する生徒もいます」

 

「僕は実技の方が好きかなぁ」

 

「会長は、もう少し座学にも興味を持ってください」

 

「ちゃんと勉強してるよ!?」

 

ライブチャット

:普通の教室だ!

:いや壁の掲示物が普通じゃないwww

:古龍種の生態研究!?

:高校の授業内容じゃなくない!?

:専門学校みたいな感じなのかな

:ハンター以外の進路もあるんだ

:会長、実技好きそうwww

 

 

《図書室》

続いて訪れたのは図書室。

 

大きな扉を開けると、天井近くまで伸びる本棚が何列も並んでいた。

木製の梯子が取り付けられた書架には、分厚い書物や古い調査記録が収められている。

中央には読書用の長机。

窓際には柔らかな光が差し込み、静かな空間を作り出していた。

 

「ここが図書室!」

「狩猟記録とか、モンスターの生態資料とか、昔の文献とかがいっぱいあるよ」

 

「一般的な書籍もありますが、アステラ学園の特徴は、ギルドから提供された研究資料や過去の調査記録が充実していることですね」

「ただし、機密指定された資料は別途管理されています」

 

「昔の武器の資料もあるから、僕は結構好きだよ」

 

「……会長の場合、武器関係の棚にしか行かない印象がありますが」

 

「そんなことないよ! 古龍の資料も見るし!」

 

「……それも素材目的では?」

 

「…………(・3・)~♪」

 

ライブチャット

:図書室すごい!!

:本の数やばくない!?

:こういう図書室憧れる

:ギルドの調査記録読みたい!!

:古龍の資料とか絶対面白い

:会長、武器のことばっかりwww

:さっきの事件のせいで説得力がないwww

 

 

《研究棟》

本校舎から渡り廊下を通り、隣接する研究棟へ。

 

こちらは本校舎よりも実用的な造りになっていた。

石造りの廊下には、薬品や植物の標本が並ぶ展示棚。

壁には各種モンスターの骨格図や、生息域を示した地図が掲示されている。

奥の部屋では、白衣を着た生徒が顕微鏡を覗いていた。

 

「ここが研究棟だよ」

「モンスターの生態とか、植物とか、鉱石とか、いろんなものを調べてるんだ」

 

「研究分野は幅広く、生物学、植物学、鉱物学、素材加工学などに分かれています」

「研究成果はギルドや自治区の産業にも活用されています」

 

二人が廊下を進むと、ガラスケースの中に展示された標本が映った。

 

巨大な爪。

色鮮やかな鉱石。

奇妙な形状の骨。

そして、幾重にも層を成した分厚い鱗。

 

「おっ、これ綺麗だね」

 

「……会長」

 

「見てるだけだって!」

 

ライブチャット

:研究棟きた!!

:本格的すぎる

:博物館みたい!!

:あの爪でっか!!

:素材の種類がすごいな

:会長wwww

:綺麗な鱗に反応するなwww

:書記ちゃんの警戒が早いwww

 

 

《生徒会室》

研究棟を後にした二人は、本校舎の上階へ戻った。

廊下の突き当たり。

『生徒会室』と書かれたプレートが掲げられた扉の前で、静羽が足を止める。

 

「さて、ここが僕らの仕事場!」

 

扉を開く。

 

室内には大きな会議机と五脚の椅子。

壁際には書類棚や資料保管庫が並び、自治区の地図が大きく掲示されている。

机の上には、整理された書類の束。

一角には来客用のソファと小さなテーブルも置かれていた。

 

「こちらが生徒会室です」

「生徒会は五名で構成されており、学園運営に関する事務や予算管理、対外調整などを担当しています」

 

「僕は会長と会計監査を兼任してるよ」

 

「私は書記です。議事録の作成や書類管理などを担当しています」

「副会長兼広報担当が三年生の天城 朱音(あまぎ あかね)先輩、会計担当が一年生の篠宮 千景(しのみや ちかげ)さん、庶務担当が二年生の鳴海 琥珀(なるみ こはく)さんです」

 

「みんな優秀だから、すっごく助かってるよ」

 

「……会長も、普段の事務仕事については非常に優秀ですからね」

 

「えっ、褒めてくれるの?」

 

「事実ですので」

「……ただし、趣味に関しては別ですが」

 

「そこはもういいじゃん!」

 

ライブチャット

:生徒会室!!

:思ったより普通だ

:書類多いなあ

:生徒会5人なんだ

:会長が一年生なの!?

:しかも会計監査兼任!?

