加速馬鹿はやがて最強へ至る 作:待雪草
「あー……クッソ疲れた一日やったでほんま!!こういう日は風を浴びるに限るわ」
屋上がいつでも入れるようになってて感謝やわ。
程よく日が落ちて、日中の熱気の名残とこれからやってくる夜の涼しさが混在している風はやっぱ、高いところで存分に浴びるに限るからなぁ。
「アインと戦えたんは楽しかったが、そっからがあかんでほんま。あのセンセイ、ほんとに俺らを砂の上で正座させたまま講義を続けるんやもんな。おかげで足がまた痛い気がするわ」
まぁ、そりゃアインをぶん殴って窓をぶち破ったことは反省するわ。
テンションが上がってたとは言え、誰が悪いって言えば俺やからな……せやけど、その後の荒れたグラウンドの整備はちゃうやろ!!アンタが戦えって言ったんちゃうかって!!
『いいか、メテオリック。私はお前の速さを捨てろと言っているわけじゃない。それ一つだけではいずれ限界が来ると言っているんだ』
「……んな訳ないやろ。今の俺が遅いだけや!!」
嫌なもん思い出したわ。
俺らの戦いを見てセンセイは、良い点と悪い点を評価してくれたんはありがたいが最後に言われたことだけは納得できん!!
「二回負けても変わらないのね。君は」
「あ?……って、カグヤ・ゲツエイ!?なんでこんな所におるんや!?」
つか、いつの間に来よった!?
入り口が開いた音は聞こえへんはずやけど……まさかこいつ、ただの移動すらギフテッドを使って来たんか!?
「なんでフルネーム」
「いや、仲良くないやろ俺ら」
「……それは確かに。でもいちいちフルネームだと疲れるからカグヤで良い」
「それはそれでハードル高いんやけど」
「なんで?」
距離感バグってるんかこいつぅ!!
普通、いきなり年上を名前で呼べる訳ないやろが!!それに俺からしたら完膚なきまで負けた相手なんやぞ、こうして面と向かって話してるだけでも良い方やろが!!
「……君アレだね。怖い顔だと思ってたけど、コロコロ変わるから飽きない」
「そういうアンタはずっと無表情やな。表情筋が凝り固まってしゃーないんとちゃうの?」
なんで隣に立ってるんかは知らんが、辛気臭い顔やな。
昔見た人形並みに綺麗で整ってる分、真っ黒な瞳が不気味やし髪も長くて重苦しいわ……切れ長言うんか?それは雰囲気と合っていて色っぽいとは思うが。
「って、俺は何を考えてるんや……」
「退屈だからね。この世界は」
「あん?」
俺の独り言は聞こえてなかったみたいやが、今、なんて言ったこいつ?
「……退屈って言うたか?」
「言ったよ。だってそうでしょ──誰も私の世界には存在しない」
「ッッ!?」
こいつ、いつの間に俺の後ろに!?
いや、そうか……時間停止のギフテッドで回り込んだんやな、無駄な説明をせず、簡単に俺に分からせるために。
「見てたよ。昼間、君はお友達と戦って随分と楽しそうだったね」
「……見てたんか」
「あれだけ音を出せば気になるよ。まぁ、結果は残念だったみたいだけど」
「チッ」
「シャイング先生も言ってたけど、君の速さは確かに凄いよ。でも、私には通じない。あのお友達にも受け流された……それで本当に最強って言えるの?」
人の神経を逆撫ですることをまぁ、ペラペラと言いたい放題言ってくれるやんけ!!
あかん、苛立ちで頬が引き攣ってピクピクしてきたわ……どうせぶん殴れんけど、今ここでこの女をぶん殴ってもええか?
「……あかん。あかんでそれはこの女の言い分を認めるだけや」
「?」
「可愛らしく小首を傾げてももう騙されんで。カグヤ、ほんまに癪だが確かに今の俺は最強には程遠いわ」
「意外。てっきり認めないものだと」
そう思うんやったら少しはそれっぽい声と表情を浮かべてみぃ!!
「けどな、それは俺の速度がアンタに勝てへん理由にはならん」
「……矛盾してない?」
「しとらん。今の俺が遅いだけや。俺のギフテッドは加速……つまり、俺が諦めん限り、止まらん限りどこまでもいけるギフテッドや!!」
センセイも、アインもカグヤもごちゃごちゃとうるさいねん!!
自分が井の中の蛙やったことは今日だけで十分理解したわ!!なら、今の俺以上になれるように明日の俺が全力を出し続けるだけの話や!!
「今もう一度、ここで改めてアンタに宣言したるわ!!速さは正義!!最強!!絶対無敵なんや!!」
「……私の時間停止の前ではありとあらゆる現象が停止する。それは君も同じ」
「関係ない言うたやろ!!」
アンタの能力がどれだけ強いかは体感したからよく知っとる。
負けたあの瞬間、何が起きたのか全く分からんかった……アインの時以上に無理矢理に止められた反動で心臓が馬鹿みたいに苦しかったから、何が起きたのか、数秒遅れて理解したぐらいやからな。
でも、そんなもん関係ないわ。
「決めたで。アンタの無敵の時間停止を俺の加速がぶち破る!!そんで、もう二度と退屈とは言わせへん!!誰も自分の世界に居ないと言うなら、この俺が!!ギルバート・メテオリックがアンタをぶち抜いてこの背中を見せつけたるわ!!」
元々、最強になるんが俺の夢やった。
ギフテッドに目覚めるまで何もなかった俺が手に入れたこの力を見せびらかすために!!
──なら、ちょうどいいやんけ!!超えるべき壁が明確っつうのは。
「……随分と大きく出たね。君が私の世界をぶち破る?一度、負けてるのに?」
「そうや。むしろ負けたからこそ俺は熱く燃えてるで!!」
「そう」
まるで俺の背中を押すように強い風が吹き、カグヤの髪を持ち上げる。
気のせいかもしれん──気のせいかもしれんが、ずっと無表情だった口元がほんの僅かに笑っとる様に見えたんや。
「なら、待ってるよ。その日が来るまで」
次の瞬間には無表情に戻ってたからほんまに気のせいやったかもしれんな。
「すぐに追いついたるから覚悟しとけや。カグヤ」
今度は返事も何もなく瞬きをした瞬間、カグヤは消えていた。
なんやねん……ずっとアイツのペースだった気がするわ。
まぁ、お陰様でこの学校でやるべきこと、目標をしっかりと据えられた訳やしまた明日から全力で走って行くで!!
「……ん?そういや結局、何しに来たんや?」
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