ネコカンを与えて保護しただけなのに   作:末路雛鳥

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周年が楽しみですね。



平和な日(大嘘)

翌朝。

 

俺の自室は、猫カフェの二階にある。

いつもなら、部屋のドアの前で可愛らしく鳴く猫たちの朝ごはん催促で目が覚める。

スリスリとドアに体を擦りつける音や、控えめな肉球の足音で起きる朝ほど至高なものはない。

真白さんほど狂気じみてはいないが、俺も大概の猫好きだ。

毎日この瞬間のために生きていると言っても過言ではない。

 

だが――今朝は、何かがおかしかった。

なんというか、ものすごく寝苦しいのだ。

胸のあたりに、重くもないが、軽くもないという妙な圧迫感がある。

息が吸いずらい、まるで金縛りにでも遭ったかのようにうなされながら、うっすらと瞼を開けた。

 

視界いっぱいに広がっていたのは、天井――ではなかった。

丸い。 つるんとしていて白い塊。

 

……白玉?

 

寝ぼけた頭で、右手を伸ばして触れてみる。

 

ぷにぷに。

 

指先を心地よく押し返してくる、極上の弾力。  やっぱり白玉だ。いや、大福か? 

なんで俺の上に巨大な和菓子が落ちているんだ。

すると、白玉がモゾリと動き、俺の顔面へ向けてくるりと回転した。

どこか得意げに細められた黒い点の目。

 

「にゃ〜」

 

そうやって、どこかご満悦な鳴き声を響かせた。

 

「……!?」

 

ガバッと上体を起こした。

白玉がそのまま俺の胸からポスンと布団の上に転がり落ちる。

 

荒い息を吐きながら、まじまじとその物体を見つめた。

左耳にあるキラリと光る星の首輪。

あ、そうかノヴァか。

 

「……びっくりした。心臓が止まるかと思ったぞ」

 

「にゃ?」

 

ノヴァは布団の上でコテンと首(体)を傾げ、何食わぬ顔でこちらを見上げている。

部屋の扉を見ると僅かに隙間が空いていた。

昨日、完全に閉め切っていなかったらしい。

まさか俺に会いたいがために階段をその短い手足でよじ登って、自分でこじ開けて入ってきたというのか?

 

もう、なんて健気なんだろう、そんなに俺のことが好きなーー

 

 ぐううううぅぅぅぅぅぅぅぅ――。

 

……。

 

巨大な腹の音が部屋に響き渡った。

ノヴァの体が小刻みに波打っている。

どうやら、朝ごはんを要求しにわざわざここまで来たらしい。

 

……わかってたよ、わかってましたよ! こいつが生意気で図々しくてネコカンにしか興味がないってな! どーせ俺のことなんてどうでもいいんだっ。

へっ(不貞腐れる)

 

「わかったから。朝ごはんを用意するから待ってろ」

 

寝癖を直すのもそこそこに一階の店舗へと降りた。

 

ノヴァは俺の足元を、てちてち、てちてちと信じられないピッチで追いかけてくる。足が短いのにやたらと足が速い。

 

厨房に入り、猫たちのお皿にキャットフードと鰹節を少し盛り付けた。

そして、ノヴァには専用の小皿を置きネコカンを開ける。

 

「ほら、みんな。朝メシだ――」

 

言い終わる前に、ノヴァが小皿に顔を突っ込んだ。

 

「ぞ……おー、今日も見事な食いっぷりで(ヤケクソ)」

 

時間にして、多分10秒ぐらい。皿の中身はすべて消えていた。

その間に朝のチラシを読む。

こういう紙は何かと便利で使い勝手がいいから、毎日取り寄せている。

次々と見ていき、そして、最後の一枚のチラシが目に入った、そこには赤い目の黒いクマと、一殺、一億で依頼を募集中。と書いてあった。

 

何故だろう、普通ならこんなチラシは笑えるっていうのに、こいつを見ていると、不思議とイラついて意味不明な単語が浮かんでくる。

 

ポッポー領土……初見殺し……倒さないで城破壊……うっ、頭が。

 

頭を押さえていた、その時。

 

カランコロン――。

 

店のドアベルが鳴り、正面入り口から入ってきた。

多分、真白さんだ。真白さんは朝早くから真面目で本当に助かってーー

 

「うぅぅ……頭が……割れるぅ……」

 

ボサボサの黒髪で青い瞳は真っ赤に充血している。

壁に手をつきながら、まるでゾンビのようにズリズリと歩いてくる。

 

「真白さん……。あなた、まさか」

 

「神楽くん……おはよぉ……。昨日の夜ね、ノヴァちゃんの就任祝いに、ちょっとだけ晩酌しようと思ったら……気づいたら缶が4本転がってて……」

 

「ちょっと? 貴女何そんな飲んでんすか! 昨日飲まないでくださいって、言いましたよね!? 貴女酒に弱いんだから!」

 

「歓迎会は……いくら飲んでもいいのよ……うぷっ」

 

「吐かないでくださいよ? ここ猫カフェですからね!? 居酒屋じゃないですから!」

 

