・ミサがしっかりLの本名をを覚えていて、
・且つLがミサのおしりを触る(ミサの携帯を盗む)描写は失敗して(ミサがカバンの中できっちりガードしていたとかで)、
・且つ用心のため月はすぐに電話せず帰宅してからミサに電話し、
・Lの名前を聞き出して、且つ慎重をきして殺し方も事故死等で(この時点では心臓麻痺以外で殺せることをLは知らない)
・Lがどんな死に方をしても月がキラだと断定するようにとLは事前に周囲に伝えてあるが、そこをお得意の弁論術でごまかし、改めて新世界の神を目指す
という設定でチャッピー先生にご執筆お願いしました。Lと月の初挨拶が入学式後とかちょいズレは残りましたが許容範囲内だとは思います
大学の入学式。
夜神月は、式を終えて帰ろうとしたところで、キャンパス内のベンチに座る一人の青年に目を留めた。
白い服に身を包み、猫背気味に座っている。ぼさぼさの黒髪に、妙に大きな目。手には何も持たず、ただ人を待っているようだった。
その青年が、月を見るなり口を開いた。
「夜神くん、ですね?」
「……そうですが」
「初めまして。私はLです」
月の表情が、ほんの一瞬だけ固まった。
L。
キラ事件を追う世界最高の探偵。
その男が、なぜ自分の前にいる?
「L……?」
「はい。もっとも、こちらで名乗る名前は流河旱樹ですが」
青年は淡々と答えた。
「夜神くんとお話ししたいと思いまして。ここで待たせてもらいました」
「僕に、ですか?」
「ええ。あなたは非常に優秀な学生だと聞いています。ぜひ一度、お話ししてみたかったのです」
月は笑顔を崩さなかった。
(なるほど。最初から僕を狙っていたわけか)
二人はベンチの近くで話を続けた。
Lは月の受け答えを観察しながら、さりげなく質問を重ねていく。
その最中だった。
「あっ! 月!」
聞き慣れた声がした。
振り返ると、弥海砂がこちらに駆け寄ってくる。
「やっぱり月だ! 探したんだから!」
「海砂。どうしたんだ?」
「どうしたんだ、じゃないよ! 入学式が終わったから、月に会えるかなって思って!」
海砂は嬉しそうに月の腕に寄り添った。
Lはその様子をじっと眺めていた。
「お知り合いですか?」
「ああ、彼女は弥海砂さん。知り合いなんです」
「知り合いなんて月テレちゃって~(笑)。……弥海砂です! よろしくお願いします!」
「こちらこそ。流河旱樹です」
Lは軽く頭を下げた。
「え? 流河旱樹?」
海砂は怪訝な顔をした。
「……ああ、どうやらアイドルの流河旱樹と同姓同名みたいなんだ。面白いだろ?」
(おそらく見えてる名前と違ったから困惑したんだろう……頼むぞミサ……覚えていてくれ)
そのとき、月はLの視線が海砂のバッグに向けられたことに気付いた。
(……何を探っている?)
Lは何事もなかったように会話を続けた。
しばらくして、三人は人の流れが集中する場所を通ることになった。
入学式を終えた学生や保護者が行き交い、あちこちで記念撮影が行われている。
その混雑の中で、Lはさりげなく海砂の近くに位置取った。
人とすれ違う瞬間。
Lの手が、海砂のバッグの口元へと伸びた。
狙いは携帯電話。
しかし、指先に触れたのはバッグの内側にあるファスナーだった。
携帯電話はバッグの奥にしまわれており、口元から簡単に取り出せる状態ではなかった。
しかも、海砂が人を避けようとバッグを身体の前に抱え直したため、Lはそれ以上手を伸ばせなくなった。
「わっ、ごめんなさい!」
海砂が別の学生とぶつかりそうになり、バッグを押さえる。
「いえ、こちらこそ」
Lは何食わぬ顔で手を引いた。
海砂は特に気にすることなく、再び月の隣に戻る。
「月、そろそろ行こうよ!」
「ああ。じゃあ流河、今日はこれで」
「はい。お話しできてよかったです、夜神くん」
Lは笑顔を浮かべた。
その目だけは、笑っていなかった。
月もまた、笑顔を返す。
(危なかったな……)
携帯電話を狙っていたのだろう。
だが、失敗した。
そして、月はこの場で海砂に電話をさせるような真似はしなかった。
Lがどこまで周囲を警戒しているか分からない以上、余計な行動は避けるべきだ。
その日の夜。
月は自宅の自室で、ようやく携帯電話を手に取った。
大学を出てからも、海砂とは連絡を取らなかった。
慎重を期したのである。
電話をかけると、すぐに海砂が出た。
『もしもし、月?』
「海砂、今日の大学でのことなんだけど」
『ああ、あの白い服の変な人?』
「そう。何か気付いたことはなかったかい?」
『うん! 実はね、あの人の本当の名前が分かったの!』
月の目が細くなる。
「……本当の?」
『もちろん! 死神の目で見たんだもん! 名乗ってた名前と違ってた!』
月は逸る気持ちでメモを構えた。
『あの人の本当の名前は――エル・ローライト! 綴りはL Lawliet!』
月はその名前を正確に書き留めた。
(ついに……。……よくやったミサ! 携帯ガードといい綴りまで正確に覚えてることといい、お前なかなか"持って"るな!)
