極道だけじゃないしカタギだけでもない。世の中生きていけば誰しも拭えない後悔を燻らせ続けている。

 暑い夏のどしゃぶりの夕立の中、和中の兄貴が過去の後悔に吠える。

 天才の復讐VS和中の兄貴

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完結 2023 6月
最終加筆2026 6月13迄、計4回

雑筆欄

時系列 天京戦争後、羽王戦争までに3年のブランクをif設定のために設けており、理由は羽王戦争前半時点をリアルタイムにその中で執筆と完了を経ていますので、治療期間を考えてそこに位置づけています。

ヘッドカノンでは和中はこの時点で35歳として、2026年の時点で40となります。作中開始時点で10年前に小峠が組に入っていて、先輩後輩の呼び名から、間1年を刻み埋めるように年齢を計算した場合こうなりました。当時はね。現時点ではなんと、衝撃の同期バレにより多分ズレています。でも計算だとアラフォーです。つらいさん。





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極道だけじゃないしカタギだけでもない。世の中生きていけば誰しも拭えない後悔を燻らせ続けている。

 暑い夏のどしゃぶりの夕立の中、和中の兄貴が過去の後悔に吠える。

 天才の復讐VS和中の兄貴


ヒューマンバグ大学 和中外伝 夢幻泡影の章

曇天

 

 最近は組事務所内でタバコを吸わない用にしている。世の中の風潮ってのは不思議なもので、別にそれに則る必要ない渡世の極道すら何となく守ってしまうマナーが頭の片隅に居場所を作っちまう。何となくで吸う裏手の入口。落ち着くんだよ何故かな。

 

 珍しいもんで、和中の兄貴と鉢合わせる。兄貴も同じなのか?と思ったがどうやら入物有りの様で火を差し出して頂けた。これは

 

 有難い筈だが、こと和中の兄貴となると眉根、冷たい汗が横切る。

 

「小峠。少しいいか」

 

「はい。いかがなさいました?」

 

 和中の兄貴から突然話しかけられるなんて。どんな話題なんだろうか。

 

「華太。お前は...... 時にはるか昔の耐え難い後悔を引きづり悩む事があるか?」

「え?はい...... 後悔等はありますが......」

「.......そうか。小峠、夜この事務所、裏手のバーで少しばかり話をしよう」

「はい!よろこんで」

 

 

「...... いらっしゃい」

 

 マスターが小さく会釈する。年季の入った漆色の内装、高級感がいやな予感を強く漂わせる。

 

「...... 小峠、事が事だ。俺が出す。好きなものを飲め」

「…… 良いんですか?」

 

 申し訳ないが、中堅ヤクザには背伸びをかなりしないと頼めない代物が並ぶ棚に唾を飲み込んだ。予感していた危機感は次第に確信にかわる。

 

 

 そして、話題が和中の兄貴の後悔と言ったか?

 

 長く極道張っていると後悔のひとつやふたつあるが、あの和中の兄貴が今も悩む後悔と......

 

 語りだすモノローグが兄貴の切っ先の閃の様な切れ味を醸し、あの時の頬が疼く様な恐怖を思い出させるように伝う。

 

「13年前。新人気鋭。2年目の俺は空龍街のはずれの通りに守代を任されていた。今から話をするのはそこのとある孤児院での話だ」

 

 

 語り手を務める、俺の名前は和中蒼一郎。今から過去に帰り、そして過去の己と少年に向き合う極道だ。

 

 話しを始めよう。

 

 新人の頃、俺は空龍街の中で寂れた建築頓挫ビル街、その一角のバーのマスターにとても世話になっていた。一角の見回り、守代の回収を任されてしばらく経った時だった。マスターが階下に孤児院を建てた。

 

 不甲斐ないことに、新人の俺はギラつく動作が刃圏の様で、為人に疎かった。それは常々、組で足を引っ張った。だから天羽組長、ひいては当時のカシラに推薦されよりこの一角を深く守代担当させて頂いた。

 

 それからというものよく顔を出しては子供の無邪気さやあどけなさを見て、その度に俺の心の刃は向けるべき場所へ整い、そしてさらにあどけない彼らが好きになっていった。

 

 その孤児院に神城 健祐(カミジョウ ケンユウ)という齢九つの男の子がいた。その孤児院に馴染めていなかった彼は過去の私と同じように剣道家の家に生まれ才を持ち、孤児院の立てられる少し前のとある事件によって家族を皆失ってここに来ていた。

 

 私は彼とよく関わり剣の道について語った。まだ若いというのに彼は天才と呼ぶに相応しい技術の下地を幼くして持ちながら、彼の技術の飲み込みは早く、何より一を聞き十を紐解く少年だった。俺は彼の才に惚れ込みのめり込む様に技を教えた。だが時に逆に飲み込まれるかと思った程だった。

 

(和中の兄貴がそんな底抜けに褒めるなんて...... 恐ろしい才能の持ち主だったんだな)

 

 だが彼は私の失敗によって今。たった1人で天羽組に弓を引こうとしている。

 

 昨夜、彼は復讐相手の私との死合いを皮切りにして闇討ちを始めるつもりだと書簡に綴り弓文を刺した。

 

「そ、それは......」

 

 曇天に良く似合う程、いやそれに釣り合わない程の報らせに小峠は額を青くした。

 

「彼の心は今私を初めとした天羽組の人間への復讐へ駆られている。小峠。今、彼の狂行の予告は俺と今話している小峠。お前しか知らない。そして俺自身報告しなければならないのはわかっている」

「兄貴!!それなら」

「ならぬ」

 

 遮る言葉、刺す。わかっていた。

 

  

「だがこの話、きっかけを作ったのは俺だった。そして、これは天羽組に所属する俺自身の失態でもある。弓を引く道理があり、そしてこの事態を止めるため俺は単独で動くことになる。確実に俺との死合いを経るだろう」

 

「第一にこれは天羽組に大義が無い。この話は悪意や彼自身の功名心が無く、こちらが今ではただ唯一当時を生き、今なお引いた尾が組に利益を作っている。これでは大義等作りようが無いからだ」

 

「そのまま世の精算を受けるのならこの話は組のこれからのあゆみを刺す菱となろう。だが。渡世の中、忠義を貫くなら時に苦味噛み潰して組の為なる行いをしなければならない。小峠。だから頼みを聞いてくれ」

 

「竜騰虎闘。間違いなく彼との戦いは苦戦を強いられるだろう。2年の間強さを認めあったからこそわかる。だから小峠。明日の夜3時に連絡が無ければ全体に報告しろ。直後から闇討ちを始めるだろう」

