加速馬鹿はやがて最強へ至る 作:待雪草
「速さは正義!!最強!!絶対無敵なんや!!」
そうや……今まで誰も俺の速度には反応できんかった!!
一歩踏み込むたびに俺の身体は、凄まじい速度で押し上げられ世界がまた一歩、遅れていく。
「これや!!この速さに俺以外の誰がついてこれる言うんや!!」
俺にこの力を授けた世界ですら追随できず、愚かにも俺を潰そうとする空気すら俺の動きに合わせて世界を壊すだけや!!
「この俺を差し置いて、最強とは笑わせてくれるで!!」
「……あっそ」
俺の動きに全くついてこれてへんのに、何を粋がってるんやこの女ァ!!
全く、なーにが『稀代の天災』や!!『人類最恐』や!!
所詮はこの俺と競い合うことすらできん、愚鈍な女やないか!!
「これでぇぇぇぇ!!」
トップスピードに乗ったで!!
このまま、後ろからド頭ぶん殴って俺の一撃KO勝ち──あ?
「……はい。終わり」
「なんでや……なんで俺がテメェに叩き伏せられてるんやぁぁ!?」
「理由、教える必要ある?」
「何言って……ガバッ!?」
な、なんやこれぇ……トップスピードのまま、全く速度を落とさんと無理やり止まった時みたいな息苦しさと反動がぁぁぁ!!
「クソがァァ……女ァ、停めやがったなぁ!!」
「貴方のギフテッドは加速。なら勝てる訳がないでしょ」
見下すんじゃねぇぇ……俺は最強なんや!!
「私のギフテッドは時間停止……貴方も所詮、世界のルールを破れない」
ゴミを見るような目で見るなや。
この俺を……ギルバート・メテオリックを下に見るんじゃねぇ!!
「……あと、女って呼び方はやめて。私にはカグヤ・ゲツエイってちゃんとした名前がある」
今すぐにでもその無表情を、ぶん殴ってやりたいが……クソ、世界が暗くな……て……
『ギフテッド』──大体、思春期を迎える頃に目覚めるモンは、目覚める。
まぁ、特殊な才能みたいなもんやな。
人はここで先ず、一つ目のふるいにかけられる、ギフテッドに目覚めるか目覚めないかや。
残酷な話とは思うで?なにせ、そこまでどれだけ優れていようともギフテッドに目覚めなきゃ、どんなに頑張っても周りより劣った人生が確約されるんやからな。
例えばや、ギフテッドに目覚める前に勉学が得意だった奴が居たとする。
そいつはちゃんと予習や復習を重ねて勉強が得意という地位を確立してる訳やが、ここでギフテッド……そうやな『完全記憶』とかに目覚めた一度も勉強していない奴が現れれば一気に逆転や。
完全記憶のギフテッドを持つ奴はペラペラと教科書を捲るだけで、簡単に覚えてしまう。
まぁ、そっから応用とかの話もあるがギフテッドに目覚めると関係する才能まで引き上げられるからどうせ、勝手に応用まで利くようになるんや。
ほんま残酷やで。
そうやって目覚めたギフテッドも、同じ系統で自分より上の奴がおるんやからな。
完全記憶の上が何になるかは知らんが、まぁ全知とかか?もはや教科書を捲る必要もなくこの世の真理が勝手に頭に入ってるみたいな。
「なぁ、そんなに怒るなってギルバート。ゲツエイ先輩が強いのは分かりきっていた事だろ?」
「あぁ!?怒ってないわ!!納得できてへんだけや!!」
「同じだろそれ……」
せやから俺が負けたんは、そういう残酷な世界だったつう訳やな──って、矛を鎮められる訳ないやろがい!!
「俺は最強なんや!!今までずっと、俺が追い越せん奴はなかった!!最恐の停止能力だろうがなんだろうが俺の速度でぶっちぎれる筈なんや!!」
あぁ、思い出すだけでも腑が煮え繰り返るでほんま!!
カグヤとかいう女が俺を見下ろす無価値で、真っ黒な瞳……あれは間違いなくこの俺を道端に転がっている石かなんかやと思ってる目や!!
「あのなぁあの人は俺達、ギフテッド持ちが集まるこの学園の中でも歴代最高と呼ばれる程のギフテッド持ちなんだぞ。公式記録じゃ、国の正規騎士団相手に一人で勝ち、去年起きた魔物の大繁殖の時も二万以上の魔物の群れを返り血すら浴びずに壊滅させた凄い人なんだ」
「知ってるわボケ!!そんで涼しい顔して、呼吸の一つも乱れてない姿に恐怖した騎士が最恐とか天災とか言い出したんやろ。けっ、仮にも俺らの大先輩が情けないこっちゃ!!」
「一撃で負けたのはお前もだろう」
「あぁん?なんか言ったかお前……つか、誰や?」
なんか自然と話しかけてきおったからついつい話してたが、誰やこいつ。
趣味の悪い髪型やのぅ……全部、逆立ててツンツンの針山みたいになっとるやんけ、そんで顔は馬鹿真面目の委員長ですみたいな雰囲気しててチグハグやねんお前。
「そこからか。クラスメート、しかも隣の席なんだから今度はしっかり覚えてくれ。俺はアイン・アイアン、ギフテッドは『甲鉄』で全身をガチガチの金属にすることができる」
「……地味やな」
「派手さはないのは自覚してるから言うな」
ギフテッドまでチグハグとか、なんやねんこいつ。
まぁ、強度がどんなもんか知らんけどその辺の剣とかより硬いなら、非ギフテッドの連中が束になっても勝てん分かりやすい力やな。
「それに」
「あん?」
なんや人を煽るみたいなその目は。
「俺の硬さはお前を受け止め切るかもしれない……そう思えば俺の事も覚えられるんじゃないか?」
「へぇ……言ってくれるやんけ。昨日の今日だが、一戦するか?俺はいつでもええで」
これだからギフテッド持ちが集まる此処に来た甲斐があるってもんや。
どいつもこいつも自分が特別だっつう自負が大なり小なりある、せやからこうやって競い合う機会が多いのは望み通りやで。
「あぁ。俺も挑戦はいくらでも構わない──だが、今は大人しく座っておこう」
「あぁ?なんやここで日和るんか?かーっ、つまらんのぅ!!」
「いや違う。これから授業の時間だからだ」
「あ?」
「──そういうことだ。とっとと座れ入学早々に決闘とかいう面倒事を起こした問題児筆頭メテオリック」
「ごっ!?!?」
なんやなんか叩きつけられた!?って、出席簿やないか!!
良いんか?教師が暴力とか!!
「全く……ギフテッド持ちだからと驕り高ぶるのはやめておけ。どれだけ優れた力があっても扱う人間次第では宝の持ち腐れだ」
人の頭をスコンっと叩いて教卓の前に立つ女、明らかに戦い慣れてる奴やな。
気配ちゅうか、足音がほとんど聞こえん無駄のない足使いと体重移動や。
「君達の一年間を担当することになったセイレス・シャイングだ。主に基礎戦闘学とサバイバル術を担当する──ようこそ、優等生諸君。ここが君達の初めの一歩となるギフテッド専門学園『ネクスト』だ」
ほぅ、やっぱり戦闘に長けてる教師か!!なら都合がええわ!!
今の俺があの女に足りんのは癪だが、認めてやる……せやけど、絶対にこの手で超えてやるからな!!
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