扉間「聖杯戦争はワシが解体した」 作:ナハ
第十四話 王は鼠を笑う
聖堂には、二人の男がいた。
一人は祭壇近くの机で書類を読んでいる神父、言峰綺礼。そしてもう一人は、長椅子に行儀悪く腰掛け、退屈そうに天井を眺めている金髪の青年だった。
第四次聖杯戦争で召喚され、その終結後、受肉し現世に留まり続けている英雄王である。
聖杯戦争が始まったとはいえ、彼にとって今のところ興味を引くような出来事は少ない。参加者たちは互いの出方を窺い、慎重に動いているばかりだった。
「……くく」
ギルガメッシュの口から笑いが漏れた。
「言峰よ」
「何だ、ギルガメッシュ」
「貴様、自分の私物の管理はしておるのか?」
綺礼は書類から目を上げた。
「私物?」
「うむ。鼠に食われておらんか?」
「……何の話だ?」
「なに、少々気になっただけよ」
ギルガメッシュは口元を吊り上げた。
綺礼はしばらく相手の顔を眺めていたが、やがて書類を閉じた。
この男が自分から他人の持ち物を心配するはずがない。何かを知っているのは明らかだった。
「何を見た?」
「さてな」
「ギルガメッシュ」
「そう急くな。せっかくの楽しみが台無しではないか」
「……お前の暇潰しに付き合うほど、私も暇ではないのだが」
「ほう。ならば仕事を続けるがよい。我は構わんぞ?」
そう言ってギルガメッシュは再び天井を見上げた。
綺礼は書類を机に置いた。
「……分かった。話を聞こう」
「くく。最初からそう言えばよいものを」
英雄王は満足そうに足を組み替えた。
「ところで言峰、先日の麻婆は美味かったか?」
「……何?」
「貴様の好物だ。わざわざ出向いて食うほどなのだろう?」
「それがどうした」
「店は開いておったか?」
「当然だ。いつも通り営業していたが」
その答えを聞いた途端、ギルガメッシュは声を上げて笑い始めた。
「ハハハハハ! やはりな! そうであろうと思ったぞ!」
「…………」
綺礼は眉をひそめた。
「何がおかしい?」
「いや、実に愉快ではないか。貴様が麻婆を食い損ねたと嘆いておったのでな」
「……私はそんなことを言っていない」
「知っておる」
笑いを収めたギルガメッシュは、綺礼へ顔を向けた。
「では聞くが、貴様は昨日、店に行ってから教会へ引き返したか?」
「いや。食事を終えるまで店を離れていない」
「ならば、あれは誰だったのだろうな?」
綺礼は動きを止めた。
「……詳しく聞かせてもらおうか」
「先日、貴様が教会へ戻ってきた。我が随分と早い帰りだと尋ねると、店が臨時休業だったと答えたのだ」
「…………」
「姿も声も貴様そのものだったぞ。なかなか見事なものよ」
「……私に化けた者がいたというのか?」
「そういうことになるな」
綺礼は椅子から立ち上がった。
「それで、そいつは何をしていた?」
「知らんな。我は途中で街へ出たのでな」
「何故、その場で確かめなかった?」
「何故、我がそんなことをせねばならん?」
ギルガメッシュはさも不思議そうに答えた。
「せっかく面白いものが現れたのだ。泳がせておく方が愉快であろう」
「……侵入者だったかもしれんのだぞ」
「であれば、なおさらよ」
ギルガメッシュは長椅子から立ち上がり、綺礼の前へ歩いてきた。
「我は貴様の番犬ではない。教会に鼠が入り込んだからといって、いちいち捕まえてやる義理などあるまい」
「……そうだったな」
「それに、あやつは妙に落ち着いておった。こちらの出方を窺ってはいたが、無闇に仕掛けてくる素振りもない。余計な争いを避け、何やら用事を済ませようとしておったようだ」
「……用事か」
綺礼は聖堂の奥へ視線を向けた。そこには地下へ続く通路がある。
ギルガメッシュも同じ方向を見て、笑みを深めた。
「さて、綺礼。そろそろ見に行ってみてはどうだ?」
「…………」
「貴様が大切に飼っておったものが、今もそこにあるかどうかな」
綺礼は何も言わず、聖堂の奥へ歩き始めた。
その背中に、英雄王の笑い声が追いかけてきた。