 

「和中の兄貴...... わかりました」

 

 しきりに降る雨が体を貫く用に小峠は心を手放し雨に打たれた。

 

「そんな...... 」

 

 自信に溢れた和中の兄貴がそこまで言う人間はあまり聞いた事が無い。そんな人間と戦うなんて。それならまず先んじて報告を済ませないと危ないはず。何時も冷静な兄貴が心做しか熱くなっている気がする。

 

 思い返すその言葉。

 

「あと。私が倒れるまで手を出すな。絶対にだ」

 

 

 男の名は神城健佑...... 実は名前を聞いた事がある。というか裏の世界ではこの国だけじゃなく世界で知るものは多い。

 

 形態としては半グレ組織にあたる禍麗刃(カリバー)。その頭目で逆袈裟斬り使いの男だ。世界各地、主に中東や日本にごく小規模の利権と支部を持ち、どこの組織の禄も喰まず犯さず組員の殆どが武闘派じゃない。

 

 異色の形態により日本だけでなく世界各地にまで支部があるとされる武闘派マフィア 刀商旅団 日本では尚、色濃く半グレと目される組織形態を取り、その組織名を名乗っている。

 

 天羽組や他のシマを荒らさないどころか処分に困ったドスやチャカの買い付けをしては海外提携鉱床で打ち直して新規で鋳して安値で売ったり、名工の品を売ったりしている。

 

 特にドスなんてものはあくまで標的の殺害にしか使わない。そんな品は売ること自体が危ういので新規でなかなか作ったりはしないだろう。ましてや表の組織に下ろしたりもしないからな。その上鋳造技術のある裏の組織もそうは無い。必然と技術ある者の独占となりやすい。

 

 それでも誰かが守らなければ、討ち入りされた場合に組織の損失は大きいはずだ。その男こそそう、頭目の神城彼自身がべらぼうに強く小規模の利権を犯せば頭目1人ですっ飛んできて全て剣の錆にしちまうんだ。彼の伝説や強さだけであのマッドカルテルですら戦闘員の居ない商団を襲わない。それほどまでに強いんだ。

 

 だが和中の兄貴も負けていない。負けないはずだ。俺は手を出す必要も無い。

 

 だが手をうっておくのは必要だ。まずは深夜3時から出歩く者はまず最初にスマホを見るはずだ。通知の工夫をすれば深夜3時以降の闇討ちを今のうちから防ぐ事ができるだろう。決めた時間以降にスマホを開いた瞬間に組員の連絡網に受信通知が来るようなアップデートをした。これは野田の兄貴に言われ独学で学んだものだ。最初はLINEだったのだが警察にパクられちまわないように前に簡単な連絡網アプリケーションを組んだんだ。

 

 次に果たし状の場所近くでふたりが通りそうなところに監視カメラを置いておく。これは索音に長けた物で戦闘している間の金属音で事前に戦闘時間を見ておく。これにより早めに危険を抑えておく、あとは命令違反だが万が一和中の兄貴が倒されそうな時に加勢する為だ。俺は自分がヤキで殺される事より和中の兄貴が生きている方が大事で誰だろうがそれだけは変わらない。

 

 戦うのは山林公園のの開けた場所という立地。

 

 付近にちょうど良い物件を見つけたのでそこをオーナーに1日だけ貸してもらった。

 

 本当に危なくなった時に駆けつける設備は整った。その頃にはもう夜が来はじめていて、あとは時を待ちチャカやドスの手入れをするだけだ。果し合いは12時。

 

 声や金属音を限りなく強調したイヤホンを耳につけモニターを凝視する。

 

 

 時は幾月前に遡る。次に語り手を務めるその男。

 

 彼の名前は 神城 剣佑(カミジョウ ケンユウ)。硬めのコートをマントの様に靡かせ、ベレー帽をを深く被る奇異な見た目、威圧感すら組織を守り続けた貫徹の意志の現れなのだろう。

 

「っ...... ふぁ〜っ。ふぅ」

 

 俺は事務所の前で胸に重さが掛からないように息を整えた。

 

 あぁ。俺の名は......わかってるよな?裏ではそこら辺に居るただのヒカリモノの売り主だ。まぁ。今日までだけどな。これからしばらく、いつになるか分からないがシノギを辞めてしまおうと思う。

 

 思い返せば...... あの日から今までその悲願の為に生きてきた。その原動力だけの為に行動してきた。旅団のメンバーを集め鋳鉄を教えたのも蒼一郎に剣の教えを乞うたのも船舶を襲った源會のゲスにすぐ取り入って孤児院に入ったのも潰したのも。

 

 ......檀崎のガキに俺の汚れ仕事の裏方を教えたのも。

 

 あとは源會に船舶襲撃命令を寄越した天羽のゲス共を殺せばいい。蒼一郎。あいつが源會と利権交渉しゲス共共有の海域を作ったのが原因だ。絶っっっっ対に許すことはねぇ。そしてあいつの体は逆袈裟った後微塵に切って天羽の本拠にばら撒くと決めている。

 

 この日が来た。だがなんで、手段でしかない組織に俺は次の世代とかどーたら考えてんだろうな?まぁ...... いいかぁ。

 

 俺はよ。どうして、誰の為に思い返してんだろうな。

 

 事務所の扉を開け、開口一番口を鳴らす。

 

「なァ。檀崎ィ?ちょっと5万年くらいいいか?」

 

「聞かねぇな。とっとと積んでる仕事を回してくれや」

 

「……デカイ用があんだよ。頼まれてくれるな?」

 

「………… お前」

  

「あぁ…… そういうこった檀崎。そしてすまねぇ。 ……んでよ。ん、あぁ。まぁ。要はぁ。俺は旅団を辞める。できるな?お前を中東の牢獄の中から拾った恩を返せるよな?俺は…… これからも本当は。まだこれからもやりてぇんだが。でも、ずっと前から決めてたんだ」

 

(馬鹿が。神城わぁってるよ。お前の思ってること。顔に出すぎだ)

 

「これからは旅団の頭はあんたが守れ。そして。兼ねてよりずっと目指してた俺の場所だ。おめでとう。おめえが5歳からやっきになって頭目を目指していたからな」

 

 胸ぐらを掴む手が強ばりを感じる。そりゃ訳ねーわな。こんなに捨て鉢の組織っつうのに俺が何処を見て何をする為、何をしていたかなんて言わなくても臭うわな。

 

「てめなんのつもりだ。ゴラ」

 

「分かってる癖に。決めたんだよ、いや決まってた。な?」

 

 困惑し言葉を返すしかないよな。そりゃそうか

 

