「ん……?」
ブライアンは、ゆっくりと目を見開いた。 最初に見えた白い天井。 白い天井といえば…とそこまで考えたところで、悲鳴をあげて飛び起きた。
「あ、あれ……?」
(元に戻ってる……?)
震えた両手を信じられない目で見つめていたが、その次は、点滴の袋がぶら下がっているのを見えた。 大きく肥大していた腕は、元の大きさに戻っている。何が起こっているか分からず、ブライアンが混乱していた時だった。
「気が付いたか?」
「うわぁ!?」
「…………」
「あ、なんだ……人か……びっくりした……」
「いや。 驚いたのは、こっちなんだが?」
「……えっと……ごめんなさい」
カーテンが静かに開くと、ディーンが入ってきた。 突然人が入ってきたことに驚いたブライアンは、思わず大きな声を出してしまった。 明らかに怒らせてしまったことに、ブライアンは素直に謝った。 ディーンは、ため息をつくと、適当な位置に椅子を持ってくると、ブライアンに話しけてきた。
「初対面だったな。 俺は、ディーン。 ディーン=グレイソンだ」
ディーンが片手を差し出すと、ブライアンは勢いよくその手を握り締めながら、言った。
「ブライアンです!! あ、あの……なんとお礼を言ったらいいか……!!」
「……俺は何もしてない。 あんたのほうが、大変だっただろ?」
「…は、はい……」
「…どこまで覚えてる?」
「ど、どこまでって言われても……」
先ほどの威勢の良さはどこに行ったのか。 ブライアンは、ディーンの質問に目線を彷徨わせ、言葉を探しているようだった。 自然と手が離れると、ブライアンは顔を下に向けながら、呟くように言った。
「…あの仕事を引き受けた時は……あんな事になるなんて…思わなかったんです」
「……だろうな。 感染者の襲撃は、どうやって、潜り抜けたんだ?」
「どうやってって言われても……あの時は、その……無我夢中で……何が起こってるかも分からなかったし……とにかく……何とかしなきゃ死ぬと思ったから……」
「…なるほど。 そもそもの話に戻るんだが……何故ラクーンシティ総合病院に届ける荷物を引き受けようと思ったんだ? あんたの住んでるところからはかなり離れていたんだろう?」
「そ、それは...」
「それは?」
「......報酬が2倍って言われたから...引き受けたんだ」
「......そういうことか」
ディーンは思わず、頭が痛くなった。 だが、ブライアンの立場や境遇、給料のことを考えれば......あの荷物の配達を引き受けたのも仕方ないといえば仕方なかったのだと無理やり自分を納得させた。
どことなくきまずい雰囲気が2人の間に流れると、ディーンは、軽く咳払いをしてから言った。
「...話を変える。 あんたの服は、そこのタンスにしまってある。 あとあんたのスマホは、運んでいる時に落ちそうになったから、俺が回収しておいた」
「あ、ありがとう...!!」
スマホを受け取ったブライアンは、安堵の息をつきながら言った。
「よかった……これでミシェルに連絡できる……」
「……ブライアン」
「なに?」
――ブライアンが、ふと顔をあげると...ディーンは、自分をしっかりと見つめながら、言った。
「…俺も人のことは言えた義理じゃないし……完璧じゃないかもしれない。 でもこれだけは言える。
ミシェルさんに……お前の思ってる事の全てを伝えるんだ」
「―――」
ディーンの言葉に、ブライアンは言葉を失い、大きく目を見開いた。
「大人になることに臆病になってもいい。 逃げてもいい。
だが……大切な人に自分の思いを伝えないまま、会えなくなるのは……あまりにも、悲しすぎるだろう? 」
「……う、うん……」
「…ミシェルさんのことが……大切なら、まずは、ゆっくりと2人で話し合うんだ。 誠心誠意伝えれば……彼女もわかってくれるさ」
「……ありがとう。 君のおかげで……勇気が湧いたよ。 ちゃんと……ミシェルに伝えるよ。 応援してくれるかい?」
「ああ。 応援するよ」
地下駐車場での出来事を思い出したのか。
ブライアンは、泣きながらも、ディーンを見つめながら、何度も頷いた。 ディーンは、微笑すると、ブライアンの肩を軽く叩いて、部屋を後にしたのであった。
END