「くくく。さて、どうなっておるか見物だな」
教会地下。
綺礼は階段を下り、地下室へ続く扉を開いた。
そして、足を止めた。
「…………」
部屋には幾つもの寝台が並んでいた。
しかし、その上に横たわっているはずの子供たちが、一人もいなかった。
綺礼は室内へ入り、最も近くの寝台へ歩み寄った。
身体に取り付けていた器具は外され、生命力を吸い上げるための術式も停止している。
中央の装置そのものは残っていたが、供給経路だけが切り離されていた。
「……ほう」
綺礼は装置を調べた。
無理に破壊した形跡はない。
術式の働きを理解したうえで、必要な部分だけを停止させている。
さらに、寝台へ取り付けられていた器具も、子供たちの身体を傷つけないように外されたものらしい。
(……全員を運び出したのか)
綺礼は棚へ向かった。
そこに保管していた地下施設の管理記録が、幾つかなくなっていた。
魔力の供給量。対象となる人間の状態。そして、施設を管理していた人物の記録。
加えて、第四次聖杯戦争に関する資料の一部まで持ち去られている。
「……なるほど」
侵入者は子供たちを救出しただけではなかった。
彼らが何のために利用されていたのか、それを誰が管理していたのかについても調べている。
綺礼は残された書類を確認した。資料の持ち出し方にも無駄がない。
必要なものだけを選び、施設そのものには大きな損傷を与えていなかった。
単にこの場所を破壊するつもりなら、もっと簡単な方法があったはずだ。
(……証拠の確保と、術式の調査か)
綺礼は部屋を見回した。
もう一つ、不可解な点があった。
侵入者がどのようにして子供たちを連れ出したのか、分からないのである。
ここにいた子供たちは長年の衰弱によって、まともに歩くこともできない状態だった。
運び出すには相応の人数が必要になる。しかし、地下室から階段へ向かって大勢を移動させたような形跡はなかった。
「……転移魔術か?」
空間を移動する魔術は存在する。
ただし、これほどの人数を短時間で移動させるとなれば、相当な準備が必要になるはずだった。
そもそも、魔術的な防御を破壊せずに地下へ侵入できたこと自体が不可解である。
綺礼は扉の周囲を調べた。施錠にも結界にも、大きな異常は確認できない。
「…………」
敵は教会の内部へ入り、子供たちを救出し、資料まで回収して立ち去った。
しかも、その間、自分には何も気づかせなかった。
綺礼は棚に残された記録を一冊取り、最後のページを確認した。
十年。この施設が運用されてきた年月である。
その長い時間を経て、突然現れた何者かが全てを持ち去った。
「……随分と周到な客人だな」
綺礼は帳簿を棚へ戻し、地下室を後にした。
戻ってきた綺礼を、ギルガメッシュは楽しそうに迎えた。
「どうであった?」
「……お前の言う通りだ」
「ほう?」
「子供たちは全員消えている。管理記録だけでなく、第四次聖杯戦争に関する資料まで持ち去られていた」
「ハハハハ! それは愉快!」
英雄王は遠慮なく笑った。
「随分と欲張りな鼠ではないか。餌だけでなく、巣の中身まで持っていったとみえる」
「……お前は本当に楽しそうだな」
「当然であろう。貴様がこれほど見事に出し抜かれるとはな」
「侵入者に気づいていたなら、知らせるくらいはできたはずだが」
「くどいぞ」
ギルガメッシュは鼻を鳴らした。
「我が貴様のために働くとでも思っておったのか?」
「……いや。期待する方が間違いだったな」
「分かればよい」
綺礼は自分の席へ戻り、椅子に腰掛けた。
「それで、その偽物について他に覚えていることはあるか?」
「そうだな。貴様の顔をしている割には、随分と慎重な振る舞いだった」
「……慎重?」
「ああ。我と余計な話をする気はなかったようだ。こちらが何を言っても、なるべく短く済ませようとしておった」
「なるほど」
「もっとも、我に怯えている様子はなかったぞ。危険を承知のうえで関わることを避けている。そういう態度だったな」