:仕事できるタイプなのか

:古龍の逆鱗剥がしてた人と同一人物とは思えないwww

:書記ちゃんの評価が的確すぎる

 

 

《食堂》

次に案内されたのは、学園の食堂だった。

 

木製の長机が並ぶ、温かみのある空間。

奥には厨房があり、アイルーたちが忙しそうに料理の仕込みを進めている。

香ばしい匂いが漂っていた。

 

「ここが学園の食堂!」

「ご飯が美味しいんだよねぇ」

 

「学園の生徒や教職員が利用する食堂です。アイルーの料理人さんたちが食事を用意してくださっています」

 

厨房から一匹のアイルーが顔を出した。

 

「ニャ! 会長、おかえりニャ!」

 

「ただいまー!」

「今日のご飯は何?」

 

「今日はお肉たっぷりのシチューだニャ!」

 

「おおっ!」

 

「……会長。先ほど昼食を食べたばかりですよね?」

 

「聞いただけだよ!?」

 

ライブチャット

:アイルーだあああ!!

:かわいい!!

:食堂にもいるんだ!!

:シチュー美味しそう

:会長、また食べる気だった?www

:さっき豪華なランチ食べてたよねwww

:ここの学園ご飯美味しそうだなあ

 

 

《狩猟訓練施設》

そして、二人は校舎の外へ出た。

向かった先は、学園の敷地内に設けられた広大な訓練施設。

 

高い防護壁に囲まれた訓練場には、様々な設備が並んでいた。

巨大な木製の標的。

可動式の訓練人形。

射撃用の的。

重量のある障害物。

 

さらに奥には、実際の狩猟環境を想定した地形訓練区画が広がっている。

 

「ここが狩猟訓練施設!」

「実技の授業は主にここでやるよ」

 

「武器の扱い方や回避行動、連携訓練などを行います」

「安全管理のため、訓練内容に応じて使用区域を分けています」

 

「ちなみに、あっちが近接武器用で、こっちが遠距離武器用だね」

 

「私もヘビィボウガンの訓練でよく利用しています」

 

カメラが射撃訓練区画へ向く。

頑丈な標的がいくつも並び、奥には着弾を確認するための設備が設置されていた。

 

「澪のヘビィボウガン、結構すごいんだよ」

 

「……会長ほどではありませんよ」

 

「いやいや、あの火力は普通にすごいって!」

 

「ありがとうございます」

「……ですが、今日は実演しませんよ?」

 

「えー」

 

「会長もです」

 

「まだ何も言ってないのに!」

 

ライブチャット

:訓練場でっか!!

:本格的すぎる!!

:ここで武器の訓練してるのか

:ヘビィボウガン!?

:書記ちゃんもハンターなの!?

:見たい!!

:会長の太刀も見たい!!

:書記ちゃん先手を打ってるwww

:午前中の件があるからなwww

 

「午後から見始めた人たちかな?」

ボソッ「バ火力ってやつだよwww」

 

 

《装備保管庫・整備施設》

訓練場の隣には、武具の保管と整備を行う施設があった。

 

壁には様々な武器を固定するための専用ラック。

奥には防具の点検台や、消耗品を保管する棚が並んでいる。

金属を磨く音が、かすかに響いていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ここは装備保管庫と整備施設だよ」

「授業で使う装備を保管したり、点検したりするところだね」

 

「装備の安全確認は重要ですからね。授業前後の点検も徹底しています」

 

静羽は、壁に並ぶ武器を見つめた。

 

「……やっぱり、並んでる武器を見るとテンション上がるねぇ」

 

「会長、展示品ではありませんからね?」

 

「わかってるよ!」

 

ライブチャット

:武器いっぱい!!

:うわ、すごい!!

:これ全部授業用なの!?

:種類が多いなあ

:武器好きにはたまらない場所だ

:会長めっちゃ嬉しそうwww

:刀の前で足止まりそうwww

 

 

《中庭・休憩スペース》

最後に二人が向かったのは、本校舎と研究棟に囲まれた中庭だった。

 

石畳の小道。

木製のベンチ。

花壇には色とりどりの花が咲き、中央には小さな噴水が設けられている。

そして、その向こうには――。

 

巨大な古龍の骨格が、空へ向かって伸びていた。

校舎の背後から突き出す、途方もなく大きな肋骨。

その圧倒的な存在感は、学園のどこから見ても変わらない。

 

「ここが中庭だよ」

「休み時間とか、放課後にのんびりする場所だね」

 

「生徒同士の交流や休憩に利用されています」

「天気の良い日は、ここで昼食を取る生徒もいますよ」

 

「僕もたまにここでお昼寝してるよ」

 

「……会長、書類仕事の途中で眠らないでくださいね?」

 

「それはしないって!」

 

風が吹き抜ける。

木々の葉が揺れ、遠くから鳥の鳴き声が聞こえた。

その背景には、太古の古龍の骨。

静かな学園生活と、途方もない自然の歴史が同居する光景だった。

 

ライブチャット

:うわあ……

:綺麗……

:中庭めっちゃいいな

:こんな場所で休憩したい

:でも背景の骨がすごすぎるwww

:改めて見ると本当にでかいな

:あれが実在する古龍の骨なのか

:この学園、ロマンしかない

:普通の学校生活もちゃんとあるんだね

 

 

「さて! これで学園の主要な施設は大体紹介できたかな!」

 

「はい。細かい設備や専門施設については、まだご紹介できていない部分もありますが、全体の雰囲気はお伝えできたと思います」

 

「どうだった? うちの学園!」

 

ライブチャット

:めっちゃよかった!!

