―――数日が経った。今のところ何も変わった様子はない。今のところは、だが。例の如く藍染や市丸の霊力を感知しながら瀞霊廷の巡回警備にあたる。市丸に動きがあった。方角は西の端、白道門、それと同時に死神ではない変わった霊力を感知した。急いで現場へ急行した。
「あァ こらあかん。」
市丸の斬魄刀が門番らしきデカブツの片腕を斬り落とす――――前に閻魔刀の鞘で弾き飛ばした。そのまま壁が抉れる。
「何も腕を斬り落とすことはあるまい。それで…何故門番が門を開けている?」
「おらは負けたんだ。門番が負けたら門を開けるのは当たりめえのことだべ…⁉」
「貴様如きが負けた程度で門を開けたら侵入者は入りたい放題だろうが。図に乗るな。門番なら死ぬまで役目を果たせ。」
オレンジ髪の小僧が斬りかかって来たのでベオウルフの裏拳で吹っ飛ばして外に出す。
「貴様ら如きでは俺の相手にならん。腕を上げて出直してこい。死にたくなければな。」
黒い猫を睨んだ後、後ろ回し蹴りで門番もブッ飛ばして外に出す。門が閉じる。
「バイバ~イ。」
などと相変わらずのニヤケ面で侵入者共に分かれを告げる市丸。
「……奴らは何者だ?」
「さあ? 大方、朽木ルキアちゃんを助けに遥々現世からやってきた人間ちゃいますの? それにしても…あんさんとは話が合いそうで安心したわ。門番を吹っ飛ばしてなかったらボクが殺しとったところですわ。非情なのか優しいのかよくわからん性格しとりますまなあ。侵入者皆殺しにしなくて良かったんですの?」
「人間を殺すのが死神の仕事ではあるまい。だから見逃した。」
「はあぁ…こらあ困った。後で呼び出し食ろうても知りませんよ?」
「お前に言われるまでもない。」
一旦八番隊隊長室を訪れた。
「帰ったぞ。」
「おかえり、聞いたよ。旅禍…侵入者逃がしちゃったんだって? 山じいから呼び出されたよ。『バージル連れてこい』って。」
「情報が早いな。では、行くとするか。」
京楽と共に一番隊隊長兼総隊長室を訪れた。扉が開いたので中へ入った。11人の隊長が二列に分かれて立っており、その中央にたぶん総隊長だろう死神が座っていた。
「用件は何だ?」
「てめえバージル、市丸と一緒に旅禍と遊んでたらしいじゃねえか。それに逃がしちまっただと?どういうつもりだ?」
「気安く呼ぶな。死神が人間を殺すのは重罪だと聞いたが違うのか?」
「それは無関係の人間の話だヨ。侵入者となれば話が違う。君はいつから指示待ち人間になったのだネ?」
「知った風な口をきくな。俺は第三席だ。指示を待つのは当然だろうが。」
「うるせえぞ涅、今俺が喋ってんだ。割り込むんじゃねえ、斬られてえのか?」
「何ですと?」
「始まったよ。馬鹿親父の馬鹿喧嘩が。」
「……くだらぬ。」
生意気そうな小僧と小娘の愚痴が聞こえたが一応上司なので黙っておくことにした。
「やめんかみっともない! じゃが、お主が呼ばれた件は概ね伝わったかのう。今回の単独行動、そして標的を取り逃がすと言う失態、どうじゃ? なんぞ弁明でもあるかのうバージルや。」
「……これは驚いた。あんな弱者の集団が標的とはな。だから奴らには忠告しておいた。『貴様ら如きでは俺の相手にならん。腕を上げて出直してこい。死にたくなければな。』とな。それでも敗れる死神がいたとしたら顔を見てみたいものだ。なあ、総隊長どの。」
険悪な雰囲気になる。総隊長と睨み合う。真魔人化する準備はいつでも出来ている。通常の魔人化の時と同じような稲妻の如し迸りが俺の周囲に発生する。
「……皆が皆、お前ほど強くはない。そこは分かってくれてやれんか?」
「……分かった。では次からは人間といえども始末していいんだな?」
「よい。」
「では話は終わりだ。俺は帰る。」
背中に一斉に視線を浴びながら部屋を出た。隊舎へ戻る道中、声を掛けられた。
「おい、バージル…っていったか。話がある。」
「お前は…さっきいた隊長のひとりか。何の用だ?」
「ついてこい。」
ついていった。十番隊隊長室まで。
「市丸についてどう思う。」
「藍染の協力者、それだけだ。」
「何⁉ どういうことだ⁉」
「お前は信用できるのか? 行動によってはお前も殺すことになる。」
睨み合う。
「ああ、信用していい。」
「……約100年前の魂魄消失事件の事をどこまで知っている?」