「……戦い慣れた者か」
「その程度は分かっておるようだったな」
ギルガメッシュは椅子に深く腰掛けた。
「我を退屈させる雑種どもよりは、幾分ましであろうよ」
綺礼は考え込んだ。
変身に類する術を使い、教会の防御を突破し、複数の人間を痕跡も残さず運び出す。
それだけでも並の魔術師ではない。
加えて、侵入者はこの地下施設について、ある程度の情報を得ていた可能性がある。
一度目の訪問で下調べをし、二度目に実行したということも考えられた。
そこで綺礼は、一人の少女を思い出した。
遠坂凛……先日、サーヴァントを失ったと報告に訪れた弟子である。
あの時の凛は、いつもと少し様子が違っていた。
敗北を報告しに来たはずなのに、聖杯戦争の仕組みや儀式の成立について妙に詳しく聞きたがっていた。
しかも、監督役である自分の考え方にまで踏み込んでくる。
(……あの凛も、何かを探っていたな)
綺礼はギルガメッシュへ顔を向けた。
「以前、遠坂凛がここへ来たことがあったな」
「ああ。あの小娘か」
「その時、お前も顔を合わせていたはずだ」
「うむ。覚えておるぞ」
「……どう思った?」
ギルガメッシュは口元を歪めた。
「随分と妙な小娘だったな。貴様の話を聞いておるようで、何やら別のことを考えているようだった」
「……私もそう感じた」
「ほう。貴様にも分かったか」
「長い付き合いだからな。いつもの凛とは少々違っていた」
綺礼は机の上で指を組んだ。
あの少女が本物だったかどうか、確かめたわけではない。
だが、今回の侵入者が人の姿を偽る手段を持っている以上、凛の訪問も無関係とは言い切れなかった。
「……もし、あれも別人だったとすれば」
「くく。面白いことを考えるな」
「少なくとも、調べる価値はあるだろう」
ギルガメッシュは愉快そうに笑った。
「我に聞かずとも、本人に確かめればよかろう。遠坂の娘はまだ冬木におるのだろう?」
「……そうだな」
「もっとも、相手がそう簡単に尻尾を出すとも思えんが」
綺礼は頷いた。
凛が何らかの事情を知っているとしても、彼女が自ら話すとは限らない。
それに、仮に凛が関わっているとしても、実際に地下施設へ侵入した人物が誰なのかは分からなかった。
「……まずは凛の動向を確認する。それから教会周辺の監視も見直す必要があるな」
「ふん。好きにするがよい」
ギルガメッシュは興味なさそうに答えたが、すぐに付け加えた。
「ただし、あまり早く捕らえるなよ?」
「……何故だ?」
「決まっておろう」
英雄王は笑った。
「せっかく面白い鼠が現れたのだ。すぐに始末してしまっては退屈ではないか」
「……お前はどこまでも自分勝手だな」
「今更であろう?」
綺礼は苦笑した。
「……確かに」
「それに、貴様も気になるのではないか? 自分の巣へ入り込んだ鼠が、どのような顔をしているのか」
「……否定はせん」
綺礼は書類を手に取った。
侵入者は自分の秘密を知り、重要な資料を持ち去った。
その人物が何を目的としているのか、いずれ確かめる必要がある。
ただ、今すぐ動くのは得策ではなかった。相手が自分の行動を監視している可能性もある。
まずは、こちらが侵入に気づいたことを悟らせないようにした方がよいだろう。
ギルガメッシュはそんな綺礼を眺めながら、また笑みを浮かべた。
「……くく。少しは面白くなってきたではないか」
同じ頃、遠坂邸。
地下室では、四人の千手扉間と間桐慎二が研究を続けていた。
慎二は机に広げられた紙を見比べながら、眉をひそめている。
「……おい、扉間」
「何だ?」
「これ、どういう術式なんだよ?」
「む? ああ、それはチャクラの流れを制御するためのものだ」
「……チャクラ?」
「こちらの世界でいう魔力に近いものだと思えばよい。ただし、性質は異なるがな」
「……へえ。じゃあ、この部分は?」
「封印術の基礎だ。まずは全体の構造を理解しろ」