ふらふらと地面に倒れ込む真白さん。せっかくの美人が台無しである。

モテない理由のすべてがこの瞬間に凝縮されていた。

誰だ頼りになって真面目だとか言った奴。

 

そんな真白さんへノヴァがてちてちと歩み寄っていった。

 

「にゃー」

 

ノヴァは床に突っ伏す真白さんの顔の横に座り、じーっと真白さんのやつれた顔を見下ろした。

 

「あ……ノヴァちゃん……おはよぉ……。今日もぷにぷにしてて……可愛いねぇ……」

 

真白さんが弱々しく手を伸ばし、ノヴァを撫でようとする。

だが、ノヴァはその手をスッと器用にかわした。

そして、床に落ちていた先端に鳥の羽がついたネコジャラシを、その短い2本の前足で器用に拾い上げたのだ。

 

「……んえ?」

 

「にゃ?」

 

ノヴァは後ろの二本足でスクッと立ち上がった。(立てるんだ……)

 

そして、ネコジャラシを両手? でしっかりと握りしめると――

 

「ひいいいっ!?」

 

猛烈な勢いでネコジャラシを真白さんの頭上で素振りし始めた

ブンッ! ブンッ! と風切り音が店内に響き渡る。

猫がじゃれるのではない。猫が人間をじゃらしにかかっている

 

しかもそのフォーム、無駄が一切ない。まるでホームランを狙う野球選手みたいだ、次元が違う。

 

「ちょ、ノヴァちゃん!? 風が! 本当に気分が悪くなって……うっ」

 

「あっ、ノヴァ、やめてあげて! 今、人の口から出たらダメな声を真白さんから出たから!」

 

慌てて割って入り、ノヴァを抱えて持ち上げると、ノヴァは何事もなかったかのように素振りをやめた。

 

床には、さらに風で髪がボサボサになった真白さんが、魂の抜けた顔で転がっていた。

 

「……神楽くん」

 

「はい」

 

「あの子……悪魔よ……」

 

「この可愛さで人を惑わしているので、確かに悪魔でしょうね」

 

そう言うと真白さんが這いずってトイレに向かって行った。

 

……もはや何も言うまい、乙女の尊厳を守るためにも。さて、準備、準備。

 

今日は日曜日なので学校は休みだつまり朝から猫カフェが始まる日。

なので今から準備を始める……はずなのだが、作業が進めない。

原因は、俺の足元。

 

「……おい、ノヴァ。歩けないんだが」

 

見下ろすと、ノヴァが俺の右足首に文字通りしがみついていた。

短い2本の前足でズボンの裾をギュッと挟み込み、足首にめり込んでいるような状態だ。

 

一歩足を前に出すと、ノヴァもズリズリと引きずられながらついてくる。

掃除機をかけるにも、モップをかけるにも、右足だけに負荷がかかって仕方がない。

筋トレかこれは。

こいつ重いのか軽いのかわからないから、負荷になってるかどうか知らんが。

後でノヴァを体重計に乗せよ。

 

「にゃ〜」

 

のほほんと気の抜けた声を出すノヴァ。

いや、可愛い。可愛いよ? こんな間抜け面で見つめられたら、怒る気も失せて思わず頭を撫で回したくなってしまう。

 

モップを壁に立てかけてノヴァの真下に手を差し入れてそのまま持ち上げる。

 

「ゴロゴロゴロゴロ……」

 

抱き上げると、途端にノヴァから重低音が聞こえ始めた。

 

……猫がリラックスした時に鳴らす喉の音だが、こいつの場合、どこに喉があるのか、なんてことにはもう言わないぞ。

体全体がバイブレーションのように小刻みに振動している。

 

「よしよし。準備中は足元に来ちゃ危ないからな――ん?」

 

抱っこした体勢のまま、ふと気になってノヴァを仰向けにひっくり返してみた。

四本の短い棒のような足が、空中でぷらぷらと情けなく揺れる。

 

そして――その中心部、人間で言えば多分お腹にあたる部分が目に入った瞬間、思わず驚いた。

 

「……っ、これ」

 

真っ白でツヤツヤしているのに腹部にだけ、痛々しい傷跡が無数に走っていた。

赤黒くかさぶたになりかけた、鋭利な傷。

一本や二本じゃない。何かに抉られたような傷が何筋も重なっている。

 

「どうしたんだ、これ……」

 

うちの猫たちがやったわけがない。

シオンもレオも温厚な性格だし、一日でかさぶたになるはずもない。何より店内の猫はすべて定期的に爪を切ってあるから、肉球でペシペシ叩くくらいしかできないのだ。

つまり、これはここに来る前からあった傷だ。

 

下側なんて普段は見えないし、いつも床にペタッと座っていたから、今まで全く気づかなかった。

 

「お前……こんな怪我してたのか。痛くないのか?」

 

心配になって、傷の近くをそっと指先で確かめようとした。  

だが次の瞬間――。

 

「フシャーッ!」

 

ノヴァが体をビクンと跳ねさせ、猛烈に身をよじった。

手足をバタバタと激しく振り回し、顔を背けて俺の手から逃れようと暴れ狂う。触られるのを本気で嫌がっている反応だった。

 