:想像以上に立派だった!

:研究棟が特に気になる!!

:訓練場も見てみたい!!

:食堂行きたい!!

:アイルーに会いたい!!

:古龍の骨がある学校とか唯一無二すぎる

:生徒50人っていうのが信じられない規模

:学園生活楽しそう!!

:もっと詳しく見たい!!

 

「……会長、かなり好評のようですね」

「これで、今回予定していた学園施設の紹介は一通り完了しました」

「残るのは、自治区についての質問への回答と、配信の締めくくりでしょうか」

 

「そうだね!」

 

「では、せっかくですので、最後に少しだけ質問を受け付けましょうか」

 

カメラが、静羽の姿を正面から映す。

背後には美しい校舎。

そして、天高く伸びる古龍の骨格。

 

「視聴者の皆さん、アステラ学園や自治区について、気になることがあればコメントをお願いします」

 

ライブチャット

:質問タイムきた!!

:聞きたいこといっぱいある!!

:古龍って普段どれくらい出るの?

:学園の授業ってどんな時間割?

:アイルーって学園にも入学できるの?

:会長の刀コレクション見たい!!

:学園の寮ってどんな感じ?

:他の自治区との交流はあるの?

:ハンターになるにはどうすればいいの?

:会長が生徒会長になった経緯が知りたい!!

:ギルドの紹介配信もやってほしい!!

 

・

・

・

 

「……ふふ。たくさん来ていますね」

「会長、どの質問からお答えしましょうか?」

 

「うーん。数が多いから質問の中からランダムに選んで答えようかな」

「いくつ答えるかは僕の気分次第で」

 

「……気分次第、ですか」

「まあ、配信時間にも限りがありますし、無理のない範囲で回答しましょう」

 

ライブチャット

:気分次第wwww

:自由すぎる会長www

:何個答えてくれるかな?

:全部答えてほしい!!

:ランダムならどれが選ばれるかわからないな

:会長らしいwww

 

「じゃあ、まずはこれ!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

質問

:さっき写真で見せてくれた、山みたいに大きい蛇型の古龍って、結局なんていう名前なんですか?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……ああ、そういえば」

 

澪は思い出したように頷いた。

 

「写真や逆鱗の騒動についてはお話ししましたが、肝心の正式名称をご紹介していませんでしたね」

 

「そうだったねぇ」

 

静羽は再び、あの巨大な蛇型の古龍が写った写真を取り出した。

 

「正式名称は、ダラ・アマデュラだよ」

 

「ダラ・アマデュラ……」

「それが、あの巨大な古龍の名前なんですね」

 

「うん。別名は『蛇王龍』だね」

「ちなみに、学園の後ろにある骨も、同じ種のものだと考えられてるよ」

 

澪がカメラを背後へ向ける。

画面いっぱいに映し出される、巨大な古龍の骨格。

 

「……改めて考えると、途方もない大きさですね」

「会長が目撃された個体も非常に巨大でしたが、こちらの骨格はさらに大きいということでしたね」

 

「そうそう。僕が見たやつも相当大きかったけど、こっちはもっと大きいんだよねぇ」

 

ライブチャット

:ダラ・アマデュラ!!

:蛇王龍!?!?

:名前かっこよすぎる!!

:王ってついてるの!?

:あの見た目で蛇王龍は納得

:やっぱりあの骨と同じ種類なのか!!

:しかも骨の方が大きいってマジ!?

:生きてた頃どんだけでかかったんだよ……

:そんな古龍の逆鱗を剥ぎ取った会長って一体……

:またその話に戻るなwwww

 

「……それでは、質問①への回答は以上ですね」

「正式名称はダラ・アマデュラ。別名は蛇王龍、と」

 

「うん!」

 

「では会長、次の質問はどれにしますか?」

 

「んー、じゃあ次はこれにしようかな!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

質問

:静羽会長ってまだ一年生ですよね? どうして生徒会長に選ばれたんですか?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ああ、確かに気になる方も多いでしょうね」

「会長は現在一年生ですから」

 

「そうだねぇ。理由はいくつかあるんだけど……」

「一番大きいのは、事務仕事が得意だったからかな」

 

「実際、会長の事務処理能力は非常に高いです」

「大量の書類を短時間で処理できますし、予算や物資の管理についても的確な判断をされます」

 

「まあ、得意なことをやってただけなんだけどね」

「それで、前の会長が卒業することになったんだけど……」

「次の会長をやりたい人がいなくてさ」

 

「……そうですね」

「生徒会長は学園内の業務だけでなく、ギルドや自治区の関係者との調整も必要になりますから」

「責任も大きい役職です」

 

「で、なんだかんだあって僕が会長になった、って感じ!」

 

「……随分と簡潔にまとめましたね」

 

「だって長くなるし!」

 

ライブチャット

:えっ、事務能力で選ばれたの!?

