加速馬鹿はやがて最強へ至る 作:待雪草
「はっ、コイツら全部片付けたらお前のギフテッドを教えてもらうでサトリ!!」
うん、そりゃあまぁ気になるよね君としては私がどんな力をしてるかって。
でもなぁ……私、自分のギフテッドあんまり好きじゃないんだよね。
『コロスコロスコロス』
『シジコナイ』
『スキニヤル エイヨウ ウバウ』
『ニク ウマイ』
「……うるさいなぁ」
黒板を引っ掻いてるみたいな不快な音で、単語だけの癖に明確な殺意を伴った複数の声が頭に響きわたって顔をしかめる。
木を掻き分けて次々と現れるマジカルウッドの数を数えてるわけじゃないけど、この雑多な声からして二十体は軽く超えてきてるかな。
「でもまぁ、やっぱり統率はギルバート君に任せた個体しか執ってないみたいだね」
聞こえてくる声は全部、私を獲物として見ていないものでどいつもこいつも周りと連携しようなんてまったく思っていない。
まぁ、こういう連中だって聞こえてたからギルバート君に任せて私がこっちに残ったんだけどね。
「おいで。私がリードしてあげる」
『コロス!!!!!』
ふぅん、一気に襲い掛かったら自分たちの邪魔になるって事ぐらいは分かってるんだね……一番殺意が高かった子が私に突っ込んできてそれを見た二体ぐらいが避けた私を魔法で撃ち抜くと。
「賢いね。狙ってやってるならだけど」
トントンッとステップを踏んで、掘削するみたいに腕を振り下ろしてくるマジカルウッドと軸を合わせ続ける。
たったそれだけで、私を魔法で撃ち抜こうと思っていた子たちは突っ込んできてる子が邪魔で攻撃が出来ない。
『ニク!!ニク!!』
「それは悪手じゃない?」
しゃがんで避ければ、私を背後から狙った奴の腕がそのまま真正面に居た奴に刺さり、正面にいた奴の腕が、背後から仕掛けてきた奴の顔面を砕く。
うるさいけど一々、背後を見なくて良いのがこのギフテッドの利点だよね。
『燃エ尽キロ!!』
「ッッ、あぁもうギルバート君のおバカ!!」
思っていた通り、最速最短で突っ込むから彼が避けた魔法がそのまんま私に飛んできてる!!
賢いせいか、リーダー個体の声は他よりはっきりと聞こえるから同士討ちした奴らの死骸に身を隠すのが間に合ったけど。
「……って、あかんわ。後ろにはサトリがおった!!おーい、生きとるかサトリー!!」
しかも忘れかけてたんだねギルバート君……これはあとで文句の一つぐらい言わないと。
「マジカルウッドを盾にしたから生きてるよ!!でも、次はどうなるか分かんない!!」
「器用やなサトリ!!しゃーない、少しだけ遠回りしたるわ!!」
「速く倒してよ!!」
「誰に言ってるんや誰に!!」
自分を最速最強だって全く疑ってない自信満々、傲岸不遜な君にだよ!!
『速さは正義!!最強!!絶対無敵なんや!!』
入学早々、あのカグヤさんに自信満々に突っ込んでいった大きな背中に賭けてるんだから、私を失望させないでよね。
『ギャァァァア!!』
『アツイ!!アツイ!!』
『モエル モエル!!』
あぁもう……汚い悲鳴を強制的に聞かせないでほしい。
一旦、さっきので私の周りにいた奴らは燃えてるみたいだけど……うん、まだ次々とやってくるよね。
「この数が統率されて襲い掛かってきてたら不味かったかも」
指示が全く出せないぐらいギルバート君に押されてるお陰で、追加で現れた奴らも状況に困惑してる感じだしこれなら少しは楽出来るッッ!?
『シネェェェ!!』
「ッッ、殺意の念が強すぎる」
気圧されるって言うのかな。
頭に叩きつけられた声だけで、身が竦んで反応が遅れたせいで咄嗟に腕で振るわれた木の枝を受け止めたけど凄く痛い。
「戦闘系のギフテッドが羨ましいなぁ……!!」
『キェェェ!!』
右腕を庇いながら、飛び退いて一度距離を作る。
赤くなってる……折れてなきゃ良いんだけど。
『オサレテル』
『チャンス イマ』
『コロセ コロセ コロセ』
私が一撃を受けたのを見たせいで、周りの連中も落ち着いちゃった。
でもまぁ、少しくらいは落ち着いて私を攻撃してくれる方が助かるかな。
「──こうやって、相打ちに出来るし」
こいつらは予備なのかな?
さっきの燃やされる前の連中ならやってこなかった、私を挟み込んでの魔法、避けられなきゃ仕留めるだけの威力はあると思うけど私が一歩でも下がれば放たれた魔法は自分たちにあたる。
『キェェェ!!!!!』
「君は本当にうるさいね」
これだから魔物は嫌なんだ。
人間と違って明確な意図、狙いが聞き取り辛くて私からしたらずっと不愉快な音楽を聴かされている気分になるから。
でもまぁ、こういう魔物は攻撃一辺倒で、周りのことなんて全く考えていない──別に敵は私一人じゃないんだけどね。
「おっ、なんや思っとったより全然元気やなサトリ」/『ミスっとらん様で何よりや』
二重になって聞こえてくる声。
それでも彼は今日までずっと、ほとんど口に出している内容と変わらないから疲れなくて良い。
「……」
「喋ってくれてもええんやで?」/『ほんまに喋らんなぁサトリは』
君もずっと
「まっ、ええわ!!さっきみたいに気をつけるべき事があったら教えてくれや」/『忠告のあるなしだけで助かるしな』
「じゃあ早速、踏んでる奴まだ生きてるよ」
「うおっ!?マジか!!」/『うおっ!?マジか!!』
「ふふっ」
あぁ──本当に楽で良い、だからどうか私のギフテッドを教えても気色悪いって嫌悪に満ちた心で接して来ないで欲しいな。
「右からくる」
「おっけ」
結局、私相手にすら手間取っていたマジカルウッドの群れがギルバート君に勝てるわけもなく、時折、私が気をつけるように言うだけで合計で四十体近くまで増えた群れは一匹残らずへし折られてしまった。
「ふぅ……流石にちょっと疲れたわ」
「お疲れ」
「おう。んじゃ、休憩ついでに教えてくれや。サトリ、お前のギフテッド」
まぁ、そうだよね。
いくら君が速度馬鹿でも都合よく約束は忘れているわけないか。
「……聞きたい?」
「ん、まぁそういう約束やしな。なんや?もしかして言いたくないんか?それなら別にええで」
「ッッ……本当に君は……」
無理して聞く様なもんでもないし……か、どこまでも本心で語ってるんだね。
恐怖はもちろんある……けど、今このタイミングを逃したら私はきっと自分のギフテッドをずっと嫌いなままという自覚がある。
「……ううん。分かった。教えるね私のギフテッドは──」
そうやって、頑張って踏み出した私の第一歩は。
「おや、凄い凄い。あの群れを片付けてしまいますか。これはこれは……未来は希望に満ちていますねぇ」
『男の方は死んでくれると助かったのだがね』
ドス黒いまでの悪意に邪魔をされてしまった……緊張でギフテッドの対象をギルバート君に絞りすぎてたかな、全く声が聞こえてこなかったよ。
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