【悲報】ちんちん改造したのに戦争に負けるw 作:ひつまぶし太郎
「やぁ少年。今日も元気に死んでいるかい?」
「おー先生…あいかわらず不景気な顔してんね」
からんころん。
そんな入店を知らせる音を、今日は初めて聞いたかもしれない。
まぁ午前中は雨だったから店を開けてなかったし。
昼間は眠気がいい感じだったから居間で布団にくるまってたし。
夕方になって換気もかねてパンを焼いて、夜になってから店を開けたので当然といえば当然か。
現在深夜0時。
ごうんごうんという、隣のコインランドリーの静かな音だけが、夜のパン屋に満ちている。
月光とランタンが照らすパン屋。
出来立てのパンの香ばしい匂い。
そんな激烈チルタイムにエントリーしてきたのは、髪はボサボサで白衣は首元に黒染みがあり、目元のクマは濃く、ついでに体臭も濃い女。
───死臭がする。
どうせ自分の研究室で死体の解剖やら実験やらしていたのだろう。
彼女は死体愛好家であり、同時に世界的権威のガストレア研究者だ。
その美貌を、持ち合わせるありとあらゆる他の要素で全て台無しにしている奇跡の天才。
美人がだらしなくて臭いとか。
エロ漫画かな?
「なんだい今日は菓子パン祭りかい?私はクリームパンがいいね」
店内を見渡した先生は柄にもなくワクワクした顔をしている。
「先生はコゲパンでも食ってろよ」
「ひどいな…里見くんにはほぼタダ同然に食べさせてると言うじゃないか」
「いつか借金の取り立てはするつもりだけども。そんときゃせいぜい搾り取るよ」
「搾り取るなんて…そんな卑猥な言葉を使うんじゃない。エロく見えるぞ」
「先生はバカに見えるなぁ…」
四賢人って実は冷笑された結果のあだ名じゃないだろうな。
まぁ当たり前か。
だって最強の人間兵器に最強の兵器を搭載したら最強!!みたいな理論で僕のちんちん改造した奴らが頭いいわけないしな。
なーにが天の矛楯だよ。
返せよ僕のアナログスティックを。
無駄な機能とかいらねえんだわ。
人類の進化の過程で最良とされていたんだわちんちんって。
馬鹿は天才は紙一重と言うが、アイツラ全員馬鹿だからね。
馬鹿×4で超大馬鹿だから。
ちんちんうんこで笑っていいの小学生でだろ。
何大真面目に取り扱ってんだ。
…まぁ、そんなことより。
「シャワーは二百円。湯船付きなら五百円」
「おや、銭湯も始めたとは知らなかった」
「そりゃそうだ。ついさっき始めたんだから」
鼻をつまみ、顎でカウンターの奥の居住スペースを示す僕を、先生はしばらく見つめて、自分の白衣に鼻を寄せる。
これが僕の因果の開始因子だと思うと泣きたくなるね。
「……そんなに臭いかい?」
「むしろ発情しそうだからどうにかしてって感じ。自分が臭フェチだとは知らなかったぜ」
「はつじょ…!……ああ、血の臭いか。君も難儀だな。…というかやっぱり臭いんじゃないか!」
今日の先生はあまりにも血の臭いが濃くて敵わない。
くらくらとする。
酩酊した視界で、彼女だけが一際輝いて見える。
危険信号、赤。
血に交じる濃い女の匂いに、本能が犯されている。
僕は。
上がった心拍数と加熱する闘争本能を無理矢理押さえつけるように、心臓の機能を低下させる。
呼吸状態低下。
血中酸素濃度低下。
血圧低下。
…ふぅ、落ち着いてきた。
まったく、不便なのか便利なのか分かんねえなこの体。
「女の匂いが濃すぎるかなって」
「む…次来るときはそういう方向性もあり、か…?いやしかし…」
しょんぼりと肩を落とし、僕の横を当たり前のように通り抜け、慣れたように居間に上がるそのダメ人間を尻目に、なんとなく罪悪感の湧いた僕は少しの逡巡を見せてから、口を開く。
「ふっ、先にシャワー浴びてこいよ風呂キャン女」
僕は決め顔でそう言った。
なんか前にドラマでこんなシーンがあった気がする。
そのあと2人はずっこんばっこんパラダイスだったけど。
「あまり大人をからかうと本当に手を出すからな私は」
「目がマジだ…」
「君ほど私の倫理観を狂わせる存在はないね…つまり、君が悪いんだよ」
「他責の変態じゃん」
「あと私は別に風呂キャンなわけじゃない。キャンセル以前にそもそも時間を忘れて風呂も忘れてるだけなのだから。以上証明終了」
「バカのガリレオ?」
のそのそと、悪臭をまき散らしながら廊下へと消えていくその女の背中を見るのは面白い。
コインランドリーの音をBGMに夜を楽しむよりもずっと。
…もし、本気で僕に手を出そうとするのなら。
それもまた運命なのだろう。
少なくとも人に本気で求められたら、僕の設計思想を考えればおそらく逆らえない。