:てっきり戦闘力かと思ってた

:確かにあんな強い会長なら納得だけど

:まさかの事務仕事www

:しかも立候補者いなかったのか

:会長の仕事めちゃくちゃ大変そう

:一年生で予算管理までできるのすごいな

:古龍の逆鱗剥ぎ取った人と同一人物とは思えないwww

:仕事は優秀、趣味は暴走www

:澪ちゃんがちゃんと評価してるのいいね

 

「補足しますと、会長は普段の業務では非常に頼りになる方です」

「判断も早く、必要な仕事を後回しにすることもほとんどありません」

 

「おおっ、今日の澪はいっぱい褒めてくれるね!」

 

「……事実を述べているだけです」

「ただし、趣味が関わると話は別ですが」

 

「もうその話はいいってば!」

 

「じゃ、次は……これ!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

質問

:アステラ学園の生徒って全員モンスターと戦えるんですか? 狩猟が苦手な生徒もいるんでしょうか?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「結論から言うと、全員が戦闘専門ってわけじゃないよ」

 

「はい。アステラ学園には、狩猟を専門とする生徒だけでなく、研究や生産、支援業務などを中心に学ぶ生徒もいます」

 

「モンスターと戦うのが得意な子もいれば、苦手な子もいるしね」

「別に、強いモンスターを倒せないからって問題があるわけじゃないよ」

 

「自治区の維持には、戦闘以外にも様々な能力が必要ですからね」

「たとえば、狩猟で得られた素材を加工する技術、モンスターの生態を調査する知識、物資を管理する能力などです」

 

「うんうん。ハンターが狩ってきても、素材を加工してくれる人がいなかったら武器も作れないしね」

「それに、怪我した人を治療してくれる人や、食事を作ってくれる人も大事だし」

 

「もちろん、危険な地域で暮らす以上、基本的な安全知識や避難行動などは学びます」

「ですが、全員に大型モンスターの討伐を求めているわけではありません」

 

ライブチャット

:なるほど!!

:全員ハンターってわけじゃないのか

:研究職の生徒もいるんだね

:素材加工とか楽しそう!!

:戦闘苦手でも大丈夫なのは安心

:確かにハンターだけじゃ街は成り立たないよな

:役割分担がしっかりしてるんだ

:そう考えると50人って少ないな

:会長は完全に戦闘特化かと思ってた

:でも事務能力も高いんだよねwww

 

「ちなみに、会長は狩猟の実力が非常に高いですが、学園の全生徒が会長と同じように戦えるわけではありません」

 

「そうだね。僕を基準にするのはやめた方がいいかも」

 

「……それについては全面的に同意します」

 

「えっ、そんなに?」

 

「午前中のイャンガルルガ討伐を見た視聴者の皆さんが、全生徒に同じことができると誤解しては困りますので」

 

ライブチャット

:あっ、そういえば会長一分ちょっとで倒してたな

:あれが普通だったら怖すぎるwww

:会長基準はダメなのねwww

:むしろ会長がどれくらい規格外なのか知りたい

:書記ちゃんの説明助かる

 

「でもでも、僕よりモンスター倒すの早い人達いるじゃん」

 

「……ああ、あの方々ですか」

 

澪は納得したように頷いた。

 

「確かに、学園には狩猟を専門とする、非常に優秀なハンターの方々がいらっしゃいますね」

 

「でしょ?」

 

「僕なんて、まだまだだよ。あの人たちと比べたらさ」

 

「…………」

 

澪は少し考え込んだ。

 

確かに、静羽の言葉は間違っていない。

 

アステラ学園には、戦闘を専門とする生徒が約十名いる。

その中には、静羽以上の狩猟技術を持つ者たちが存在する。

 

単純な攻撃力や瞬間的な戦闘能力の話ではない。

 

ハンターとしての完成度が違うのだ。

 

未知のモンスター。

不利な地形。

予期せぬ環境の変化。

装備の制限。

想定外の乱入。

 

どんな状況でも冷静に判断し、その場で最適な行動を選択する。

一つの武器を極めるだけでは辿り着けない、経験と技術の積み重ね。

 

