うちはの忍からボーダー隊員へ   作:zatumozi

9 / 9
9話:入隊式

眼の反動による件から防衛任務や学校も取りやめていたが、ようやく登校もできるようになり、気づけばあっという間に年を越していた。 そして今日新しい隊員たちが、このボーダーへやってくる。

 

「今日は入隊日だね、扉間さん」

 

扉間さんのトリガーの開発室は、半分俺のボーダーで過ごす場所になっている。なので、自分の私物も多く置いてある。

 

「あぁ。今回は遊真の息子が入隊するそうだが、さてどうなるか」

 

入隊者たちの様子をモニターで見つめながら、扉間さんに声をかける。空閑くんはボーダー創設期のメンバーである故人の息子であり、扉間さんも面識があったとか。だからこそ、先日三輪くん達ともあそこまで渡り合えたのだろう。

 

「でも、本当によかったよ。あの時、事を荒立てずに落ち着かせてくれた迅さんには頭が上がらないよ」

 

長期の休養をとっていた俺は、事の顛末をすべて扉間さんから聞かされていた。空閑くんが持つ強力な黒トリガーを巡って、A級部隊が動いたこと。

 

そして、迅さんと嵐山隊と合同でA級部隊を止めて、自身の黒トリガー「風刃」を本部に差し出すという賭けに出たこと。

 

それを手放すことが、彼にとってどれほど重く、どれだけ辛い決断だったか。休んでいた分、今度は俺がもっとしっかりしないとな。任務に完全復帰したら、似たサイドエフェクトを持つ迅さんの助けになるかもしれない。

 

「俺、入隊の子たちを見てくるね」

 

「ランク戦を申し込まれてもやるなよ」

 

「わかってるって。あ、そうだ。玉狛に女の子って入隊する?」

 

「雨取のことか?」

 

三輪隊と交戦中はずっと、眼を使っていた。視界には凄まじいトリオンが見えて、口に出すことはしなかったが、雨取さんもボーダーへ入ったのか気になっていた。

 

「多分そうだと思う。あのこ、三輪くんたちと交戦したときに、凄いトリオン量が見えたから」

 

「なるほどな。書類上にはトリオン量が記載されていなかったが林道の計らいで、派手にデビューさせるためのだろう」

 

玉狛らしいやり方だ。実力はすでに揃っているし、新しい隊員が入隊するなら盛大にやりたがるだろう。

 

入隊初日には仮想近界民を倒す訓練をやるはずだ。モニターを見ると空閑くんの姿が見えた。向こうの世界で育った彼にとって、トリオン兵を倒すことなんて朝飯前だろうから、そっちは結果が見えている。

 

雨取さんの姿が無いから、彼女は狙撃手志望なのだろう。そんなことを考えながら、俺は狙撃手訓練施設へと足を向けた。 歩きながら、ふと、ある嫌な予感が脳裏をよぎる。

 

「待てよ。雨取さんがスナイパーで『アイビス』を使ったら、基地の壁、持つかな?」

 

まずい! ボーダーの基地の壁は高密度トリオンでできているとはいえ、大惨事になりかねない。アイビスは超重量級の狙撃トリガーで、その威力は桁違いだ。あの途方もないトリオン量を乗せられたら、基地に風穴が空くなんて十分にあり得る。 

 

嫌な予感を抱えながら狙撃手訓練所に辿り着くと、正隊員の狙撃手の帽子がトレードマークの荒船さん。

 

かつてA級1位部隊を指揮した東さん、そして広報部隊の佐鳥くんがいた。そして、狙撃台にはすでに雨取さんが『アイビス』を構えている姿があった。

 

「3、2、1」

 

「佐鳥くん、待って!!」

 

俺の必死の制止の声は、無情にも銃口が放つ轟音にかき消された。

 

間に合わなかった。

 

凄まじい衝撃と共に、ボーダーの基地の壁には、まるでレーザービームで撃ち抜かれたかのように綺麗に、そして盛大に一直線の穴が空いていた。

 

「あ、あのその、ごめんなさいっ」

 

雨取さんが真っ青な顔をして振り返る。彼女も、まさか自分の放った一撃がこれほどの規模になるとは把握していなかったのだろう。

 

「失礼、前通るよ」

 

人の波を掻き分けて、間に入る。早くこの件を言わないと雨取さんの不安は無くならないだろうから。

 

「うちは先輩!? お久しぶりじゃないですか!」

 

「佐鳥くん、久しぶり。休み明けだからね」

 

ボーダーを長く休んでいたが分、他の隊員と会うのも久しい。特に嵐山隊のような多忙な広報部隊は、顔を合わせるのは久しぶりだ。話したいのは山々だけど、それは後だ。

 

「雨取さん、壁のことは気にしなくていいから」

 

「で、でも!」

 

