とある科学の天理付与(ガイアメモリ)   作:色違い

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柵川中学の超能力者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人の一人のレベル5、星川千夜。

 彼女はミュージアムを操祈に明け渡した。

「超能力者(レベル5)が、本来こっちの世界に来ないのは逆に珍しいわけ。だってそもそも、あなた含めて数名しかいない頂点よ? 何かしらで大体が悪用はされていた。あなたの場合、能力が貴重すぎて無菌培養の方が良いと判断されたんでしょうね。ある意味、羨ましいわぁ」

 こっちの世界。千夜の知らない暗い世界。

 そこを覗くのは、止めておけと操祈は言った。

 性格が無邪気で無垢、暗躍などにまるで向いていない。彼女の一般よりの子供のメンタルでは、残酷な現実を堪えるのは難しい。

 このままで良い。

 ミュージアムは操祈の手足になって、第二の拠点となった。

 それから数年。一つ年下の千夜は小学生時代をミュージアムで過ごして。その間色々と、操祈は経験した。

 運命の出会いも、大きな絶望も、千夜には教えていない。彼女とリンクした際も見えないようにプロテクトをかけてある。

 彼女は知らなくて良い。心を操る頂点が、シンクロする相手でも、プライベートをちゃんと切り分ける。

 千夜も了承している。研究機関を奪取されても、怒らない。正しい道に行くと信じて、託したのだ。

 彼女はレベル5を誇りに思っている。自分の能力を、他者に与える事で皆が平等にレベルが上がっていくことを望んでいる。

 子供の夢物語だ。操祈は本来だったら笑うだろう。

 悪意の巣窟、学園都市。ガイアメモリの実験に明け暮れる科学者の理想郷。

 でも、なまじレベル5では無かった千夜。

 皆が上に行くのに必要な奇跡。

 存分に振るうことに躊躇は無い。

 それが、この学園都市では出来てしまう。

 学園都市の科学力で、彼女の多才能力に近しい手数に追いついて実現できる。

 それが直差しをしない、濾過装置のドライバー。

 純粋に記録だけを抜いて身に纏う、二重の能力。

 ガイアドライバーrex、アクセルドライバー、ロストドライバー、ダブルドライバー。これがその濾過装置のドライバー。

 千夜が言うに、ドーパントと違うのはこの状態の事を仮面ライダーと称するらしい。

「ダブルドライバー……これが一番上位のドライバーね。二人運用前提だから、偶数で生産しないといけない。調整するわ」

「うん。ロストドライバーやアクセルドライバー、rexは沢山作って操祈さん。特にアクセルドライバーは、練習用にいっぱい欲しい」

 ミュージアム内部の製造工場の人間を能力『心理掌握』で操作する操祈が、外部で量産されるガイアメモリへの対抗策を練っている。千夜も珍しい事に精神を自在にコントロール出来る操祈を警戒しない。

