だから、私はれな子ちゃんとご飯が食べたいだけなんですって 作:えれくとろきゅーしょにすと
「歩き辛いですよ、真唯ちゃん。れな子ちゃんもそう思いますよね?」
「それはこちらのセリフだ。そうだろう? れな子」
「一番歩きづらいのは圧倒的に私なんですが……?」
帰り道、もうまだ理性が戻っていないらしい2人に挟まれながら私は帰路についていた。
左手は真唯に、右手は六華にガッツリホールドされ、スタイル抜群の2人からの挟み撃ちは窮屈ったらありゃしない。
私より10cm近く高い真唯とさらにそれより10cm近く高い六華。
私の頭の上で目線がバチバチと弾けていた。
「おや、そういえば六華はれな子の家は初めてだったかな? くつろいでいくといいよ、とても安心感のある空間だからね」
「ああ、そうですね。私はれな子ちゃんに来ていただくばかりですから。好きな人は、精一杯もてなしたいじゃないですか」
「……」
「……」
キャンキャン、キャンキャンキャンと再び始まる大型犬キャットファイト。
私の腕を強く抱き締めながら吠え合うその様子は飼い主を盾にして様子をうかがう散歩中のわんこそのもの。
流石に家に着くまでには収まってよ……?
◇◇◇
「お初にお目にかかります、御神楽六華と申します」
数分後、玄関を開けた遥奈に六華はゆったりと頭を下げた。
いつもの無表情、遠巻きに眺めることしか許されないミステリアス高嶺の花モードだ。
遥奈は目を丸くしてその顔を見つめた後、私、真唯、六華と高速で視線をローテーションしはじめた。
「……浮気?」
「浮気ちゃうわ!」
「……私、浮気されてるのです。とっても酷い人なのですよ、あなたのお姉ちゃんは」
「え、どっちが本命……? てか、この顔の良い女も、お姉ちゃんに……?」
「遥奈ちゃん、でしたっけ。可愛いですね。私、一人っ子なので妹とか羨ましいです」
「……」
初来宅、初対面ブーストで一気に遥奈の好感度を取りに行く六華とそれに鋭い視線を向ける真唯。
真唯が初めて来た時と比べるとだいぶ落ち着いているというか、全然緊張していない。
そういう意味ではやっぱり六華も根っからの陽キャだ。
グイグイ来るし、実は無表情なだけで口数も多いし、てか無表情崩れるの最近多いし。
「あの、こんな絵に描いた餅の餅抜きみたいな、限りなく水に近い感じの姉なんですけど、それでも一応、人間として恥ずかしくないようには育ててきたつもりなんですが……」
「お前に育てられた覚えはないが?」
「……ごめんなさい、浮気なんて、どこで道を違えたのか……」
「してない! おい! してないって言ってんだろ!」
「これ、私の連絡先です。これ以上の粗相があったらこちらの方に、両親にも伝えておきますので……」
「おい! お前の生きてる世界に私はいないのか!? 私だけがいない街か!?」
経緯はともあれ私よりも遥かにスムーズに、省エネに2人の連絡先を手に入れた遥奈。
あいつはそのまま2人を勝手に私の部屋の方へ案内すると、取り残された私をタイマンで詰め始めた。
「お前どういうつもりなの!? あんな美少女2人を取っ替え引っ替えってこと!?」
「お前呼びやめろ!」
「だってこの前テレビで見た人連れてきたと思ったら今度はお姉ちゃんがやってるゲームのキャラみたいな人来たんだよ!? 浮気って人として最低だよ!?」
「だから、2人は友達! 2人とも友達! 浮気とかじゃないの!」
「いや、でも……浮気でしょこれは」
「お前もか!? お前も友達は複数作っちゃいけない主義者か!? ブルータスなのか!?」
「声デカい……」
「デカくもなるわこんな状況!」
「……でもさ、やっぱりおかしいよ。カメラ一個も見つからなかったし」
前に真唯が来てからずっと探してたのかこいつは……?
「てかさ、お姉ちゃんいつまであんな美少女達待たせてるの? 酷くない?」
お前のせいだろうが。
「でも、これで信じてくれたでしょ! 私に人生最大のモテ期が来てるって! リア充デビュー成功したって!」
「友達ならモテ期じゃなくない?」
「それは……言葉の綾! ともかく! しばらく真剣勝負だから開けないでね!」
そうして妹を追い返し、いざ勝負のマ◯オパーティへ。
飲み物やおやつを用意して部屋に入ると、そこにはまあ間違いなくスマホは充電できるだろうなというバチバチが漂っていた。
「やれ、人を泣かせる趣味はないんだけどね。お望みなら仕方ない」
「あは。上から目線は、女の子に嫌われちゃうそうですよ?」
目に光が宿ってない。
今にも互いに食って掛かりそうな獣の瞳だ。
ソフトを起動しながら考える。
これ、どっちが勝つんだ?
