戦いたくない魔法少女は、それでも引き金を引く   作:菊水晴雅

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第七話 入浴中

なにここ、広すぎる。お風呂じゃなくて温泉の間違いでしょ。

 

「確かに、ここは広いわね。」

 

いや「広いわね。」じゃないのよ。広すぎて逆に落ち着かないわ。

 

「まずは体を洗いましょうか。」

 

少し聞いたことがあるのだが、この国では、湯舟というものに入る前に体を洗うらしい。いくつかの仕切りが設置されていて、その間にシャワーや蛇口がある。ここで洗うんだな。えっと、何を使えば・・・?

 

「あら?どうしたの?」

「何を使えばいいの?」

 

シャンプーとかボディーソープとか書かれているが。なんなのだろうか。ボディーソープはなんとなくわかる。体を洗うための洗剤?だろう。だが、シャンプーはわからない。その隣にあるリンスもわからない。

 

「使ったことがないのかしら?」

「今まではすべて石鹸で済ましてた。こんなのは初めて見る。」

 

今までは節約のために石鹸しか使わなかった。両親が夜逃げする前はこういうものがあったと思うが、使うと怒られた。高いらしい。前の世界では、こんなものはない。体を洗っている暇すらない。当たり前だ。戦場なんだから。

 

「石鹸でって・・・?」

「貧乏なものですから。」

 

半分嘘だ。

 

「そもそも、だいたいは水で洗い流すだけで済ませてきた。」

「そう・・・、じゃあ、今日は私が洗うから、一回で覚えてね。毎回私が付き合えるわけじゃないから。」

 

そう言いながら、私の、無造作に伸びた髪をかき上げてまとめていく。

 

「じゃあまずはこれを・・・。」

***

「温かいわねぇ。」

 

体を洗い終わり、湯船に浸かる。お風呂ってこんなに温かいんだぁ。

 

「もっとこっちに来てもいいよ?そんな浅いところじゃあ寒くなっちゃうでしょ。」

「大丈夫。これでも十分。」

 

死んでいった仲間たちのことを思うと、自分だけがこんな贅沢をしてもいいのかと不安になる。

 

「先に上がりますね。」

 

湯船から立ち上がり、脱衣所に戻る。

 

「あ!ちょっと!上がった後も少しやることがあるから!」

 

まだ何かあるのだろうか?タオルで拭くだけじゃないのか?

 

「まずタオルで体を拭いて、それからドライヤーね。」

 

また聞いたことのない単語が出てきた。まぁいずれ分かるだろう。

 

「これがドライヤーね。スイッチを切り替えると、こっちから風が出るの。一段目と二段目が暖かい風で、三段目が冷たい風。機種によって違うのもあるから、それは使うたびに確認してね。」

 

髪を乾かした後は、色々塗られた。正直言って気持ち悪かったし、こっちの方が寒い。手順も面倒だし、次からはやらなくていいや。

 

「あれ?服は?」

「あ、服はその紙袋に入っているものを使って。」

 

そういわれて、そばにある紙袋を手に取る。中には衣類が入っていた。いくつか下着がある。

 

「サイズが分らなくて、何種類か入れておいたの。自分で確かめてみて。」

 

適当に一枚を手に取って穿いてみる。これはちょっと緩いかな?合う腰小さいものに変えて、・・・うん、これでいいや。後はもう、だいたいわかる。何かの制服っぽい。少し嫌な予感がする。

 

「うん!似合ってるよ!」

 

全て着終え、鏡の前に立つ。特に乱れている所はなさそうだ。スカートなんて初めて穿いたな・・・、にしても、短くないか?少々心もとない。

 

「この服は?」

「私たちが通う学園の制服よ。」

 

はぁ・・・、やっぱり。

 

「夏休みが終わって、二学期から編入のなるんだって!」

「あの・・・、学費が払えないから通えないんだけど。」

「学費?それは気にしなくても大丈夫よ。あなたは魔法少女として学園に通うから、学費は全額国が負担するから安心してね。」

 

さらに断れなくなった。

 

「後で返せと言われるよね?」

「まあそうだけど、全額じゃなくて三割ぐらいだから大丈夫よ。ローンみたいに時間をかけてもいいわけだし。」

「後、さっきさらっと言っていたけど、魔法少女って何?私はそんなのになった覚えはないんだけど?」

「んーとね、簡単に言えば、素質があったから、だよ。」

「素質?私、魔法なんて使えないわよ。いや、使えないってのは少し違うけど、私は物を収納して、取り出すことぐらいしかできない。」

 

昨日の魔法は、攻撃や防御に使用されていた。戦うことになる以上、最低限防御はできなければならないだろう。

 

「素質は魔法の才能の有無じゃないの。精霊と親和性があるかどうかなの。」

「精霊?」

「私たちはみんな、精霊と契約している。なりたい人が魔法少女になれるわけじゃなくて、精霊が認めた人にしかなれない。あなたは、その精霊に認められた人なの。」

「証拠は?」

「それは・・・。」

「ここにあるさ。」

 

後ろから声が聞こえた。何かいるなと思ってたから特に驚きはしなかった。

 

「あなたが精霊とやら?」

「そうだよ。初めまして。ボクの名前はラルフィー。君の専属精霊だよ。」

「そう。あなたが私を認めたというのね。」

「そうだよ。よろしくね。」

 

私は拳銃を取り出し、精霊の額に突き付ける。

 

「なんの真似かな?」

「あなたには今ここで死んでもらうわ。そうすれば、私は戦わずに済む。じゃあね。」

「うーん、別に、ボクを殺そうとするのはいいんだけど、本当に殺せる?」

「無理でしょうね。あなたの実体の気配がない。いくら物理攻撃をしても無駄ね。」

「分かってるじゃないか。・・・これからは、ボクが君をサポートするね。」

「分かったわよ。」

「じゃ、じゃあ、顔合わせも済んだことだし?学園を案内するね。」

 




物騒な主人公だこと
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