長い間、自分を追い詰めてきた男の名前。
ようやく手に入れた。
「ありがとう、海砂。助かったよ」
『えへへ! 月の役に立てて嬉しい!』
電話を切った月は、しばらくノートを見つめた。
だが、すぐには名前を書かなかった。
Lは用心深い。
自分が突然死んだ場合に備えて、何らかの手を打っている可能性は十分にある。
実際、Lは月をキラだと強く疑っていた。
そして、もしもの場合に備え、周囲の捜査関係者にはこう伝えていた。
自分がどのような死に方をしたとしても、夜神月をキラだと断定すること。
つまり、心臓麻痺であろうと事故死であろうと、病死であろうと関係ない。
Lの死そのものを、月がキラである証拠として扱えというわけだ。
(随分と強引な遺言を残してくれたものだ)
しかし、月はそこで一つの可能性に気付いた。
Lはデスノートが心臓麻痺以外の死を引き起こせるとは知らない。
ならば、事故死にすればいい。
心臓麻痺ではない。
しかも、死因を調べても不自然な点が見つからない。
月は慎重に条件を書き込んだ。
そして最後に、L・ローライトの名前を記した。
数日後。
Lは死亡した。
ただし、その事実が世間に公表されることはなかった。
そもそも死んだのがLだと示す証拠が何もない。
関係者には、表向きの身分である「流河旱樹」に関する死亡として処理された。
死因は事故。
突然の死ではあったが、キラによる殺害を示す証拠は何一つなかった。
しかし、捜査本部の人間たちは知っていた。
Lが残した指示を。
「Lは、どのような死に方をしても夜神月をキラと断定しろと言い残していた」
松田が口を開いた。
「それって、やっぱり夜神くんがキラだってことなんじゃ……」
「待ってください」
月が静かに遮った。
「確かに、Lは僕を疑っていたのでしょう。しかし、それはあくまで彼の推理です」
「だが、Lの遺言がある」
「その遺言は、どのような死に方をしても僕を犯人と決めつけろ、というものですよね?」
月は困惑したような表情を浮かべた。
「失礼ですが、それは本当に正しい捜査方針なのでしょうか?」
「しかし……」
「今回の死因は事故です。キラによる殺人を裏付ける証拠はありません。Lが僕を疑っていたからといって、事故死まで僕の犯行と結びつけるのは、あまりにも飛躍しています」
月は一呼吸置いた。
「そもそも、Lは非常に優秀な探偵でした。だからこそ、彼の推理を尊重したいと思っています。ですが、彼が亡くなった今、その推理を検証することもできません」
「……」
「Lの遺志を大切にすることと、彼の推理を無条件に正しいとすることは別です」
月の言葉には説得力があった。
Lが生前、月を疑っていたことは事実だ。
しかし、疑っていたことと、月がキラであることは同義ではない。
ましてや、事故死を殺人と断定する根拠にはならない。
「僕は捜査に協力します。疑いを晴らすためなら、いくらでも協力するつもりです」
月は穏やかに微笑んだ。
「ただ、証拠のないまま犯人扱いすることだけは、やめていただきたい」
結局、捜査本部は月を拘束することも、キラだと断定することもできなかった。
Lの最後の仕掛けは、月の弁論術によって骨抜きにされたのである。
その夜。
月は自室でデスノートを眺めていた。
「……ふふっ」
思わず笑みがこぼれる。
世界最高の探偵。
あれほど自分を追い詰めた男。
最後まで自分を疑い、死後にまで罠を残した男。
そのLが、今はいない。
しかも、残された罠すら突破してみせた。
「L……お前は最後まで僕を疑っていたんだな」
月は窓の外を見つめた。
「だが、僕の勝ちだ」
もはや、自分を止められる者はいない。
少なくとも、そう思える状況が整った。
犯罪者たちを裁き、悪のない世界を作る。
キラとしての活動を再開するのに、これ以上の好機はなかった。
「新世界の神になる」
月はノートを閉じた。
「今度こそ、誰にも邪魔はさせない」
夜神月の目には、再び確かな野心が宿っていた。
Lを倒した。
そして、彼の死後に残された最大の罠さえも欺いた。
月は再び、キラとして歩み始める。
新世界の神を目指して。
私も「なんとかして月くんを新世界の神にしてあげよう協会」の一員として頑張ります