彼女は顔は歪ませて、「自分が悪い」と責め立てている。そう思うのは仕方ない。慣れない施設。知らないことが多い中で、トラブルが起きたら不安になる。でも、ここにいる隊員はこれから先の仲間だ。だがら、安心させたい。

 

「ここはトリオンでできているから、大丈夫。問題無く直せるよ。でも、報告はしないとね」

 

雨取さんに事を伝え、ポケットから携帯を取り出そうとした時、訓練所の出入り口の扉が開いた。

 

「遅かったか」

 

頭を抱えた扉間さんの姿に、この惨事を俺と同じように一目で察したのだろうと苦笑する。

 

「佐鳥、来い」

 

「ひっ、扉間さん!」

 

佐鳥くんが青い顔をして扉間さんの元へ寄る。顔が怖いから今にも怒られると思うかもしれないが、そうではないはずだ。

 

「現場監督をしているなら、入隊者のトリオン量くらい事前に把握しておけ。もっとも、今回は玉狛支部経由だったから、お前が把握していないのも仕方ないがな」

 

今回の件は玉狛の計らいが絡んでいるため、頭ごなしに厳しく叱りはしない。扉間さんは佐鳥くんから視線を外し、狙撃台の雨取さんに向き直った。

 

「雨取」

 

「は、はいっ!」

 

「その才能は、ここでしっかりと磨け」

 

扉間よ瞳は優しかった。これら先のボーダーで活躍するであろう未来ある隊員だ。その言葉に雨取さんは不安だった顔はわずかに晴れる。

 

「がんばります!」

 

少しのトラブルはあったものの、扉間さんはテキパキと壁の修復作業の手配を進めていく。

 

「アサギはまだ残るか?」

 

「もう少しいるよ」

 

「そうか、後はまかせるぞ、東」

 

「はい」

 

防衛任務も学校も休み、周りに心配をかけ、いざ戻ってくれば自分の眼のこともあって満足に動けない。戻れた嬉しさの裏側で、ふと自分が「足手まとい」になり始めているのではないかという焦りが出る。

 

「報告が遅れてすみません、東さん」

 

「いや、今回は俺たちの見通しが甘かった責任でもある。そう気にしなくていいさ」

 

東さんは穏やかに笑い飛ばしてくれたが、その優しい眼差しが逆に、今の自分の不甲斐なさを浮き彫りにするようで顔が歪む。ふと、東さんの視線が俺の眼にピタリと止まった。

 

「うちは、そのメガネは……」

 

「少し、視力が落ちてしまって」

 

思わずメガネを指を当てる。ここ数日でだいぶ慣れたはずの黒縁の重みが、今はやけにずっしりと感じられた。こうして人に指摘されるたび、隠しきれない自分の身体の異変と、そこから逃れられない弱さが現実として突きつけられる。

 

俺は、本当にまた戦えるのか?

 

「そうか。休み明けだからと、あまり自分を追い込むなよ」

 

「ありがとうございます、東さん。また防衛任務の際はお世話になります」

 

頭を下げる声音が、我ながら不安になる。これ以上弱みを見せないようにと、慌てて顔を上げた、その時だった。

 

「うちは先輩!」

 

元気な声に呼ばれて振り返ると、そこには息を切らした三雲くんと、その後ろから空閑くんが立っていた。

 

「千佳!」

 

「修くん、優真くん!」

 

二人はどうやらこの騒ぎに駆けつけたらしい。だが、騒ぎは収まっている。入隊初日からこの騒ぎは同じ支部なら心配して当然。この三人を見るにB級に上がってから、チームを組むのは近いだろう。

 

「うちは先輩、お久しぶりです」

 

「久しぶりだね、三雲くん」

 

「もう体調は大丈夫なんですか?」

 

心配そうに覗き込んでくる三雲くんに、軽く手を振る。何せあの時は三雲君には助けられた。先輩として弱一面を見せすぎた。

 

「うん、あの時はありがとうね。それと、空閑くん、入隊おめでとう」

 

「おかげさまでね。あの時は、改めてお礼を言いたかったんだ。ありがとう、うちはセンパイ」

 

空閑くんが嘘偽りのない言葉を聞いて、あの時、彼を守るために動いたことは僅かながら、彼の助けになれたのはよかった。それでも俺の力は微々たる物だ。

 

「俺が勝手にやりたくてやったことだから気にしないでよ。改めて、俺はうちはアサギ。よろしくね」

 

「よろしく、うちはセンパイ」

 

空閑くんに差し出された手を握り返して、一旦お開きになった。さて、入隊式もあらかた終わって、空いた時間は何をしようかと考え込む。そのまま帰宅をしても良いが…と考え込みながら廊下を歩く。

 

「アサギ」

 

かけられた声に振り返ると、きっちりとしたスーツを着こなし、余裕のある笑みを浮かべた男が立っていた。

 