ぞくぞくとした予感に歓喜の震えを覚えながら、まぁそんなこと現実になるわけないんですけどねと投げ捨てる。
兵器に欲情する特殊性癖のやつとかいねーんだわ。
ましてや、
「くっさぁ………これで町中歩いてきたとかやばすぎ。テロだろ」
…でもちょっとくらい組み伏せられて欲望の引け口にされたい願望があったって許してほしい。
そんな夢だって見ることもある。
「ワイドハイターをどばっと。柔軟剤は適当に。洗剤は少々。血の汚れ落としに大根おろしをべっちょり…うん、絶対失敗するけど別にいいでしょ」
●
先生が湯船で溶けたような声をあげている頃、くちゃい衣類を隣のコインランドリーに投げ込みに行って帰ってきた。
仮にも女性の衣類なので盗難の心配がないでもないが、まぁ…。
僕の服じゃないし。
ちなみに隣のコインランドリーも一応僕が経営者ということになっている。パン屋との二足の草鞋ではあるけれど、コインランドリーは常時開放(放置)してるのでむしろパン屋より稼働率が高い可能性があった。
値段は1回百円。
洗剤は1セット十円。
僕の洗濯物を洗って畳んでくれたら全部無料、みたいな。
服も買えない貧困層のガキなのか変態なのかたまに僕の下着やTシャツがなくなってたりするけど、そこはそれ。
自分で洗濯機回して畳むとかやってらんねーよ。
母ちゃん頼むわ。
「まあ、母親なんていないんだけど。生まれたときから天涯孤独なのら。開発者ならいるけど」
たんたんたん、と。
包丁が踊る。
じゃがいも、たまねぎ、にんじんにチーズとマヨネーズ。
魚はないから魚肉風ソーセージで。
なんちゃってミモザサラダを手早く作り上げて、オーブンから出来立てのパンを取り出す。
クレセントロール。
月の光が降る夜には何よりもふさわしい。
黄金色の焦げ目で塩が小さな気泡をぷくぷくと浮かべては消えていく。
いい匂いだ。
手軽に食べれて、味はそれなり濃いけど重くないメニュー。
どうせ徹夜続きで変なテンションでうちに来たのだろう。
惣菜パンばかり買っていく太客に健康被害が出て居なくなられても困る。
「…いい湯だった。そしていい香りだ…」
「夜食付きだと1500円です」
「シェフ。シェフの持ち帰りは可能かな?」
先生は決め顔でそういった。
服が僕が適当に見繕った成人男性用の白Tシャツで、スウェットのズボンだからあまり格好はついてなかったけど。
「んー…責任取ってくれるなら」
「……私責任って言葉嫌いでね。特に男女関係のそれは…」
「うわー最低だな〜この人…」
夜は更けていく。
客の来ないパン屋は、夜に溶ける。
「ちなみにそのTシャツ、汗でびちょびちょなおじさんがわざとらしく店に忘れてったやつなんだよね」
「えっ」
「なんか色んな汁をこすりつけた特別製だって」
「私の服を返してくれ今すぐに!!!」
「洗濯中でーす」
「裸で過ごせというのか!?」
「それはちょっと…なんか…犯罪じゃない?」
「今更かまととぶるなよ貴様!私の入浴シーンを監視カメラで覗き見してたくせに!ぱれないと思ったのか?あんな雑な隠し方で!」
「あ、バレてた。いやーやっぱ本格的に銭湯始めようかな。臨時収入がうまそうだし。つーかパン屋より儲かりそう」
「ゴミカスぅ!!!女の敵!!!パン屋としてプライドはないのか!?」
「ない。そんなもの。ついでに監視カメラもダミーの模型だから何も撮れてないよ。どんな反応するかなぁと思って置いてるだけ」
「悪質なユーチューバーみたいなことしてる…一体どこでそんな知識を…」
「ネットとか、知り合いからとか?」
「やめなさいそんな変な人と付き合うの」
「じゃあ先生も出禁で」
「それは困る!」
『ぶらっくぶれっど』
本日も変わらず営業中。
「どーもヤニカスしゃぶ漬ハッピーセットでぇーす!一発芸します!」
「だははは!よっ!大統領!だが、一発芸なら私のほうが早いぞ!見給え、マジカルちんぽだ!!」
「うおおおおすげええええええ!先生からちんちん生えてるぜ!!本物だああああ!!!!」
「なんとヨーグルトも出る!」
「おいおい顔射性能付きとか最低かよ楽しくなってきたな!」
なお、店主がバカ女と深酒してとんでもない酩酊状態になったため、店の鍵は閉まっていた模様。
早速感想をくださった偉大な読者様。
そして、評価をくださった神のような読者様に、目を通してくださってる全ての読者の皆様。
ほんとうにありがとうございます。
感謝しかありません。
下ネタ書いてる時だけイキイキする最低な作者ですが、良ければ感想や評価を頂けると嬉しいです。