底辺上がりの九等官ユーリ、誤植を直しただけで帝国の黒幕にされる
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オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル
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黒書院・校正溜の九等官試補ユーリは、官位を持たない奉公人の家で代々仕えてきた底辺層の娘で、貴族子弟でない女文官というだけでも異例の存在だった。女の文官など名誉職か見せかけで、実務は下に召し抱えた中間(ちゅうげん)の代筆者がやるもの——誰もがそう思っている。だから彼女の机には今日も「代筆者殿」宛ての招聘状が届くし、帝都の噂は決まっている。高位貴族の妾腹を、結婚まで食わせるためにねじ込んだのだろう、と。
彼女の仕事は、印が押される前の公文書を読み、誤りを直すこと。本人は「永遠の九等官」でいいから、定時退庁と正式任官しか望んでいない。
だがこの帝国では、登録された公文書が軍を動かし、税を決め、船を出し、婚姻を成立させる。停戦条約の「な」一文字、国境の軍、税表の小数点、台帳の索引ひとつ。ユーリが直すたび、帝国は少しだけ正しい方向へ止まり、周囲は確信する——あの九等官の裏には、必ず黒幕がいる、と。