 悪いことにしないなら人を操る事も拒絶しない。

 操祈はミュージアムを正した。だから信じる。

 単純明快で能力が通じずとも、一度ダブルドライバーでリンクした際に嘘じゃないとわかっている。

 操祈は千夜に心を許した訳ではない。ただ、この子供が自分達のように闇の落ちないように管理するだけ。

 あの人なら、こんな純粋な子供でも助けるだろう。そう思う事もこの頃にはあった。真似事でも良いから、ヒーローのように。見るなと言って防ぐぐらいは出来る。

 ミュージアムは既に自分達の軍事転用の為に外部にもガイアメモリの技術を出して増やしている。

 手遅れ、それでも。

 だから彼女は、レベル5でも生粋の善人であった。

 多くのレベル5達は、その存在を知っている。

 第一位、この能力は後付けへの肉体への強制進化と分析する。

 第二位、特に興味なし。軍事転用の有用性は見事だが、未知の世界には通用しない。

 つまり自分の方が有能、だから見逃す。

 同列三位、自分が並ぶのおかしいでしょうにと思いつつも貢献度が高すぎて後から来た自分の方がおかしいのかとも思うぐらい。

 第四位、クソ生意気だが単なるお子様に接点などない。放置で良い。無関心。

 第六位、危険視。今の所悪意は無いが技術的に場合によってはドーパントの排除を行う。

 第七位、ずっと現場で薬中ドーパントと戦っているヒーロー。

 曰く、根性が足りねえから毒素に負ける。もっと鍛えろ! 大本の千夜だってそう願っているぞ! と一番理解度が高い部外者。

 rexはドーパントのままだが、これも濾過装置でパワーだけを純粋に纏うのに相異は無い。

 ミュージアムから外の世界に出る年齢になった頃。

 操祈は、自分の居る中学には来るなと警告した。

 確かに此処はお膝元。でもお嬢様学校だった。

 去年まで色々あって、今では最大の派閥を率いる女王だが。

 彼女は、外に居る所謂武器であって欲しい。

 そもそも、操祈にはそこら中に派閥の能力者がいる。

 広い学園都市と言えども、出来うる範囲で人助けぐらいしていた。

 操祈は対人には最強だが、単純な機械やサイボーグ、ロボットには弱い。

 心理掌握が変異で通じないドーパントも相手だと途端に不利になる。

 だからそれに対応できる千夜は、一般校に流しておいた。何よりドーパントの駆逐に、常盤台は窮屈だ。

 本人の希望、もっと友達が欲しい。

 そういう願いもあった。

 学園都市の明るい場所で、健全に生きるレベル5。

 操祈のお陰で、千夜は暗部を何も知らないで此処まで来た。

 救うとは、責任を取ることだ。操祈はそう思う。

 友達というカテゴリーに操祈の中で千夜は居るが、この子の場合は世話を見る妹のようなモノ。

 先輩レベル5として、救ったヒーローの真似事として。

 ちゃんと、面倒を見る。いざという時は本人も良いと言うから容赦なく使う最高の手札。

 自分の身内の守護者、星川千夜。

 心理掌握の、多くを守る外部の武器。

 女王とは言われても、日々適当に生きている訳にもいかない。

 ミュージアムから外界に出た千夜は中学生。

 操祈は活動に支障の無い普通の中学で良いか、と適当に選んだ柵川中学。

 よくある普通の中学で、超能力者が入学したと聞いたときにレベル5の研究機関、ミュージアムからの紹介で来たという手前で、無理矢理入学させた。

 この頃になると、ミュージアムには能力の開発を出来るだけの人が居ない。全部操祈が悪用を阻止している。

 最初は打算だった。でも、今は違う。

 あの日の運命の出会いを経て、操祈は誓った。

 手を伸ばしたのなら、離すな。消える、その痛みをこの子にまで味わわせてはいけないから。

 精一杯、女王は威厳を持って導く。

 この少女に相乗りしたレベル5。

 心理掌握は、他責でも無責任でも無いのだ。

 天真爛漫、世間知らずの千夜だがもう長年の噂だけは学園都市に広がっていた。

 天理付与。これは、頂点唯一の良心からの贈り物。

 弱者を救う超能力者。絶対に見つけたら、関わったら、礼を言え。

 レベルが全ての学園都市の根底を覆す、奇跡の頂点。

 ガイアメモリを悪用している連中も、持っている連中も、欲しがっている連中も。

 星川千夜を頂点で最も尊敬できる身近な頂点として、崇めていた。

 一種の崇拝。知らぬ間に出来ていた新手の共通認識。

 嫌悪される頂点で一番の味方。操祈は聞いて、だろうなと思う。

 本人の性格も相まってレベル5とは思えない人気者。

 柵川中学でも、学年問わずに友人が出来ていると実際探って見ていて思う。

 こんな優しい世界だったら良かったのに。

 心から、熟々そう思う操祈。

 せめて、頂点唯一の良心には優しい日だまりにいて欲しい。人の精神を操る頂点は腐った箱庭の例外的な日差しに、長年の闇を見ていた彼女も癒しも感じていた。

 会ったことはなくても、このガイアメモリは例え外部の生産品でも本人からのおすそ分け。ならば、これは崇めるべきだ。

 結局、ドーパントは増えまくったが同時に活動を始めた千夜はドーパントと争う前に口癖のように言いだした。

 