「聞かねぇな。とっとと持ち場に戻れすり卸すぞ」

「いや、……俺が刀商を始めたのは1本に絞った硬いシノギをやって金を稼ぎある組織を潰すためだ。ここの刀商支部を含め日本の支部の1部はそのゲス共から奪った支部でもある。ってのは耳にタコだろ?」

「だからそんなこたわぁってる。殺るかゴラ?俺がお前を殺せたら頭代わって良いぜ。頭張るには強さなんだろ?」

 

「お前の強さが不十分だって言いてえか?あ?てめぇ俺の目が腐ってるって言いてえのかボゲが。てめぇはもうめちゃくちゃ強え。これから先どんな敵組織も旅団の為にお前が潰せ。いいな。俺はNOなんて聞きたかねぇ。スラムから拾って育ててきた工匠を生かしたきゃお前が活かせ。いいな」

 

 逃げるように小走りで去った。後ろから怒声が木霊する。

 

「は?...... お前けんゆうおい!待てよ!健祐!一体何処までやるつもりなんだよ。やってらんねぇよ!なァ!」

 

 往く旅人の到悲願だってのに。めでたくねー奴。出た倉庫から爆ぜるうちがねの打音が、背を崖に向けた様に俺を奮わせる。

 

 

 これから蒼一郎に会いに行く。あいつと闘うなら上下をきっちり示して殺す。プライドを折るならあいつには果し合いの形が最もあっている。他の奴らは闇討ち。天羽慶次は拷問だ。蒼一郎が事前に関係各所にバラしたって無駄だ。あらゆる対組織を1人でバラしてきた俺には数千人群れたって勝てねぇさ。

 

 天羽組を潰して俺は新組織を立て天羽組の組織の功績や痕跡を全部消していく。そのためには莫大な金がいるから俺は旅団を立てたんだ。

 

 そうして全てをやり遂げたら俺はやっと1人の人になれる。俺は... もう復讐を考えて行動するのを辞めたくて仕方ないんだ。

 

 だからさァ。なぁ。俺は。

 

 眩しいな。つい、両の掌が眼に光を一切当てない様被って、掻きむしりたいような過ぎた日々ともう戻れない焦燥に息を大きく吸って、殺意という正気に立ち戻って呟いた。

 

「和中蒼一郎。てめえの首は断じて晒すわ」

 

 

 15年前、天羽組の内部では影を意図せず踏んでしまった者たちがそれに気づいていないまま、策謀を立てていた。

 

「やはり源會との協力は必須だったな。このシノギのおかげで昨今複数の組を潰している巨大半グレ、愚零喰怒(グレークラウド) の驚異に打ち勝てた」

 

「アイツらが仕切っていた漁港や海洋利権はバカでかい。あいつらには愚零喰怒の処分は任せてある。あとは海洋利権の分割割合だが... 取っておきの札がある。空龍街の隅に手に余している廃ビル街があった。俺の手によってそこの害悪な立ち退きしねぇやっこ達...... 消しちまおう。そしてそこの廃ビル街の真ん中を潰して大通りを作っちまおう。そしてそこの商業権を渡せば良い」

 

「そうですか。でも米倉の兄貴。彼処の人間はほぼ浮浪者でしょう?殺してしまっては商店街に人が寄り付かなくなりそうですが」

 

「......シマ荒らしとして親父に立件はした。粛清は俺一人で行く。元々あそこはビル土地の権利者の債権をこちらが抱えてて、こちらへの借貸のアテとしている不動産だ。実質うちの権利手持ちとなる。和中ぁ。この神策を触れ回って同士を集めてこい。も・ち・ろ・んビル街の浮浪者について触れるなよ。あそこの奴らは元々身元の不憫な奴らだ。影を薄くすんのにかなり時間使ったんだからな」

 

 根は取り返しつかない程張っている。時は1年後を回る。大通りはテナントの募集が並び次いで店も賑わいの兆しを見せる頃。

 

「和中。源會との海洋利権の交渉を命じる。お前は武力のセンスもある上言葉のセンスにも光るものがある」

 

「わかりました。親父。若輩ながらこの様な大仕事を任せて頂いた事感謝致します」

 

 米倉の兄貴は今回初めての巨大半グレとの抗争で源會を味方にし、天羽組より8人の死者を出した戦争の終結に一役かった。昇任は確実だろう。巷じゃドリル米倉と呼ばれ6年目ながら中堅の頭角を現している。

 

「源會の櫻坂さん。今回の愚零喰怒との戦争互いに悩まされつつ協力しやっと打ち倒す事が出来ました。空龍四丁目の丸を書いたこの開発地域の商業利権をお渡ししますのでどうか海洋資源地域の権利の分割をこちらと7対3にさせて頂けませんか?」

 

「なかなか大きいなぁ。いいですねぇ。それ。乗りましたよぉ。是非今後とも懇意によろしくお願いしますねぇ」

 

 会議は5分程で予定調和に決した。

 

 

 会議室に座る男。彼の名前は櫻坂 ナッシュ 蓮士。語り手のバトンは彼に渡る。

 

 語るに米倉敏文。キレる男だ。それと同時に冷酷でもあるな。あの廃ビルは何十回も強制退去を試み、果ては何年も前からあの浮浪者集団に占拠されている。立派なシマ荒らしだ。でも彼らは今を生きていくために悪意なくそこに住んでいる。彼は苦虫を即座に噛み潰す様に決め、今も苦い顔をしている。

 

 それはァ。そうとしてやぬぇア!ビルの一棟にどっかりと座り机に足を掛ける位は許されるよなぁぇ!?いやぁ、良いように使われてんのに良い顔してる都合のいい組織の打ち上げが見えるようで笑えるなぁえぇ?

