貞操逆転した新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話 作:ぽこちー
『虚狩り』。
それは、ホロウ災害に対抗できる力を持つ人物へと贈られる称号である。
100年前には7人もの『虚狩り』が存在していたが、現在では『星見雅』と『葉瞬光』のみとなっている。
『葉瞬光』はつい最近虚狩りの称号を得たばかりであり、実力はあるものの、いささか未熟な面が見られる。
一方、『星見雅』は実力、人気ともに凄まじく、ファンクラブが多く存在している。
街中を歩いているだけでファンに囲まれ、サインや写真を撮ってほしいと行列ができるほどだ。
故に、現在の新エリー都で虚狩りと言えば、真っ先に出てくるのは『星見雅』である。
そして、そんな『星見雅』の現在はというと——
「もっと近くに寄れ。そう、肩と肩が触れるくらいの、ちょうど良い距離だ。……ふむ、胸の奥が温かくなった。むしろ、熱すぎるくらいに。……すまない、やはりもう少し離れてくれ。この修行は、私にはまだ早すぎたようだ」
ルミナスクエアで、『あなた』と絶賛デート中だった。
星見家に代々受け継がれてきた妖刀、『骸討ち・無尾』。
『あなた』はジャスティン・ブリンガーの騒動で、その力を目の当たりにしている。
刀に込められた呪い。
刀の使用者に殺人衝動を駆り立て、狐火が溢れ出す。
ホロウ内で刀が暴走した時は、『あなた』はその鞘を持ち、雅と2人で刀を納めることでなんとか収拾がついた。
だがその後も、刀の呪いに取り憑かれ、暴走した雅と対峙することとなった。
『あなた』は傷だらけになりながらも、なんとか暴走する雅を抑え、市民への被害をも抑えたのだ。
だが、それ以上に刀の力は膨大であることも知っている。
エーテリアス化したブリンガーを、一太刀で一刀両断した雅の姿は、今も『あなた』の脳裏に焼きついている。
現在の雅はその呪いに打ち勝ち、その力を存分に扱うことができている。
だが本人は、いつ刀が暴走してもおかしくないと言う。
そのため、暴走を抑えるための修行として、雅は『あなた』と共に行動している。
「暴走した私を抑えることのできたお前だからこそ頼めることなんだ。だから、頼む」
そう頭を下げた雅に対し、『あなた』は当然、とその願いを聞き入れたのだ。
だが、『あなた』はその後に雅がボソリと呟いた言葉を耳にすることができなかった。
「そしてこれは、花嫁の修行でもある。誰もが羨む夫のお前に相応しい妻になるための、な」
そして現在、『あなた』と雅はルミナスクエアで絶賛ラブラブデート中である。
道行く女性に見せつけるように、雅は『あなた』の腕にしがみつき、けれど、すぐに熱くなり距離を取る。その繰り返しだ。
雅が抱きつくたびに腕に柔らかな感触を感じ、悶々とする『あなた』だが、こんなことで動揺していては、もし雅が暴走した時に抑えることができない。そう言い聞かせ、鋼の意志でなんとか耐え続けている。
すると突然、雅が突拍子もないことを言い始めた。
「……初夜は、いつにする?」
初夜???
一体なんのことだか理解できない『あなた』を置いて、雅は淡々と続ける。
「あの時、私はお前の鞘に私の刀を収めた。だが今度は逆だ。お前の刀を、私の鞘に収めなければならない。それは分かっている。そのために、私はこれまでたくさんの修行を行ってきた。だが、どうもまだ決心がつかないのだ。女性である私がリードしなければならないというのに。我ながら情けないと思う。……あぁ、安心してくれ。膜は破いていない。お前のために取っておいてある。だが……もしかしたら私の知らないうちに破けているかもしれない。仕事柄、身体をよく動かすからな。その時は、許してくれ」
淡々とした表情だが、頬は少し赤く染まっている。
いつもの雅とは思えないほどの早口で、『あなた』はその内容を全く理解できなかった。唯一聞き取れたのは、『仕事柄』という単語のみ。
どうやら雅は、仕事で疲れているらしい。
そう判断した『あなた』は、雅の肩をそっと引き寄せる。
そして、
無理はしなくていい。虚狩りという称号が許してくれないかもしれないが、それでもゆっくりと、自分のペースでやっていけばいい。君の隣には自分や仲間がいる。
と、優しく雅に語りかけた。
すると、雅は一瞬呆気に取られた表情をし、そしてクスリと笑みをこぼした。
「そうか、そうだな……少し先を急ぎすぎた。すまない」
そうして雅は『あなた』の腕へと抱きつくのだった。
「
この小説は、
・自分を妻だと思い込んでいる雅
・ムッツリ瞬光
・
・セクハラおっサンブリンガー
の虚狩りでお送りいたします。
また、感想・高評価・お気に入り登録おまちしております。
モチベに繋がりますので是非とも……