「クソッ! 感染してたのか!!」
ミリタリー端末に映し出された映像には、変異したブライアンが、次々と研究員達を襲っている様子が映し出されていた。
そう。 ディーンの《嫌な予感》は当たってしまったのだ。
端末の映像が、白い煙に覆われたことでブライアンや研究員たちの様子はわからなくなってしまった。 ディーンは悪態をつきながら、素早く背中に背負った折り畳み式のスナイパーライフルを組み立て始めた。
スナイパーライフルは、数分とかからずに完成した。 スコープを覗き込み、最上階付近に全神経を集中させた。
「.........」
――すると、変化はすぐに起きた。
総合病院の最上階から窓を突き破って、現れた変異ブライアンと研究員をスコープ越しに見たディーンは、一瞬大きく目を見開いたが、すぐに元に戻ると、ぼそりと呟くように言った。
「……解毒剤はどこにある……?」
スコープを最大まで拡大させても、研究員がどこに解毒剤を持っているかは分からない。
焦っているディーンを他所に、腕の触手は、建物の影に隠れながら、触手数本を向かわせた。
そして――研究員の腕が噛まれ、叫び声を上げた瞬間――解毒剤が真下に落ちそうになった。
「行けっ!!」
『!!』
間一髪で、触手数本が解毒剤を受け止めると、ディーンの元に高速で戻って行く。 それをみた変異ブライアンは、触手のあとを追い始めた。
「お、おい!!待て!!」
「そうだ……ここまで来い……!!」
腕の触手が解毒剤をディーンの元に届けたのと、変異ブライアンが、屋上に辿り着いたのは、ほぼ同時だった。 彼は獣のような唸り声を上げながら、触手でディーンを攻撃しようとする。 しかし腕の触手が素早く反応し、ブライアンの触手を全て受け止めた。
「なっ!?」
「やめろ!! 落ち着け!!」
「た、助けて!! 助けてくれぇぇえええええ!!!」
「……無理か」
彼は、酷く動揺すると、錯乱しながら、触手をあらゆる方向に飛ばし始めた。 ディーンはハンドガンを構えながら、向かってくる触手を撃ち落とす。 その度にブライアンは、悲鳴を上げ、頭を抱えた。
棘のついた触手は、ディーンの触手を払いのけると、素早く移動し、ディーンの足元に辿り着き、両足を拘束した。
「なっ!?」
『!!』
「あ、あ...」
ディーンの体は、1度空中に浮かび上がると、そのまま勢いよく下に叩きつけられた。 ブライアンは、絶望的な声を上げながらも、駆け足でディーンが叩きつけられた場所に向かったが――そこにディーンの姿はなかった。
「ど、どこにいった...!?」
「ここだっ!!」
「!?」
後ろから声が聞こえたブライアンは素早く振り返った。 ブライアンの触手はすかさずディーンを攻撃するが、彼は、全て交わしていった。
ブライアンの両目は、大きく見開かれ、咆哮を上げると、巨大化した手でディーンを掴もうとしたが、彼の肥大化した手に塞がれた。
そして――ブライアンの目は、ディーンの胸ポケットに納められた解毒剤に移ると、とても小さな声で呟くように言った。
「た、助けて......」
「助けるよ」
ブライアンの触手が、ディーンの体を引き寄せる。 巨大な口がディーンの右手を捕食しようとしたが、彼の複数の触手によって、塞がれてしまった。
ディーンとブライアンの目が交錯した瞬間――ディーンは、解毒剤を取り出すと、ブライアンの喉仏の下...胸部に渾身の力を込めて、シリンジを突き刺した。
「!!」
ブライアンは、解毒剤を打たれた瞬間――大きく目を見開いた。 彼の動きが止まると、巨大な目玉や触手、腹の巨大な口が、砂のように消えていった。
元の姿に戻ったブライアンは、気を失い、倒れそうになったところをディーンが受け止めた。
ディーンは、1つため息をつくと、腕の触手に語りかけた。
「お前がいなかったらと思うと……ゾッとするよ。 ありがとうな」
『………』
花のように開いた目玉は、ゆっくりと頷くと、数本の触手を出し、ディーンの頬や手を優しく撫でていたのであった。
END