 

 オレンジグラサン金髪おしゃロン毛の狂人。彼の特徴といえば、巻舌、ガラガラと鳴る喉。そして冷えたビジネスマンという表の顔を持つ。

 

 

「親父。上手くまとまりました。やはり米倉の兄貴の用意した開発地域の話は内容を良くしてくれました」

 

「いえいえとてもねぇ。和中もいいねぇ四字熟語。俺は言語センスは全くなもんで」

 

「うむ。若手のお前らには期待をしとるぞ」

 

 

 同じ時代の源會でも打ち上げの会合が行われていた。

 

「づぅかるぇぇたぁぁぁぁ!!!てぇうぃぬいことぶァめんどくさっしゃぁぁい観月(ミヅキ)ィ、金ねぇかぁいぃ?あぁっ!!ねぇの!?うぇえええまずぃぃ!?俺めっちゃ今あぁろぅんどぁああけぇどぉおおお??!」

 

「うわはっ!ウっッせんだよザカぁッお前うぜぇんだよ!!ばぁぁぁか。死んどけカス」

 

「あららぁ。極道。学びました。今からァぇ!?ここでは目上にはごはぁっとぅですよぉ。このわるぅーいおひめさまはぁ。ちゅ」

「うっせぇぞザカ!」

 

 唇を割くカッターナイフの銀閃が走る。

 

 それを摘みで止める黒人の大男。ナヌカ・ジャン。若くそして硬いシノギを手にした彼らの出生には共通点がある。

 

「辞めとけyo. ココは會だ秘密結社Da。横の繋がり尊重Sa. やりにくいテンションに住みにくいマンション3年目連れションここまででやっとka?でもNa?思うに被害最小限にしてもリターンすくねぇんでないKa?どう言うのぉシャッチョ、チェキ」

 

 奥から歩いてくる小柄のローブ。彼の名は狼谷 顎斗(カミタニ アギト) 源會を立ち上げたとある足抜けの1人だ。

 

「半グレ遊びは終わったんよね。しかも今回に限ってはやりにくいテンションなの、ザカが俺の言った通り利権持ってきてくれたからやでぇ。ウザイザカ君ありがとな〜。あ・と、観月ちゃんそないな下品な事やめてーな」

「シャッチョいいどぅうぁるるぉ?」

「シャッチョ.../// この後の夜も昼も朝も明後日の朝ごはんも私」

 

「今から第2Rよ。指揮よ。起立礼よ。今からやることはこれねー」

 

「Ha......ま、進行役かねてるんDe知ってるんだGa. ダルいよなAh...... 俺たちの冒険はもうちっと続くんJa」

 

「バァッド。シャッチョ。いくらぅぁぁあ俺んが立場下とぅはうぃえええ。殺すぞ?」

 

 指揮棒を小突きボードを指す。

 

「この海域は元々うちらがフラフラし出た時に観月がハニトラで落として処理に困ってたやつね。ここの海洋資源はそもそも論、ワイらじゃ取れへんよな。わかるかい?次に、それを釣り針につけて針まで誘導したのが今回の作戦よ。ワイら源會、母体はコードEL 元々孤児の集団。ぶっこ抜いた幼年共は実力主義の上下社会と思てるわ。だから結果伴えば必然と幹部に適した体を与えうると彼らは思ってるんや」

 

「ワイら4人以外はね。あらゆる面で高水準の僕ら以外はこの組織にいれば誰でもいい。凸凹ながらガキだけで組ませた半グレ愚零喰怒奴らには身体増強いうてステロイドを常用させて年齢をごまいてる」

 

「ついでにウチらから指示を出して近隣組織幾つもと戦わせてた。それは複利っちゅうもんやけど。さっすがな事に僕らもだけど"あの教育"を受けてきた彼らは見事にジリっとジリっと天羽組に戦況を維持させてこれた。空を切るような愚零喰怒の隠れ家の位置もワイらからは丸見え。というか直前に位置連絡してもらってもうてるがなと。せなってそなって愚零喰怒の中枢の情報を渡して俺らは顔見せず完全犯罪の代理カチコミ決めさせたってのが事の顛末や」

 

「源會の今のメンバーは4人。だけど今天羽組の後ろ盾がある。商店街に孤児育成施設を作ろう。彼らは兵隊として源會に送られる。あの仮組み半グレと同じようにワイらに使われて死ぬ。そしてあの余った海路では武器輸送をしよう。天羽に直通で売っても味方さん極道に売ってもワイらで売ってもええ」

 

「組織形態的にはランニングコストがかからへん。腐った殺し屋組織に忠誠も復讐もする気あらへん。何もかも利用してこれからは楽ーに生きる。そう。もうほぼほぼ俺たちの悲願は達成したのさ」

 

 

 狼谷EL幼年部隊の足抜け。遡り、現在から20年前のとある戦地に移る。

 

「はぁ。ほんと金山体制さぁ。疲れちゃうよな。そこのおっちゃんさ」

 

「Ah. oh? オマエハ...... コードFang。うかねぇ顔してんna. ツーカおっちゃん言うなあんたの方が年上sa.」

 

「まじか、コードcrash。いやナヌカ...... ジャン笑」

 

「名前...... おっちゃん呼びわざとka...... マジクエネーhumanだyo.」

 

「そりゃそうさね。幼年卒すぐで足抜けするのに適した人材を探し続けてたんだからねぇ」

 

「率直に言う。貴凛町の幼年部引き連れて楽して生きていかないすか?起業して生きていこう。源隊長なら許してくれるよ多分」

 

「ha? バカか?お前は。明日死n回目、常々資金がねぇyo。殺しまくってかっぱらう半グレしてくなら楽とは離れた本末転倒sa.」

 

「金ならこいつが用意してる。女型暗殺部のTOPハニトラガールだ」

 

「なんda?このメスガキ幼年部卒すらしてなさそージャマイka」

 

「オラ!このハゲヘッドが。幼年部なんて行ってねーカスボケが。エリートなんだよ。社会は表も裏もロリぺド専の巣窟だからあたしは暗殺部直行で何万人殺して来たんじゃ奥歯ガタガタいわすぞボケ」

 

「コードgoose。やめときいや」

 

「はぁ元気girl、逆にim. need. 一緒に仕事出来る気しないwar」

 

 観月の拳に力が入る。瞬発的なフックが飛んだ。顎を揺らす正確性が力の必要性を減らしているんだna,

 

「はぁあ?!!てめぇ頭が高ぇぞクロンボ!!脳髄ぶちまけやが」

 

 あげる拳には、反射で返す拳sa,

 

 手馴れた鉄拳だが。この身体相手じゃ殺しちまうよな。白目剥いてるJamaica,

 

  

「あが、かはぁ!い......た い。悪いことしないからやめて...... 」

 

 図が一気に低くなったwa. はっ。こいつがエリートさんka. エリートは物覚え良くて楽で良いna,

 

「言わんこっちゃない。すまんcrash、手間かけた。こいつバカでいっつも約束事しないとトリガー軽いからねぇ」

 

 Fangオレカラの言うこと聞くようにワザとイタメつけさせたクセni. このクラスの速さに手加減して影響ない部位イタメつけさせるのムズいんだzo,

 

「これからこのメスガキにおまんま食わせてモラワナナランノだからカラダ大事にWhite?」

 

「あはは。上手いね」

 

「じゃ、観月。行くよ」

「はぁい......♥fang様」

 

「チッ」

 