「当時の九番隊がほぼ壊滅状態になり生存者の多くが虚化し、首謀者は浦原喜助という男だと…聞いた。」
「それは偽装で首謀者は藍染、そして協力者は市丸と5感を奪う謎の死神が黒幕だ。現世に隠れ住んでいる犠牲者に会って直接話を聞いた。浦原曰く藍染には幻覚、催眠能力があるようだ。他人を藍染に見せかけて自ら事件を起こしたのだろう。お前も藍染の斬魄刀の能力を見たのか?」
「……ああ。」
「ならば手遅れだな。例え藍染の死体が発見されてもそいつは別人だ。そしてどこかに隠れ潜んで朽木ルキアの処刑を待っている。」
それから崩玉のことは伏せて彼女と浦原の事情を説明した。ついでに中央四十六室が全滅しているであろうことも説明した。
「そんな…⁉ どうすればいい…⁉」
「とりあえず藍染を疑うような仕草はするな。下手すれば俺に罪を被せられる。侵入者も見逃したしな。それより…五番隊の副隊長はどうなんだ? 信用できるのか?」
「雛森は…心から藍染を信頼している。心酔と言ってもいい…。」
「利用し尽くされた挙句に用済みになって殺されないように見張っておくんだな。」
「ああ…忠告感謝する。俺も気をつける。」
「失礼しまーす! あれ⁉ バージル…だよね⁉ こんな所で何してるの⁉ さあさあお姉さんと出かけよう⁉ 隊長、失礼しまーす!」
「おい松本⁉ 今取り込み中だ⁉ おい松本――――。」
手を引かれるまま居酒屋に連れていかれた。
「金なら持ってないぞ。死神になって1週間そこらだからな。」
「そんなの気にしなくていいの⁉ 卍解習得祝いよ⁉ お姉さんが奢ってあげるから好きなだけ飲んじゃって⁉」
「こんな真っ昼間からいいのか? 隊長を放っておいて?」
「いいのいいの⁉ さあさあグイっと行こう⁉」
松本に勧められるがままに酒を飲んだ。初めて飲んだが美味かった。ついつい酒が進んだ。
「ねえバージル…。私って女性としてどう?」
「顔立ちも髪も美しくて体つきも肉付きが良くて魅力的だと思うぞ。」
「そう…良かった…⁉ さあもっと飲んで…⁉」
「ああ、いただこう。」
目が覚める。ここは…どこだろうか。起き上がって周囲を見渡す。どこかの隊舎だろうか。
「はあ――サッパリした。あ、バージル、起きた?」
「ここはどこだ?」
「十番隊の副官室。ここまで運ぶの大変だったんだからね。」
「それは済まなかったな。では帰るとしよう。」
「待って。」
抱きしめられた。風呂上りの女性特有のいい匂いがする。豊満な胸を押し付けられる。興奮する。
「ひと目見た時から気になってたの。貴方の精を私にちょうだい。」
「身籠ったらどうする?」
「大丈夫、今日は平気な日だから。だから遠慮なんかしないで抱いて…⁉」
彼女が全裸になる。卯ノ花に劣らず美しく魅力的な肉体をしていた。引き寄せられるように唇を重ねる。余すことなく彼女の体を味わった。寝る間も惜しんで体を求めた。気づけば朝になっていた。女性の悲鳴が聞こえた気がした。急いで着替えて窓から飛び降り霊力を感知しながら現場へ向かった。
少女と青年の叫び声が聞こえた。少女の斬魄刀から火球が放たれる。流星脚で弾き飛ばした。
「何事だ。」
「邪魔しないでよ⁉ 藍染隊長が…⁉ 藍染隊長が⁉」
少女の目線の方向に目を向ける。ひと際高い建物の壁に死体が串刺しに磔にされている。尤も、全くの別人だが。
「どいて⁉」
「落ち着け。」
「弾け⁉『飛梅』」
少女の斬魄刀を握ったまま爆発する。肘から先が千切れ飛ぶ。苦痛は感じなかった。すぐに再生する。
「あ、ああ…⁉」
「落ち着け。」
少女を睨みながら忠告を続けた。
「バージルの言う通りだ。落ち着け雛森。」
「日番谷くん…⁉」
「雛森! 剣で殺り合ってる場合かよ! 藍染隊長をあそこから下ろしてやるのが先なんじゃねえのか? 総隊長への報告は俺がする。そいつらは拘置だ。連れていけ。」
青年と雛森とかいう少女が連れていかれる。傍に立っている相変わらず満面のニヤケ面をした市丸を睨みながら。
「市丸…てめえ雛森を殺そうとしたな。」
「はて…何のことやら…?」
「今のうちに言っとくぜ。雛森に血ぃ流させたら俺がお前を殺す。」
「そら怖い。悪い奴が近づかんように見張っときなあきませんなあ。」
旅禍再侵入の警報が打ち鳴らされる。それよりも早く藍染を殺したくてしょうがなかった。
「……で? あの死体は誰だったんだ?」
