ウマ娘世界に転生した。
二次創作ではよく見掛ける転生だけど、自分がまさか経験することになるとは。
前世では男だった筈だけど、ちょっと記憶が曖昧なまま、可愛らしいウマ娘になってしまった。
ウマソウル名:ネタケイオリシュ
ネタ系とはこれ如何に、と身構えたものの、優れた身体能力以外に特段変わった事も無く、順調に両親の愛情を受けてすくすくと育ち、地元では一番速いウマ娘として順当にトレセン学園に入学した。
ああいや、変わった事というか変わってない事が一つ。
この世界、「馬」の字が普通に存在している。
ウマ娘世界だと点の数が二つじゃなかったっけ?
前世を引き摺る身としては助かるけれど、何かおかしい。
「私はサイレンススズカ、よろしくね。」
トレセン学園で同室になったのはサイレンススズカ。
言わずと知れたアプリ版の育成対象である。
だから、ここがウマ娘世界なのは間違いない。
だが、スズカさんといえば走るのが大好きなスラリとした体型が魅力のウマ娘だった筈だ。
「どうしたの?」
何でも無いですと誤魔化したけれど、俺が彼女の胸元をガン見していたのはバレているだろう。
だってさ、色んな所でネタにされていた位には、スズカさんは貧乳という設定だった。
それなのに、このスズカさんには普通に胸部装甲が存在している。
「・・・さっきから、そのスズカさんというのは止めて頂戴。」
ちょっと馴れ馴れしくし過ぎただろうか。
そりゃあ胸をガン見する輩に親しげに話しかけられたら嫌だよな。
そう反省していたら、どうも違ったらしい。
「サイレン ススズカ。サイレンと呼ぶか、せめてススズカと呼んで。」
・・・どういうこっちゃ
混乱している間にカラオケに連れて行かれて、スズカ・・・ススズカさんの歌を沢山聴かされて、ついでに俺もそこそこ歌って、仲良くなってサイレンさんと呼ぶことになっていた。
どうもこの世界だと煤塚さんちのサイレンさんらしく。
オレがススズカさんと呼ぶと、ちょっとアクセントが変らしい。
ススズカさんは、アプリのスズカさんじゃないと割り切れば、前世で好きだったスズカさんと良く似た素敵な人だった。
逃げが得意で先頭の景色が好き。
学園生活が始まると、そういうちょっとした違いに驚くことがあった。
例えばナイスネイチャンってのはアプリのロード時間に出てくるネタだった筈なのに、この世界ではネイチャではなくネイチャンが正しい。
三女神像の格好もちょっと違う。
本来は水甕を担いでいた筈だけど、持っているのは海苔の缶みたいな円筒形の何か。
三女神像の前を通った時に、ふと「思い浮かんだ」のは、この缶は遠心分離機だということだ。
多分転生特典的な何かで三女神様が教えてくれたんだろう。
遠心分離機・・・中身をぐるぐると回して、混ざってる液体を比重ごとに分ける装置だ。
ウマ娘世界の大きな特徴といえるウマソウルは、当然ながら元になった馬の魂そのものではない。
その馬への想いや願いを元にしているからこそ、騎手や諸々の性格が反映されたキャラクターとなっている訳で、当然ながらその想いには不純物が混じる。
所謂R-18的な意味ばかりでは無い。
それこそサイレンススズカをスズカではなくススズカと間違えたような、本来のウマ娘世界には反映されない想い。
その不純物みたいな想いで産まれたトンデモなウマソウルの押し付け先がこの世界なのだろう。
それなら、俺みたいなオリ主が走るには相応しい。
実の所、原作のウマ娘達を転生チートで抜き去るのは罪悪感を感じていた。
でもこの世界なら。
ネタ系オリ主なんて名前のウマソウルが原作や元の世界を全く無視した活躍を見せても構うまい。
なんか吹っ切れたので、この後サイレンさんと滅茶苦茶カラオケした。
多分これ、別ゲーの歌好きで貧乳の人と混ざってるな?
そう思ったけど、もう気にしない。
この世界では彼女が正しいサイレンススズカなのだ。
そういう世界なのだ。
生徒会長がションボリルドルフなのはちょっと勘弁して欲しいけどな。
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この世界のナリタブライ”オ”ンはちょっと顎が尖っててなんか周囲がざわ・・・ざわ・・・としている。
カイジの人って競馬漫画描いてたっけ?