「わっ、暴れるなって! 早く治療しないと!」

 

だが、ノヴァは

 

「ふみゃー! ふみゃー!」

 

と抗議の声を上げながら必死で丸まり、お腹を頑なに隠してしまう。

 

これ以上無理に触ればパニックを起こしかねない。仕方なくノヴァをクッションの上へと下ろした。

ノヴァはすぐに隅っこへ退避し、警戒するように体をまん丸にして俺を見つめている。

 

……聞こうとしたって、こいつは喋れないんだから聞けずじまいなのは当たり前だ。だけど、この頑なな拒絶は胸に刺さった。

 

「神楽くーん、お待たせぇ……って、どうしたの? そんな泣きそうな顔して」

 

ようやく復活した真白さんがトイレから出てきた。

俺は振り返り、事情を説明する。

 

「真白さん、救急箱ってどこにありましたっけ。ノヴァのお腹に、結構ひどい引っ掻き傷があって……」

 

「えっ!? 嘘、見せて!」

 

真白さんは表情を一変させ、駆け寄ってきた。  俺は救急箱から消毒液と包帯を取り出した。

 

「ノヴァちゃん、ちょっとごめんね〜。見せてほしいな〜」

 

真白さんが優しく声をかけながら手を伸ばすが、ノヴァは短い威嚇を放ち、後ずさりしてやっぱり触らせてくれない。

こうなったら最終兵器だ。

ポケットからそれを取り出した。

 

そう……ネコカンだ。

 

「……ノヴァ、これやるからジッとしてろ」

 

蓋を開けて匂いを漂わせる。

すると、さっきまで頑なにお腹を隠していたノヴァの耳がピンと立ち、目がネコカンに釘付けになった。

 

現金すぎる、この猫。

 

「にゃーん……」

 

ヨダレを垂らしながら身を乗り出してきた隙を見逃さず、真白さんが素早くお腹の処置に入った。

 

「……本当だ、結構深い傷痕ね。野良猫……にしては傷口が大きいかも。何かに襲われたのかしら……」

 

真白さんが手際よく消毒液を吹きかけ、軟膏を塗り込んでいく。

ノヴァはネコカンに夢中で、もはや痛みに気づいてすらいない様子だった。単純で助かるが、ちょっとは危機感を持ってほしい。

 

「よし、最後に包帯を巻くわね! ……って、あら?」

 

包帯を手にした真白さんの手が止まった。

俺もそれを見て、ハッと気づく。

首輪の時と同じだ。

こいつには「首」もなければ体と顔の区別もない、ただの球体だ。

お腹に包帯を巻こうとすると、必然的に――。

 

「……こうするしか、ないわよね?」

 

「……そうですね」

 

数分後。

処置を終えたノヴァが、床の上に鎮座していた。

頭のてっぺんから足の付け根まで包帯が何重にもグルグル巻きにされている。

目と口、耳の首輪だけが申し訳程度に露出した、完全なる『ミイラ男』――いや、ただの『ミイラ猫』がそこにいた。

 

「にゃ……?」

 

ノヴァが一歩を踏み出そうとした。

だが、包帯のせいで手足がまったく動かない。  

 

そのまま横倒しになり、畳の上をゴロゴロとボーリングの球のように転がっていった。

 

「ノヴァーーーッ!?」

 

転がるノヴァを慌てて受け止める。

 

抱き上げると、包帯の隙間から覗く目はやっぱり間抜けな点のままで、何をされたのか理解していない顔だった。

思わず吹き出しそうになったが、すぐに治った。

 

こんなにも可愛くて、図太くて、食い意地を張っていて、可愛いのに←これ重要

うちのに来る前は、どうしたらあんな酷い傷を負うような目に遭っていたんだ。

一体何が起こっていたのか、俺には知る由もない。  

 

でも――。

 

「……もう大丈夫だからな」

 

そう呟くと、ノヴァは腕の中でか細く鳴いた。

そのときチリン、と鈴の転がる音がした。

真白さんが猫のおもちゃを準備を始めた音だ。

 

ノヴァが腕の中で跳ね上がった。

 

「うおっ!?」

 

そのままノヴァが、まるでバスケットボールのように床をバウンドしながら真白さんへと爆走していった。  

ボイン! ボイン! と床を跳ねるノヴァ。

 

「ノヴァーーーッ!!」

 

俺の悲しみを返してほしい。

でも、ノヴァが元気ならそれでいいかと、受け入れて(諦めて)追いかける。




記念すべき敵の初登場(名前も姿も出てない)はブラックマです。意外と好きなんですよね、見た目は、見た目だけです。

みなさんは最近なんのゲームにハマってますか? 私はモンハンワイルズとにゃんこ大戦争です。私は猫好きなので、アイルーが大好きです。

にゃんこ大戦争って、ストーリーがわかりづらいから、小説が少ないんですかね。にゃんこたちの共通の目的はネコカンってことだけは、はっきりとしてますけど。

オリジナルのストーリーは考えているので、オリジナル展開というタグは追加した方がいいですかね。
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