静羽は強い。

それは間違いない。

しかし、彼女たちはそのさらに先にいる。

 

「いやぁ、あの人たちは本当にすごいんだよ」

「僕も、せめて影くらいは踏めてるといいんだけどねぇ」

 

「……会長」

 

「ん?」

 

「……その方々を基準に、ご自身の実力を評価するのはやめた方がよろしいかと」

 

「え? でも僕、まだそこそこできるくらいだと思うよ?」

 

白峰 澪

 

「…………」

 

澪は午前中の光景を思い出した。

空から襲いかかってきたイャンガルルガ。

それをわずか一分少々で討伐した生徒会長。

 

その本人が、今。

自分はそこそこできる程度だと言っている。

 

「……会長」

「世間一般では、それを『そこそこ』とは言いません」

 

ライブチャット

:…………は?

:会長より強い人いるの!?

:いやいやいやいや!!

:あのイャンガルルガ一分ちょっとで倒してたよね!?

:それより早いってどういうこと!?

:しかも十人くらい戦闘特化がいるんでしょ!?

:アステラ学園の戦闘力どうなってるの!?

:会長がそこそこって言い出したぞwww

:待って、影を踏めてるといいなって……

:そんなに差があるの?

:会長が謙遜してるだけじゃないの?

:でも書記ちゃん否定してないんだよな……

:ハンターとしての完成度って何だろう

:強さにもいろいろあるってことか

 

「……補足しますと、会長が仰っているのは、単純な戦闘能力だけの話ではありません」

「狩猟では、どのような状況にも対応できる判断力や経験が重要になります」

「会長は非常に優れた太刀使いですが、総合的な狩猟技術という点では、さらに高い水準にある方々もいらっしゃいます」

 

「そうそう! そういうこと!」

「僕、あの人たちの狩りを見るの大好きなんだよねぇ」

「動きに無駄がないし、状況が変わってもすぐ対応するし」

「本当に格好いいんだよ!」

 

静羽の目が輝く。

そこには悔しさよりも、純粋な憧れがあった。

 

「……ですが、会長」

「その方々が非常に優秀であることと、会長ご自身が優秀であることは、別の話ですからね?」

 

「んー?」

「でも、まだまだ追いつけないしなぁ」

 

「…………はぁ」

 

澪は小さくため息をついた。

 

(……この方の自己評価が妙に低い理由、少しわかった気がします)

(ずっと、あの方々の背中を追いかけているんですね)

 

ライブチャット

:なんかすごい話になってきた

:会長が憧れるハンターってどんな人たちなんだろ

:めっちゃ見てみたい!!

:あの会長が追いつけないって言うのか……

:アステラ学園、想像以上に層が厚い

:でも会長も十分すごいよ!!

:基準が高すぎるんだってwww

:書記ちゃんの苦労がわかってきた

:会長にとってはまだまだ上があるんだな

:いつかその人たちの狩猟も配信してほしい!!

 

静羽は、遠くの訓練施設へ視線を向けた。

 

「……いつか、あの人たちと肩を並べられるくらいになりたいなぁ」

 

その声は、いつもの軽い調子とは少し違っていた。

 

「……そうですね」

「会長なら、きっと今よりも成長できますよ」

 

澪は穏やかに答えた。

ただし、心の中では別のことも考えていた。

 

(……もっとも、会長がその方々と肩を並べるようになったら)

(一体どれほどの実力になってしまうのでしょうね……)

 

――静羽にとって、彼女たちは遥か先を歩く目標だった。

 

その背中があまりにも遠いからこそ、自分の実力を「そこそこ」としか思えない。

けれど、その距離を正確に測れるほど、静羽はまだ彼女たちの領域に近づいていなかった。

 

「っと、質問の途中だったね」

「あの人たちの話になると、ついつい熱くなっちゃうんだよねぇ」

 

「……ふふ。会長が尊敬されているのは、よく伝わりましたよ」

「それでは、次の質問に進みましょうか」

 

「うん! じゃあ次はこれ!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

質問

:アステラ学園って、トリニティやゲヘナ、ミレニアムみたいな他の学園と交流することはあるんですか?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あー、他の学園との交流ね!」

「もちろんあるよ。ただ、他の学園と比べると少ない方かな」

 

「アステラ学園自治区は、他自治区との往来が容易ではありませんからね」

「現在は物資の取引や研究協力など、実務的な交流が中心となっています」

 

「うちは珍しい素材が多いからねぇ」

「逆に、こっちじゃ手に入りにくいものを他の自治区から買ったりもしてるよ」

 

「例えば、自治区内で生産が難しい精密機器や一部の嗜好品などですね」

「また、外部の研究機関と情報交換を行うこともあります」

 

ライブチャット

:交流あるんだ!!

:やっぱり素材の取引が多いのか

:ミレニアムとか興味持ちそう!!