「知らん。見たこともない奴だった。隊員に行方不明者はいないのか?」
「そんな報告はない。」
「ならば流魂街から拾ってきた誰かだろう。」
「そうか…遂に動いたか、藍染が。」
「お前たちにはあいつがどう見えた?」
「どう見ても藍染だった。そうだよな、松本?」
「はい。」
「そうか、どうやら隊長、副隊長格は全員術中に嵌まってるのが確認できた。お前たちは気づかないフリをしていろ。いずれまた動き出す。」
「そういえば…藍染隊長の部屋にあった置手紙を雛森副隊長に渡しました…!」
「全く…信頼されている部下を使って引っ掻き回すつもりだな。悪趣味な奴だ。松本、牢屋へ案内しろ。日番谷は市丸を追え。」
「分かった。」
松本と一緒に隊長室を出る。耳元で囁かれる。
「昨日の夜から朝まで最高に気持ちよかった! 今日もよろしくね!」
「あんなにしたのにお前もタフだな。」
「お前『も』って何よ。まるで他の女も抱いたみたいじゃない。」
「四番隊隊長卯ノ花烈を知ってるか? 彼女も抱いた。2~3日連続でな。」
「えっ⁉ 卯ノ花隊長も⁉ どういう関係なの⁉」
「俺の鍛錬に付き合ってくれた。おかげで卍解を習得出来た。まあ…その縁だな。」
「そっか…そうだよね…。あんたみたいな良い男、周りが放っておかないよね…。」
「お前だって良い女だぞ。」
「ふふっ、嬉しい! 卯ノ花隊長と付き合ってるわけじゃないんでしょ?」
「ああ。」
「じゃあ今日もよろしくね!」
「暇があったらな。」
松本…名前は乱菊と聞いた。乱菊の案内で牢屋に着いたが看守は眠っていて雛森は壁に穴を開けて脱獄済みだった。ついでに三番隊の青年が収監されているはずの牢屋も鍵が開いていた。集中して霊力を探る。日番谷、市丸と青年、雛森が同じ場所に向かっている。また面倒な展開になると思い、乱菊を抱えて瞬歩とトリック系の瞬間移動スキルを駆使して現場へ向かった。
日番谷が市丸を鎖で拘束する。至近距離から市丸が斬魄刀の刀身を伸ばす。かろうじて日番谷が避ける。しかし剣先は倒れている雛森に突き刺さる――――前にベオウルフの具足で蹴っ飛ばした。乱菊を下ろしてから市丸と向かい合う。
「倒れている少女に追い打ちをかけるとは死神の風上にも置けん奴だ。藍染も貴様も気に食わん。」
「死神に少女も老人も関係ないですやろ。おかしなこと言いはりますなあ。そもそも藍染隊長が遺書まで残して敵討ちを頼んだんでっせ。十番隊隊長さんが犯人だそうですわ。」
「藍染はどこだ?」
「死にましたやろ。死体安置所やないですか?」
「3度は言わん。藍染はどこだ?」
「せやから死にましたやろって。」
「じゃあ死ね。」
真魔人化する。
「バージル⁉ 止めて⁉ ギン⁉ 逃げて⁉」
涙を流す乱菊にしがみつかれる。振りほどこうと思えばいくらでも出来るはずだったが乱菊の必死な様子を見ているとそんな気も起きなかった。いつの間にか市丸たちは消えていた。真魔人化を解く。ため息をついた。
「知り合いか?」
「……流魂街で飢え死に寸前だったところを干し柿食べさせてもらって以来の…幼馴染…。」
「雛森を守ってくれてありがとうな、バージル。」
「助けられる命を助けただけだ、礼には及ばん。それより雛森はどうする?」
「……とりあえず四番隊隊舎へ連れていって治療してもらう。」
「俺が運んでやろうか?」
「いや…俺が運ぶ。」
「ではまた何かあったら連絡をくれ。」
「ああ…ありがとうよ…。」
立ち去ろうとしたところに乱菊に腕を掴まれる。そして…
「お詫びがしたいの。十番隊隊舎まで一緒に来て。」
と囁かれた。つまりは…そういうことなのだろう。乱菊を抱えて瞬歩で隊舎へ向かった。忍び込むように入って風呂に入らせてもらった。副官室で乱菊が風呂から上がるのを待った。扉が開く。
「さっきはごめん…。バージルの邪魔して。」
「お前にはお前の事情があるのは分かった。だが必要とあらば奴も殺すぞ。それだけの覚悟はしておけ。」
「うん…分かった…。お詫びに気持ちよくしてあげる…。」
それからは乱菊にされるがままだった。今までで最高の快楽を得た気がする。夜通しで彼女の体を貪った。朝まで続いた。昨日と同じくぐったりと眠り込んでいる乱菊を寝かしといてそっと隊舎を出た。朽木ルキアの処刑執行が後3日後に決まったのは八番隊隊舎へ戻ってからだった。