「さぁ、一緒に罪を数えよう」

 

 そっちはガイアメモリの間違えた使い方。

 こっちはガイアメモリを無作為に散蒔いた事。

 お互い、これで間違いを正そう。そういう心意気。

 純粋すぎる。互いに過ちを犯すからもう一度やり直し。

 数え切れないガイアメモリを散蒔いた。

 だから、一つでも、一人でも多くの能力者にガイアメモリを正しく使って欲しい。

 力を安易に求めるなとは言わない。

 学園都市という箱庭の中だから。

 自分の奇跡を誰かに渡せるなら。

 世間知らずの善意で動く仮面ライダー。

 相棒は、時によって変わる。

 今までの練習相手は、操祈だった。

 でも柵川中学で出会った友人がいる。

 仲が良いようだ。今日も見守る。先輩として、責任を持つ頂点として。

 操祈の管理する中で、千夜は平和に暮らす。

「涙子、やっぱり私のガイアメモリ使いなよ。風力使い(エアロハンド)でしょ。任せて、ノウハウなら身体で覚えればきっと伸びるよ!」

 柵川中学、一年生の教室で。

 黒髪ロングヘアの美少女は凹んでいた。

 また、上手くいかない。それを励ます、柵川中学所か学園都市の無能力者の味方、茶髪のボブカットの女の子が隣の席で問う。

「千夜さぁ……。確かに能力開発は上手くいかないよ。でも、その……千夜の能力、あたし正直怖いんだよね。ドーパントになるんでしょ?」

 名は佐天涙子。よくいる無能力者だ。

 入学時から意気投合して親友の、頂点にいるのにこんな普通の中学で過ごす箱入り娘、星川千夜。

「rex使う?」

「いや、ドライバー云々の前に巷に居る怪人になりたいとは思わないって話ね」

 グッタリ机に伸びる涙子に、千夜は言う。

 いつもそう。基本的にミーハーで好奇心旺盛だと涙子は自分を思うが、千夜はちょっとズレている。

 身近な頂点、レベル5。優しく、能力開発に上手くいかない人は誰でも能力を渡そうとする、天理付与。

「じゃあ、一緒にライダーやろうよ。最近、わたしのパートナーが忙しいみたいだから、相方探せって言われてるの」

「常盤台の女王様……だっけ? 本来の千夜のパートナー」

「うん。迂闊に名前言うなって言われてるから言えないけど」

 ケロッと言うと、涙子は益々落ち込む。

 期待が重たいのだ。

「お嬢様学校の超能力者(レベル5)の肩代わりにあたしが慣れるわけないじゃん……。初春みたいに何か特技があるわけでも無い、凡人だよあたし」

「涙子はさ、卑下しすぎだと思うんだ。だって、幻想御手(レベルアッパー)にも手を出さなかったじゃん」

 直近で学園都市で流行った、お手軽にレベルが上がるという噂のブツ。ガイアメモリと共存できた珍しいモノだったが、涙子は一切手出ししなかった。

 ガイアメモリの方が身近で、かつ確実で、危険だと知っているから。

 そこまでして、ズルいとは思わないが欲していない。

「そういえば千夜、御坂さんとか白井さん知らないんだっけ?」

 この頃、時系列はかのクローン計画の手前。

 学園都市に流行った幻想御手の一連が解決した頃。

 操祈の指示。関与するな、ドーパントをいつも通りやっつけろと言われて無視していた。

「んー? ああ、超電磁砲(レールガン)? 常盤台のエースなら名前は前から知ってるけど、本人は知らない。白井さんって……常盤台の風紀委員(ジャッジメント)かな。超電磁砲のお供だっけ」