:あのモンスター素材って研究価値すごそうだし

:トリニティとの交流もあるのかな?

:ゲヘナの生徒が行ったらどうなるんだろwww

:飛行船で他自治区に行くの楽しそう

:でもあんなに広い自治区だと移動大変そうだよね

 

「ただ、僕としてはもっと気軽に遊びに来てもらいたいんだよね」

「せっかく景色も綺麗だし、ご飯も美味しいし!」

 

「……会長のお気持ちはわかりますが、観光客の受け入れには課題が多いですからね」

「安全な移動経路の確保や、護衛体制の整備も必要です」

 

「うーん、やっぱりそこが難しいよねぇ」

 

「特に、他自治区の生徒さんは大型モンスターとの遭遇に慣れていない場合もありますから」

 

「じゃあ、最初はステラガルドの中だけ観光してもらうとか?」

 

「それなら、現実的な案だと思います」

「ただし、事前にギルドや関係者との調整が必要ですね」

 

「よし! じゃあ今度、朱音先輩にも相談してみようかな!」

 

「広報担当ですから、きっと良い意見をいただけると思いますよ」

 

ライブチャット

:観光したい!!

:ステラガルドだけでも十分楽しそう!!

:アイルーのレストラン行きたい!!

:飛行船にも乗ってみたいな

:武器屋とか鍛冶屋も見学したい!

:観光ツアー実現してほしい!!

:でも街の外は怖いなwww

:午前中みたいにモンスターが飛んできたら困るwww

:会長が案内してくれるなら安心……かな?

:いや会長の安全基準は信用できないwww

 

「……というわけで、他学園との交流は存在しますが、現状では物資の取引や研究協力が中心となっています」

「今後、交流の機会を増やしていくことも検討したいですね」

 

「うん! いつか他の学園の子たちにも、うちの自治区の良さを直接知ってもらえたら嬉しいな!」

 

 

 

 

 

 

「これで、古龍の名前、生徒会長の就任理由、生徒の専門分野、他学園との交流についてお答えしましたね」

 

「それにしても結構答えたねぇ」

 

「はい。視聴者の皆さんにも、アステラ学園について理解を深めていただけたのではないでしょうか」

 

静羽はコメント欄を眺める。

まだまだ質問は流れ続けていた。

 

「……会長、そろそろ予定していた配信時間も終わりに近づいています」

「質問コーナーは、この辺りで締めくくりましょうか?」

 

「そうだねぇ。結構答えたし」

「んー、最後にもう一個くらい……」

 

静羽がコメント欄を眺めていると、澪がふと手を止めた。

 

ライブチャット

:まだ聞きたい!!

:刀の質問お願いします!!

:古龍の危険度!!

:アイルーについてもっと知りたい!

:会長の武器コレクション!!

:学園の寮も気になる!!

:まだ終わらないでー!!

   ・

   ・

   ・

:今日の配信で、モンスターって怖いだけじゃないんだなって思いました。

:でも、ひとつ気になったことがあります。

:会長にとって、モンスターって敵なんですか?

:それとも、何か別の存在なんでしょうか?

   ・

   ・

   ・

 

「……会長。少し興味深い質問が来ています」

 

「ん? どれどれ?」

 

静羽は質問を読み、少しだけ目を細めた。

 

「……へぇ」

「いい質問だね」

 

そして、カメラへ向き直る。

 

「じゃあ最後の質問はそれにしようか。」

 

「……モンスターは敵なのか、ですか」

 

澪は静かに呟いた。

 

「確かに、自治区の外からいらした方にとっては、気になることでしょうね」

「今日も、イャンガルルガの襲撃がありましたから」

 

「そうだね」

 

「でも、答えは結構単純だよ」

 

静羽は少し考え、言葉を選んだ。

 

「僕にとって、モンスターは敵じゃないよ」

 

ライブチャット

:えっ?

:敵じゃないの!?

:でも今日倒してたよね?

:イャンガルルガと戦ってたじゃん

:どういうこと?

:狩猟するのに敵じゃないって?

:ちょっと気になる

 

「もちろん、襲ってきたら戦うし、必要なら狩るよ」

「でも、それはモンスターが悪いやつだからってわけじゃないんだ」

「モンスターだって、生きてるんだから」

 

静羽は中庭の向こうへ視線を向ける。

遥か遠くには、深い緑に覆われた山々が連なっていた。

 

「お腹が空いたら獲物を探すし、縄張りに知らないやつが入ってきたら怒るし、危険だと思ったら身を守る」

「それって、僕らとそんなに変わらないでしょ?」

 

「僕らだって、生きるために食べるし、危険なものから身を守る」

「だから、モンスターが僕らを襲うことも、僕らがモンスターを狩ることもある」

「そこに、善いとか悪いとかはあんまり関係ないと思うんだよね」

 