 デキテヤガル。Fang&goose. foo,

 

 

 はあaa. 特に幼年部の管理は固く無えna. 恐怖教育の賜物で言うことの聞きも良いna. 大方ここらのやり口や使い所は知っての連れ出すだrox,

 

 野戦地の夜すら大まかに何するか計画資料を作るze. フクロウも鳴く寒い夜mo. 中等部トップにはペンを回すだけの仕事に時間はかからねぇyo,

 

「....ふぅ。書き終えたwa」

 

 こんな感じka. 大方Fangの反応も察し通りだっta,

 

 完遂に数年掛かるが大方でけぇリスクも無e,

 

 源會結成と思い出の拷問へ。直前からは時が10年が経つ。

 

 いや、ワイらの回想からは5年か。もう大分と自適な生活をしていたなぁ。ワイの名は狼谷や。そしてこれから始まるのは、いつか見ている揺れる幻想だったりしてな。

 

「客da. 刺す方の奴na」

 

 さぁすがに1部隊まるまる足抜けさせたら部隊長が殺しにくるか。

 

「はぁ。流石に幼年部隊丸ごと引き抜いたのやばかったなぁ。観月俺の代わりに玄関あけてー。撃って凪いで即出るから」

 

「はぁーい狼谷さまー!」

 

 ガタターンン バババっとガキがクリスマスプレゼントの紙箱を開けるように勢い良くドアを開けると同時に部屋から撃ち抜けして飛び出す。

 

 故 源隊隊長 源義智ミナモトヨシサト。彼は毛利や先代銀田家当主の1個前の世代のコードEL最強である。だが、耄碌してる方で、最強は代替わり後だ。

 

 現代義経と呼ばれる傭兵指揮と槍術、身軽さや絞られた身体から繰り出すあらゆる型の武術、格闘術、柔術を得意としたとされる。

 

「待て狼谷君!わし死んじゃうよ」

 

「師匠殿。冗談やめてください。粛清命令出たんでしょ。殺しに来てないなら何しに来たんですか。はッ」

 

 冗談じゃないコロシだよ。粛清だよ。相対瞬時殺すと決めなきゃ1秒先に首だけになるのはうちらの方って世界だ。

 

「ガフッ。マジ。死んじゃう」

 

「肩。あの切れてますよ」

 

 だが袈裟に落としても反撃してこない。うーん。困ったけど。訳アリみたいだな。

 

 

 ......

 茶の間通した。まぁ体裁はもうきついが。

 

「死なれるおつもりなんすね。何を思ってこんな事を?」

 

 語るのは擦れ残った残滓ってやつで実体の無い煙や残り香の類だった。ほんっとに耄碌したな。

 

「わしは昔からダラケたくてもダラケられなかった。ナマケたくてたまらなくての。疲れきってここまで来たんじゃ。無論この世界に生きてきて今更お前たちにかけるような他者愛なんて捨てておる」

 

「でもやりたかった生き方をこれからするお主らを見てたら、少しただあんたらにずっと怠けてほしいと思ったんじゃ。ただの。狼谷ィ。怠けるにはあんたの拷問センスは皆無じゃ。わしの跡って思えなければ殺すしかない。代わりに怠けるなら足抜けしても怠けられるぐらいの強さを手に入れてからじゃ。お前はここ一番で相手を殺してしまうからの。んじゃからワシを削れ」

 

 ふーん。なんか。もうろく、というかすり減ってるなぁ。そも心の臓まで狂ってないと暗殺メンタリティなんて持たないのも事実かな。最強だなんて、その時代の一端でしか無くて実際彼が最強だった期間は短かったし不作だった。

 

「...... わかりました。源隊長。始末させて頂きます」

 

「ふん。狼谷。ほんとお前は顔色変えないねぇ。ちなみにミスったら本部へわしの馬鹿弟子がここの位置を知らせるようになってるからの」

 

 僕が思うにこういうのはメスに限る。人切りに適していて人の治療を超え人の皮剥ぐのにも向いている。

 

「あんたを拾った大阪の商店街をのぉ。ミツの奴が仕切ってシノギしとるらしいんじゃわの。ミツあいつ今幹部やってるけどあいつは大成するわなぁ」

 

「あー、よく行きましたねー。殺しに。何度もご協力いただいたの覚えてますー」

 

 ズーーーペリリ 剝いでいく。常人というか人であれば目から血を吹き出すほどの痛みに悶えるだろう。恩師の反応は微かだ。おそらくもうかなりの感覚をぶっこ抜いて死ぬ準備をし終わっているか。

 

「ぐ、やっぱワシは俗っぽい。えせ関西弁な事が悩みやったんやわ。大阪ヤクザの大嶽とかミツみたいに土地の色に染まりたかったなぁ。下っ端やけど城戸ちゃんはええ子やったし大嶽のとこのセガレも強くなっていった。天王寺組。馬鹿みたいに辛かったあの時期から考えても異様に暖かかったよ。生まれ変わるなら、土地の為に生きたいわ」

 

「めちゃくちゃ楽しそうですよねー」

 

 と。まだいけるな。

 

「あぐ......ぁELは転身が多いのに...... 刺客しっかり送るからのぉ。ふッ。もっとオープンにやればええのに」

 

「ふぅ。どうですか?加減は」

 

 根の根まで剥いだ先には念入りに引き抜いた後の苦痛はぶっ壊れ突き詰めた先の感覚神経脳細胞さえも抗えない。死ぬ準備の為を超えた先がゴールなんだろうね。

 

「はぁ。やっぱ袴田隊長や毛利さんとかの穏健派と、銀田派閥とか、櫻田んとこら遺伝子班ら保守派の溝だよねぇ。いつかやっぱり内部でかち合うのかなぁ。もうさっさと1抜けさせて頂きますわ」

 

「そうじゃのぉ」

 

 ......6時間の緻密な削ぎ落としを終えた。

 

 疲れたー。

 

「ふぅ。やっと通知装置取れた。やっぱ痛覚死んでますよね」

 

「まあの。やたら攻撃受けてたから慣れだと思っておる......の。皮膚も肉も無いのに声帯系の筋肉は残しおって。抜かりなくできておる...... じゃないか。ボケ」

 

「名残惜しいっすねぇ。迷惑おかけしたっす。隊長」

「怠けてこい。合格じゃ」

 

「……ありがとう... ございました」

 

 薄ら暗い拷問室から出た時の朝日はなんとも心地よいもんでそれがなんとも気味が悪かった。

 

「かああああ。やっとマーク外れたなー」

 

「シャッチョ。ソウだna. yamaは越えta源會ノ誕生日ダyo」

 