黒髪に、黒く澄んだ瞳。そして、右側の顔に刻まれたわずかな傷。その姿はマダラ兄さんと似ていると、噂されるほどの顔立ちの『うちはオビト』だった。

 

「オビトさん!?なんで急にここにいるんですか?」

 

俺が驚くことを見越したようにオビトさんは、ふっと鼻で笑って肩をすくめる。

 

「そりゃ、ここのスポンサーなんだからな。役員としての打ち合わせぐらい普通にあるだろう?」

 

「でも、ここの実務的なやり取りなら、オビトさんよりカガミさんのほうが多いのでは?」

 

そう、ボーダーのスポンサーである『うちはコーポレーション』は頻繁にボーダーに出入りしている。実務の大半は『うちはカガミ』を中心的に活動している。

 

「そこを突くか。まあ、色々と大人の事情ってやつがあるんだよ」

 

図星を突かれたのか、オビトさんはわずかに目を泳がせたが、すぐに誤魔化すように息を吐く。昔からマダラ兄さんと軽口を叩いていた頃と変わらない。なにせマダラ兄さんのことを『ジジイ』と呼んでいたぐらいだから。

 

「まぁ、そこはお前が気にしなくても良い。それより、せっかく来たんだ。ちょっとラウンジで話し合わないか?」

 

「話し合いですか?」

 

「堅いこと言うな。ちょっとお前の近況でも聞きたいだけだ」

 

まぁ、時間はあるし話を聞くぐらいなら、良いだろう。オビトさんは暇な人じゃないし、仲の良かったマダラ兄さんの弟だから色々気になることがあるかもしれない。

 

「わかりました。ラウンジに行きましょうか」

 

「よし、決まりだな」

 




うちはオビト

たまに来るイケメン役員さんその1

うちはコーポレーションの役員。ボーダーのスポンサーで日々資金関係の話をしている。ほとんどの業務は、扉間の部下であったカガミが多い。アサギのことを可愛がっているが、「本当にジジイの弟か?」と思うことがある。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

「誰が座敷わらしか、俺はただの人間だよ!」全員「んなわけあるかッ!!」(作者:ティファールは邪道)(原作:ワールドトリガー)

『第一次大規模侵攻』と呼ばれることになる事件。▼東三門が壊滅し、異世界からの侵略者『近界民(ネイバー)』の存在が公になったことで、界境防衛機関『ボーダー』が表舞台へと立つきっかけとなった未曾有の災厄。▼その激闘の裏で、生還した市民たちの間で、まことしやかに囁かれている奇妙な都市伝説(噂)があった。


総合評価:563/評価:7/連載:9話/更新日時:2026年10月19日(月) 11:42 小説情報

最硬の男 伊地過堅護(作者:ちゃがまくら)(原作:ワールドトリガー)

B級だが部隊に入らずに活動している少年「伊地過堅護(いじすけんご)」小学6年生▼性格は真面目だが、ノリはいい。▼しかし、年齢が違うため話も合わず、各部隊の助っ人を行う日々を過ごしていた。▼戦い方が他隊員に比べ異質で、年齢の近い陽太郎の存在から玉狛所属


総合評価:123/評価:-.--/短編:5話/更新日時:2026年09月02日(水) 12:51 小説情報

帰還者、玄界の生活を満喫するってよ(作者:ユンケ)(原作:ワールドトリガー)

8年前、近界に拉致された1人の男が帰ってきた。▼帰ってきた男は、元の世界で幼馴染と遊んだり、戦闘狂と戦り合ったり、セレブが作る料理を食べたり、セクハラエリートと風俗に行こうとしたり、ゲーマーおっさんと変なトリガーを開発したりと自由気ままに生きていくのだった。▼彼が織り成す物語が始まっていく。


総合評価:1480/評価:7.97/連載:24話/更新日時:2026年08月16日(日) 00:00 小説情報

A級2位 茶渡隊(作者:ぽんぺぱろん)(原作:ワールドトリガー)

もし一護達がワールドトリガーの世界で生まれていたら。


総合評価:1071/評価:8.38/連載:3話/更新日時:2026年10月30日(金) 16:00 小説情報

ダンゾウの息子、志村ソウマ(作者:へたれん)(原作:NARUTO)

▼・書き始めた理由▼原作においてあまりにもやらかしすぎているせいで二次創作でも大抵敵キャラにされているけど、ダンゾウにだってヒルゼンと夢を語り合った時期があったんだから闇堕ちする前に救ってしまえ!▼ダンゾウが正しく扉間リスペクトすればダンゾウ起因の悲劇回避できるよなと思い、周りにオリキャラを追加してみた話▼・あらすじ▼扉間から火影を託された三代目火影猿飛ヒル…


総合評価:1280/評価:8.06/連載:56話/更新日時:2026年11月04日(水) 19:03 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>