「ただいま〜」
「ただいま」
夜、地球とキミは温泉旅行から帰ってきた。一緒にいた月と太陽は帰る途中で別れていた。
「旅行楽しかったね〜」
「そうだね」
キミはお風呂を沸かして入り、寝る支度を済ませた。
「おやすみ、キミ」
「おやすみ〜」
キミはベッドに入り、旅行の疲れからすぐに深い眠りについた。
気がつくとキミは、空も地面も真っ白で、周りには何もない場所に立っていた。そして、目の前には1人の人間がいた。
「初めまして」
「あなたは・・・?」
「私はかつて、地球さんの恋人だった人よ」
キミの目の前にいたのは、地球の初恋の人、「あの子」だった。
「え⁉︎あなたはもう亡くなってるのに・・・」
「天国から会いに来たの」
「えぇ⁉︎何で⁉︎」
「あなたにお礼を言いに来たのよ」
「お礼・・・?」
あの子は、事情を語り始めた。
「私はずっと、天国から地球さんを見守っていました」
「え、そうだったの?」
「えぇ。生まれ変わりなんてあるわけないのに、私が生まれ変わって会いに行くなんて言っちゃったから、地球さんはずっと私じゃない誰かを私だと思い込んでいた。それを見てて辛かったの。もう私はこの世にいないのに。私のせいで、地球さんを苦しめてしまった」
キミは深刻な表情をして黙った。
「でも、あなたが現れた」
「!」
「あなたのおかげで、地球さんは変わることができた。それが嬉しかったの。だから・・・」
あの子は、とびきりの笑顔で言った。
「ありがとう、キミ。地球さんを愛してくれて」
「・・・あ、あの・・・」
「何?」
「嫉妬とか、してないの・・・?」
「正直に言うと、少しはしてるわ。でも、地球さんが幸せでいてくれたら、それでいいの」
「そ、そっか・・・」
キミはある疑問が浮かんだ。
「ねぇ、1つ聞きたいことがあるんだ」
「何かしら」
「こうやって夢の中で会いに来れるなら、何で地球さんに会いに行かなかったの?」
質問を聞いたあの子は、一瞬黙ってから真剣な表情で答えた。
「もしも私が会いに行ったら、彼は夢から覚めようとしなくなるわ。そしたら、地球さんのお友達が悲しむでしょう?」
「あ・・・そっか・・・」
あの子のことをずっと追いかけ続けていた地球のことを考えると、納得だった。
表情を和らげたあの子は、キミにあるお願いをした。
「ところで、キミに1つ約束して欲しいことがあるの」
「約束?」
「私に会ったことは、地球さんには言わないでね」
「え?どうして?」
「もしかしたら私に会えるかもしれないっていう希望を抱かせることになるから。そんな残酷なことはしたくないの」
「・・・!」
あの子がもう2度と地球と会う気はないことを知ったキミは沈黙した。
「あ、そろそろ時間みたいね」
「え?」
「さようなら。地球さんをよろしくね。キミ」
キミの視界が白い光に包まれた。少しして光が消えていくと、そこには見慣れた天井があった。キミはベッドから起き上がった。
「おはよう、キミ」
何も知らない地球は、キミの部屋にいた。
「おはよう、地球さん」
キミは何事もなかったかのように、地球に挨拶をした。
(地球さんの初恋の人に会ったこと、バレないようにしないと・・・)
そう思いながらベッドから降りたときだった。
「ねぇ、キミ」
「何?」
「もしもまた、旅行に行く機会があったら・・・」
地球はキミに顔を寄せて言った。
「今度は、2人きりで行きたいね」
「え⁉︎そ、そうだね・・・」
キミは地球の突然の提案に驚きつつ、頬を赤らめた。
地球とキミの幸せな日常は、これからもまだまだ続いていくようだ。