 

 こうしてしばらく。

 

 はぁ。改めてこうして今瓦解、報いを受けてみて思うのは色んな人の人生を搾取したこと。それに対して今更思うことってなんだって。

 

 ちゃっちい話。報いは自分に帰ってくるとか。そんな。

 

 ....... うちの、思えばまぁうーん。やっぱ。

 

 血溜まりの中、朦朧とする頭に幸せへのルートがいくつもいくつも思い浮かび逡巡する。

 

 きっとそんな事しなくても良かったとは思うんだよ。だから、ナヌカ、櫻坂、観月。謝意と涙が溢れてくる。欲しかった暖かな明日が次第に霞んで見えなくなっていく。

 

「どこ...... アシタ ナヌカ ザカ ミヅキゴメン 」

 

 

 「あーあー虚ろに涙なんか流しちゃって。何考えてんだ。あぁ!?てめぇが湿っぽく逡巡する権利あると思ってんのかァッ!!クソォァァ!!」

 

 脳髄が1ミリの残滓も巡らせない様に何発も何発もぶち込んで、そしてイラつくままに滅多切りと刃を振りたくる。血涙がしとどに溢れて、復讐が大脳皮質を改めてくれる、それが俺のわだかまりを消してくれるんだという幻想とやらが間違っていた事を、まるで自分を切ってんのかって程色濃く刻みつけた。、臓物の破片がこべりついて自分と血の境界が揺らぐとボソッと声に出てしまった。

 

「いい場所に住んでやがった。やはり」

 

 呟く神城のセリフは本当はもっと早く出るはずの捨てゼリフだった。狼谷のヤツ。源會。諸悪の根源のくせに。5人共々の汚ぇサイコロステーキが出来ただけだ。殺して刻んでも弄びいたずらに肉片を投げても。

 

「晴れないんだよ。気分が。気分がよ!!」

 

「気分がァ!!!!おかぁぁああさぁぁぁぁあ!!!!とうさあぁぁぁぁあああああ」

 

「ああああああああぁぁぁああああ!!!クソがああああああああああぁぁぁ!!」

 

 ぐしゃぐしゃな思考と極彩色の点滅が全ての思考をガラぐしゃに壊す。殴りつけたモニターの様に、風景画を怒髪のままにブチ破る様に、色とりどりの料理をぶちまける様に。

 

 俺の慟哭は復讐の無意味さと生きて来た意味のジレンマでぐちゃぐちゃと化していたと思う。

 

 

「来たか」

 

 結実はここに為るとせん。20年間のモノローグを終え、ここに来たる。夜空には月天棚引きたる雲一つ。

 

 閃く刀身は向かう手から月が反射し煌めく。神城の直刀、名も無き刀匠が結んだ名工を穿つ、才と教育の天賦。軍帽とローブを深く纏う姿。

 

「神城。俺はお前の復讐心を止められないことぐらいわかっている。戦う事でしか、結末を迎えられないならば。その手が弓を引くなら、引手を始末するのが天羽組だ。わかるか」

 

 銀線は双眸とお互いの刀で乱反射する。

 

「てめぇ俺が強えのは知ってるだろ?威張ってんのも顔だけだ。てめぇを殺して全員殺して殺して殺して殺して俺はキリをつけなきゃならねぇ」

 

「童よ。戯言を」

 

「しゃらくせぇ。示してやる。お前の骸に」

 

「舐めるな。日進月歩。こと月日が経った今、貴様の自惚れは後悔に精算されるだろう」

 

「てめぇ、あの時9つのガキに取られただせぇ1本100倍で取り直してやっからな」

 

「ほざけ」

 

「見てろよ」

 

 「「あぁ。俺はあの時とは違う!!」」

 

 踏み込みは俄然俺が先ッ!神城が駆ける。

 

 叩ききって迎撃。一手終わりだ。和中が構える。

 

 機先を制したのは神城。クナイをなげる。

 

 と見せかけたそれはフェイント。超人的なハンドトリックにより投げた振りのクナイを逆手に持ち直し首へと凪ぐ。

 

「なんだよいきなり死ぬか!ああ!?」

 

 フォームが完璧にハマっている。なぜならそれを避けようとも、もう片方の腕には直刀の逆袈裟振りが待っている。

 

 ハサミギロチンだ。

 

 ただこの程度では喰らわない。ステップでクナイのリーチだけ避けながら日本刀で直刀を受ける。

 

 そして咄嗟に六角を抜き膝を侵略する。2の手を引くのは例に無く早い。これは負けの蕾を摘む戦い。手が早る。

 

 ガツン

 

 膝は貫けない。

 

「鎧は着ないと危ないだろうがよォ!ジャップ!」

 

「うるさい。かぶれもの」

 

 膝鉄一つ取って、和中の兄貴が抜けない硬さを誇る。鋳鉄の最高峰。刀匠旅団ここにあり。

 

 直後和中の腹にクナイ飛ぶ。

 

 一刀で違和感を実論として見抜く。このクナイ。あからさまに飛ぶ向きがおかしい

 

「ふぅっ」

 

 1つ目のクナイは右からカーブし、左目の横を遮る用に空に通り過ぎる。その違和感から、次は大袈裟に踏み込み右下へ避ける。

 

 二本目腹に投げたクナイは、重心から空力を抱え抵抗に逆らうように急上昇。コンマ前の首の位置となる投擲とオーダーメイド品の戦術。

 

 体制を低くしていなければ胸へ刺さっていた。

 

 クナイを避けつつ刃を弾き飛ばすが、それより先んじた、別のクナイにより、遮られた左目横に回し蹴りの足が通り過ぎる。

 

 直刀を通すというのに、クナイで遮蔽された視界を蹴りで飛ばす。人の技では無い我流武術の応酬。近すぎる。お互いに長刀の位置では無い。

 

 和中下がるッ!と共に先程の六角を飛ばそうと投げの姿勢に入る。

 

 だが神城、異常な速さの速度で追従、なんと摘んだ六角を鉄鋼の平手で弾き飛ばす。往復ビンタの返しの平手が頬を襲う。

 

 頬に強烈な裏手がかする。それは切り傷の様に血が滴る。

 

「あっひゃひゃ!あー笑えるわ!顔にもう入ったよ。あんたはなんにも進歩してねぇのか?なぁ!俺が苦しんだ反省で肥えた腹がぶくぶくで俺の連撃に声も出ねぇかよ!クソが!てめぇ!カッ殺してやる!」

 

「無知蒙昧。これが全てと思うなら座して死せるだけだ」

 

