ディーンは、ブライアンの痕跡を辿りながら、別ルートで、ラクーンシティに向かっていた。 幸いなことに、感染者に遭遇することはなかったが、ラクーンシティに近付くにつれ、ディーンの表情は険しくなっていく。
「…………」
ラクーンシティの近くの丘で車を端に寄せ、停車させた。 双眼鏡で周囲の状況を確認する。
1番高いビル……ラクーンシティ総合病院を中心に所々で火事が発生していた。それを見ただけで、ディーンは、ラクーンシティで《何が起こっているのか》を想像することができた。
無線機に手を当て、父に報告する。
「父さん……思っていたよりも……ラクーンシティは酷いことになっているみたいだ」
『……そうみたいだな。 ラクーンシティの警察署や病院関係者にも連絡をとってみたが……皆、繋がらなかった』
「…そうか。 なら……急がないとな」
『…頼んだぞ。 ディーン』
「ああ」
父への報告を済ませると無線機を切った。 車に戻り、エンジンをかける。 思っていたよりもラクーンシティまでは、数分で辿り着くことができた。
「ん……?」
警戒しながら、ラクーンシティを進んでいた時だった。 車に囲まれた道路の真ん中で、女性がかがみ込んでいた。
「………」
すぐに車を止めると、銃を構えながら、女性にゆっくりと近づいて行く。 すると、ディーンはあることに気付いた。
「……レイシー……?」
―その女性は、妹のレイシーとよく似ていた。
薄着の格好も妹の寝間着ととてもよく似ていた。 目の錯覚だとわかっていた。 妹がこんな地獄のような場所にいるはずがない。 いや。 いていいはずがない。
「…どうしたんだ? 大丈夫か?」
銃をおろし、女性に声をかけた時だった。女性は、泣くのをやめると唸り声を上げながら、襲いかかってきた!
「なっ!?」
反応が遅れたディーンは、そのまま女性に押し倒される。 女性は、感染者だった。 感染者は、荒ぶる獣のようにディーンの至る所を噛もうとしている。
ディーンは、必死に抵抗しながら、感染者を撃とうとしたが――脳裏に、レイシーの笑顔がよぎってしまい、引き金を引く指が止まってしまった。
その隙を感染者は、見逃さなかった。 銃を持つ手を払いのけると、急所を守っているディーンの手に噛み付いてきた。
「うう!!くっ……こ、この……!!」
おそらく複数箇所噛まれてしまった。 自分が感染したという自覚を持ちつつも、震える手で銃を感染者に向ける。 感染者の額に銃口を押し付けると、ディーンは両目をつぶりながら、呟やくように言った。
「……許してくれ」
引き金を引くと、感染者の頭が吹き飛んだ。 ディーンは顔全体に感染者の血を浴びてしまった。 感染者の死体を押し退け、急いで起き上がった。
顔全体に浴びた感染者の血を乱暴に手で拭いとった。 グローブが全て血液で赤く染まると、ディーンは悪態をつきながら、グローブを脱ぎ捨てた。
「うっ……ゲホゲホッ!!」
唐突に、ディーンは倦怠感と悪寒を感じると、その場で咳き込み始めた。 こうしている間にも、他の感染者が来てしまうかもしれない。 そう考えたディーンは、急いで立ち上がると、ふらつきながら、その場をあとにしたのであった。
END