ライブチャット

:……なるほど

:確かに

:モンスターも生き物だもんな

:人間を襲うから悪ってわけじゃないのか

:なんか考えさせられる

:狩る側も狩られる側も生きてるってことか

:会長、普段と雰囲気違うな

 

「それにね」

「僕、狩猟は好きだけど、モンスターを倒すことが正しいことだとは思ってないんだ」

 

「狩猟って、結局は命をもらうことだから」

「食べるためだったり、素材が必要だったり、人を守るためだったり」

「理由はいろいろあるけど、相手の命を奪うことには変わりないでしょ?」

「だからこそ、何のために狩るのかは、ちゃんと考えなきゃいけないと思うんだ」

 

澪は黙って耳を傾けていた。

 

「必要もないのに狩り尽くしたら、その土地の生き物がいなくなっちゃうかもしれない」

「そうなったら、今度は僕らだって困る」

「だからギルドが狩猟を管理してるし、僕らもその決まりを守るんだよ」

 

「……ええ。生態系の維持と資源管理は、自治区にとって非常に重要な課題です」

「無制限に狩猟を行えば、自然環境だけでなく、私たち自身の暮らしにも影響しますからね」

 

ライブチャット

:なるほどなぁ……

:狩猟許可が必要なのってそういう理由もあるのか

:ただ倒せばいいわけじゃないんだね

:ちゃんと自然とのバランスを考えてるんだ

:なんかモンスターハンターって言葉の印象変わった

:会長、こういうこともちゃんと考えてるんだな

:さっきまで逆鱗剥がして怒られた話してた人とは思えない

:いやその話はもう許してやれwww

 

「それと、もう一つ」

 

静羽は、腰に下げた刀へ軽く触れた。

 

「強いモンスターを倒せるからって、優れたハンターとは限らないんだよね」

「相手がどんな生き物なのか、どんな場所に住んでいて、どういう行動をするのか」

「そういうことを理解して、状況に合わせて判断できることも大事なんだ」

 

「……先ほどお話しされていた、戦闘を専門とする方々のことですね」

 

「うん!」

「僕が尊敬してるあの人たちは、本当にそれが上手なんだ」

「狩るべきときは狩る。でも、狩る必要がないなら無理に手を出さない」

「戦うと決めたら、どんな状況でもちゃんと対応する」

「僕はまだ、あそこまで上手にはできないけどね」

 

静羽は少し照れくさそうに笑った。

 

「でも、考え方だけは負けてないつもりだよ」

 

「……ええ」

 

澪は、静かに頷いた。

 

「私も、そう思います」

 

静羽は戦闘能力が高い。

 

けれど、ハンターとしての完成度という点では、まだ遥か先を歩く者たちがいる。

未知の状況への対応力。

長年積み重ねた経験。

危険を見極める判断力。

 

そして、狩るべきか否かを決める冷静さ。

 

静羽は、まだその領域には達していない。

それでも。

命に向き合う姿勢だけは、決して劣っていない。

 

澪には、そう思えた。

 

ライブチャット

:……なんかすごい

:会長が尊敬してる人たち、ますます気になる

:強いだけじゃハンターとして完成してないのか

:考え方は負けてないっていいな

:なんか会長らしい

:ちゃんと自分の目標があるんだね

:午前中の戦闘見たあとだと余計に響く

:こういう人が生徒会長なの、なんかわかる気がする

 

「……では、会長」

「最後に、質問への答えを一言でまとめると?」

 

静羽は少し考えた。

そして、いつもの穏やかな表情でカメラを見る。

 

「そうだなぁ……」

 

「モンスターは、敵でも味方でもない」

「僕らと同じ世界で生きてる、隣人みたいなものかな」

「もちろん、仲良くできるとは限らないけどね」

「それでも、お互いに生きてるってことは忘れたくないんだ」

 

一瞬、静かな風が吹いた。

その背後には、太古の古龍の骨格。

そして、その骨に寄り添うように建てられたアステラ学園。

 

「だから、僕はこれからも狩るよ」

「必要なときには、ちゃんとね」

「でも、狩らなくていいなら、それが一番だと思う」

 

「……素敵な答えだと思います」

 

ライブチャット

:………………

:なんか感動した

:めちゃくちゃいい答えじゃん

:敵でも味方でもない、か

:同じ世界で生きてる隣人……

:すごく好きな考え方

:アステラ学園がどんな場所なのか、少しわかった気がする

:最初はモンスター怖いって思ってたけど、ちょっと見方変わった

:いい質問だったなぁ

:最後にこれを選んで正解だったね

 

「……会長」

「皆さんにも、私たちが大切にしている考え方が伝わったようですね」

 

「それならよかった!」

 

「では、質問コーナーはここまでにしましょう」

「それでは会長、最後に視聴者の皆さんへご挨拶をお願いします」

 

「うん!」

 

静羽はカメラへ向き直った。

背後には、壮大なアステラ学園の校舎。

さらにその奥には、太古の古龍の巨大な骨格がそびえている。

 

アステラ学園公式による自治区紹介生配信は、いよいよ終わりを迎えようとしていた。

 

「予定外の出来事もあったけど、ここまで見てくれてありがとう!」

「この配信を見てくれてる皆にアステラ学園自治区の魅力が伝わってくれていると嬉しいな」

 

ライブチャット

:こちらこそありがとう!!