「絶対にかわせない。目で追うことすら不可能」

 

 全膂力を尽くしたバックステップ。それにより神城の追従を振り切り、剰え息を落として再度全力の突きへのカウントダウンが始まる。

 

「南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。神城。お前を俺は忘れない」

 

 

 瞬間 飛ぶ剣先が向かった。

 

「ぐあがああああああああぁぁぁ!いであああああああ!!ふぅ。うらああああッ!!」

 

 神城が悶え、大声をあげた。そして切り返す様に口角をあげ、睨んで笑った。

 

「あぁ。いてぇが...... もはやどうでもいい。捉えたぜ。ぽん刀」

 

 その時躱せないと踏んだ彼は心臓、頭部、首を隠すようなタックルのフォームのまま突撃し肩部のアーマーごと貫かせたのだ。

 

 肩部筋肉と鎧の干渉が合わさりそれは引き抜くことが困難な状況を生み出したのだ。

 

「あんたの負けだよ。バラバラにして焼肉にした後アラビアの野犬に食わせてやるから」

 

 瞬間、それは明らかに引き抜くのは不可能。天京戦争の六車を思い出す刹那、日本刀を躊躇せず離す。よって直刀の返し手を避けきる。

 

「徒手であろうと肩の使えないお前に負けるものか」

 

「んんだぁと思うだろぉ?肩は動くみてぇだ。カミサマやり過ぎだって思わねぇか?さぁ。死ね。二刀流だよあッ!!死ね下衆野郎ッ!」

 

 半月状に両刀の横凪が飛ぶ。だが片方の手を蹴り抜き、直刀の照準の合わない切り方が飛ぶ。そして次に日本刀の袈裟が飛ぶ。和中はそれを両手持ちのクナイで受け、瞬間手離し即神城の片腕をキメにかかる。

 

「二刀流にしては出来損ない。京極の剣士の足元に及ばん。」

 

「う....ぐああああああらっしゃっ!」

 

 強引に回転し腕を引き抜くも、亞脱臼している。

 

 即時、和中は落ちた剣を拾おうとしたが今度は追従した神城が先程の脱臼した腕を頬目掛けて飛ばす。

 

「遠心力で直すのは脱臼の基礎知識だぜ」

 

 和中の額は裂かれて、片目が血に染る。

 

 そして神城は腕の脱臼が治っている。

 

 確実なダメージを受けながらもすんでの所で五体満足な神城

 

 刀を奪われたり額を切られたり確実な弱点を作る機会を奪われ続けている和中。

 

 戦いは決着へと動く。

 

 

 俺の誇れること。復讐に溺れるクソ野郎な俺だがあるんだ。鉄鋼の精製、刀剣の鋳造、チャカや製鉄のビルディングこれら全て、あのクソどもの開拓した物の横取りだが中東の物乞いに教える事から始めたここ10年。

 

 アイツらが上手くなっていく姿が俺の生き方に光を刺してくれた。

 

「和中ぁ。てめぇが本気と思ってる俺にはまだ残しているモンがあるんだ。味あわせてやる」

 

 バチン

 

 鎧の編み込みの目を切った。

 

 鎧が落ちていく。短刀が縛られているが、和中はそれから目が逸らせられなかった。なぜなら渾身の意匠が施され真の心がこもった刀剣。

 

 小林の龍桜刀 紫蘭みたく刀剣家の意匠や使用者の趣が光る品を、剣の道を辿った和中はマークすることしか出来なかった。

 

 それは正しく神城という男の牙であると確信せざるを得なかった。

 

「こっから最終ラウンドだぜ」

 

 

 そうだ。俺の一生が終わっても俺は笑えるか。その分岐点とすら言えらぁな。あんなに大きな騒ぎ方で拒絶したってのに突然みっかかって奴ァ言うんだ。

 

「どうせ猶予があるんだろ?な?待ってけよ。エゴったらしいが聞かねぇとは言わせない。1ヶ月間を俺にくれ」

 

 とな。

 

「神城。死ぬなよ。お前が殺したい相手が居るなら殺せば良い。お前の力は最強だ。だけどこれ持ってってくれ。お前が直刀で負けるなら、使ってくれ」

 

「檀崎ィ。悪ぃな。ありがとう。行ってくる」

 

 逡巡するわ。力が湧いてくる。あぁ、そうだろ。ここで終わりなんだ。終わったらまた……

 

 また金床の前に座りてぇな。

 

 地面を蹴り抜く神城、直刀を袈裟に飛ばす。和中は安易に受けず後ろに躱し撒菱を飛ばす。撒菱の痛みを気に止めず猛追する神城の横凪を頭を下げ躱す、すると先程撒いた撒菱を手にした神城が右目の眼前へ飛ばす。まぶた横を割くが、けして目を閉じない。閉じられない。それが動くまで絶対にマークは外せない。

 

(動いたなッ!)

 

 マークした短刀はまさかの左側から投げられる。

 

「ぐぅあ!」

 

 光芒を放ち乱反射する刀剣は位置が異様に掴みづらい。だがおおよそ猛者のヤマカンを元に避けたはずなのに大幅にそれた右肩首筋を襲う。

 

(これは....重心の偏りで飛ぶ方向が変わるよう細工されている)

 

 直後引き切り飛ばすような横凪が和中の脇腹を割く。

 

「もらったああああああああぁぁぁ!終いだああああ!」

 

「ガッ...... 」

 

 が...... 和中はその時のなぎに縦に手を入れて何とか芯をはずし、なんとジャーマンスープレックスの姿勢に決め込んだ。

 

「ぐ、うっしゃあああああああああぁぁぁ!」

 

 腹から力みで血が吹き出す。体がベッキリ真っ二つに折れようとこの一撃は外せない。

 

「うがああああああああああああはあああ」

 

 極まって入ったそれに視界が暗点と赤褐色の斑紋と切れた眼球のヒビ、グラグラの視界。

  

 頭が下になり揺れる神城の脳。だが投げる直前隙を見て短刀を足に突き刺していた。神城のフラフラの脳みそそのまま懐のクナイを突き刺しにかかる和中。震え掛けの体で避けるにはあまりに厳しいが神城は腕に突き刺させクナイの刺突の択を殺す。

 

 そしてお互いが現状の血の気を限界までたたせる。

 

「ぐぅううああああああ!」

 

 両腕をキメきれていなかった和中はもう一方の腕で渾身のフックを食らい、弾き飛ぶ。

 

「ぐかはァッ」

 

 景色が霞む和中は何とか先程腕に刺したクナイで起きがけの神城の膝を穿つ。

 