「いや、それが分からないから聞いてるんだろ」
慎二は不満そうに口を尖らせた。
扉間は隣へ椅子を引き寄せ、紙の一角を指差した。
「ここから流れ込んだチャクラを、こちらの術式で制御する。貴様らの魔術回路とは違い、術者自身の身体を流れるエネルギーを利用する仕組みだ」
「じゃあ、この文字は?」
「術式を固定するためのものだ。意味を知らずに写しても使えんぞ」
「……分かってるよ」
慎二は紙に書かれた文字を見直した。
魔術とは根本的に異なる体系。
それなのに、偽臣の書の術式へ干渉し、命令権だけを封じることに成功している。
どういう理屈なのか、慎二にはまだ理解できなかった。
「……なあ、扉間」
「今度は何だ?」
「お前、もしかして魔術回路なしで術を使えるのか?」
「チャクラを練るための経路はあるが、貴様らの言う魔術回路とは別物だな」
「……そんなの、ずるいだろ」
「何がだ?」
「いや、僕は魔術回路がないだけで散々馬鹿にされてきたのにさ。お前は普通に訳の分からない術を使ってるじゃないか」
「ワシと貴様では、そもそも扱っている術が違う」
「……そうだけどさ」
慎二は納得しきれない様子だったが、すぐに資料へ目を戻した。
「じゃあ、この封印術を使えば、他の魔術礼装も封じられるのか?」
「対象による。術式の構造が分からねば、何を遮断すべきかも判断できん」
「……ああ、だから偽臣の書を調べてたのか」
「そういうことだ」
慎二は腕を組んだ。
「でも、何でそこまで聖杯戦争の仕組みを調べてるんだよ? お前、戦うだけなら十分強いだろ」
「それだけでは足りんのでな」
「……何が?」
扉間は答えず、別の資料を開いた。
そこには教会から回収した英霊召喚の記録がまとめられている。
第五次聖杯戦争、七騎のサーヴァント、マスターとの契約。そして、英霊の座。
扉間は既にこれらの仕組みについて、幾つかの仮説を立てていた。
だが、どれも検証が必要なものばかりだった。
特に、英霊を現世へ呼び出す過程については不明な部分が多い。
(……言峰もそろそろ地下の異変に気づく頃か)
教会から子供たちを救出し、資料を回収してから、既に一日以上が経っている。
長年維持されていた施設が突然停止したのだ。いつまでも隠し通せるとは考えていなかった。
もっとも、現時点では言峰から目立った動きは確認されていない。
教会周辺の監視を続けている影分身からも、異常の報告はなかった。
(……奴が動く前に、もう少し調べておきたいところだな)
扉間は資料の一枚を抜き取った。
それを見た慎二が、興味を示した。
「……何だよ、それ?」
「英霊召喚の術式だ」
「……見せてくれよ」
扉間は資料を差し出した。
慎二は受け取ると、しばらく目を通した。
「……何だこれ。妙なところで術式が切れてるな」
「どこだ?」
「ここ。英霊の情報を呼び出す部分は分かるけど、その後が変なんだよ。普通なら、召喚したものを固定するための処理が必要だろ?」
「うむ」
「それなのに、こっちには別の記述が混ざってる。魔力の供給経路でもないし……何だよ、これ」
慎二は眉をひそめた。
「……これ、本当に英霊召喚の術式なのか?」
「一部はこちらで手を加えておる」
「……は?」
扉間は別の紙を取り出し、慎二の前に置いた。
そこには、先ほどまでの魔術式とは異なる文字が記されていた。
「こちらを見ろ」
「……何だよ、これ」
「ワシが開発した術の一部だ」
慎二は二枚の紙を見比べた。
一方は聖杯戦争の魔術。もう一方は、忍術による術式。
見慣れない文字が多く、全容は理解できない。
しかし、二枚の紙には似た役割を持つ部分が存在していた。
「……ちょっと待てよ。これ、もしかして同じようなことをしようとしてるのか?」
「ほう。分かるか?」
「いや、分かるっていうか……どっちも何かを呼び出すための術式だろ? ただ、こっちの方は対象が全然違うみたいだけど」
慎二は忍術の記された紙を指差した。