:めちゃくちゃ楽しかった!!

:アステラ学園すごかった!

:アイルー可愛かった!!

:ご飯も美味しそうだった!!

:古龍の写真は衝撃だったな

:イャンガルルガ討伐もすごかった!!

:ぜひ第二回もやってほしい!!

:いつか観光に行きたい!!

:会長も書記ちゃんもお疲れ様!!

 

「では、締めの一言言わせていただきます」

 

「はい。お願いします」

 

澪は穏やかに微笑んだ。

先ほどの質問への回答は、とても素晴らしかった。

 

命への向き合い方。

自然との共存。

ハンターとしての誇り。

 

きっと最後も、アステラ学園の生徒会長らしい言葉で締めくくってくれるだろう。

そう思っていた。

静羽は大きく息を吸い込み――

 

「刀は最高ーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

…………。

 

………………。

 

「…………」

 

カメラが、わずかに揺れた。

 

ライブチャット

:!?!?!?!?!?

:wwwwwwwwwwwwwwww

:最後の最後でwwwwwww

:刀wwwwwwwwww

:全部持っていったあああああ!!!!

:さっきの感動返してwwwwww

:いや最高の締めだろこれwww

:会長ブレなさすぎるwwww

:モンスターとの共存は!?!?www

:ハンターとしての誇りはどこ行ったwww

:刀への愛が勝ったwwwww

:もうだめ腹痛いwwww

:これがアステラ学園の生徒会長か……

:最高すぎるwwwww

 

「…………会長」

 

「ん?」

 

「……先ほどまでの、あの素晴らしいお話は……?」

 

「え? あれはあれ、これはこれだよ?」

 

「…………」

 

「……そうですか」

 

澪は、深く、深くため息をついた。

 

「……せめて最後くらい、学園の紹介らしく締めていただきたかったのですが」

 

「えー? でも刀は最高だよ?」

 

「……それはもう、十分に伝わっています」

 

ライブチャット

:wwwwwwwwww

:あれはあれ、これはこれwww

:書記ちゃんお疲れ様www

:もう会長の刀愛は全視聴者に伝わったよwww

:今日一番伝わったの刀への愛かもしれない

:自治区の魅力もちゃんと伝わったから安心してwww

:逆鱗事件の理由が最後に回収されたwww

:最初から最後まで刀だったなこの人www

 

「……こほん」

 

澪は気を取り直し、カメラを正面に構えた。

 

「……少々予想外の締めくくりとなりましたが」

「本日はアステラ学園公式配信をご視聴いただき、誠にありがとうございました」

「今回の配信を通じて、私たちの自治区について少しでも興味を持っていただけたのであれば幸いです」

「今後とも、アステラ学園をよろしくお願いいたします」

 

「よろしくねー!」

「みんな、またねー!!」

 

静羽が大きく手を振る。

 

澪も小さく会釈した。

 

ライブチャット

:お疲れ様でしたー!!

:最高の配信だった!!

:第二回待ってます!!

:澪ちゃんもお疲れ様!!

:会長またねー!!

:アステラ学園大好きになった!!

:刀は最高ーーーー!!!!

:刀は最高!!!!!!

:刀は最高ーーーーーーーー!!!!

:なんかコメント欄が染まってるwwww

:最後までカオスwwww

:刀は最高ーーーーーーーーー!!!!

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

配信終了

アステラ学園公式|自治区紹介生配信

 

本日の配信は終了しました

ご視聴ありがとうございました

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 




――配信終了後、生徒会室にて。

「…………会長」

「んー?」

「……最後の一言、どうして刀だったんですか?」

「だって最高だから!」

「…………」

澪は机に突っ伏した。

「えっ、澪!? どうしたの!?」

「……いえ」
「……もう、何も言いません」

静羽は不思議そうに首を傾げた。

その様子を見て、澪は思う。

(……まあ)
(予定外のことばかりでしたが……)
(アステラ学園らしさは、十分に伝わったのかもしれませんね)

そして、配信終了後のキヴォトス各地では――

「刀は最高ーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

という生徒会長の絶叫が、しばらく話題になるのだった。

――アステラ学園自治区紹介生配信・完――
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