奴隷たちが「助けてくれ」と言ってきたので買って自由にさせたら、なぜか敵国やエルフの姫が求婚してくるのはなぜだ。 作:主義
六人がここを出立してから一カ月が過ぎた。
最近はずっと僕を含めて七人で食事するのが当たり前だったので、出立して少しは使用人が作る量を間違えたりして大変だった。
だけど、一週間もすれば当たり前になる。
僕も六人が来る前の生活に戻り、ブラウン商会のオーナーとしての仕事に専念している。急に両親が死んだことでも多少なり大変だったのに、奴隷を買ってしまったことでもっと大変だった。
これでやっとブラウン商会の運営に力を注ぐことが出来る。
商会をこれからどれだけ大きく出来るかが、ブラウン商会の命運を握っている。このまま停滞するか、これから先のもっと広がる未来を手にするか。
そしてこれから大きくしていく上で重要なのは他国への進出だと考えている。
王国でブラウン商会の知名度は問題ないぐらいに高いのだ。それのお陰で儲かりもそれなりのものになっている。
これ以上に売り上げを増やすには他国に目を向けるべきだ。
うちの商会では調味料や香水、珍しい食品、薬など様々なものを販売している。そしてこれからのものは国が違っても受け入れやすいものが揃っていると自負している。
そうなると次のターゲットとする国はどこか。まぁ帝国や竜人国はあり得ない。帝国は未だに戦争の最中だ。
あちらに渡るのだって命がけで、商売をするにしたって王国の人間が運営している商会なんて現状で誰か買ってくれる人間がいるとは思えない。
竜人国はさすがに怖いな。人間と竜人の関係上、あんまり不用意に刺激するような真似はしたくない。僕の商会が火種となり、戦果の渦に王国の人間を巻き込むわけにはいかない。
消去法で考えていくと公国と天国だ。この二つの国であれば商売としても成功しやすいだろう。公国は人口が少ないが、国としては非常に安定しているイメージがある。確か公国は建国以来、戦争をしていない。
平和国家を謳っているとも聞いたことがある。
帝国との仲の悪さはあるが、それでも戦争に発展しないのはお互いに最後の一歩は踏み出さないからだ。帝国としても公国とも戦争することになれば、二つの国を同時に相手しなければいけなくなる。
帝国を取り巻く状況をより悪くするのは帝国も望んでいない。最低でも現状維持が一番のはずだ。
天国の方は宗教国家と言っていい。選ばれた民という認識とエルフや竜人に対しての差別は天国の特徴だ。多くの民がその思想を持っているため、団結力という観点では王国よりも上だろう。
王国とは良好な関係を築いているから、商売をするだけであれば問題はないと思う。
いや、もしかしたら問題があるか。
天国は他国からの干渉を嫌う傾向にある。そしてあまり干渉し過ぎると『貴国は我が国に害を成す気か』という話になり、敵として認定され、大義名分を掲げて戦争へと進んでいく。
これを天国は何回か、繰り返している。
その末に相手の国が滅んだこともある。戦争を行えれば天国は相手を徹底的に叩き潰すのだ。もう二度と普通の国として存続できないように。
僕が天国に商売人として入り、商会の宣伝と商品の販売を行うとして、天国の国の中枢を担う者たちがどう思うかが重要だ。
敵国のスパイが入り込んでいると思われた時点でやばい。
そうなれば今は良好な関係を築いている、天国と王国も一瞬で敵同士になる可能性もある。王国がいくら弁明や説明をしたところで天国がその説明に耳を傾けるかは分からない。
全て考えた結果として最初は公国をターゲットにするべきだ。
そう決めた僕はすぐに商会の幹部を呼び出して、これからの方向性について説明をした。
そして何より、初めて他国への進出をするわけだ。
僕が公国に手向いて色々と指揮する必要性がある。
何か問題が生じた時に僕がその場にいればすぐに話が進む。もし、僕が王国に留まれば、公国にいる商会の人間から何か問題の知らせが届くにしても時間が掛かり、速やかな解決が不可能になる。
だからこそ、僕が自ら出向く必要性があることも力説し、幹部たちの承認を得ることにも成功した。
これで商会をもっと大きくできる可能性がある。
そんな僕は商会のことに頭の容量を裂きすぎて、奴隷たちのことがまるで頭になかった。
でも、それから数日後に嫌でも思い出すことになることを僕はまだ知らなかった。