 もうお互いに避ける余裕が無い。必殺は次の一手に決まると互いに確信した。

 

 

 俺は足に1つ、肩に1つ特殊短刀が突き刺さっている上、左目が見えず腹から胸にかけてが盛大に切られている。

 

 上手く体の芯を外しているおかげで指はないが両腕動く神城は、腕に1つ膝に1つクナイが刺さる。こちらもまだ足腰動くが投げた時の震えが軋らせる。

 

 お互い。どれだけ死力を尽くしても勝負は決まらない。

 

 策も細工も出尽くし、満身創痍。技も出ない。

 

 ここから先は。

 

「チェエエエエエリァァァアアアア!!!」

 

「だぁうらああああああああああああ!!!」

 

 お互いの雄叫びが合図だ。互いの直刀とポン刀の突きを真正面から浴びせ、受ける。

 

「ガッハァ.…..」

「ヴォアァァァ」

 

 

 柄まで刺し合わなくても本来は貫通してれば同じだ。だが突き刺した腕を捻り上げる力も切れ、勝負がつかないまま刀を握るだけの時間が続く今この状況は刀をより長く握れた方が勝つ。もうとっくに3時が過ぎ、アラートが発動している。

 

 

「ぁ.............っ!」

 

 刀の音のしない空間。急いできた小峠は起こっている状況に驚きで口が空く。

 

「こんな事が有り得るのか....!!」

 

 お互いの長刀を腹に柄まで沈め、お互いが刺した刀を握る

 

 その2人を草葉の影から見る。

 

 だが勝負は終わりの時を迎えていた。

 

 僅かずつ力みに綻びが表れる。鬼の形相の2人の足は無理な力みで震えを起こし始める。そして。

 

「ああ............ ヴぁ......ぅ」

 

 力む手から刀がスルりと抜けていく。勝者は...

和中蒼一郎

 

 かと思われた。だが和中の兄貴が思わぬ行動を起こす。

 

「健...... 佑」

 

 刀を握りしめ、腹の穴に耐え、その込めた力のまま神城の握る刀に手の力が抜けきらないように手を当てる。

 

「済まな......かった。幼いその清い手を...... 沢山汚させてしまった。辛き別れを沢山させてしまった。...... ずっと...... 許せないのなら。せめて。意地になって出来なかった。俺の......情けない......詫びを」

 

「そう.......いちろう」

 

 2人の力が揺らぐ.....糸が切れたように2人は垂直に......

 

 

 時は2ヶ月半をすぎる頃。彼らが次に気づくと2人とも人口呼吸器をつけて病室だった。

 

 

 ......あの時俺は草葉の影から飛び出そうとした瞬間だった。草葉の影から別の影が出る。

 

「天羽...... 組長!?」

 

 本当につくづくこういう時、親父の勘は冴えすぎている。アラートが鳴った丁度その時に夜の風を吸いに行っていた。

 

 俺の書いたアラートは親父の目に留まり、俺のアパート1日貸し出しは耳に止まっていた。

 

 それは分かる。でもなんでここに親父が居るんだ?!

 

 俺も草葉の影から飛び出す。

 

「わしは事故から先の殆ど全ての事実を既に知っていた」

 

 振り返り親父は話す。

 

 神城による源會の惨殺の後で、源會が自身の身内の半グレで出来レース仕掛けていた事等、源會の闇が芋づる式に中身が割れていったんじゃ。その源會の武器輸出の際知識のあるカタギがたまたま海水内の偽装された箱を見つけ、引き上げ、そのまま問っかけてしまった。そして船舶強盗に見せかけて殺されていた事じゃ。

 

 その子供が生きて引き上げられた事を知る頃にはわしはもうとっくに組長になった後だった。

 

「ここで最も行いの悪辣なる者。明らかに現時点で確実に言えるのはこの神城健佑では無い。源會はもうない」

 

 そう。彼がいなくたって事実を並べるだけでわかる事。

 

 こちらは締結済みの連合の行いでカタギが死に、こちらはそれらを糧に利権を得ていたのだ。

 

 内蔵の傷はいかんせん悪かった。ただ闇医者の予後処置が良く、そのまま海外の病院に移送しドナーを即座に用意した。この組の判断でのミスでこれ以上死なせてはならない、と。

 

「天羽組の組長として。うちと源會との連合の悪辣で罪も無いカタギが何人も死に、その子神城健佑。貴殿には何にもとても変え難い辛い日々をおくらせてしまった」

 

「本当に ......申し訳ありませぬ」

 

「言葉に変えにくい。この場に相応しい言葉が見つからない ......」

 

 そうつぶやく彼のわだかまりはもうこの場所にはなかった。

 

 半年後どうにか2人はまた地に立ち会えた。

 

 

「健佑。これから何かやる事はあるのか?」

「勧誘のつもりか?いかねーぜ。俺はまたヒカリモノ売りに戻ろうと思う。なんにも変わりゃしないさ。でもなんか今。俺はやっと。やっとツキモノの取れた1人の人になれたんだな。あぁ。道にばら撒くと決めた組に目を閉られたんだよ......な。かち合って勝てなければそこまでの命だった。そんでも今ツキモノが取れて今やりてぇのはやっぱり旅団の頭張って商人の鋳した刀に思いを馳せることだった。俺はもう少しで失ってたんだな」

「じゃあ」

 

「.............そうかい。元気でな」

 

 15年の長い長い後悔。

 

 彼もより大きく長い長い悲しみに暮れ、その間組も大きく変わって、この話に関わる人も果ては知っている人も少なくなった。漸く1幕キリがつきこの話は終わりゆく。夢幻泡影。雲や霞を見つめるように事とは定形をなさなくなりゆくものなら俺はどれだけ長くの時、仁義や任侠を語り合えるだろうか。

 

 ――――――――――小峠 華太




初稿 2023: 6/13 ハーメルン投稿版 2026: 11/3

ミズヘビです。

パンツァー一本背負いで1日で書き上げた初々しく苦々しい初稿をシェイプアップして3年目。神城組長は出たし決着は馬渕vs長瀬でやった。もうゆうかん御大にとってはN番煎じレベルの展開かもしれません!私の感想ですがそれは御大の作るヒューマンバグ大学の素晴らしさの証左に違いないですな。

ミズヘビでした。

Ps. 1回消えてヤケクソに思い出した限りで後書きを書きました。もう二度と間違えねぇから!

オリジナル原作。

今、窓から三時の御伽戦線で明日から僕らは異世界出向。現実改変目的のチート魔道具魔獣相手にファストライフで対抗中

を是非ともよろしくお願いいたします。

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