多分描いてたんだろうな。
その程度の「間違い」は知名度が足りなすぎて、この世界ではあまり力を発揮出来ないらしい。
だからこのナリブはあんまり強くない。
多分バクシンオーやチヨノオー繋がりでサクラの冠名になっちゃったオペラオーも、そんなに間違える人は居ないんだろう。
こっちのオペラオーもやっぱり強くない。
逆にゴルシは強かった。
なんだかんだ言ってルールは守るらしい原作ゴルシと違って、二次創作に時々出てくる解釈違いの愚行や悪行もやらかしている。
というか、そういう部分が分離されてこの世界のゴルシになっているんだろう。
元のゴルシが訳分からん事をやらかす御陰で、解釈違いの二次創作も多かったから仕方ない。
しかも、この世界のゴルシは芦毛では無く金髪だった。
そりゃゴールドなんちゃらと言われたら、競馬知らない素人は白い馬だとは思わないよな。
で、モデル業もやってる所をみると、シチーさんと習合されたに違いない。
どっちもゴルシだし。
ちなみにこの世界のゴルシはゴールドシップでは無くゴルシだ。
ウマ娘の宣伝とかで、散々ゴルシちゃんと名乗ってた効果なのだろう。
ソダシなんて名前の馬もいたんだ。
ゴルシって名前の馬がいたっておかしくない。
で、本名がゴルシと間違えられた分の想いもこの世界にぽいっとされた訳だ。
そりゃ強いよな。
「おう、どうしたタケシ、そんなにゴルシちゃんの顔見て。」
ばんばんと無神経に俺の背中をゴルシが叩く。
「ん?ネタケイオリシュだからタケシで良いだろ。
ゴルシとタケシ、良いコンビじゃねぇか。」
なんなら明日は一緒にゴールしようぜと笑うゴルシを見ながら、俺は自分について勘違いしていたことに漸く気が付いた。
そうか、タケシ・・・タケ氏か。
俺は単なる転生チート特典で速いだけかと思っていた。
でも、ここがウマ娘に限らず、競馬界の間違えた想いの集積場であるならば。
競馬界で真っ先に出てくる間違いは、恐らくあのレジェンドの名前になるだろう。
そりゃ強い訳だ。
「タケシでいいよ、むしろそう呼んでくれ。」
そう言って俺は露天風呂にざぶりと浸かる。
「でも肩組んでゴールは出来ないから、明日は頑張って追い着いて来いよ。」
明日は有馬記念。
この世界での開催地は有馬温泉である。
宝塚記念は宝塚で開催されるしライブもヅカ系の演出になる。
そういう世界だから仕方が無い。
そして、その間違いが多いからか、この世界での宝塚と有馬の連覇はクラシック三冠より重い。
チート転生者としてクラシック三冠も宝塚も獲った。
有馬も獲る気でいる。
とはいえ、このゴルシを筆頭に、他のウマ娘だって十分強い。
史実レジェンドだって勝ち続けた訳じゃ無い。
その想いを引き継いだからと、確実に勝てるとは限らない。
「ファイナルスではダート行くからさ、明日で決着付けようぜ。」
露天風呂から上がって、火照った身体を外気で冷ます。
こんな世界でもやはり星空は美しいし温泉は気持ちが良い。
何よりウマ娘になってレースが楽しくて仕方が無い。
折角転生してレジェンドの力まで貰ったんだ。
良いレースを楽しまないとな。
因みにこっちだとURAファイナルス。
本来の正しい名称はURAファイナルズ。
最後まで正しくないのは流石この世界である。
ベブルビーチの波濤
ワイアラエの奇蹟
遙かなるオーガスタ
子供の頃見掛けた何か良く分からんけど格好良さそうなタイトルはゴルフのゲームだったらしく。
良く分からんけど格好いいと何か覚えてしまった言葉ってあるのでは無いかと。
その頃近所のダイエーのゲームコーナーに置かれたUFOキャッチャーで、馬のぬいぐるみに書かれた名前も似たようなもので。
シンボリルドルフという名前の馬が皇帝とか呼ばれていたのも多分何かで見掛けた筈で、子供心に理解しようと努めた訳ですよ。
何か偉い王冠とかそんな意味でのシンボルという単語が、ドイツ語になったり何か活用形的なのになったりするとシンボリルなのかな、ドルフって何かゴルフとかなんかそんな感じで単語としてありそうだもんな。
小学生の脳裏で考えた内容を言語化すると、概ねそんな感じになります。
ウマ娘とその二次創作が無ければ、シンボリ家のルドルフさんだったと気が付く事は無かったでしょう。
気が付いてしまえばどうという事はないのですが、長年脳内の片隅に居座っていたシンボリルなドルフさんやサイレンのススズカさん達にも、三女神様の祝福がありますように。