「初春の同僚なんだよ。紹介しようか?」

 初春飾利。二人の親友で、風紀委員の務めを担う秩序の番人。

 得意分野はハッカーだが、この総称は機械分野に秀でた人々の事である。

「初春はなぁ、もうスキルアップしようが無いじゃん。大体、風紀委員にいる時点でうちの中学の顔だよ?」

「最大の代表者が何を言ってるの!?」

 天然でよく抜かす。

 千夜は自分より初春の方が技術的に優れているとよく言うが、その初春は。

「……星川さんって、割りと変な意味でやっぱり御坂さんより変わってますよね」

 と黒い事を言われる始末。悪意を知らない箱入り娘で、善意だけで動く特異なレベル5。

 いい加減、こっちも多忙だから地元のお友達から相乗りする相手を見つけろと厳命されている千夜が選ぶに、涙子が一番だった。

「兎に角、絶対ライダーなら伸びるよ涙子!」

「ガイアメモリかぁ……。千夜が言うんだから間違いなく身体が能力に適応するんだろうけど、ドーパントは勘弁したいなぁ。それにドライバーないと毒素あるって聞くよ」

「そうだね。わたしが自分で作ったガイアメモリは濾過装置だし関係ないけど。直差しをしている人達は薬中みたいになるみたい」

 各々、副作用は違うが麻薬中毒みたいにはなるのも事実。

「何でそんなの量産したの……? いや、リスク無しで二重の能力ゲットできるわけ無いんだけど」

「研究機関の人達が勝手にやってた」

 レベル5故の事情である。濾過装置があれば、ちゃんと誰でもガイアメモリを使えるのだが、如何せんドライバーを量産するとまた軍事転用される。というか、既に数年。勝手に模倣品を学園都市が自分で作って流通させている。

 ガイアメモリのドーパントは直差しが最も多く、次いで学園都市ドライバーセット。

 たまに居る、強い方のドーパント。

 まあ粗悪品で、毒素も中和が良いところ。

 こっちは純正品のドライバーがミュージアムに大量にある。よく千夜が普及の為に配る以上ストックは腐るほど。こっちは濾過装置なので性能は上。

「……初春? どうしたの?」

 喋っていると親友の初春が血相を変えて寄ってきた。

 涙子が聞くと、

「大変です! 大型のドーパントが近くで暴れてます! 制圧を本人に要請しろと本部から来てて!」

 増援に来いと言うことか。いつも通り、風紀委員に手伝うのも慣れてきた。

「……多分、大型って言うとTレックスかその辺だね。じゃ、行こうか涙子」

「この流れであたし!?」

 ご指名、入りました。佐天涙子、仮面ライダーの相棒に。

「新しい相方候補。大丈夫、わたしたちなら呼吸なら合うよ」

「仮面ライダーってよく千夜がやってる半分こ怪人!? ドーパントじゃないけどさ、あたしなの相棒!?」

 仰天の涙子の手を引いて、立ち上がる頂点の善意。

「そうだよ? ちょっと手伝って。終わったら流行りの甘い物奢るから。幾らだっけ初春?」

「えっ? あー……今だと一個7000円?」

 それ、高級のブランドでは? と涙子戦慄。

 欲しいけど。迷うが相手は親友、物欲に負けた。

「物差しが全部高いよ千夜!! 分かったから! 怖いけど千夜なら大丈夫だって信じるからね!? お願いね!?」

「うん。一緒なら大丈夫、二人の一人の仮面ライダーは伊達じゃない」

 こうしてスタートを飾る佐天涙子の仮面ライダー生活。魂をレベル5と相乗りした結果、その力で彼女のコンプレックスはブチ殺す。

 尚、現場には……。

 

「ドーパント……。確か、俺の右手なら触れれば倒せるハズだ! うおおおおおおっ!!」

 

 主人公一号が当然のように居るのだった。

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