「……なあ、扉間。これって何を呼び出す術なんだ?」
扉間は少し考えた。
慎二は既に研究へ参加しており、英霊召喚についても一定の知識を持っている。
これから先の解析を進めるなら、目的を隠したままでは不都合もあるだろう。
いざとなれば呪印を施し外部に情報が漏れるのを防げばいい。
「……同じ研究をしておるなら、話しておく方がよかろう」
「……何を?」
扉間は忍術の記された紙を手に取った。
「名は穢土転生。ワシが開発した禁術だ」
「……禁術?」
「浄土にある死者の魂を現世へ口寄せし、依り代となる肉体へ縛りつける術よ」
慎二は扉間を見た。
そして、もう一度、手元の資料へ目を落とした。
「…………は?」
しばらくして、ようやく言葉が出た。
「……おい、扉間」
「何だ?」
「今、死者の魂って言ったか?」
「そうだが」
「……それ、お前が作ったのか?」
「うむ」
扉間は何でもないことのように答えた。
慎二は椅子の背もたれへ身体を預けた。
「……お前、そんなもの作って何する気だったんだよ!?」
目の前に広げられた術式と扉間を交互に見た。
「当時は戦争中でな。仕方なかったのだ」
「……まさかお前……使ったのか!?」
「被害を減らすためだ。だが勘違いするな、ワシとてこの術が倫理的とは思っておらん」
扉間は淡々と答え、資料の一枚を手に取った。
「必要に迫られて開発した術ではあるが、決して褒められたものではない。ゆえに禁術とした」
「……死者使って敵陣に送り込むとかしたのか?」
「必要であればな」
「淡々と言うなよ!? こえーよ!?」
慎二は思わず椅子を引いた。
しかし、改めて術の仕組みを考えると、その恐ろしさがよく分かる。
死んだはずの味方が戦場へ戻ってくれば、敵は驚くだろう。ましてや、かつての仲間が自分たちへ襲いかかってくるとなれば、混乱は避けられない。
しかも、その死者が術者の命令に従う操り人形であるならば。
「……待てよ」
慎二は眉をひそめた。
「これって、蘇らせた奴が普通の攻撃じゃ死なないんだよな?」
「依り代が破壊されても再生する。無論、封印などで対処される可能性はあるがな」
「……合理的すぎて怖いんだけど……これさ……蘇らせた奴に爆弾とか詰め込んだらもっとヤバくないか?」
扉間の手が止まった。
そして、慎二へ顔を向ける。
「ほう……鋭いな」
「…………」
慎二は嫌な予感がした。
「……まさか」
「互乗起爆札という術があってな。起爆札が次々と新たな起爆札を口寄せし、連続して爆発を起こす仕組みだ。穢土転生との相性もよい」
「やっぱりやってんのかよ!?」
慎二は頭を抱えた。
「何なんだよお前! 死者を蘇らせるだけでも十分おかしいのに、そいつを爆弾にするとか! どんな戦争してたんだよ!?」
「忍同士の戦争だ。敵も相応の術を使ってくる以上、こちらも対抗手段を用意せねばならん」
「いや、そういう問題じゃないだろ!?」
「戦術としての着眼点は悪くないぞ、慎二。術の性質を聞いただけで、そこまで思いついたのだからな」
「今は褒められても嬉しくねえよ!!」
扉間は不思議そうに眉を上げたが、それ以上は何も言わず、再び資料へ目を落とした。
慎二はそんな男をしばらく眺めていた。
自分の知識を認め、研究に誘ってくれた人物。しかし、その正体は戦争を経験し、死者すら兵器として利用する術を開発した男なのである。
「……なあ、扉間」
「何だ?」
「お前、絶対敵に回しちゃいけない奴だろ……」
「今頃気づいたのか?」
「だから怖いんだよ!!」
扉間は机の上に置かれたランサーの血液へ目を向けた。
「ワシは無闇矢鱈に禁術を使う気は無い」
「…………説得力が無いんだけど」
慎二はしばらく黙っていたが、やがて額に手を当てた。
「……僕、とんでもない奴の研究を手伝ってるんじゃないだろうな」
「今更何を言っておる。仕事に戻れ」
「いや、今の話を聞いて普通に戻れるわけないだろ!?」
扉間は構わず次の資料を広げた。