加速馬鹿はやがて最強へ至る 作:待雪草
魔法……魔物が使う俺ら人間で言うギフテッドみたいなもんやったな。
頭の良い連中が解明に全力を費やしているらしいが、ギフテッドと同じで由来は全くの不明で動物や無機物問わず、魔法に目覚めた瞬間、魔物として他の生命に強い敵意を向け始めるとかなんとか。
「ぶっちゃけ、害獣よなお前らは!!」
『カタカタカタ』
木が火の魔法に目覚めるとか意味分からんやろ普通!!
カタカタカタと不気味に身体を震わせて、キショいねんお前!!真後ろからの不意打ちならともかく、この俺が真正面から飛んできた火の矢を避けれん訳ないやろが!!
「ふっ!!」
折角の加速を殺さずに、体重移動のみで身体を右へズラし真正面から素直に飛んできた火の矢を避ける。
俺とマジカルウッドの距離は大体、20m前後ってところか?
最高速度を維持出来れば、一秒も経たんうちに詰め寄る事が出来る距離やな。
『カタカタカタ』
「はっ、だからおせぇ──は?」
火の矢が放たれ、ポンっと密閉していたビンのコルクを引き抜いた時のような音がした瞬間、一本しかなかった矢が二本に増えおった。
しかもそれだけじゃあらへん、ポンっと音が鳴る度に二本が四本に、四本が八本に……瞬く間に視界を火の矢が覆い尽くした。
「うぉぉぉっ!?」
そないな芸当もできたんかお前!!
火の壁……いや、雨やなこれは流石に呆気に取られて避けるのが遅れてしもうたわ。
「まっ、俺を撃ち抜くには遅いんやけどな」
一旦、速度を殺してしまう事にはなってしまうが仕方ない。
すぐ近くにあった木へ飛び込んで壁にすれば、流石は大きな木やで燃え盛る事なく火の矢を受け止めてくれたわ。
「……って、あかんわ。後ろにはサトリがおった!!おーい、生きとるかサトリー!!」
最短距離を駆け抜けたせいで、ほぼ俺とサトリの軸は変わっておらんかったわ。
俺は避けるのが間に合ったけど、後ろで群れと戦ってるサトリは最悪間に合っとらんぞ。
「マジカルウッドを盾にしたから生きてるよ!!でも、次はどうなるか分かんない!!」
「器用やなサトリ!!しゃーない、少しだけ遠回りしたるわ!!」
「速く倒してよ!!」
「誰に言ってるんや誰に!!」
俺がすっトロいわけないやろが!!
面倒やけど後ろのサトリを巻き込まん様にするにはこの木から回り込む様にしてボス個体を狙うしかない。
火の矢の魔法、そんで乱立する木々……まっ、これなら加速も活かして上手く立ち回れるやろ。
「おーい!!こっちやで」
『カタカタカタ』
「はっ!!」
あいつは魔法を使う際、必ずと言って良いほど身体を不気味に揺らす。
突然、撃ってくる事が無いなら発射タイミングを合わせて次の木へと移動することは俺の速度をもってすれば簡単や!!
「しっ!!」
『カタカタカタ』
ちゃんと俺を狙ってるのか、カタカタカタと揺れ動く度に一発ずつ火の矢が木から木へ移動する俺へと飛んでくるが、遅い遅い。
お前が狙いを定めて撃つ頃にはもう俺は次の木へ移動済みや。
「どしたん?群れのアタマ張ってる割には狙いが甘いんちゃうか?」
『カタカタカタ』
「だから遅いって」
奴の方へ飛び込む様に火の矢を避ける──残念や、もうサトリは俺の後ろにおらんで、綺麗に反対側まで回ってきたからな。
「ふん!!」
十分に速度を乗せた拳をガラ空きになってる脇腹かどうかは分からへんが、その辺りへぶち込む。
当たり前っちゃ、当たり前だけど木の幹ぶん殴ったみたいな手応えやな。
「まっ、それでもアインよりは柔らかいでお前!!」
『カタカタカタ!!』
「おっと!!肉弾戦も出来るんか?」
剣というよりは槍やなその鋭い腕は。
真下から不意を突いて、突き刺そうとするんは悪くないがちょいと腕の動きが露骨すぎやで。
「もう魔法は店じまいか?」
右へ一度、大きく距離を取り今度は速度を乗せた蹴りをぶん殴った場所と同じところへ叩き込み、間髪入れずに走る。
ハハッ!!数秒遅れの風切り音が背後から聞こえたわ!!
「背後からの不意打ちや、部下を嗾けて自分は動かん辺りさてはお前、苦手やろ接近戦」
ダンっと地面ではなく、木を蹴り今までとは違う上からの角度で横へ降り立てば見当違いの場所へと振るわれる腕。
「そないに同じ場所から仕掛けるわけないやろ馬鹿」
奴を視界に入れたまま、後ろへ飛び退き攻撃を避けてから飛び込み三度目の蹴りを同じ場所へ叩き込む──バキッと音が聞こえた。
「ほらな柔らかいわお前」
『カタカタカタ!!!!!』
「遅い!!」
ヒビを入れる事が出来たんなら、もう遠慮はしないで。
お喋りをやめて、近づいては離れて攻撃を透かし、右へ左へ動き回り速度を上げていく。
常に視界に捉え続けているマジカルウッドが完全に俺の動きを捉えられず、ウロウロとした情けない動きをしてから、止まらずの連撃を叩き込む!!
『カタカタカタ!!』
右へ現れ、掌底。
駆け抜ける様に足を払い、浮いたところに踵を落とし速度を殺さん様に前転し加速。
立ち上がる奴の顔面へ右ストレートを叩き込む。
完全にバランスを崩したところへ、何度も木を蹴り高度を上げていく。
「ヒビ割れたところ、アピールしとるんか?可愛いところもあるやんけ」
速く死にたいならこれで終わりにしたるで。
最も高いところから下へ向けて、最高速度で蹴り飛ばせばあっという間に地面や。
『カタカタカタ!!!!!』
ほぅ、自分の根っこを伸ばして盾にするつもりか?
悉く、判断が遅いのぅ!!
最初から自分の身を守りながら戦っていれば少しは展開が違ったかもしれへんけど、今更身を守るなんて遅さ──俺の速さが振り切れん訳ないやろが!!
『カタッ!?!?』
バキンッ!!──乾いた音を響かせ、根っこの守りを潜り抜けた俺の蹴りがヒビ割れた部位に直撃し、綺麗に身体を真っ二つに破壊する。
速度と高さが合わさった一撃、地面に綺麗なクレーターを作る程の威力を受けては流石の魔物もお手上げってわけや。
「じゃあの木偶の坊」
しぶとく逃げ出そうとする頭部を蹴り砕きながら、サトリの方へと駆け出す。
俺はとっとと片付けたぞ、お前はミスっとるなよサトリ。
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