運ゲーと考えると運の良さカンスト状態の真唯に対して為すすべがないかもしれないし、連打なんかのミニゲームを考えれば身体能力が関わる部分については六華が圧勝するだろう。
というか、なんで「六華」なんて雪の結晶、儚さの塊みたいな名前の女がナチュラルゴリラなパワー系なんだろうか。
名は体を表さないらしい。
「はい、これ。ルールは1vs1vs1vs1で、一体はNPC。もちろん一番強いやつ。この中で真唯か六華が優勝したら、今日は優勝した方と遊んであげる。それでいい?」
「ええ」
「問題ないが……このゲームはどうやって遊ぶんだ?」
「コインを集めてスターと交換する、一番スターを集めた人が勝ち」
「コイン……スター……ふふ、そうか。そんなに私と遊びたかったのだな、れな子」
「違うわ! いらん深読みやめろ!」
「そうですよ。このマップはキッチンモチーフ、れな子ちゃんは私と遊びたいんです」
「そういう意味でもないが!?」
駄目だ、こいつらはもう都合が良い方にしか解釈しようとしないバカ犬大型犬だ。
こうなったら私がワ◯イージくんと協力して、全力で2人を脚を引っ張るしかない。
そう決意を固め、いざ決戦が幕を開けた。
◇◇◇
「はあ!? ま、真唯おかしいですよ! ずっとサイコロ最大値引いてます!」
「そういう六華こそどうなってるんだ! 10秒間の連打で倍の差なんてつくはずがないだろう!」
「あっアイテム奪わないでください! せっかくスター取れそうだったのに!」
「私の、私の貯めたコイン、全て六華に持っていかれたんだが!?」
正直に言うと、めちゃくちゃ面白かった。
理由はシンプル、2人が最下位近辺で脚を引っ張り合っているからである。
真唯は確かに運がいい、けれどそれは「サイコロで好きな値を出せる」というだけで「何もしなくても踏んだほうが良いマスを知れる」というわけじゃない。
今回は私も2人に何も教えなかったし。
そして六華は確かにミニゲームが強い。
連打も目押しもリズムも最強だ。
だけどそれはコインが集まるだけでスターに直結しない、つまり勝敗に直結しない。
結果として阿鼻叫喚の果ての結果は1位私、2位ワ◯イージ、そして──
「っ、勝った、勝った! 見たか!! 私の勝ちだぞ、れな子!! さあ、今から私と西麻布の高級ディナーに……」
「おかしい、こんなのおかしいです!! 再戦!! 再戦、仕切り直しをお願いします!!」
僅差の3位で真唯、最下位六華。
2人は汗もかいて息を荒げながらも、盛大に勝ち誇る真唯と心底悔しそうにうなだれる六華が対照的。
私は真唯に差し伸べられた手を取ることはなく、シンプルに答えた。
「……真唯、私がなんて言ったか覚えてる?」
「ああ、当然だとも。「私達が勝負して、勝ったほうがれな子と遊ぶ」、だ」
「ううん、違うよ。「2人の内、“優勝”した方と遊ぶ」って言ったんだから」
「……!」
「真唯は確かに六華には勝ったよ。でも3位、優勝じゃないよね?」
「っ……」
「あっは!! ほら見たことですか!! 仕切り直し!! 仕切り直しですよ真唯ちゃん!! 残念でしたね!! あんなにドヤ顔してたのに!!」
「っ〜〜〜!! いいだろう、受けて立つ!! 再戦だ再戦!!」
「えっ、でももう遅いし……」
「なら泊まる!! 泊まってでも六華と決着をつける!! すいません、れな子さんの御母様!!」
「あっ行動力のある馬鹿!!」
「……大丈夫だそうだ!! 六華、私は追加の食料と着替えを買ってくるから念のため台所の方を手伝ってきてくれ!!」
「一時休戦、了解しました!!」
「こんな時ばっか手を組むんじゃない!!」
そしてゲーム機を放り出し、部屋を飛び出していく大型犬2人。
1人残された私は、寝転がって部屋の天井を見上げた。
「……一周回って友達じゃないか? これ」
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